2024.12.06
クラウドファンディングの資金調達方法を解説
近年、メジャーになりつつある資金調達方法に「クラウドファンディング」があります。一般的な資金調達方法とは異なるメリット・デメリットがあり、正しく活用することで高い効果が期待できる方法です。
クラウドファンディングとは?クラウドファンディングの種類
ごく新しい資金調達方法のひとつに「クラウドファンディング」があります。まずは、クラウドファンディングの基礎知識からみていきましょう。
クラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは、「クラウド=群衆」と「ファンディング=資金調達」を合わせた造語であり、文字通り「不特定多数の人を対象に資金を調達すること」を意味します。
現在、クラウドファンディングはインターネットを通じて利用するのが一般的です。日本でも、2011年にCAMPFIREやREADYFORがプラットフォームを立ち上げてから急速に普及しています。
このため、ごく新しい資金調達方法のように思われがちですが、実際には非常に古い歴史があります。その源流をたずねると、ヨーロッパでは数世紀前にさかのぼるといわれ、日本でも明治時代にクラウドファンディングに近い方法で資金調達を実施した記録が残っています。
歴史の浅い手法であれば浸透にも時間がかかりますが、クラウドファンディングには古い歴史があります。昔の人々にも利用されただけに、仕組みは複雑ではなく、資金を調達する側も、資金を提供する側も利用のハードルが低い方法です。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングは、不特定多数から資金の提供を受けます。このとき、資金の性質やリターンの設定などにより、クラウドファンディングの形式は「投資型」と「非投資型」の2つに分かれます。
投資型
投資型のクラウドファンディングを更に分類すると、以下の3タイプに分けることができます。
株式型
株式型は、株式を発行して購入を募るものです。未公開株の売却によって資金調達するため、支援者は高いリスクを負う必要があります。
しかし、購入した株式が大化けする可能性もあります。また、少額から購入できる点でも人気を集めています。
事業主側は、将来性をアピールしなければ資金調達に失敗します。このため、株式型は新しい商品やサービスを手掛けるベンチャー企業に適した方法です。
貸付型
貸付型は、クラウドから借入れを募る方法です。「融資」といえば、一般的に金融機関からの借入れであり、借入先が特定少数に限られます。これに対し、貸付型では貸し手が不特定多数になるわけです。
この方法では、支援者に融資を募り、集まった資金を事業主に貸し付けます。支援者は利息収入を求めており、プラットフォームへの仲介手数料も生じるため、事業主側の資金調達コストは高くつくことが多いです。
ファンド型
ファンド型は、投資機関への出資と似ています。クラウドファンディング業者がファンドの役割を担い、支援者から集めた資金をプロジェクトや事業に投資します。首尾よく利益が出たならば、出資した支援者は利益の分配を受けることができます。
クラウドファンディングには様々なプロジェクトが立ち上げられ、実現性の判断が難しいことも多いです。ファンド型は、自分で選んで失敗したくないと考える人に人気です。
非投資型
クラウドファンディングには非投資型もあります。
寄付型
非投資型クラウドファンディングの中でも、特に分かりやすいのが寄付型です。寄付型とは、その名の通りプロジェクトや事業にお金を寄付し、リターンを何も求めない方法です。
投資型はリターンを重視するため、「クラウドファンディング=投資の一種」のイメージを持つ人もいます。そのような人には、寄付型の存在意義が分からないかもしれません。
しかし、社会的意義が大きいプロジェクトや事業であれば、リターンはなくとも応援したいと考える人は意外に多いものです。寄付型もクラウドファンディングの主流のひとつとなっています。
購入型
購入型は、クラウドファンディングを通じて事業主の商品やサービスを購入し、支援するものです。購入によって支援するため、商品・サービスがリターンとなります。
一般的には、
- 商品やサービスのアイデアを提案し、出資を募る
- クラウドからの調達資金によって事業を開始する
- 事業が成功する(商品やサービスの開発・提供が開始する)
- 出資したクラウドに商品・サービスが付与される
という流れになります。
クラウドファンディングのメリット・デメリット
他の資金調達方法と同じく、クラウドファンディングにもメリットとデメリットがあります。クラウドファンディング特有のデメリットもあるため注意が必要です。
クラウドファンディングのメリット
まず、クラウドファンディングのメリットを3つ紹介します。
誰でも資金調達できる
