2025.03.07
法人設立の費用とは?初期投資額を抑える方法を解説
法人を新たに設立するとき、登録免許税や資本金など、さまざまな出費が発生するため、初期費用の把握が欠かせません。必要項目を正確に理解していないと、想定外の支出に悩まされるおそれがあります。
本記事では、法人設立にかかる主な費用と抑えるコツを解説します。
法人の設立時に発生する費用
法人を設立するときにかかる費用は、多くの場合「法定費用」「資本金」「その他の初期費用」に大別されます。
法定費用の内訳
法人の設立では、定款を作成したり法務局に登記申請したりと、必ず守るべき手順があります。これらの手続きにかかる公的な料金を総称して、法定費用と呼びます。典型的な項目は、登録免許税や定款認証費用などで、株式会社か合同会社かによって金額が異なります。
株式会社の場合、登録免許税は資本金の0.7%、または15万円のうちいずれか高い方が適用されます。一方、合同会社であれば0.7%、あるいは6万円の高い方です。また、株式会社では、定款の認証費用や謄本手数料も必要になりますが、合同会社では定款認証が不要な分、出費を抑えやすい特徴があります。
資本金
法人を設立する際に用意する資本金は、事業の運転資金や信用度に大きく影響する重要な要素です。日本では1円からの設立が可能ですが、あまりに少ないと金融機関や取引先からの信頼を得にくい懸念があります。また、資本金が1,000万円以上になると消費税の免税措置が受けられなくなるなど、税制面の影響も踏まえなければなりません。
一般的な目安としては、300万~500万円程度を準備するケースが多いですが、業種や規模によって大きく異なります。とはいえ、初期段階で十分な資金を用意できない方もいるでしょう。そのため、必要最小限の金額をまず設定しておき、事業が軌道に乗ってから増資するという方法も検討することが大切です。
その他に必要な支出
法人の設立にあたっては、定款や登録免許税以外にもさまざまな支出が生じます。たとえば、代表者印を作成する費用や、司法書士や行政書士に依頼する場合の報酬などが代表的です。代表者印は、数千円程度から数万円までとさまざまで、素材やデザインによって差が出ます。
また、司法書士への依頼料は、5万~20万円程度が相場で、複雑なケースやサービス内容によって大きく変動します。移動に伴う交通費や書類のコピー費、さらには設立後のオフィス契約に伴う初期費用なども考慮が必要です。忘れがちな支出を洗い出し、しっかり予算に組み込むことで想定外の出費を防止できます。
さらに、事業を円滑に始めるためには、インターネット環境の整備やシステム導入費用なども加算される場合があります。特に、IT関連のサービスを利用する場合、月額契約や初期導入費などのランニングコストを含めて検討し、設立後の財務負担を想定した予算計画を立てることが大切です。
会社形態ごとの法人設立にかかる費用
法人を設立する際、最も一般的なのは、株式会社と合同会社です。それぞれの会社形態でかかる費用は異なるため、事業内容や将来を踏まえて検討することがポイントになります。
株式会社
株式会社は、社会的信用や知名度の高さが魅力といえます。一般的には、資本金をある程度大きく設定することが多いため、将来的に外部からの出資や株式上場を目指す事業に向いていると考えられます。一方で、設立時には公証役場での定款認証や登録免許税の最低額が15万円となるなど、費用面でのハードルが相対的に高くなります。
社会的信用度の高さゆえに、ビジネスパートナーの獲得や融資面では優位に立ちやすい反面、資本金以外にも細かな法定費用が積み重なりやすい課題があります。事務作業もやや煩雑になるため、設立や運営にあたっては、専門家の助力を得ることを検討してみてください。
なお、大企業や公的機関との取引では、株式会社であることを前提とするケースもあります。また、株式上場を目指す場合には、内部統制や監査などの準備が必要になり、設立時だけでなく継続的なコスト負担も増大しがちです。
合同会社
合同会社は、設立費用を安く抑えられる点が魅力で、登録免許税の最低額が6万円、さらに定款認証が不要というメリットがあります。株式を発行しないため、外部投資家からの大きな資金調達は難しいとされますが、少人数で始める小規模事業や個人事業主からの法人成りには最適です。
また、内部自治の柔軟さや配当議決権の設定もしやすく、経営がシンプルになりやすい点も注目されています。法人の設立にかかる費用をできるだけ抑えたい場合や、将来的な上場を視野に入れていない場合には良い選択肢になるでしょう。
初期投資を抑えるためのポイント
