2025.03.14
リセッションとは?経済の低迷期に備える資金運用法を紹介
景気が後退している状況は、企業の収益や雇用が低迷し、さまざまな産業に影響が及ぶことが多くなります。こうした状況はリセッションと呼ばれ、経営者や個人事業主にとって資金繰りの難易度が上がる時期となります。
本記事では、リセッションの基本知識と経済の低迷期に対応する資金運用法を整理し、それぞれのメリットや注意点について詳しく解説します。
リセッションの基本
リセッションは、景気の後退を意味し、企業収益や雇用の減少といった実体経済の下振れ局面を指します。リセッションかそうでないかを判断するには、一定の測定基準があります。
リセッションとは
リセッションとは、内閣府の景気動向指数であるDIが50を下回って悪化傾向にある場合や、IMFや各国統計局で指摘されるように、GDPが2四半期連続でマイナス成長となる状況を端的に指すことが多くあります。いずれにせよ経済活動全体が縮小し、需給ギャップが開きやすくなることが特徴といえます。
こうした経済の低迷期には、個人消費の後退や企業の投資意欲の低下が顕在化します。企業はコスト削減に走り、雇用調整や設備投資の削減を進めるため、全体的に給与水準や雇用人数が落ち込みがちです。
株式市場と経済後退
株式市場は、実体経済より先行して動くと考えられています。たとえば、リセッションが公式に発表される前に、投資家は企業業績の下振れを予想して売りが先行し、株価が急落することがしばしばみられます。
公式の景気後退宣言は、一定の統計データを集計する過程で遅れが生じるため、早期に方針転換した投資家が先手を打てる可能性があります。また、株価が長期間低迷してからリセッションが認定される場合もあり、市場と実体経済のタイムラグは無視できません。
リセッションは経済に与えるインパクトが大きいだけでなく、投資家心理も大きく揺れ動くため、リスク許容度に見合った行動が必要です。特に、短期売買をメインにする投資家は乱高下に巻き込まれやすく、慎重な判断を求められます。
米国経済の動向と世界への影響
米国のGDPは、世界全体のおよそ24パーセントを占めると、FRBやNBERの資料で示されています。したがって、米国がリセッション入りすると、世界各国の金融市場や為替相場などにも連鎖的に波及しやすいのです。
米国企業の業績が悪化すると、その取引先となる海外企業にもダメージが及び、グローバルサプライチェーンで連鎖的に収益が落ち込む場合がみられます。輸出中心の国々や資源価格依存度の高い国々は、さらに大きな影響を被る恐れがあります。
世界経済が一体化している今、どの国も米国経済の動向とは無関係ではいられません。特に日本を含む先進国では、対米輸出や金融市場を通じて景気下押しのリスクが増幅するため、状況の注視が不可欠です。
リセッションが起こる要因
リセッションには、内在的な経済サイクルの作用や金融政策の影響など、複数の原因が複雑に絡み合います。
景気循環と金融政策
景気には、キチンの波(約40カ月)、ジュグラーの波(約10年)、クズネッツの波(約20年)、コンドラチェフの波(約50年)といった周期的変動があります。これらの波が重なり合うことで大きな景気上昇や下落が生まれやすく、ここに政策金利の動きが加わることでリセッションが深刻化するケースもあります。
特に、中央銀行の金利引き上げは、インフレを抑制する手段として広く用いられますが、これによって企業や個人の借入コストが上がり、消費や投資意欲を鈍化させる可能性があります。その結果、景気全体が冷え込んで後退局面に陥ることも珍しくありません。
金利が上昇しても、企業の稼ぐ力が十分であれば耐えられますが、過剰債務を抱える企業や設備投資に資金を集中させている企業にとっては、経営上のリスクが高まります。こうしたリスクが顕在化すると、複数の業種が連鎖的に落ち込みをみせることがあります。
歴史的事例
過去にも、大きなリセッションが世界を揺るがしてきました。代表的なものとして、ブラックマンデー(1987年)、リーマンショック(2008年)、コロナショック(2020年)が挙げられます。
ブラックマンデーでは、米国を中心とした株式市場の急落が世界的な恐慌騒ぎを引き起こしました。リーマンショックは、金融商品の不透明性と過剰なレバレッジ体質が招いた経済危機であり、コロナショックはパンデミックによる実体経済の突然の停止が特徴的です。
これらの事例を振り返ると、突発的な外部要因だけでなく、過熱した金融市場や政策の対応遅れが重なって、リセッションが深刻化したことがわかります。短期的な混乱を経て、政策金利の引き下げや財政出動などによる回復策が打たれましたが、企業や個人の資金繰りは一時的に大きく圧迫される結果となりました。
リセッションが資金運用に好影響を及ぼす場合
リセッションは、企業や個人事業主にとって厳しい時期ですが、資金運用の視点からみるとプラスに働く場合が一部存在します。
分散投資の安定性
リセッションが進行する局面では、株式市場だけでなくコモディティや不動産なども影響を受けやすくなります。しかし、分散投資を行うことでリスクを複数の資産に分散することができます。たとえば株式と国債、金などは逆相関的に動く場合があるため、片方が下落しても他方の上昇で下落幅を一定程度抑えられる可能性があります。
幅広い資産に投資することで、市場全体が総崩れになるリスクを軽減することが狙いです。経済が再び上向きになったときは、株式などリスク資産の価格上昇が期待できるため、長期的な成長を見込むことができます。
