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債権譲渡とは?仕組みやメリット、注意点、回収方法を解説

事業を進めるうえで売掛金や貸付金など、さまざまな債権を適切に管理することはとても重要です。とくに資金繰りを迅速に行う必要があるとき、債権を第三者に譲渡して現金化を図る方法が注目されています。

ここでは債権譲渡とはどのような仕組みで、どのような状況で活用されるのかを詳しく説明します。あわせてメリットやデメリット、注意すべき点や回収方法など、実務で役立つ知識も整理します。

債権譲渡の基本的な流れ

債権譲渡は、債権を第三者に移転する行為です。これを活用することで、債権を早期に資金化することができます。また、債権譲渡は厳正な法的手続きであるため、仕組みを理解し、対象債権が譲渡可能であるかを事前に確かめることが大切です。

債権譲渡とは何か

債権譲渡とは、売掛金などの債権を保有している者が、その権利を他の人へ移す手続きです。たとえば、A社がB社に対して有する100万円の売掛金債権を、C社へ譲り渡すことで、C社がB社に請求できるようになります。これにより本来の債権者であるA社は、債権という「権利」を譲渡価格として早期に資金化できます。

譲渡人は当初の債権者であり、譲受人は新しく債権を取得する立場を指します。債務者は、もともと売掛金や借入金を返す義務がある側です。適切な手続きを踏むことで、譲受人は正当に債務者への請求権を得ることが可能です。

このように、保有している権利を他者に移転する行為は民法によって認められています。具体的には民法466条で「債権の譲渡は原則自由」と規定されており、債権を資金調達手段として活用する基盤となっています。

ただし、債権の性質上譲渡できないものや、法律で譲渡が禁止されているものもあるため、事前に対象債権が譲渡可能かを確認しましょう。

法的背景と通知の重要性

債権譲渡とは、契約書や合意だけでは完結しません。第三債務者である債務者に対して、通知や承諾を得る必要があるためです。通知や承諾がなければ、債務者が見知らぬ相手にお金を支払う義務があるかどうか分からなくなり、トラブルの原因となります。

また、二重譲渡という、同一の債権を複数の相手方に譲る行為が発生した場合、どちらが優先権をもつかを決めるために、確定日付の備わった通知または承諾が必要です。債権譲渡登記を行うことでも第三者対抗要件を具備できます。

債権譲渡を扱う際は、譲渡契約締結と並行して速やかに債務者への通知を済ませましょう。特に、ファクタリング業者が絡む場合は、手続きの流れがシステム化されていますが、自社で譲渡する場合には法的要件の確認が欠かせません。

通知に不備があると、譲受人が正当な権利を主張できないリスクが高まります。債務者が混乱せずスムーズに支払いを行えるよう、譲渡の事実を明確に伝えましょう。

具体例と民法上のルール

たとえば、A社がB社へ貸し付けている金銭債権を、C社へ譲渡するとします。このとき、A社とC社は売買取引のように契約を交わし、B社へ「今後の返済先はC社になる」旨を通知します。B社が承諾すれば、C社がB社に請求できる状態が完成します。

民法466条で原則的に債権譲渡が認められている一方で、466条の但書では「債権の性質が譲渡を許さない場合」は無効となります。扶養請求など、個人に密接に関連する権利は譲渡が禁止される代表例です。対象債権の性質を確認することは欠かせません。

また、契約書で譲渡制限特約が定められた債権についても、第三者に通知または承諾を得た日付の確定が重要となります。悪意または重過失のある譲受人に対しては、債務者が支払いを拒むことができるため注意が必要です。

このように法的な背景を整理しておくことで、債権の正当な譲渡とスムーズな回収が見込めます。契約を交わす段階で、債務者の同意や通知の手順に気を配りましょう。

どんな場面で活用されるか

債権を第三者に譲渡する方法は、事業に関わる資金繰りを円滑にする有効な手段です。早期の資金化によって、キャッシュフローの改善やリスクの分散が期待できます。また担保を設定することによって、信用の向上を図ることも可能です。

売掛金を早期に現金化する

事業活動では、取引先へ商品やサービスを提供したあと、売掛金として一定の支払いサイトを設けるケースが多くみられます。通常の支払期日を待たずに資金を回収できれば、キャッシュフローを大幅に改善できます。