クラウドファンディングは、誰にとっても利用しやすい方法です。法人・個人を問わずに利用できます。
資金を募る際、支援者は銀行やベンチャーキャピタルのように財務内容や過去の業績などを評価するのではなく、
- 事業内容
- 社会的意義
- リターン
などを重視します。社会的意義が大きい事業や、多くの人に「面白い」と感じられる事業であれば、好条件での資金調達も可能です。
実績や肩書きのない個人や、経営悪化に苦しむ会社でさえ、資金調達できる可能性があります。
PRになる
クラウドファンディングを通じて、PRにつながることも多いです。
これは、新商品・サービスの展開を考えている起業家や会社にとって、大きなメリットとなります。
例えば、新商品の開発資金などをクラウドファンディングで調達すれば、募集を通じてプロジェクトを周知できます。資金調達後、プロジェクトの進捗状況を報告することで、支援者との距離が近くなり、プロジェクト完了までに多くのファン、固定客を獲得できるケースも少なくありません。
本来、新商品・サービスの展開には多額の宣伝広告費がかかります。クラウドファンディングの活用によって、コストを掛けずにPRできることは大きなメリットです。
リターンの設定が自由
上記のように、クラウドファンディングは複数の形式から選択ができます。形式によってリターンが異なることもメリットです。
ほとんどの資金調達方法では、「利息の支払い」「資産の譲渡」「配当金の分配」など、リターンが決まっています。
これに対し、クラウドファンディングは「株式の売却」「利息の支払い」「商品の提供」など、選択肢が複数あります。事業内容や資金繰りを考慮し、負担の少ない方法を選ぶこともでき、場合によっては寄付型のように「リターンなし」も選択可能となります。
クラウドファンディングのデメリット
ただし、クラウドファンディングには以下のようなデメリットがあります。
手間がかかる
クラウドファンディングによる資金調達は、手間がかかります。
銀行融資であれば、決算書の内容が良い場合や、担保や保証によって保全が充足する場合には容易に資金を調達できます。しかし、クラウドファンディングでは支援者を納得させる必要があります。
事業計画を詳しく説明し、支援を訴えるために綿密なプランが欠かせません。ここで手を抜くと必要資金が集まらない可能性があるため、手間がかかることは覚悟してください。
プロジェクトを公開する必要がある
プロジェクトや事業を説明するために、手間をかけて詳しい資料を作成し、不特定多数に公開する。この流れはクラウドファンディングには必要不可欠です。
しかし、これによって競合他社に事業計画やアイデアを知られる危険性があります。他社がアイデアを奪い、自社より先に製品化することもあり得ます。
また、ここからヒントを得た個人や会社が、より優れたプロジェクトを立ち上げることも考えられます。その場合、自社のプロジェクトが陳腐化し、価値を失うかもしれません。
返済負担が大きくなることも
複数の中からリターンを選べることはメリットですが、同時にデメリットにもなり得ます。自社に不向きなリターンを選んでしまえば、他の資金調達方法より負担が大きくなる可能性もあるのです。
クラウドファンディングで資金調達する全体の流れ
クラウドファンディングには複数のタイプがありますが、基本的な流れは共通しています。
大まかな流れは以下の通りです。
- クラウドファンディングサービスを選び、ホームページなどで利用を申し込む。入力フォームでプロジェクトのカテゴリや事業の詳細、目標調達額などを入力するのが一般的
- プロジェクトや事業の健全性や内容について、審査が実施される
- 審査に合格した場合、業者の担当者と打ち合わせを行い、プロジェクトページを作成する
- プロジェクトページ完成後、プラットフォームで公開する。公開後、資金調達が実際に開始される
- 募集期間中、必要に応じてPRを行い情報の拡散を図る
- 募集の終了(目標調達額の達成、募集期間の終了など)
細かな流れはクラウドファンディング業者によって異なります。特に、プロジェクト掲載時の必要情報や審査内容、リターンの設定などが異なるため、事前によく確認しておきましょう。
資金調達におすすめのクラウドファンディングのサービス
資金調達に役立つクラウドファンディングサービスは多数ありますが、特におすすめのサービスを3つ紹介します。
Makuake
Makuakeは、購入型のプロジェクトのみを取り扱うクラウドファンディングサービスです。2020年7月時点のプロジェクト掲載総数は1万件、資金調達総額は200億円にのぼります。
毎月、平均400件のプロジェクトが掲載されています。審査日数は3~5営業日程度、資金調達の成功率は75.8%です。対応がスピーディであることや、成功率が高いことから人気を集めています。
