2025.01.29
白色申告とは?青色申告との違いも含めて徹底解説
事業を始めるにあたって、税金の申告方法についてお悩みではないでしょうか。中でも、白色申告と青色申告のどちらを選択すべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、白色申告と青色申告のそれぞれの特徴や違いを詳しく解説します。帳簿のつけ方から事前手続き、節税効果、必要書類まで、申告方式選択の際に知っておくべきポイントを網羅的に紹介しています。
白色申告とは
白色申告とは、個人事業主が行う所得税の確定申告方法の一つです。白色申告は、単式簿記による記帳に基づく申告方式で、申告書の表紙が白色であることから、その名称がつけられています。
具体的には、白色申告では単式簿記と呼ばれる簡易的な記帳方式が採用されています。
白色申告の対象者
白色申告の対象となるのは、事業所得や不動産所得など、一定の所得がある個人事業主です。法人成りをしていない小規模な事業者が、白色申告を選択するケースが多いといえます。
ただし、所得税法上では特に白色申告の対象者を限定していません。そのため、事業規模の大小に関わらず、個人事業主であれば誰でも白色申告を選択することが可能です。
白色申告の特徴
白色申告の最大の特徴は、記帳や申告の手続きがシンプルなことです。複雑な帳簿をつける必要がないため、税務経理の知識が乏しい方でも取り組みやすいといえるでしょう。
また、白色申告では事前の申請手続きが不要なのも大きな特徴の一つです。事業を開始してすぐに確定申告が可能なので、急きょ開業することになった方にもおすすめできます。
一方で、白色申告にはいくつかのデメリットもあります。例えば、青色申告で適用される特別控除などの節税効果を受けられないことが挙げられます。事業規模が大きくなるほど、節税のメリットを享受できない影響は無視できなくなるでしょう。
青色申告とは
青色申告とは、所得税や法人税の確定申告において、複式簿記による記帳に基づいて行う申告方式のことをいいます。この申告方式を採用するためには、事前に税務署に申請し、承認を得る必要があります。
青色申告の名称は、申告書の表紙が青色であることに由来しています。
青色申告の対象者
青色申告の対象者は、個人事業主と法人に大別されます。個人事業主の場合、事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかを生じる事業を営んでいる必要があります。
法人の場合は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社などの法人格を持つ事業体が対象となります。ただし、青色申告を採用するためには、設立後一定期間内に申請を行う必要があります。
青色申告の特徴
青色申告の最大の特徴は、複式簿記による詳細な記帳が求められる点です。これにより、事業の財務状況を正確に把握することが可能となります。また、青色申告を採用することで、以下のような節税効果を享受できます。
- 青色申告特別控除(最大65万円)
- 欠損金の繰越控除(最大10年間)
- 少額減価償却資産の特例(一括償却)
ただし、これらの特典を受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。また、記帳の手間や申告の手続きが煩雑になるというデメリットもあります。
青色申告の手続き
青色申告を採用するためには、事前に税務署に申請し、承認を得る必要があります。個人事業主の場合、事業を開始した日から2ヶ月以内に、「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。
法人の場合は、設立後最初の事業年度開始前日までに、「法人税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。いずれの場合も、申請が承認されると、「青色申告承認通知書」が発行されます。
青色申告を採用した後は、帳簿や書類の保存義務が生じます。これらの書類は、原則として7年間保存しなければなりません。また、申告期限は、個人事業主の場合は毎年3月15日、法人の場合は事業年度終了後2ヶ月以内となっています。
白色申告と青色申告の違い
白色申告と青色申告は、個人事業主や法人が確定申告を行う際の制度です。両者には、記帳方式や申告手続き、税務上の特典などにいくつかの違いがあります。
ここでは、白色申告と青色申告の主な違いについて、詳しく解説していきましょう。
記帳方式の違い
白色申告と青色申告では、記帳方式に違いがあります。白色申告では、シンプルな単式簿記による記帳が認められています。一方、青色申告では、借方と貸方を使用した複式簿記による記帳が必要となります。
単式簿記は、取引の発生順に収入と支出を記録する方式です。複式簿記は、取引を借方と貸方に分けて記録し、両者が一致することで正確性を保証する方式といえます。
申告手続きの違い
白色申告と青色申告では、申告手続きにも違いがあります。白色申告の場合、特別な事前手続きは不要です。一方、青色申告を行うためには、事業年度開始前日までに税務署に申請する必要があります。
