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債権譲渡に消費税はかかる?かからない?課税取引の基準をもとに丁寧に解説

事業を営む中で、資金繰りの改善や債権の流動化を目的として、「債権譲渡」を検討する方は少なくありません。しかし、その際に「債権譲渡には消費税がかかるのだろうか?」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。税務上の取り扱いを正しく把握しておかなければ、予期せぬコストが生じたり、申告時にトラブルが発生したりする可能性があります。

本記事では、債権譲渡における消費税の課税・非課税の基準をわかりやすく解説します。債権譲渡自体の消費税の扱いから、ファクタリングに関連する消費税の考え方、さらには債権譲渡に伴う各種費用の消費税の取り扱いまで、経営者が押さえておくべきポイントを詳しくお伝えします。

債権譲渡と消費税の基本的な関係

債権譲渡と消費税の関係を理解する前に、まずはそれぞれの基本を押さえておきましょう。

債権譲渡とは

債権譲渡は、債権者が持つ債権(お金を受け取る権利)を第三者に譲り渡す行為です。例えば、企業Aが企業Bに対して100万円の売掛金を持っている場合、企業Aがその売掛金債権を、企業Cに譲渡することができます。

債権譲渡は、資金繰りの改善、不良債権の処理、債権の流動化などさまざまな目的で活用されます。特に中小企業にとっては、即座に資金化できるファクタリングなどが、重要な資金調達手段となっています。

債権譲渡は金融取引の一種であり、その性質は単なる商品やサービスの提供とは異なります。この点が、消費税の取り扱いに大きく影響しています。

消費税が課税される取引

消費税は、国内において事業者が行う資産の譲渡や貸付け、サービスの提供などの取引に対して課される税金です。ただし、すべての取引に消費税がかかるわけではありません。

消費税法では、非課税取引として特定の取引を指定しています。代表的なものとしては、医療、教育、福祉サービスなどがあります。そして、金融取引や資本取引の多くも非課税取引として扱われます。

消費税が課税されるか非課税かの判断は、取引の性質によって決まります。商品やサービスの提供という性質を持つものは原則として課税対象となりますが、金銭の貸し借りや資本の移転については非課税となることが一般的です。

債権譲渡は原則として非課税取引

債権譲渡は、基本的に「金銭債権の譲渡」に該当するため、消費税法上は非課税取引として扱われます。消費税法別表第一において、「金銭債権の譲渡」は非課税取引として明記されています。

これは、債権譲渡が本質的には「お金を受け取る権利」の移転であり、新たな価値の創出や商品・サービスの提供ではないという考え方に基づいています。例えば、売掛金の譲渡を考えると、元の売上時点ですでに消費税が課されているため、その債権を譲渡する際に再び消費税を課すと、二重課税になってしまいます。

債権譲渡自体は非課税という原則を押さえておくことが、債権譲渡を行う際の会計処理や税務処理の基本となります。

債権譲渡の種類による消費税の扱いの違い

債権譲渡にはいくつかの種類があり、その形態によって消費税の取り扱いに微妙な違いが生じることがあります。

一般的な債権譲渡における消費税

一般的な債権譲渡は、債権者が債務者に対して持つ金銭債権を、第三者に移転する行為です。この場合、債権譲渡自体は金銭債権の移転にあたるため、非課税取引となります。

例えば、会社Aが会社Bに対して持つ売掛金債権100万円を、資金調達のために会社Cに90万円で譲渡したとします。この債権譲渡行為自体には、消費税はかかりません。また、譲渡価格と債権額の差額である10万円は、会社Aにとっての譲渡損として計上されますが、これも消費税の対象外です。

譲渡価格と債権額の差額は非課税となるため、消費税の計算において考慮する必要がありません。この点は、特に資金繰りに関する計画を立てる際に重要なポイントです。

ファクタリングにおける消費税

ファクタリングは、企業が保有する売掛金などの債権を、専門業者(ファクター)に売却して、即座に資金化するサービスです。ファクタリングにおいても、債権譲渡自体は非課税取引です。

