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2025.02.03

社債と株式の違いとは?社債発行で知っておくべき事項を徹底解説

事業資金の調達方法として、社債と株式のどちらを選択するかは企業経営において大切な意思決定です。その際に、社債と株式では性質やリスク、発行のメリットやデメリットが大きく異なるため、両者の違いを正しく理解することが求められます。

この記事では、社債と株式の違いを整理したうえで、社債の特徴や種類、企業側のメリットや注意点について詳しく解説します。

社債と株式の違い

企業が事業資金を調達する手段として、社債と株式は重要な役割を果たしており、それぞれの特徴を理解することは、企業経営者や投資家にとって不可欠です。

負債としての社債と出資金としての株式

社債と株式の大きな違いは、その性質にあります。社債は企業にとっての負債であり、株式は出資金として扱われます。

社債は、企業が投資家から資金を借り入れる手段です。企業は社債の満期まで利息を支払い、満期時に元本を償還する義務があります。一方、株式は企業の所有権の一部を表すもので、株主は企業の所有者としての権利を持ちます。

貸借対照表上の扱い

社債と株式の性質の違いは、貸借対照表上の扱いにも反映されます。貸借対照表は、企業の財政状態を表す重要な財務諸表の一つです。

社債は貸借対照表の負債の部に計上されます。これは、社債が企業にとっての債務であることを意味しています。対照的に、株式は貸借対照表の資本の部に計上されます。株式は企業の所有者である株主からの出資を表しているためです。

リスクの高低

社債と株式では、投資家が負うリスクの程度も異なります。一般的に、社債はミドルリスク、株式はハイリスクと考えられています。

社債は、元本と利息の支払いが約束されているため、比較的安定した投資対象といえます。一方、株式は企業の業績に応じて価値が変動するため、リスクが高い投資対象です。株価の変動や配当の有無などにより、投資家は損失を被る可能性があります。

倒産時の弁済順位

最後に、企業が倒産した場合の弁済順位についても、社債と株式では大きな違いがあります。倒産時には、債権者への弁済が優先されます。

社債保有者は、一般の債権者と同等の順位で弁済を受けることができます。つまり、社債保有者は株主よりも優先的に弁済を受ける権利を持っています。一方、株主は、全ての債権者への弁済が終わった後に、残余財産の分配を受けることになります。そのため、倒産時には株主が損失を被るリスクが高くなります。

社債の特徴

社債とは、企業が事業資金を調達するために発行する債券のことです。企業は投資家から資金を借り入れ、満期まで利息を支払い、満期に元本を返済するという仕組みになっています。

社債の大きな特徴は、個人投資家や機関投資家に広く資金を募集できる点です。銀行からの借り入れとは異なり、資本市場から直接資金を調達することができるため、企業にとっては柔軟な資金調達手段の一つといえるでしょう。

主な社債の種類

社債には、いくつかの種類があります。代表的なものとしては、以下のようなものがあげられます。

  • 普通社債:中長期の資金調達を目的とした一般的な社債
  • 転換社債:所定の条件で株式に転換できる権利が付いた社債
  • ワラント債:新株予約権が付与された社債
  • 劣後債:倒産時の弁済順位が他の債務より劣後する特殊な社債

また、電力会社が発行する電力債や、少数の投資家に直接引き受けてもらう私募債なども、特殊な社債の一種といえます。これらの社債は、発行体の信用力や、投資家の投資目的に応じて選択されます。

満期と利払いの条件

社債の満期は、通常3年から10年程度に設定されることが多いですが、中には数十年におよぶ超長期の社債も存在します。満期までの期間が長いほど、投資家にとっては資金の拘束期間が長くなるため、一般的に利回りは高く設定される傾向にあります。

また、利払いの条件も社債ごとに異なります。多くの社債は半年ごとに利払いが行われますが、月次や年次の利払いもあります。利率は固定金利の場合と変動金利の場合があり、企業の信用力などに応じて決定されます。

社債の流動性

一般的に、社債の流動性は株式と比べると低いといわれています。社債は取引所に上場されていないケースが多く、途中売却が難しい場合があるためです。

ただし、信用力の高い優良企業の発行する社債や、転換社債のように株式に転換できる権利が付いた社債などは、比較的流動性が高くなる傾向にあります。投資家は、社債への投資を検討する際、満期までの資金拘束を念頭に置く必要があるでしょう。

株式の特徴

株式とは、企業が資金調達を目的として発行する証券の一種で、株主は会社の所有者としての地位を得ることができます。株式会社が事業を行うために必要な資金を、不特定多数の投資家から幅広く集める仕組みです。

株式投資は、企業の成長性を評価して投資先を選定し、配当金や株価上昇によるキャピタルゲインを狙うことが一般的な目的となります。

株主の権利と義務

株主は、株式を保有することで様々な権利を得ることができます。主な権利としては以下のようなものがあげられます。

  • 議決権:会社の重要事項の決定に参加できる権利
  • 配当請求権:会社の利益の配当を受け取る権利
  • 残余財産分配請求権:会社が清算するときに残余財産の分配を受ける権利
  • 株主代表訴訟提起権:取締役の違法行為に対して訴訟を起こせる権利

