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2025.01.28

有限会社とは?会社形態の基礎知識を解説

個人事業主や小規模企業の方にとって、会社設立の選択肢の一つとして有限会社が存在しました。有限会社は2006年の会社法施行以降、新規設立ができなくなりましたが、それ以前に設立された有限会社の一部は今も存続しています。この記事では、有限会社の基本的な特徴や組織構造、株式会社や合同会社との違いなど、有限会社に関する基礎知識を詳しく説明します。

有限会社の基本

有限会社は、株式会社や合同会社と同様に法人格を有する会社形態の一つです。しかし、その特徴や法的な位置づけには独自の面があります。

有限会社の特徴

有限会社の最大の特徴は、2006年の会社法施行以降、新たに設立することができなくなった点にあります。現在存続している有限会社は、すべて同法施行以前に設立されたものであり、「特例有限会社」と呼ばれています。

特例有限会社の組織構造上の特徴としては、以下のような点が挙げられます。

  • 取締役を1名以上置くことが必須
  • 取締役の任期に制限がない
  • 取締役会を設置することができない

また、財務面での特徴としては、株式の発行は可能ですが公開はできません。加えて、決算公告の義務もありません。

法律上での位置づけ

会社法施行以前は、有限会社は株式会社とは別の会社類型として扱われていました。しかし現在は、法律上は株式会社の一種として位置づけられています。

ただし、株式会社へ単純に一般化することはできません。会社法の規定により、有限会社には株式会社にはない様々な制限が課されているためです。

具体的には、商号に「有限会社」の文字を使用することが義務付けられている他、株式の譲渡には制限があり、株式上場も認められていません。また、会社の組織再編についても、合併の消滅会社となることのみ可能で、株式交換や株式移転は認められていません。

特例有限会社の組織構造

特例有限会社の組織構造は、株式会社や合同会社とは異なる特徴を持っています。ここでは、取締役の要件や任期、株主総会の位置づけ、監査役・会計監査人の設置について解説します。

取締役の要件と任期

特例有限会社では、最低1名の取締役を置くことが必要不可欠です。これは、株式会社と同様の要件ですが、大きな違いは取締役の任期にあります。特例有限会社の取締役には任期制限がなく、無期限で就任することができるのです。

一方、株式会社の取締役の任期は原則2年と定められており、再任が必要となります。この点で、特例有限会社は経営の継続性という面で有利といえるでしょう。ただし、定款で任期を定めることも可能ですので、状況に応じて柔軟に対応できます。

株主総会の位置づけ

特例有限会社における株主総会は、最高意思決定機関としての役割を担います。取締役の選任・解任、定款変更、計算書類の承認など、会社の重要事項は株主総会の決議を経て決定されます。

ただし、特例有限会社には取締役会の設置が認められていません。つまり、株主総会で決議された事項を執行するのは個々の取締役ということになります。

監査役・会計監査人の設置

特例有限会社では、監査役や会計監査人の設置は義務付けられていません。これは、組織の簡素化と経営の自由度を高めるためと考えられます。ただし、任意で監査役を置くことは可能です。

監査役を設置する場合、その権限や責任は株式会社の監査役とほぼ同等です。取締役の職務執行を監査し、法令違反等があれば株主総会に報告する義務を負います。このように、ガバナンス強化の観点から監査役を置くことも検討に値するでしょう。

特例有限会社の財務

特例有限会社の財務には、いくつかの特徴的な点があります。ここでは、株式発行と譲渡制限、計算書類の作成と決算公告について詳しく見ていきましょう。

株式発行と譲渡制限

特例有限会社は株式を発行することができますが、その株式を公開することはできません。つまり、株式の譲渡には制限があり、株主総会の承認を得る必要があります

この譲渡制限により、特例有限会社の株主構成は安定的に保たれます。一方で、資金調達の選択肢が限られるというデメリットもあるでしょう。事業の成長段階に応じて、柔軟な資本政策を検討していくことが求められます。

計算書類の作成と決算公告

特例有限会社は、株式会社と同様に計算書類(貸借対照表、損益計算書等)を作成する必要があります。ただし、決算公告の義務はありません。これは、特例有限会社の財務情報の開示範囲が限定的であることを意味します。

