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2025.02.03

限界利益率とは?計算式と活用例を詳しく紹介

事業運営において、資金の調達と運用は常に重要な課題です。そこで、限界利益率を理解し適切に活用することで、事業の収益性を評価し、キャッシュフローを改善することができます。

この記事では、限界利益率について詳しく解説します。限界利益率の計算方法から、事業の収益性分析、価格設定、経営資源の最適配分など、限界利益率を活用した経営判断までを網羅的に紹介します。

限界利益率とは

限界利益率は、企業の売上高に対する限界利益の割合を示す指標です。限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた金額のことを指します。

限界利益率は、企業の収益性や効率性を評価する上で重要な指標の一つとなります。この数値が高いほど、売上増加に伴う利益の伸びが大きくなることを意味しています。つまり、限界利益率は企業の収益力を示す有効な指標だといえるでしょう。

限界利益率の計算式

限界利益率は以下の計算式で求められます。

限界利益率 = (限界利益 ÷ 売上高) × 100

この式から分かるように、限界利益率を算出するためには、まず限界利益を求める必要があります。限界利益の計算式は次の通りです。

限界利益 = 売上高 – 変動費

ここでいう変動費とは、売上高に応じて変動する費用のことを指します。具体的には、原材料費や販売手数料、運送費などが該当します。一方、売上高に関係なく一定額発生する費用は固定費と呼ばれ、オフィス賃料や人件費などが含まれます。

限界利益率と利益率の違い

限界利益率と利益率は、ともに企業の収益性を表す指標ですが、その意味合いは異なります。利益率は、売上高に対する利益の割合を示すものであり、一般的には売上総利益率や営業利益率などが用いられます。

これに対し、限界利益率は変動費のみを考慮した収益性の指標といえます。固定費を除外することで、売上増加に伴う利益の伸び率をより正確に把握することができるのです。したがって、限界利益率は利益率よりも事業の収益性を的確に表しているといえます。

限界利益率を使った分析の目的

限界利益率を用いた分析の主な目的は、事業の収益構造を把握し、経営判断に役立てることにあります。限界利益率が高い事業は、売上増加による利益の伸びが大きいため、積極的に展開していくべき領域だと判断されます。

また、限界利益率は損益分岐点分析にも活用されます。損益分岐点とは、収入と支出が均衡し、利益も損失も発生しない売上水準のことをいいます。この損益分岐点は、固定費を限界利益率で割ることによって求められます。

このように、限界利益率を把握することで、企業は収益性の高い事業領域の特定や、必要最低限の売上目標の設定など、様々な経営判断を下すことが可能となります。事業資金の調達や運用を検討する際にも、限界利益率は重要な指標の一つといえるでしょう。

限界利益率の計算方法

限界利益率は企業の収益性を評価する重要な指標の一つです。ここでは限界利益率の計算方法について詳しく解説していきましょう。

限界利益率の計算に必要な情報

限界利益率を計算するためには、売上高と変動費の2つの情報が必要不可欠です。売上高は商品やサービスの販売によって得られた収入の総額を指します。一方、変動費は売上高に応じて増減する費用で、原材料費や販売手数料などが含まれます。

限界利益率を正確に算出するためには、固定費と変動費を適切に区分することが重要です。固定費は売上高に関わらず一定の金額が発生する費用で、オフィス賃料や人件費などが該当します。

限界利益率の計算手順

限界利益率の計算は以下のステップで行います。

  1. 売上高から変動費を差し引き、限界利益を算出する
  2. 限界利益を売上高で割り、100を掛けて限界利益率を求める

具体的な計算式は次の通りです。

限界利益率 = (限界利益 ÷ 売上高) × 100
= ((売上高 – 変動費) ÷ 売上高) × 100

限界利益率計算の具体例

ある企業の売上高が1,000万円、変動費が600万円だった場合、限界利益率は以下のように計算されます。

限界利益 = 1,000万円 – 600万円 = 400万円
限界利益率 = (400万円 ÷ 1,000万円) × 100 = 40%

この企業の限界利益率は40%ということになります。つまり、売上高の40%が限界利益として残る計算です。業種によって平均的な限界利益率は異なりますが、一般的にこの数値が高いほど収益性が高いと評価されます。