ファクタリングでは、債権額よりも低い金額で債権を買い取るため、その差額がファクタリング会社の利益(手数料や割引料と呼ばれる)となります。この差額も、金銭債権の譲渡に関連する対価であるため、基本的には非課税扱いとなります。

ただし、ファクタリング会社が提供するサービスの中には、債権の買取以外にも債権管理サービスや集金代行サービスなどが含まれる場合があります。これらの付随サービスは、別途課税対象となる可能性があるため、契約内容を確認することが重要です。

債権譲渡担保における消費税

債権譲渡担保は、融資を受ける際に債権を担保として金融機関に譲渡する方法です。この場合も、債権譲渡自体は金銭債権の移転として、非課税取引になります。

債権譲渡担保では、債務が完済されれば債権は債務者に戻るという約束のもとで、譲渡が行われます。これは実質的には担保の設定であり、法的には債権譲渡の形式を取っています。このような債権譲渡担保においても、譲渡行為自体には消費税はかかりません。

ただし、債権譲渡担保に関連して金融機関に支払う手数料や事務費用などは、別途課税対象となる可能性があります。関連費用の課税区分を把握しておくことで、正確な資金計画を立てることができます。

債権譲渡に関連する費用と消費税

債権譲渡自体は非課税ですが、債権譲渡に関連して発生する各種費用については、その性質によって消費税の課税・非課税が分かれます。

債権譲渡登記にかかる費用の消費税

債権譲渡を第三者に対抗するためには、債権譲渡登記を行うことが一般的です。この債権譲渡登記に関わる費用には、消費税がかかる場合があります。

債権譲渡登記の申請手数料自体は国に支払うもので、消費税は課されません。しかし、司法書士に依頼して債権譲渡登記の手続きを行う場合、その司法書士報酬には消費税がかかります。

例えば、司法書士に債権譲渡登記を依頼すると、基本報酬に加えて実費や出張費などが発生することがあります。これらの費用のうち、司法書士の役務提供の対価にあたる部分には、消費税が課税されます。

ファクタリングの手数料と消費税

ファクタリングを利用する際には、債権譲渡の対価(買取価格)と債権額の差額として手数料が発生します。この手数料の消費税の扱いについて、理解しておくことが重要です。

ファクタリング手数料は、一般的に二つの性質を持つ場合があります。一つは純粋な金利相当部分(割引料)であり、もう一つは事務手数料などのサービス提供に対する対価です。

金利相当部分(割引料)は、金銭債権の譲渡に関連する対価として非課税扱いとなりますが、事務手数料などのサービス提供に対する対価には、消費税がかかります。ファクタリング契約の内訳を確認することで、どの部分に消費税がかかるのかを正確に把握できます。

債権譲渡に伴う振込手数料と消費税

債権譲渡に伴って発生する振込手数料についても、消費税の取り扱いを理解しておく必要があります。

銀行などの金融機関に支払う振込手数料は、資金移動や決済というサービスの対価であるため、消費税の課税対象となります。例えば、債権譲渡の対価を受け取る際や、債権譲渡に関連する支払いを行う際の振込手数料には消費税がかかります。

ただし、実務上は振込手数料を含めた金額で取引することも多く、その場合は振込手数料に対する消費税も含めて考える必要があります。取引条件を明確にしておくことで、後々のトラブルを避けることができます。

債権譲渡の会計処理と消費税

債権譲渡を行った際の会計処理において、消費税をどのように扱うべきかを理解しておくことは重要です。正確な会計処理を行うための基本的な考え方を見ていきましょう。

債権譲渡時の仕訳と消費税の取り扱い

債権譲渡を行った際の基本的な仕訳では、債権譲渡自体が非課税取引であることを踏まえて処理します。例えば、100万円の売掛金債権を90万円で譲渡した場合の基本的な仕訳は、次のようになります。