そこで利用されるのが、ファクタリングを含む売掛債権譲渡です。たとえば、A社がB社に対する売掛金100万円を、まだ弁済期に至らない段階でファクタリング会社に95万円で譲渡すれば、迅速に手元資金を確保できます。こうした流動化の選択肢は、中小企業や個人事業主にとって頼もしい支えとなるでしょう。

この方法を活用する場合は、売掛先の企業への通知が必要となる場合が多く、契約の際に、売掛先の承諾を得ることが重要です。また譲渡に伴う手数料や割引率を事前に理解することで、期待される資金調達額を誤らないようにしましょう。

早期資金化によって外部の銀行融資に頼らずに資金を調達できるため、リスク分散にもつながります。「少し資金が足りないが、銀行借入をするほどではない」という場合に有効といえます。

不良債権の処分でリスク回避

売掛金が回収困難になってしまった場合、債権者としては相手に支払い能力がないか、あるいは姿をくらましているかといった問題に直面することがあります。こうした不良債権を放置すると、バランスシート上の資産として計上され続け(不良債権化)、経営判断を誤る可能性があります。

そこで、回収の見込みが低い債権をサービサーなど債権回収会社に安価で譲渡し、わずかでも現金を回収する手段があります。ここでのポイントは、回収が難しい債権を一定の金額に置き換えることで、経営リスクを軽減することです。

たとえば、B社が貸付債権1000万円を200万円で回収会社に譲渡すれば、手元に200万円が入ると同時に、追加の催促や法的手続きを回収会社(サービサーなど)に一任できます。自社で回収活動を続ける労力やコストを削減できるため、経営資源を別の部分に集中させることができます。

ただし、譲渡価格は額面より大幅に下がることが一般的なので、どの段階で不良債権の譲渡を決断するかが経営上の判断材料になります。

担保としての利用で融資条件を改善

資金繰りに余裕をもたせるため、銀行や取引先から融資を受けたい状況で、あまり担保にできる不動産や有価証券がない場合も考えられます。そのときに、売掛金など将来の入金が見込まれる債権を担保として提供する方法があります(債権担保融資)。

たとえば、C社がD社に対して行う借入をする際、E社に対する売掛金債権を担保としてD社に譲渡するといったかたちです。担保設定による信用力の向上が見込めれば、融資条件の改善や金利の引き下げが期待できる可能性があります。

この場合も、債務者であるE社への通知が必要となるため、スムーズに進めるには契約書上で譲渡に関する条項を整備しておくとよいでしょう。特に大手企業が相手の場合、譲渡制限特約が含まれているケースもあるので、事前の交渉が欠かせません。

融資を受けるための担保として活用する際は、融資先に提出する書類や債権の評価額など、煩雑な手続きが絡む場合もあります。自社の財務状況や、相手先との関係性を踏まえながら判断しましょう。

どんなメリットがあるのか

債権を譲渡することで、資金繰りを安定させたり負担を軽減させたりすることができ、経営者にとって大きな恩恵を得ることができます。

資金繰りを安定させやすい

本来の入金時期を待たずに資金を回収できるため、日々の経費支払いなどで現金が必要なときに役立ちます。支払期日の長い売掛金を保有していても、すぐに現金を手にすることで経営の安定度を高めることが可能です。

たとえば決算期前に資金を確保したり、突然の受注拡大で仕入れ資金が必要になったりした場合に柔軟に対応できます。タイミングを逃さない資金調達を行うことで、ビジネスチャンスを拡大することができるでしょう。

また、実績のあるファクタリング会社や投資家に譲渡すれば、貸倒れリスクから解放されることも大きなメリットです。未回収リスクに気を使う必要が少なくなるため、経営者としては別の新事業やマーケティング戦略に集中しやすくなります。

結果的に売上計画の達成度合いを安定させやすく、資金繰り表の見通しを改善できる点が評価されています。

回収不能リスクからの解放

事業を続けている以上、取引先が急に資金難に陥って支払いが滞る事態は十分に起こり得ます。こうした場合、時間をかけて支払を待ったり、法的手段を取ったりしなければならず、経営上の大きな負担となります。