限界利益率計算における注意点

限界利益率を計算する際には、いくつか注意すべき点があります。まず、固定費と変動費の区分を適切に行わないと正確な限界利益率が算出できません。事業内容をよく理解し、各費用の性質を見極める必要があります。

また、限界利益率はあくまで収益性の指標の一つであり、企業の総合的な評価には他の指標も組み合わせる必要があります。例えば、売上総利益率や営業利益率なども重要な指標といえるでしょう。

限界利益率を活用した経営分析

限界利益率を分析することで、経営状態を多角的に把握し、適切な意思決定を下すことができます。

ここでは、限界利益率を活用した経営分析の具体的な手法について詳しく解説していきます。損益分岐点分析や価格設定、製品・サービスの収益性評価など、限界利益率を用いた分析は多岐にわたります。

損益分岐点分析への活用

損益分岐点分析は、収入と支出が均衡する売上高を算出する手法です。この分析には限界利益率が不可欠となります。

損益分岐点は、固定費を限界利益率で割ることで求められます。つまり、限界利益率が高いほど、損益分岐点に到達するために必要な売上高は低くなるのです。反対に、限界利益率が低い場合、損益分岐点に到達するためにはより多くの売上高が必要となります。

損益分岐点分析を行うことで、企業は必要最低限の売上目標を明確にできます。そして、その目標に向けて効果的な戦略を立案することが可能となるのです。

価格設定への活用

限界利益率は、適切な価格設定を行ううえでも重要な指標となります。製品・商品・サービスの価格は、変動費と必要な限界利益額を考慮して決定されるべきでしょう。

限界利益率が高い製品・商品・サービスは、価格を高く設定しても一定の需要が見込めます。一方、限界利益率が低い場合、価格を下げざるを得ない状況も発生します。限界利益率を把握することで、価格設定の自由度や制約を認識できるのです。

また、競合他社との価格比較を行う際にも、限界利益率は有用な判断材料となります。自社の限界利益率が高ければ、価格競争力を持っていると言えるでしょう。

製品・商品・サービスの収益性評価

企業は通常、複数の製品・商品・サービスを取り扱っています。それぞれの収益性を評価することは、経営戦略上非常に重要です。

限界利益率は、個々の製品・商品・サービスの収益性を示す指標となります。限界利益率が高い製品・商品・サービスは、売上に大きく貢献していると言えます。逆に、限界利益率が低いものは、収益性の改善が必要な可能性があります。

製品・商品・サービスごとの限界利益率を比較することで、企業はどの分野に経営資源を集中すべきかを判断できます。限界利益率の高い事業領域(製品・商品・サービス)に注力することが、収益性向上につながるのです。

経営資源の最適配分の検討

限界利益率は、経営資源の配分を最適化するためにも活用できます。人員やマーケティング予算など、限られた経営資源をどう割り振るかは重要な経営判断となります。

限界利益率の高い製品・サービスに経営資源を集中的に投入することで、効率的な収益獲得が期待できます。一方、限界利益率の低い分野に過剰な投資を行うのは得策ではありません。限界利益率を指標として、経営資源の選択と集中を図ることが肝要です。

また、新規事業の立ち上げ時にも限界利益率は重視されます。参入分野の限界利益率を精査し、収益性の高い事業に経営資源を投下する戦略が求められるでしょう。

業績予測シミュレーション

限界利益率は、業績予測シミュレーションにおいても重要な役割を果たします。売上高と限界利益率から、将来の利益を予測することができるのです。

例えば、売上高の増減を想定し、限界利益率を乗じることで利益の変動を試算できます。また、限界利益率の改善を前提とした場合、どの程度の利益向上が見込めるかをシミュレーションすることも可能です。