借方 貸方
現金預金 900,000
譲渡損失 100,000
売掛金 1,000,000

この仕訳において、消費税は考慮されていません。なぜなら、債権譲渡自体が非課税取引だからです。譲渡価格と債権額の差額(この例では10万円)は譲渡損失として処理されますが、これも非課税取引の一部であるため、消費税の計算には含まれません。

非課税取引は課税売上割合の計算にも影響するため、債権譲渡を頻繁に行う事業者は、この点に注意する必要があります。

債権譲渡関連費用の経理処理

債権譲渡に関連して発生する費用の経理処理においては、各費用の消費税の課税・非課税を正確に判断して処理することが重要です。

例えば、債権譲渡登記を司法書士に依頼した場合、その報酬は課税対象となります。司法書士報酬が5万円で消費税が5,000円だった場合の仕訳は、次のようになります。

借方 貸方
支払手数料 50,000
仮払消費税 5,000
現金預金 55,000

一方、ファクタリング手数料のうち金利相当部分(割引料)は非課税であるため、消費税は計上しません。事務手数料など別途課税されるサービスについては、消費税を含めて計上します。

費用の性質に応じた正確な処理を行うことで、消費税の申告も適切に行うことができます。

消費税申告における債権譲渡の扱い

消費税の申告において、債権譲渡に関連する取引をどのように扱うべきかを理解することは重要です。

債権譲渡自体は非課税取引であるため、課税売上や課税仕入れとしては計上されません。消費税申告書の作成時には、債権譲渡による収入は非課税売上として扱い、課税標準額には含めません。

また、課税売上割合の計算においても、非課税売上である債権譲渡の金額が分母に含まれることになります。債権譲渡の金額が大きい場合、課税売上割合が下がり、控除できる仮払消費税額が減少する可能性があります。

税理士に相談して適切な申告を行うことで、消費税に関するリスクを最小化することができます。特に、債権譲渡を頻繁に行う事業者や、高額な債権譲渡を行う事業者は、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

ファクタリングにおける消費税の具体的事例

ファクタリングは、中小企業の資金調達手段として広く活用されていますが、消費税の取り扱いについては、具体的な事例を通じて理解を深めることが重要です。

2社間ファクタリングと消費税

2社間ファクタリングは、債権を持つ企業とファクタリング会社の間で直接取引を行うシンプルな形態です。この場合の消費税の取り扱いを見ていきましょう。

例えば、A社が持つ100万円の売掛金債権を、ファクタリング会社に90万円で譲渡したとします。この取引における債権譲渡自体は、非課税取引となります。そのため、90万円の譲渡対価に対して消費税はかかりません。

また、10万円の差額はファクタリング手数料(割引料)として扱われますが、これも金銭債権の譲渡に関連する対価として非課税となります。ただし、ファクタリング会社が別途、事務手数料3万円を請求した場合、この事務手数料には消費税がかかります。

取引内容を明確に区分することで、どの部分に消費税がかかるのかを正確に把握できます。

3社間ファクタリングと消費税

3社間ファクタリングは、債権者、債務者、ファクタリング会社の3者が関与する形態です。この場合も消費税の基本的な考え方は同じですが、取引構造がやや複雑になります。

例えば、B社がC社に対して持つ100万円の売掛金債権をファクタリング会社に譲渡し、ファクタリング会社がC社から直接回収する場合を考えます。B社がファクタリング会社から受け取る金額が90万円だとすると、この債権譲渡自体は非課税取引です。

3社間ファクタリングでは、ファクタリング会社が債権管理や回収サービスも提供することが多いため、これらのサービスに対する対価として、別途手数料が発生することがあります。この手数料部分には、消費税がかかります。

サービスの内容と対価を正確に把握することで、消費税の取り扱いを適切に行うことができます。

輸出債権のファクタリングと消費税

輸出債権のファクタリングは、海外取引に関連する債権を対象とするため、消費税の取り扱いに特殊性があります。

輸出取引自体は消費税法上、輸出免税となりますが、その輸出取引から生じた債権のファクタリングについても、基本的には債権譲渡として非課税取引となります。例えば、輸出企業D社が海外顧客E社に対して持つ1,000万円の売掛金債権をファクタリング会社に950万円で譲渡した場合、この債権譲渡自体は非課税です。

