2025.04.09
医療ファクタリングとは?種類や利用時のポイントについて解説
医療機関の運営には、日々の診療や治療に必要な資材の調達や人件費など、多大なコストがかかります。経営状態を安定させるためには、早めに現金を確保できる仕組みが重要となります。そこで注目されるのが、医療ファクタリングです。
医療報酬や介護報酬などの未収債権を早期に資金化し、柔軟に運転資金を用意できることから、診療環境の維持やスタッフの雇用を円滑に進められるようになることが期待されます。本記事では、その概要や具体的な流れ、メリットや注意点を丁寧に解説します。
ファクタリングと医療機関の資金繰り
ここでは、ファクタリングと医療機関がどのように結びつくのかを整理します。医療現場で発生する診療報酬や、その他関連する報酬をすみやかに資金化する重要性をみていきます。
ファクタリングと医療の相性
ファクタリングは、企業や事業者が保有する売掛債権を専門業者に譲渡し、債権の早期資金化を図る方法です。医療の現場でも、診療報酬や介護報酬、調剤報酬といった未収債権が対象になります。国保や社保を売掛先とする領収書が確実に支払われるという点で、リスクが比較的低いといえます。
医療のように、請求から実際の入金までタイムラグがある業種では、キャッシュフローを円滑にするための仕組みが重要です。そこで、未収債権を活用した資金調達として、ファクタリングが注目されています。こうした方法をとることで、経営の安定性を高めることができます。
ファクタリングでは、売掛債権を譲渡した時点で債権の一部を先に受け取り、後日精算を行います。そのため、医療機関が資金不足に陥る前に早めの資金確保が期待できます。
医療機関がファクタリングを利用する流れ
医療機関がファクタリングを利用する際には、まず診療や介護、調剤サービスの提供後に領収書を作成し、国保や社保などの支払機関へ提出します。次にファクタリング会社に申し込みを行い、審査によって契約内容が決まります。審査が通ったら契約を締結し、売掛債権の70~90%程度を先に受け取れる仕組みです。
この譲渡のプロセスは、比較的スピーディに進むことが多く、緊急の資金需要にも対応できます。最終的に売掛先からの入金が確認された段階で、ファクタリング会社との清算が行われ、残額から手数料を控除した分が追加で医療機関に支払われます。
医療機関としては、必要なタイミングでまとまった資金を確保できる点が大きな魅力です。特に、資金繰りの管理が厳しい中小規模の医療施設にとって、安定性をもたらす大きな手段となるでしょう。
医療機関における資金繰りの重要性
医療機関では、人件費や医薬品、医療機器、その他施設設備に対する多額のコストが発生し続けます。患者の減少や保険制度の変更など、予期せぬ要因で収入が不安定になることも珍しくありません。
そのため、キャッシュフローは常に監視し、安定して資金を確保できる仕組みを整えることが求められます。十分な資金がなければ、事業の拡大や安定的な医療サービスの提供が難しくなる恐れがあります。
万一、支払いが滞れば、医療従事者への給与や設備投資にも影響が及びます。そうならないためにも、ファクタリングを活用する柔軟性が大きな意義をもつのです。
医療でのファクタリングのメリット
医療において、ファクタリングを導入することで得られる利点は多岐にわたります。
資金調達の簡便さ
医療機関が、通常の融資手続きで資金を借り入れるとなると、長い審査期間や厳格な返済計画の策定が必要になります。ファクタリングでは、売掛先が国保や社保といった公的機関であることが多く、比較的スムーズに審査を受けられます。
事前の書類準備や担保の設定が最小限に抑えられるため、結果として資金調達のスピードが上がりやすくなります。緊急の運営資金や給与の支払いなど、すぐに現金が必要な場合にも大きな助けとなるでしょう。
さらに、債権自体が比較的信用度の高いものとみなされるため、手数料率も他業種に比べて安定しています。医療機関にとっては、規模を問わず導入しやすい手法といえるでしょう。
負債計上がなく使用用途が自由