この期間に買い増しを行う場合は、相場が安値圏にあるタイミングを捉えられるメリットも生じます。焦って売却するのではなく、安定した運用プランを組み立てながらホールドすることで、成果が現れることがあります。
ディフェンシブ銘柄の安定性
リセッション時には生活必需品やインフラ関連、医薬品などのディフェンシブ銘柄が注目されやすいものです。これらの業種は、景気の変動に比較的左右されにくく、需要が安定している傾向があります。
ディフェンシブ銘柄を保有するメリットとしては、業績の下振れリスクが小さいため、株価下落局面でも相対的に値動きが安定しやすい点が挙げられます。また、安定配当を続ける企業も多いため、配当再投資による効果も期待できます。
もっとも、リセッションが深刻化すればディフェンシブ銘柄でも株価が下落することはあります。しかし、他のセクターより下落幅が小さいことで、資産価値の目減りを緩やかにできる点については、魅力を感じる投資家が多くいます。
リセッション時の資金運用のデメリット
一方で、リセッションの下落局面では、資金運用にもリスクが存在します。安値で仕込みができる反面、深刻な価格下落が起こる可能性や、資金繰り面での不安定感を抱える点があります。
株式市場の乱高下
リセッション時には、金融市場全体が不透明感に包まれやすく、投資家心理が敏感に反応して乱高下を起こします。下落スピードが速いため、損切りのタイミングが合わないと、大きな含み損を抱えるリスクが増えます。
特に、マクロ経済指標の発表や企業収益予想の下方修正などが相次ぐと、強烈な売りが発生し、株価は短期間で急落するかもしれません。ここでパニック的な売りに惑わされないことが、資金運用上の最大の課題となります。
高度な情報収集能力や、市場のセンチメントをいち早く把握するリテラシーが求められるため、負荷が大きくなるデメリットは無視できません。投資判断に迷ったまま荒波に巻き込まれると、取り返しのつかない損失に直結する恐れもあります。
政策金利の影響
リセッションの途中で、金融当局が政策金利を下げる場合もあります。しかし、タイミングが遅れると景気後退を一層深刻化させ、投資家の信頼を損なう可能性が高まります。
低金利政策が打ち出されても、すでに企業活動が大幅に萎縮している局面では、効果を発揮しにくい場合があるのです。銀行融資へのアクセスが悪化し、強制的に資金調達コストが上昇する企業も出るなど、景気後退時の金融面は多面的にリスクが潜むといえます。
また、長期的に金利が低下すると債権市場に資金が集まり、株式市場から資金が流出する事態も想定されます。このように、政策金利の動向は市場全体の資金フローを左右し、その影響は運用リターンを大きく変動させます。
リセッションに備える投資戦略
リセッションを予測し、ある程度準備を整えておくことは、長期的な経営や資金管理を安定させるうえで重要です。ここでは、具体的な投資戦略とその実践に焦点を当てます。
ドルコスト平均法
株価が下がり始めるリセッション局面では、投資のタイミングを見極めることが難しくなります。そのため、一定の資金を定期的に積み立てるドルコスト平均法が有効と考えられます。
この手法は、価格が下落しているときほど多くの株式を取得できるため、取得単価を平準化しやすい点が特徴です。一時的な急落に焦る必要がなく、長い目で見た際のリターン向上を期待できます。
ただし、全体の経営資金やキャッシュフローを圧迫するほどの追加投資は、リスクが高くなります。企業経営者や個人事業主の場合、事業を回すための運転資金は確保したうえで、余裕資金に限って投資に回す姿勢が望ましくあります。
経済指標のチェック
リセッションがくるかどうかを常に判断するためには、FOMC議事録やISM製造業指数などの公表データを細かく追う必要があります。具体的には、毎月発表される米国雇用統計をはじめ、各国の消費者物価指数や企業景況感調査などをチェックすると、早期警戒が可能です。
こうした指標は、マーケットの期待と実績値のギャップによって、株価や為替相場を大きく動かす引き金になります。強気一辺倒で投資を継続するのではなく、適宜ポジションを見直す柔軟性が求められます。
特に、事業資金が逼迫しやすい経営者の場合、どの程度余力があるかを見極めるために、経済指標との対話は欠かせません。早めに兆候をつかむことで、運転資金の確保や資金繰り計画の改善にもつなげられます。
グローバル分散でのリスク軽減
リセッションが一国のみで起きる場合、その国の経済規模や産業構造によって影響度合いが異なります。米国の景気後退は、世界へのインパクトが比較的強いものの、新興国の一部が好調を維持していることもあります。
こうした状況を踏まえると、投資先を先進国や新興国、さまざまな地域に広げるグローバル分散投資は、一つの有効なアプローチです。地域ごとの景気局面の違いを意識することで、特定地域への集中リスクを和らげることができます。
もっとも、為替リスクや政治リスクなど、国によっては想定外の不確定要素も存在します。流動性が低い市場では、いざというときに売却が困難なケースもあり得るため、分散する際は各国の状況を慎重に見極める必要があります。
まとめ
リセッションは、経済全体が後退する厳しい局面ですが、事前に備えと戦略を練っておくことで、資金繰りや投資の面で活路を見いだすことができます。リセッションに関する基礎的な知識と行動指針を押さえておけば、経営環境が変化しても冷静に対処できるでしょう。
まずは自社や自身のキャッシュフローを見直し、余剰資金を投資に回す計画を立てるなど、できるところから始めましょう。
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