ただし、輸出債権のファクタリングでは、為替リスクのヘッジや輸出保険、信用調査など付加的なサービスが提供されることが多く、これらのサービスに対する対価には消費税がかかる可能性があります。

国際取引特有の複雑性を考慮し、専門家のアドバイスを受けながら取引を進めることが重要です。

債権譲渡の消費税に関するよくある質問

債権譲渡と消費税に関して、経営者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

債権譲渡損は消費税の計算に影響するか

債権譲渡を行った際に発生する譲渡損(債権額と譲渡価格の差額)は、消費税の計算に影響するのかという質問がよくあります。

債権譲渡損は、債権譲渡という非課税取引の一部として扱われるため、消費税の課税標準額の計算には影響しません。例えば、100万円の債権を80万円で譲渡した場合の20万円の譲渡損は、消費税の対象外です。

ただし、課税売上割合の計算においては、債権譲渡による収入(この例では80万円)が非課税売上として分母に含まれるため、間接的に消費税の計算に影響を与えることがあります。

債権譲渡損は法人税や所得税の計算においては損金または必要経費として認められますが、消費税の計算には直接影響しないことを理解しておきましょう。

債権譲渡と消費税のインボイス制度の関係

2023年10月から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)と債権譲渡の関係についても、多くの質問が寄せられています。

債権譲渡自体は非課税取引であるため、インボイス制度の対象外となります。つまり、債権譲渡の対価について適格請求書(インボイス)を発行する必要はありません。

ただし、債権譲渡に関連して発生する課税対象のサービス(例:事務手数料、債権管理サービスなど)については、インボイス制度の対象となります。これらのサービスを提供する事業者は、適格請求書発行事業者の登録を行い、適切なインボイスを発行する必要があります。

取引内容を明確に区分して対応することで、インボイス制度への適切な対応が可能になります。

債権譲渡の消費税に関する税務調査のポイント

債権譲渡に関する税務調査では、どのような点がチェックされるのかという質問も多く寄せられています。

税務調査において、債権譲渡取引がチェックされる際の主なポイントとしては、以下のようなものがあります。

  • 債権譲渡が適切に非課税取引として処理されているか
  • 債権譲渡に関連する課税対象のサービス(事務手数料など)が適切に区分され、消費税が計上されているか
  • 債権譲渡の金額が課税売上割合の計算に正確に反映されているか
  • ファクタリング取引が実態を伴わない金融取引として行われていないか(租税回避の有無)

取引の実態に合った正確な処理を行い、適切な書類を保存しておくことで、税務調査に適切に対応することができます。

まとめ

債権譲渡における消費税の取り扱いについて、基本的なルールから実務上のポイントまで解説してきました。債権譲渡自体は金銭債権の譲渡として非課税取引であり、譲渡価格と債権額の差額(割引料や譲渡損)も非課税となります。

一方で、債権譲渡に関連する各種費用(司法書士報酬、事務手数料、振込手数料など)には、消費税がかかる点に注意が必要です。正確な会計処理を行うためには、取引内容を明確に区分し、それぞれの消費税の取り扱いを理解しておくことが重要です。債権譲渡やファクタリングを活用する際は、税理士などの専門家に相談し、適切な税務処理を行うようにしましょう。

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債権譲渡を検討する企業の多くは、資金繰りに課題を抱えていることが少なくありません。債権譲渡は有効な資金化の手段ですが、手続きには時間がかかることもあります。即時の資金調達が必要な場合は、無担保無保証のビジネスローンも有効な選択肢となります。

HTファイナンスは、東大法学部出身で三菱銀行での実務経験を持つ三坂大作が統括責任者として、企業の資金調達と経営戦略の支援に取り組んでいます。

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