そこで、債権を回収会社やファクタリング業者に譲渡してしまえば、回収不能リスクを一定程度切り離せます。負担の軽減によって、経営者は新たな顧客開拓やサービス開発など、本来の業務に注力できます。

特に、不良債権化したものを抱えている場合、業者へ譲渡することで督促や法的対応の手間を外部に任せられます。自社で対応しきれない場合や、時間をかけたくないときに有効な方法です。

ただし、債権譲渡の価格は額面より低くなることが一般的なので、経営判断として譲渡すべきタイミングを慎重に見極める必要があります。

どんなデメリットがあるのか

一方で、債権譲渡にはデメリットも存在します。譲渡価格の割安になってしまうことや取引先との関係を損ねる可能性など、様々なリスクを考慮して慎重に行う必要があります。

譲渡価格の下落

債権を譲渡するとき、通常額面よりも安い価格で取引されます。譲渡先企業は、リスクを抱えながら将来の回収を行うため、譲渡価格には割引がつくわけです。

たとえば100万円の売掛金を譲渡する際、95万円や90万円などでしか買い取ってもらえないのはざらです。売掛金を満額で受け取れないというのは、短期的な資金ニーズを満たすために割り切って受け止める必要があります。

また、不良債権として売却する場合は、さらに低い価格が提示される場合があります。どの程度の現金化が見込めるかを事前に複数社から見積もりを取り、比較検討するのが望ましいものです。

特にファクタリング会社によっては、手数料やサービス内容に違いがあるため、事前調査をしっかり行いましょう。

取引先からの信用低下リスク

売掛債権を第三者に譲る行為は、取引先から見ると「自社への信頼が薄いのではないか」という印象を与える恐れがあります。場合によっては、取引量の減少や支払い条件の不利な変更を招くこともあるかもしれません。

特に継続的な取引が多い企業同士の場合、売掛債権の債権譲渡に踏み切るタイミングや伝え方を慎重に考える必要があります。相互の信頼関係を損なわないためにも、事前の説明と合意が欠かせません。

ただし大企業の場合、すでにファクタリングの慣習が浸透していることもあり、債権を譲渡する行為自体にそれほど抵抗をもたないケースが増えています。あくまでビジネス上の資金調達手法の一つとして理解されることもあります。

それでも、取引先の事情を無視して強行すると関係悪化につながるため、導入にあたっては必ず取引先の姿勢や将来の取引方針を確認しておくほうが無難です。

どんな点に注意すべきか

資金調達やリスク回避の手段として魅力的な債権譲渡ですが、法的な側面や契約の取り扱いなど、注意点を整理しておくことが大切です。

譲渡制限や二重譲渡に関する対策

取引基本契約書などで、「譲渡を禁止または制限する」旨の条項が設定されている場合があります。この譲渡制限特約は、債権をむやみに第三者へ移されるのを防ぐためのものです。

ただし、民法466条2項の規定により、譲渡制限特約があっても債権を譲渡すること自体は有効とされています。一方、譲受人が悪意や重過失でその特約を知りながら譲り受けた場合、債務者は支払いを拒むことができます。自社に不利にならないよう整理しておきたいところです。

また、二重譲渡が起きると複数の譲受人が同じ債権を主張する混乱が生じます。対抗要件として、債権譲渡登記や確定日付のある通知が不可欠となるため、契約締結後はできるだけ早く手続きを済ませましょう。

このように、事前のリスク管理と手続きの適切な実施によって、二重譲渡や譲渡制限条項に関するトラブルを防ぐことができます。

債権の有効性や時効の確認

譲渡対象の債権が本当に存在するかどうか、すでに時効によって消滅していないかなどの確認も欠かせません。万が一、時効が完成している債権を譲り受けた場合、譲受人としては回収不能という最悪の結果になります。

時効には民法改正を踏まえたルールが存在するため、取引先との契約日や支払期日、消滅時効の期間などをしっかり把握しておくべきです。時効の起算点に関しては、誤解しないように細心の注意を払いましょう。