ただし、利用手数料は20%の設定ですから、他のサービスよりやや高い傾向があります。
READYFOR
READYFORは、日本初のクラウドファンディングサービスとして有名です。購入型と寄付型のプロジェクトに対応しています。
審査日数は2~3日であり、他のサービスと比較してスピーディです。ただし、資金調達の成功率は63.7%にとどまります。
成功率を高めるには、フルサポートプランの利用がおすすめです。フルサポートプランでは、専任の担当者がスケジュール管理、広報活動や企画戦略の支援などを個別に行っており、クラウドファンディングの利用経験がない人でも安心して利用できます。
MotionGallery
MotionGalleryも、クラウドファンディング黎明期である2011年にスタートしたサービスです。購入型に特化しています。
日米両国で資金調達できるほか、自治体をはじめとする様々なパートナーを獲得しており、多方面への情報発信に強みがあります。過去には3.3億円の資金調達を達成したプロジェクトもあるほどです。
利用手数料を10%に抑えていることも、他のサービスに比べて大きなメリットといえます。
審査日数は7日以内ですから、他のサービスよりもやや遅い印象があります。しかし、調達コストやPR効果などを考えると、さほど問題にはならないはずです。
クラウドファンディングで資金調達する際の注意点
ここまでの内容から、クラウドファンディングに興味を持った人も多いことでしょう。実際にクラウドファンディングに取り組む際には、以下の3点に注意してください。
余裕をもって取り組む
クラウドファンディングの難しさは、計画の立てにくさにあります。
募集期間中に目標金額の調達に成功する保証はなく、計画的な資金調達が困難です。もちろん、緊急の資金調達にも不向きです。
時間をかけて募集した結果、目標に到達せずにプロジェクトが取り下げになった場合、他の方法で資金調達を図らねばならず、想像以上の時間を要する可能性があります。
したがって、クラウドファンディングを利用する際には、余裕を持って取り組むことが大切です。
管理コストを事前に計算する
クラウドファンディングを利用した結果、負担に苦しむケースがあります。これは、資金調達後の管理コストによるものです。例えば、資金調達後、
- リターンとなる商品やサービスの発送
- 分配金の振込
- プロジェクトの進捗報告
などが必要です。これによって業務負担が増加し、支出が膨らむことも多いです。これらの管理コストを事前によく計算しておかなければ、プロジェクトに支障をきたす恐れがあります。
特に、支援者が多いほど管理コストが膨らむため注意してください。
闇雲にプロジェクトを立ち上げない
クラウドファンディングには、
- All or Nothing方式
- All In方式
の2種類があります。All or Nothing方式の場合、募集期間内に目標金額を達成できなければ、集まった資金を全て返金します。資金を受け取らないため、支援者に対して何らかの義務を負うこともありません。
もちろん、目標金額を達成すれば支援金を受け取り、プロジェクトを実施する義務を負います。
All In方式の場合、特に注意が必要です。All In方式では、目標金額を達成できなかった場合にも、集まった資金だけ受け取ります。支援者がたった1人であっても、その1人のためにプロジェクトを開始しなければなりません。
どちらの場合にも、プロジェクトを開始すれば簡単に手を引くことはできません。プロジェクトが失敗すれば、社会的信用を失う可能性もあります。
ちなみにクラウドファンディングで得た資金は税金の対象?
最後に、クラウドファンディングの税制について確認しておきましょう。
クラウドファンディングで調達した資金には、税金がかかります。ただし、
- 資金調達するのは個人か、法人か
- クラウドファンディングの方式はどれを選ぶか
によって課税ルールが異なります。
もっとも、多くの場合には共通しており、さほど複雑ではありません。簡単にまとめると、以下の図の通りです。
投資型 | 非投資型 | |||||
起案者 | 支援者 | 株式型 | 貸付型 | ファンド型 | 購入型 | 寄付型 |
個人 | 個人 | 所得税 | 贈与税 | |||
法人 | 所得税 | |||||
法人 | 個人 | 法人税 | ||||
法人 |
実際の税務処理については、税理士に依頼することをおすすめします。
まとめ
本稿では、クラウドファンディングの基本的な仕組みから実際の利用方法まで、詳しく解説しました。
資金調達の基本は銀行融資であり、クラウドファンディングは安定的・継続的な資金調達には不向きです。また、緊急の資金需要に対応する方法ではないため、利用できるケースは限られています。
とはいえ、正しく活用することで調達コストを抑えることができ、PRにも役立ちます。利用できる機会を積極的に探ってみてください。