ファクタリングは、借入金ではなく売掛債権の譲渡です。そのため、通常は医療機関の負債には計上されません。バランスシート上の負債を増やさずに資金を確保できることは、財政状況を良好に保つうえで大きなメリットです。
また、取得した資金の使用用途に制限がほとんどなく、自由に運用することが可能です。たとえば、人件費の補填、医療設備の導入、さらには経営拡大に向けた投資など、さまざまな目的で使用できます。
つまり、長期的な経営戦略を見据えた資金使途に柔軟に活かせる点が、医療機関にとっての魅力といえるでしょう。資金調達の幅を広げる意味でも、このメリットは大きいものです。
担保や保証人が不要
通常の銀行融資では、土地や建物などの担保を求められることが多くあります。あるいは、代表者個人の連帯保証を求められる場合もあります。しかし、ファクタリングの場合は、もともと売掛先が公的機関であることから、信用リスクが小さいと見なされやすい傾向にあります。
その結果、医療機関側に大きな担保や保証を求める必要がなく、申し込みのハードルが比較的低くなっています。実際に資金が振り込まれるまでも早いため、迅速かつ安全に利用できる仕組みといえます。
こうした背景から、財務負担を軽減する策を探している医療施設にとって、ファクタリングは魅力的な選択肢となるでしょう。
医療施設がファクタリングを利用するときの注意点
ファクタリングを導入する際には、メリットだけでなく気をつけるべき点があります。
手数料の負担
ファクタリングの利用には、当然ながら手数料が発生します。手数料率はケースバイケースですが、医療機関の場合は売掛先が公的機関ということもあり、一般的に安定しているといわれています。それでも、利用する際には事前に見積もりを確認し、費用対効果を検討することが重要です。
手数料が高いと、本来受け取れるはずだった診療報酬などが目減りしてしまいます。数%の違いが数十万円単位での差となることもあるため、複数の業者を比較検討して、より好条件の会社を選びましょう。
わずかな手数料の違いが、経営状態に大きく関わることになります。
譲渡可能な債権と期間の制限
ファクタリング会社が対象とする債権には、上限や制限があります。通常、医療機関では、2か月分の診療報酬や介護報酬などが譲渡対象となることが多くあります。これは、債権の確実性を担保するための仕組みともいえます。
また、ファクタリングを利用できる期間にも制約がある場合があります。毎月繰り返し利用できるパターンもあれば、一定期間のみ利用可能なケースも存在します。
自院が保有する債権が、どの程度まで前倒し資金化できるのかを十分把握しつつ、利用条件をきちんと確認しておくことが大切です。安定したキャッシュフローを確保するには、制限を理解したうえで計画を立てる必要があります。
計画的な活用と業者選定
ファクタリングは便利な資金調達方法ですが、安易に使いすぎると手数料負担がかさみ、結果的に利益を圧迫する可能性があります。経営計画の中で必要なタイミングと金額を明確にして、ピンポイントで活用するのが望ましいものです。
また、ファクタリング会社選びも重要です。手数料率、サービス対応の早さ、契約内容の透明性など、様々な観点から比較する必要があります。評判や口コミを確認し、信頼できる会社との契約を心がけましょう。
計画性をもった導入こそが、医療機関にとってのファクタリングの価値を最大限に高めるポイントです。慎重に検討しましょう。
診療報酬ファクタリング
診療報酬ファクタリングは、国保や社保が相手となります。
診療報酬とファクタリング
医療機関は、患者の診療内容に応じた領収書を国保や社保などの保険者へ提出し、それに基づく診療報酬を受け取ります。その際、請求から実際の支払いまでには、1~2か月程度の時間差が生じるのが一般的です。
診療報酬ファクタリングでは、この未収分の報酬を専門業者へ譲渡し、先に資金化する手段として活用します。安定したベース収益が見込めるため、ファクタリング会社としても取り扱いやすい債権と認識されがちです。
しかし、保険点数の改定や診療内容の変化などで請求額に差が出ることもあるため、注意深く領収書を管理する必要があります。
ファクタリング利用の流れ