ステークホルダーとの信頼関係を築くためには、適切な情報開示が欠かせません。必要に応じて、任意での決算公告や財務情報の提供を検討することも有効でしょう。

有限会社のメリット

有限会社には、他の会社形態にはないいくつかのメリットがあります。ここでは経営の自由度、株主構成の安定という2点から解説していきます。

経営の自由度の高さ

有限会社は、経営の自由度が高いという特徴があります。取締役の任期に制限がないため、長期的な視点で経営を行うことができます。

加えて、決算公告が不要であるため、財務情報の開示義務が少なく、経営判断の機動性が確保されています。この点は、経営資源が限られた中小企業にとって大きなメリットといえるでしょう。

株主構成の安定性

有限会社の株式は、原則として自由に譲渡することができません。つまり、株主構成が安定しており、経営権の異動リスクが低いといえます。

これは、同族経営を志向する企業にとって重要なポイントです。株主の入れ替わりが少ないため、長期的な経営方針を立てやすく、安定した事業運営が可能となります。

有限会社のデメリット

有限会社には他の会社形態と比べていくつかのデメリットがあります。

ここでは、有限会社の主な3つのデメリットについて解説していきましょう。

社会的信用力の限界

有限会社は、最低資本金制度の撤廃により設立された株式会社と比べると、社会的信用力という面で劣ると捉えられがちです。有限会社の商号には必ず「有限会社」の文字を使用しなければならないため、取引先や顧客から「規模が小さい会社」という印象を持たれる可能性があります。

また、有限会社は決算公告が不要であるため、財務状況の透明性が低いと見られることもあります。この点は、信用を重視する取引先との関係構築において障壁になり得ます。

資金調達手段の制約

有限会社は、株式の公開が認められていないため、株式市場からの直接金融による資金調達ができません。株式の譲渡にも制限があるため、新たな出資者を見つけることも容易ではありません。

そのため、有限会社が事業拡大や設備投資を行う際には、金融機関からの借入れや社内留保に頼らざるを得ません。この資金調達手段の制約は、有限会社の成長のスピードに影響を与える可能性があります。

会社再編・M&Aの選択肢の狭さ

有限会社は、会社再編や企業買収(M&A)の選択肢が限られています。吸収合併の際には消滅会社としてのみ関与できますが、株式交換や株式移転には参加できません。

また、有限会社から他の会社形態への変更は可能ですが、一度変更すると元の有限会社に戻すことはできません。このように、有限会社は組織再編の自由度が低いといえます。

有限会社のこうした特性は、事業環境の変化に対応しようとする際の選択肢を狭めてしまう恐れがあります。戦略的な意思決定の幅が限定されることで、有限会社の競争力が損なわれる可能性もあるでしょう。

現行会社形態との比較

有限会社は現在は特例有限会社として存続していますが、現行の会社形態と比較すると、有限会社にはどのような特徴があるのでしょうか。

株式会社との違い

有限会社と株式会社の大きな違いは、役員の任期と取締役会の設置にあります。有限会社の取締役には任期の制限がありませんが、株式会社の取締役の任期は原則2年となっています。また、有限会社では取締役会の設置ができませんが、株式会社では任意で設置することができます。

このほかにも、有限会社では株式の公開ができないなどの制限がありますが、株式会社ではそのような制限はありません。有限会社は、株式会社に比べて組織運営の自由度が低いといえるでしょう。

合同会社との比較

有限会社と合同会社には、いくつかの共通点があります。まず、両者とも決算公告が不要であるという点です。また、経営の自由度が高いという特徴も共通しています。

一方で、相違点もあります。合同会社には株式がなく、社員の持分によって権利関係が定められます。また、合同会社は有限責任社員のみで構成されますが、有限会社では株主の責任が有限であっても取締役は無限責任を負うことになります。

事業承継の観点

事業承継の観点から見ると、有限会社にはいくつかの制限があります。まず、有限会社を存続会社とする吸収合併はできません。また、株式交換や株式移転も認められていません。

有限会社から他の会社形態への変更は可能ですが、株式会社や合同会社に変更した後に再び有限会社に戻ることはできません。事業承継の選択肢が限られているという点は、有限会社の大きなデメリットといえるでしょう。

まとめ

本記事では、有限会社の基本的な特徴や組織構造、現行会社形態との比較などについて詳しく解説してきました。有限会社は2006年の会社法施行以降、新規設立ができなくなりましたが、特例有限会社として現在も存続しています。

特例有限会社を運営している方は、自社の事業特性を踏まえつつ、有限会社の長所を活かしながら、課題にも適切に対応していくことが求められます。将来的な事業展開や資金調達の状況に応じて、自社に適した経営形態を検討することが大切になります。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 
同年 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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