法人を立ち上げる際の初期費用を軽減するために、手続きや設備投資で工夫できる部分は少なくありません。電子定款の活用や法人形態の再検討など、工夫できる点を押さえましょう。
電子定款を活用しよう
定款を紙で作成して公証役場で認証を受ける場合、4万円分の収入印紙が必要です。しかし、電子定款であれば印紙代が不要になります。電子定款を作成するには、対応ソフトや電子証明書を準備する必要があり、最初だけ少し手間やコストがかかることが難点です。
それでも、長期的に見れば印紙代の節約効果が大きいため、何度か法人設立の作業を経験する専門家に依頼して、効率よく進めるケースも増えています。自力で手続きする場合は、必要書類の取得や電子署名の手順をあらかじめよく確認しておきましょう。
会社形態の選択を見直す
設立後の信用度を重視するか、それとも費用の安さを優先するかによって、適切な会社形態は異なります。株式会社であれば社会的信用を得やすいものの、定款認証費用や登録免許税などのコストが高くなります。反対に、合同会社なら低コストで設立しますが、上場を考える場合には対応しにくい点が課題となります。
事業内容や目標とする規模感を考慮し、最適な形態を選ぶことで固定費を抑えることが可能です。最初は合同会社でスタートし、必要に応じて株式会社に組織変更する例も多くみられます。
公告方法を工夫する
株式会社の場合、決算公告を出す義務があります。全国紙などの一般紙に公告を掲載すると高額になりがちですが、自社ウェブサイトなど電子公告を導入することでコストダウンを図ることができます。ただし、電子公告を行うためには、要件を満たす必要がある点に注意しましょう。
電子公告を正式に採用するには、定款に記載する方法など、一定の手続きが必要です。公告コストを削減する選択肢があるだけでなく、他の経費や運営方法も見直し、全体のコスト管理を徹底していくことが重要です。
また、公告方法を見直すだけでなく、公告の頻度や内容を適切に設定することもコスト削減につながります。電子公告であれば、サイトの更新のみで完結するため、掲載の手間や期間による追加費用が抑えられるメリットが期待できます。
資本金設定に注意する
資本金は、事業の規模や信用力に直結する要素です。ただし、1,000万円以上に設定すると、設立後すぐに消費税の課税事業者になってしまい、キャッシュフローが圧迫される可能性が高まります。逆に、小さすぎると信用度が下がり、法人カードの発行や融資で不利になるかもしれません。
経営計画を立てる段階で、不必要に大きな資本金を設定しない工夫が欠かせません。設立後に増資する場合は手続きが必要ですが、会社の成長に応じて段階的に調整できるメリットもあります。
また、資本金を低く抑えた分だけ運転資金を別枠で確保できる場合もあり、事業開始直後の資金繰りを安定させることに役立つケースがあります。
会計処理の基本を整理しよう
法人の設立から開業、運営までの過程で発生する費用は、会計処理上どのように扱われるかも理解が必要です。
創立費と開業費
創立費とは、法人を設立するために直接要した費用を指します。具体的には、定款認証費用や登録免許税、司法書士への報酬などが含まれます。一方で開業費は、実際に事業を始めるためにかかった広告宣伝費用などを指すケースが多いです。
これらの費用は繰延資産として計上でき、一定期間にわたって償却することが可能です。一度に経費計上すると利益が大きく変動してしまうため、償却期間を設定して安定的な財務管理を図ります。
なお、繰延資産として計上することで、現金支出があっても会計上は費用を分割して計上できます。そのため、設立直後の利益を過度に圧縮せずに済み、見栄えの良い決算書を作成しやすいという利点もあります。ただし、その分だけ将来の年度に経費計上が行われ、税額にも影響します。
繰延資産のメリット
繰延資産として処理すると、設立から間もない時期の利益を圧縮しすぎずに済むため、金融機関との関係や株主へのアピールにもプラスに働く可能性があります。また、計画的に償却を進めることで利益や税金の見通しを立てやすくなる点もメリットです。
ただし、繰延資産として計上するには、法律上の要件があります。会計処理を誤ると正しい決算書が作れない恐れがあるため、税理士や会計士などの専門家と相談して進めるのがおすすめです。
さらに、繰延資産以外にも減価償却資産やリース資産など、法人における会計処理上の扱い方は多岐にわたる点は注意しておきましょう。
まとめ
法人を設立するにあたっては、登録免許税や定款認証費用などの法定費用をはじめ、資本金や代表者印の作成費用、司法書士への依頼料など多くの出費が考えられます。
将来的な展望に合わせて無理ない出費計画を立てた上で、法人設立に踏み切りましょう。