まずはファクタリング会社に相談し、診療報酬をどの程度まで前払いできるかの見積もりを取得します。医療機関は、領収書や各種書類を用意し、会社が要求する審査を受けることになります。審査結果が出れば、契約内容と手数料率の提案が提示されます。
契約に合意すれば、売掛債権を譲渡する形で契約が締結されます。診療報酬の支払時期に先駆けて70~90%程度の資金を受け取り、後日、実際の診療報酬が入金された段階で残余金の清算を行います。
このプロセスを円滑に進めるためには、正確な領収書の提出が欠かせません。書類不備や手続き上のミスは審査に時間がかかったり、手数料を上げられたりする原因になることがあります。
利用時のポイント
診療報酬ファクタリングを活かすには、毎月の診療報酬入金サイクルを考慮した、運転資金のシミュレーションが不可欠です。資金繰りのピークと谷を把握し、必要なタイミングでのみ利用すれば、余計な手数料の支払いを抑えることができます。
また、複数のファクタリング会社を試し、どこが自院に合った条件を提供してくれるかを比較検討しても良いでしょう。診療科目や患者数の変動に合わせて条件を調整できる会社をみつけると、より柔軟に経営を行うことができます。
安定したキャッシュフローを維持するためにも、常に自院の資金状況を見直し、最適な利用サイクルを組むことが大切です。
介護報酬ファクタリング
介護領域でも、ファクタリングが用いられるケースが増えています。
介護報酬とファクタリング
介護施設や訪問介護事業者の場合、毎月の介護報酬が主な収益源となります。しかし報酬が入金されるまでに時間がかかるため、施設運営費や職員の給与、設備維持費などを早めに確保する必要があります。
ファクタリングを導入することで、これらの支出をスムーズにまかなえるようになります。介護報酬という安定性の高い債権を譲渡するため、ファクタリング会社としても契約しやすい傾向があります。
特に、急報酬の遅延が、経営を圧迫するリスクを避けられる点が大きなメリットです。利用者数の変動が激しい場合でも、資金ショートを防ぎやすくなります。
利用時のポイント
介護報酬は、比較的安定した入金が期待できる反面、1件あたりの金額は診療報酬に比べて小さい場合があります。ファクタリングでは、手数料率と譲渡金額のバランスを見極めることが肝要です。
手数料が高い場合には、結果として受領額が大幅に減ってしまいます。導入前に複数のファクタリング会社に問い合わせ、総合的なコストを比較することをおすすめします。
また、介護施設が新たに設立されたばかりの場合、実績が少ないために手数料率が高めに設定される傾向があります。その際は、運用期間や将来の見込みをデータで示して、低い手数料を交渉するのも一つの戦略です。
適切な利用場面
介護ファクタリングは、職員の給与日や家賃など、確定的に必要となる支払いに合わせて利用することが効果的です。いつでも資金に余裕がもてる状況をつくり出すことで、利用者へのサービス品質を維持できます。
利用頻度や譲渡金額を慎重に設定し、無駄な手数料を抑えつつ資金繰りを円滑にするバランス感覚が重要です。安定した経営を目指すなら、短期的な補填としてだけでなく、中長期的にファクタリングをどう位置づけるかを見直すことが求められます。
長期的な視点で計画経営を行うことが、介護現場におけるファクタリング導入の成功を左右するポイントとなるでしょう。
調剤報酬ファクタリング
調剤薬局などが利用する調剤報酬ファクタリングにも、独特の特徴があります。調剤業務の特性や流れに注目してみましょう。
調剤報酬とファクタリング
調剤薬局では、患者が処方箋を持参し、薬を受け取るごとに調剤報酬が発生します。この報酬は、公的保険の負担割合を差し引いた上で薬局に入金されますが、やはり請求から支払いまで一定の期間が必要です。
医療機関と同様に、公的機関が支払う性質があるため債権としての信用度は高く、ファクタリング会社も積極的に取り扱う傾向があります。調剤の件数が多いほど安定的な売上が見込める点で、資金化のしやすさが評価されます。
一方で薬剤の在庫管理や店舗運営コストも大きく、資金繰りが圧迫される場合もあるため、ファクタリングが役立つ場面は多いでしょう。
ファクタリング利用の流れ