また、申告期限は両者ともに決算日から2ヶ月以内ですが、株式会社の場合は株主総会の承認後となります。なお、期限延長申請を行うことも可能でしょう。
税務上の特典の違い
白色申告と青色申告では、税務上の特典にも大きな違いがあります。白色申告の場合、特別な節税効果はなく、基本的な経費計上のみが認められています。
一方、青色申告では以下のような特典があります。
- 欠損金の繰越控除:最大10年間の繰越が可能
- 欠損金の繰戻し還付:資本金1億円以下の中小企業が対象で、当期の赤字を前期の黒字と相殺可能
- 少額減価償却資産の特例:30万円未満の資産を一括経費計上可能(年間300万円まで)
このように、青色申告の方が節税効果が高いといえるでしょう。
必要書類と保存期間の違い
白色申告と青色申告では、必要な書類と保存期間にも違いがあります。両者に共通する保存期間は、帳簿が7年間、その他の書類が5年間です。
白色申告に必要な書類は、現金出納帳、売上帳、経費帳などの基本的な帳簿です。一方、青色申告では、仕訳帳や総勘定元帳などの基本帳簿に加え、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳などの補助簿も必要となります。
つまり、青色申告の方が準備すべき書類が多いことがわかります。
白色申告のメリット
確定申告の中でも「白色申告」は、手続きの簡単さやコスト面で多くのメリットがあります。
記帳の簡便性
白色申告のもう一つの魅力は、記帳作業の簡便性です。青色申告では複式簿記という借方・貸方の概念に基づいた記帳が求められますが、白色申告ではそこまでの厳密さは要求されません。
現金出納帳、売上帳、経費帳といった基本的な帳簿の作成で十分なのです。専門的な会計知識がなくとも、日々の収支を記録していくだけで対応可能でしょう。記帳・会計業務の負担を最小限に抑えたい個人事業主にとって、白色申告はとても魅力的な選択肢となります。
事前準備不要
先にも触れましたが、白色申告の大きなメリットの一つが事前準備が不要なことです。青色申告を行うためには、事業年度開始前日までに所轄税務署への申請が必要となります。
一方、白色申告にはそのような事前手続きは一切ありません。事業を始めたいと思ったら、すぐに開業届を提出して実際の運営に入ることができるのです。煩雑な事前準備なしに、スピーディーに開業できるのは白色申告ならではの利点でしょう。
白色申告のデメリット
税務上の特典が少ない
白色申告は青色申告と比較して、税務上の特典が限られています。青色申告には欠損金の繰越控除や少額減価償却資産の特例など、節税効果のある制度が複数ありますが、白色申告にはそのような特典はほとんどありません。
欠損金の繰越控除とは、当期の赤字を最大10年間繰り越して、将来の黒字と相殺できる制度です。また、少額減価償却資産の特例は、30万円未満の資産を一括で経費計上できる制度で、年間300万円までの利用が可能です。これらの特典は青色申告のみに適用され、白色申告では利用できません。
そのため、白色申告を選択すると、事業から生じた赤字を有効活用できず、節税効果を十分に享受できない可能性があります。事業規模が大きくなるほど、この差は無視できないものになります。
正確な所得把握が困難
白色申告は単式簿記による記帳が基本となるため、正確な所得把握が難しいというデメリットがあります。単式簿記は簡易的な記帳方式で、現金の収支のみを記録するため、資産や負債の状況が把握しづらくなります。
一方、青色申告では複式簿記が採用されており、資産、負債、資本、収益、費用を網羅的に記録します。これにより、企業の財務状況を正確に把握することができ、適切な経営判断につなげられます。
正確な所得把握ができないと、適切な税金計算が難しくなるだけでなく、資金繰りの予測も立てづらくなります。事業の成長や安定経営のためには、正確な財務情報が不可欠といえるでしょう。
信憑性の低さ
白色申告は税務署から見ると信憑性が低いとされています。白色申告の場合、帳簿の保存義務がなく、税務調査の際に適切な書類を提示できない可能性があるためです。
一方、青色申告は複式簿記による記帳が義務付けられ、仕訳帳、総勘定元帳などの基本帳簿に加え、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳などの補助簿の保存が必要です。これらの帳簿類を適切に保存していれば、税務調査の際にも信憑性の高い資料として認められます。
事業の信用を高め、金融機関からの借入れや取引先との契約などを有利に進めるためには、信憑性の高い青色申告を選択することが賢明だといえるでしょう。白色申告では、事業の信用力が低く評価される可能性があります。
まとめ
本記事では、白色申告と青色申告の特徴や違いについて詳しく解説してきました。帳簿のつけ方や申告手続きの流れ、節税効果の有無など、申告方式選択の際に知っておくべきポイントを網羅的に紹介しています。
申告方式の選択は、事業の規模や将来展望を見据えて慎重に行うことが大切です。白色申告と青色申告、それぞれのメリット・デメリットをしっかり理解した上で、自社に最適な方式を選びましょう。面倒な記帳作業は、会計ソフトの活用や専門家への相談なども検討しましょう。