業績予測シミュレーションを行うことで、経営目標の設定や戦略の修正など、具体的なアクションにつなげられます。限界利益率は、将来を見据えた経営判断に欠かせない指標と言えるでしょう。

業種別の限界利益率の特徴

限界利益率は業種によって大きく異なります。ここでは、各業種の限界利益率の特徴について詳しく見ていきましょう。

限界利益率が高い業種の特徴

限界利益率が高い業種の代表例は、情報・通信業と小売業です。これらの業種では、変動費の割合が低く抑えられているのが特徴です。

情報・通信業は、一度システムを構築してしまえば、追加の顧客を獲得しても変動費はあまり増加しません。また、小売業においては、仕入れた商品を適切な価格設定で販売することで、高い限界利益を確保することができます。

限界利益率が低い業種の特徴

一方、限界利益率が低い業種としては、建設業や卸売業が挙げられます。これらの業種では、材料費や仕入れ費用といった変動費の割合が高くなる傾向にあります。

建設業では、工事の受注に応じて必要な資材を調達する必要があり、変動費の管理が難しくなります。卸売業も同様に、商品の仕入れ価格が限界利益率に直結するため、価格交渉力が求められます。

業種別限界利益率のデータ比較

2022年のデータを見ると、業種ごとに限界利益率に大きな差があることがわかります。以下は、主要な業種の限界利益率を比較した表です。

業種 限界利益率
情報・通信業 44.5%
小売業 44.4%
サービス業 41.1%
食料品 29.3%
機械 28.8%
水産・農林業 24.9%
卸売業 20.5%
建設業 16.5%
全業種平均 0.4%

この表を見ると、情報・通信業と小売業が高い限界利益率を誇っている一方で、建設業と卸売業は低い水準にとどまっていることがわかります。全業種平均が0.4%であることを考えると、業種による差は非常に大きいといえるでしょう。

自社の限界利益率のベンチマーク

自社の限界利益率を評価する際には、単に全業種平均と比較するだけでなく、同業他社の水準を把握することが重要です。自社が属する業種の中で、どの程度の位置にいるのかを客観的に分析することで、収益性改善のための方策を検討することができるでしょう。

また、限界利益率が低い場合には、変動費の削減や価格設定の見直しなど、様々な対策を講じる必要があります。一方、高い限界利益率を維持している場合は、その優位性を活かしつつ、さらなる売上拡大を目指していくことが求められます。

限界利益率の改善方法

限界利益率を高めていくためには、具体的にどのような取り組みが必要でしょうか。ここからは、限界利益率を改善する方法について詳しく見ていきましょう。

売上高を増加させる施策

限界利益率を改善するためには、分母である売上高を増加させることが有効です。売上高を増やすためには、販売数量を増やすか、販売単価を上げる必要があります。

販売数量を増やすには、マーケティング活動の強化が欠かせません。例えば、SNSを活用した情報発信や、顧客ニーズに合わせた商品開発などが考えられます。一方、販売単価を上げるには、ブランド力の向上や、付加価値の高い商品・サービスの提供が求められます。

ただし、売上高を無闇に追求するのではなく、利益を生み出せる売上高を目指すことが重要です。そのためには、適切な価格設定と、コストコントロールとのバランスを取ることが必要でしょう。

変動費を削減する施策

限界利益率の分子である限界利益を増やすもう一つの方法は、変動費を削減することです。変動費には、原材料費や外注費、販売手数料などが含まれます。

変動費を削減するためには、仕入れ先の見直しや、生産工程の効率化などが有効でしょう。例えば、複数の仕入れ先から見積もりを取り、最も安価で品質の高い業者を選定することで、原材料費を抑えることができます。