調剤報酬ファクタリングを実施する場合、薬局が領収書を支払基金や保険者に提出し、その後にファクタリング会社へ申し込みます。医療機関の場合と同じく、審査を経て譲渡金額や手数料が確定されます。
契約が成立すると、調剤報酬の入金を待たずに、一定割合の先行資金を確保できる仕組みとなります。領収書の件数や、報酬額の推移を踏まえて計画的に利用すれば、薬の在庫確保や設備投資のタイミングを逃さずに済むでしょう。
特に歓迎されるのは、領収書の効率的管理が行われている薬局です。書類の不備が少なく、正確な報酬が申請できるほど審査はスムーズに進みます。
利用時のポイント
調剤報酬ファクタリングでも、最終的に実際の報酬が入金された時点で清算を行います。入金額が想定より低かった場合、差額分を追加で支払う必要が出てくることもあるため、常に領収書内容を厳密にチェックすることが重要です。
また、ファクタリング会社によっては、請求件数や薬剤の種類、保険者の種類により手数料率が変動することがあります。よって、利用前には条件をよく比較し、適切な会社を見極めることが必要です。
誤差が生じた場合のリスク管理として、適切なキャッシュフロー計画を組んでおくことが欠かせません。調剤薬局の継続的な経営には、こうした細部に至る管理が大切です。
医療機関でファクタリングを実践する際のポイント
医療機関がファクタリングを効果的に利用するためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
複数業者の比較
ファクタリング業者は数多く存在し、手数料率やサービス内容、契約条件などに差があります。医療ファクタリングに特化した会社も増えているため、ぜひ複数の候補を比較検討してみてください。
手数料率だけではなく、対応のスピードやサポート体制、契約更新の条件など総合的に調べることが重要です。適切なパートナー選びが、長期的にみた経営効率を大きく左右するといえます。
口コミや評判、実績を参考にするのも良いですが、公開されていない詳細条件がある場合も多いものです。必ず書面や面談で確認し、自院に合った条件を提示してくれる企業を選択しましょう。
早期支払い制度との併用
ファクタリング以外にも、医療機関によっては国保・社保からの早期支払い制度を利用できる場合があります。こうした制度を併用することで、さらに資金繰りを安定させることが可能です。
一方で、早期支払い制度には、利用条件や手数料が課されることがあります。ファクタリングとの併用で二重の費用負担になるケースがないか、事前に確認しておきましょう。
どちらをメインとするか、あるいはどのタイミングで利用するかを明確にしておけば、最大限の効果を得やすくなります。自院の経営状況を踏まえた組み合わせを選ぶことが大切です。
運営コスト削減の取り組み
ファクタリングを利用するとしても、その効果は支出を抑える努力と組み合わせることで最大化されます。購買コストの削減や在庫管理の効率化など、経営改善の施策を同時に進めれば、収支のバランスをより良く保つことができるでしょう。
たとえば、医療機器や薬剤の仕入れ条件を見直し、まとめ購入による割引を活用するなど、コスト面での無駄を省く工夫が重要です。
このように、総合的な経費対策を行いながらファクタリングを上手に取り入れることで、健全な経営基盤を築くことができます。
まとめ
本記事では、医療分野でのファクタリングについて、その概要や活用方法をみてきました。ファクタリングを利用すれば、診療報酬や介護報酬などの未収債権を早期に資金化でき、資金繰りを安定させる大きな助けとなります。
手数料や譲渡可能範囲に注意しながら計画的に導入すれば、医療機関にとって有用な資金調達方法といえます。ファクタリングの導入を検討している場合は、まずは複数のファクタリング会社に相談し、最適な条件を探してみてください。今後、医療機関によるファクタリング活用のように、公的機関を売掛先にする売掛債権のファクタリング対応は、経済活性化の方法の一つとして利用方法が拡大していくでしょう。
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