一方で、株主には出資した資金が返還されない責任や、会社の債務に対する責任は負わないという有限責任の原則があります。このため、株主が被るリスクは出資額が限度となります。

ただし、株主には株式保有に伴う義務もあります。たとえば、株式の譲渡には取締役会の承認が必要な場合や、株主総会での議決権行使が必要となる場合があります。

株式投資のリスクとリターン

投資家は、株式投資に高いリターンを期待できる一方で、大きなリスクが伴います。株価変動リスクに加えて、企業の倒産リスクもあるため、元本割れのリスクは常にあるといえます。

しかし、ハイリスクであるがゆえにハイリターンも期待できるのが株式投資の特徴であり魅力です。長期的に株式を保有する分散投資は、インフレヘッジ効果もあるため、資産形成の有効な手段の一つとされています。

企業側から見た社債発行

社債は企業が事業資金を調達する手段の一つであり、株式発行とは異なる特徴を持っています。

社債発行の優れている点

社債発行の大きなメリットは、資本市場から直接資金調達ができる点です。銀行借入とは異なり、多数の投資家から幅広く資金を集められるため、大規模な資金調達が可能となります。

また、社債発行は企業の対外的な信用力向上にもつながります。社債を発行できるということは、市場から一定の評価を得ている証拠だといえるでしょう。これにより、取引先や顧客からの信頼を高めることができます。

さらに、社債では比較的柔軟な返済スケジュールを選択できる点も魅力です。銀行借入と比べて長期の返済期間を設定しやすく、企業のキャッシュフロー管理に合わせた返済計画を立てられます。

社債発行の難点

一方で、社債発行には留意点もあります。まず、一度発行した社債の返済スケジュールは原則変更できません。事業環境の変化により資金繰りが悪化した場合でも、約定通りの返済が求められます。

また、社債の発行コストは銀行借入と比べて高くなる傾向にあります。引受手数料や格付取得費用、開示関連費用などが必要となり、調達コスト全体としては割高になりがちです。

加えて、社債は流動性が低い商品であるため、投資家からすると中途売却が難しいというデメリットがあります。このため企業は、魅力的な利回りを提示する必要があり、財務面での負担増につながる可能性があります。

社債発行のプロセス

まず、社債を発行する企業は引受証券会社と発行条件を協議し、目論見書を作成します。

次に、格付機関から社債の格付けを取得します。これは社債のリスク度合いを示す指標で、利回り決定の重要な材料となります。

その後、引受証券会社が投資家に社債を販売し、払込金を発行企業に渡します。発行企業は社債の償還まで、定期的に利息を支払っていきます。

社債発行のコスト

最後に、社債発行時にかかるコストについて触れておきます。先述の通り、社債発行には様々な費用がかかります。特に、引受手数料は発行額の数%程度と高額になることが多くあります。

ただし、資金調達額全体から見ると、これらのコストは小さな割合でしかありません。長期的な資金繰りの安定性や、自社の信用力向上などの効果を勘案すれば、社債発行コストは投資と捉える考え方も可能です。

投資家から見た社債投資

社債は企業が資金調達のために発行する債券で、投資家にとっては利息収入が期待できる反面、リスクも存在します。そのため、投資家は慎重に様々な点を検討しながら社債を選択します。

社債投資のリスク

社債投資には、いくつかのリスクが伴います。まず、信用リスクがあげられます。これは、発行企業の財務状況悪化や倒産により、利息や元本の支払いが滞るリスクのことです。

次に、価格変動リスクがあります。社債の価格は市場金利の変動に影響を受けるため、金利上昇局面では社債の価格が下落し、売却時に損失が発生する可能性があります。

さらに、流動性リスクにも注意が必要です。社債は株式と比べて流動性が低く、資金需要に合わせた中途売却が困難な場合があります。

社債の利回りと企業の信用力

社債の利回りは、発行企業の信用力と密接に関係しています。一般に、信用力の高い企業が発行する社債は利回りが低く、信用力の低い企業の社債は利回りが高くなる傾向にあります。

これは、デフォルトリスクに対する投資家への補償とも言えます。信用リスクが高い企業は、投資家を引き付けるために高い利回りを提示する必要があるのです。

社債の評価

社債の信用力を評価する指標の1つに、格付けがあります。格付けは、スタンダード&プアーズ(S&P)や穆迪(ムーディーズ)などの格付機関が、発行企業の返済能力を分析して付与します。

一般に、格付けが高いほど信用力が高く、デフォルトリスクは低いと評価されます。逆に、格付けが低い場合は要注意とされます。投資の判断材料として、格付けはよく参考にされます。

まとめ

本記事では、社債と株式の特徴を比較しながら、それぞれの資金調達手段としての長所と短所を解説してきました。社債は負債性資金調達で、企業にとっては信用力向上のメリットがある一方、発行コストや償還義務といった注意点もあることがわかりました。

企業は自社の財務状況や資金需要に合わせて、社債と株式を効果的に組み合わせた資金調達戦略を立てることが重要でしょう。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 
同年 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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