また、作業工程を標準化したり、自動化を進めたりすることで、人件費や不良品の発生を抑制できます。ただし、品質の低下を招かないよう、十分な検討と管理が必要です。

固定費の変動費化の取り組み

固定費を変動費化することも、限界利益率の改善につながります。固定費とは、売上高に関係なく一定額発生する費用のことで、オフィス賃料や人件費などが該当します。

例えば、自社の倉庫を持つのではなく、物流会社に委託するといった取り組みが考えられます。これにより、倉庫の維持コストを売上高に応じた変動費化することができます。

同様に、正社員から契約社員やアルバイトへの切り替えや、業務のアウトソーシングなども、固定費の変動費化につながります。ただし、従業員のモチベーション低下や、サービス品質の低下を招かないよう注意が必要です。

限界利益率活用における注意点

限界利益率を活用することで企業の収益性を効果的に評価することができますが、活用する際にはいくつかの留意点があります。ここでは、限界利益率を適切に活用するために押さえておくべきポイントを解説していきます。

限界利益率の限界

限界利益率は売上高に対する限界利益の割合を示す指標で、企業の収益効率を測る上で有用です。しかし、限界利益率だけでは企業の全体的な収益性を判断することはできません。限界利益率が高くても、売上高が低ければ十分な利益を確保できないでしょう。

また、限界利益率は変動費のみを考慮した指標であり、固定費の影響は反映されていません。そのため、限界利益率が高くても、固定費が膨らんでいれば最終的な利益は圧迫されてしまいます。限界利益率を見る際は、固定費の水準にも注意を払う必要があります。

他の収益性指標との組み合わせ

限界利益率の限界を補うためには、他の収益性指標と組み合わせて分析することが大切です。売上高や営業利益率、ROA(総資産利益率)などの指標と併せて見ることで、企業の収益力をより多角的に評価できるでしょう。

例えば、限界利益率が高くても、売上高が伸び悩んでいれば成長性に課題があると考えられます。逆に、限界利益率は低くても売上高が順調に増加していれば、規模の経済によるコスト削減の余地があるかもしれません。限界利益率は他の指標と合わせて総合的に判断することが求められます。

短期的視点と長期的視点のバランス

限界利益率を高めることは短期的な収益改善につながりますが、長期的な視点も忘れてはいけません。例えば、価格を引き上げれば限界利益率は改善しますが、顧客離れを招いて中長期的な売上高の減少につながるリスクもあります。

限界利益率の向上と、顧客満足度や市場シェアの維持・拡大とのバランスを取ることが重要です。短期的な収益性と長期的な成長性・安定性の両立を目指し、限界利益率を適切なレベルにコントロールしていく必要があります。

外部環境変化への対応

限界利益率の水準は、原材料価格や為替レート、顧客ニーズの変化など、外部環境の影響を大きく受けます。原材料価格の高騰は変動費の増加につながり、限界利益率を低下させるでしょう。顧客ニーズの変化に対応できなければ、売上高の減少により限界利益率は悪化します。

外部環境の変化を注視しつつ、コストコントロールや価格戦略の見直し、商品・サービスの改善により、限界利益率を適切な水準に保つ努力が欠かせません。外部要因に左右されにくい事業構造を構築することも、限界利益率の安定化に寄与するはずです。

まとめ

本記事では、限界利益率について詳しく解説してきました。限界利益率は、売上高に対する限界利益の割合を示す指標で、企業の収益性や効率性を評価する上で重要な役割を果たします。

限界利益率の計算方法や、損益分岐点分析、価格設定、経営資源の最適配分など、限界利益率を活用した経営分析の手法についても紹介しました。また、業種別の限界利益率の特徴や、限界利益率を改善するための具体的な方策についても触れました。

ただし、限界利益率を活用する際は、その限界や注意点にも留意が必要です。他の収益性指標と組み合わせた分析や、短期的視点と長期的視点のバランス、外部環境変化への対応など、総合的な視点が求められます。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 
同年 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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