また、契約書の書面内容や支払い条件に問題がないかもチェックが必要です。特に売掛金の場合は納品書や請求書のやり取り、契約書の明確化などが必須となります。

譲受側としてはデューデリジェンスをきちんと行い、弁護士や専門家を通じて債権の実在性や回収可能性を精査することが望ましくあります。

回収の進め方

最後に、譲り受けた債権をどのように回収していくのかを整理します。債務者の支払能力や法的手続きの正しさを確保することで、スムーズな回収が可能となります。

債務者の支払能力と事前確認

譲受人にとって最も大切なのは、債権の回収が実際にできるかどうかという点です。譲渡を受ける前段階で、対象債務者(第三債務者)が支払いを継続できるだけの財務基盤をもっているか、実際に確認するのが理想的です。

可能であれば、直近の財務諸表や経理状況を開示してもらうなどして、信頼性を高める方法もあります。事前調査の徹底は、回収の見通しを判断するうえで重要です。

もしも債務者が支払能力を失っていると判断した場合は、差し押さえ可能な資産や他の債権を保有しているかどうかを検討します。譲渡後に債務者が倒産したり行方不明になったりすれば、回収活動そのものが大きく制限されるでしょう。

一方、支払能力が十分あると判断した場合は、スムーズな支払いを期待できます。通知や承諾を済ませたら、指定の期日に適切な金額が入金されるかを追跡管理しながら、回収を完了させます。

対抗要件を確実に備える重要性

前述のとおり、債権の譲渡契約だけでは、債務者に対して確実な請求権を主張できません。法的に保護を受けるために、通知または承諾、そして確定日付が重要となります。

特に二重譲渡が疑われる場合や、他の債権者が同じ相手に競合債権をもっている場合などは、債権譲渡登記や公証役場での日付確定が必須です。先に手続きを済ませることで、優先的に回収できる可能性が高まります。

もし通知や承諾が遅れた場合、債務者がすでに譲渡人へ弁済してしまうと、譲受人は回収できない状況に陥ります。書類の準備を怠らず、譲渡を決定したらすぐに手続きに取りかかる姿勢が大切です。

また、預貯金債権など特別な性質をもつ債権では、金融機関とのやり取りや必要書類が異なる場合があります。対象債権の種類に応じた手続きも、事前に把握しておきましょう。

まとめ

債権を譲渡することで、早期資金化や不良債権処分、担保活用など多様なメリットを得られる一方、譲渡価格が下落したり信用面で懸念が生じたりするリスクもあります。民法の規定や契約条件をしっかり押さえれば、トラブルは回避しやすくなるでしょう。

自社の状況に合わせて最適な方法を選択し、必要に応じて専門家へ相談してください。適切な債権譲渡の活用は、より安定した事業運営とキャッシュフローの改善につながります。

また、債権譲渡は多様なメリットがある分、最終手段とも言えます。ファクタリングの検討の前に、ぜひ一度、ビジネスローンの活用をご検討ください!

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監修者 三坂大作
監修者紹介
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役
三坂 大作(ミサカ ダイサク)

経歴
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1989年 同行ニューヨーク支店勤務
1992年 三菱銀行退社、資金調達の専門家として独立
資格・認定
経営革新等支援機関:認定支援機関ID:1078130011
ヒューマントラスト株式会社:資格者 三坂大作
貸金業登録番号:東京都知事(1)第31997号
ヒューマントラスト株式会社:事業名 HTファイナンス
貸金業務取扱主任者:資格者 三坂大作
資金調達の専門家として企業の成長を支援
資金調達の専門家として長年にわたり企業の成長をサポートしてきました。東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し、国内業務を経験した後、1989年にニューヨーク支店へ赴任し、国際金融業務に従事。これまで培ってきた金融知識とグローバルな視点を活かし、経営者の力になることを使命として1992年に独立。以来、資金調達や財務戦略のプロフェッショナルとして、多くの企業の財務基盤強化を支援しています。 現在は、ヒューマントラスト株式会社の統括責任者・取締役として、企業の資金調達、ファイナンス事業、個人事業主向けファクタリング、経営コンサルティングなど、多岐にわたる事業を展開。特に、経営革新等支援機関(認定支援機関ID:1078130011)として、企業の持続的成長を実現するための財務戦略策定や資金調達のアドバイスを提供しています。また、東京都知事からの貸金業登録(登録番号:東京都知事(1)第31997号)を受け、適正な金融サービスの提供にも力を注いでいます。
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