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償還請求権の意味とは?債務者の義務を解説

事業資金の調達や運用において、「償還請求権」の存在を把握することは非常に重要です。償還請求権とは債務者から支払いがない場合に、元の債権者に費用返還を求めることができる債権者の権利のことをいいます。この記事では、償還請求権の基本的な意味合いから、債権者と債務者それぞれの立場における償還請求権の重要性、ファクタリングをはじめとする金融取引の場面における償還請求権の役割などについて詳しく解説します。償還請求権への理解を深めることで、事業資金の調達や運用をより適切に行うことができるでしょう。

償還請求権とは

償還請求権とは、債務者が債務を履行しない場合に、債権者が債務者に対して債務(金銭債務)の履行を請求する権利のことをいいます。つまり、借りたお金を返済しない債務者に対し、債権者が返済を求めることができる権利です。

償還請求権という言葉の意味合い

償還請求権は英語で「right of recourse」や「recourse」と表現されます。直訳すると「遡及の権利」という意味になります。

また、類似の概念として「right of indemnity」や「indemnity」といった表現もあります。これらは「補償の権利」や「補償」といった意味合いが強い表現です。

償還請求権が発生するケース

償還請求権が発生する代表的なケースは以下の通りです。

  • 債務者が借入金の返済を滞納したとき
  • 債務者が支払不能に陥ったとき(倒産など)
  • 債務者が契約に違反したとき

これらのケースでは、債権者は償還請求権に基づいて、債務者に対し積極的に債務の履行を求めることができます。法的な手段を用いて強制的に回収を図ることも可能でしょう。

償還請求権がある場合とない場合の違い

償還請求権の有無は、債権者と債務者の権利義務関係に大きな影響を与えます。ここでは、償還請求権がある場合とない場合の違いについて詳しく見ていきましょう。

償還請求権ありの場合の債権者の権利

償還請求権がある場合、債権者は債務者から支払いがない場合でも、元の債権者に費用返還を求めることができます。

例えば、A社(元の債権者)からB社(債務者)を経由してC社(債権譲受人)に債権が譲渡された場合、C社はB社から支払いがなくてもA社に返還請求が可能です。つまり、償還請求権があれば、債権者は元の債権者に責任を追及できるのです。

償還請求権なしの場合の債権者の権利

一方、償還請求権がない場合、債権者は債務者に直接返還請求するしかありません。先ほどの例でいうと、C社はB社に返還請求するしかなく、A社には請求できません。

このように、償還請求権がないと、債権者は債務者の支払い能力に依存せざるを得ず、リスクが高くなります。債権の回収可能性を慎重に見極める必要があるでしょう。

償還請求権の有無と法律規定

債務者の立場からすると、償還請求権の有無によって法的な位置づけが変わってきます。償還請求権がある場合、取引は融資とみなされる可能性があり、利息制限法の適用を受けます。

また、償還請求権があると貸金業登録が必要になるケースもあります。債務者としては、償還請求権の有無を確認し、法的要件を満たしているか慎重に確認する必要があります。

具体的な事例による違いの解説

ここで、ファクタリングと手形割引を例に、償還請求権の違いを見てみましょう。ファクタリングでは原則として償還請求権がないのに対し、手形割引では償還請求権があるのが一般的です。

手形割引の場合、手形が不渡りになると、債権者は債務者に元本と利息の返還を求められます。一方、ファクタリングは債権譲渡という建付けですから、通常そのような償還請求権はありません。このように取引の性質によって、償還請求権の有無が異なることに注意が必要です。

償還請求権に関連する法律知識

償還請求権は、事業者にとって重要な法律上の権利です。ここでは、償還請求権に関連する法律知識を詳しく見ていきましょう。

償還請求権に関連する民法の規定

償還請求権は、民法上の規定に基づいています。民法第474条では、「有償契約において、当事者の一方が有償契約の性質に基づいて相手方から受けた給付に瑕疵があった場合には、その当事者は、相手方に対して、その瑕疵の補修、代替物の引渡し、不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」と定められています。

つまり、売買契約などの有償契約において、受け取った物品や権利に問題があった場合、相手方に対して補修や代替品の引き渡しなどを請求できるということです。これが償還請求権の基本的な考え方といえます。

償還請求権と手形法の関係

償還請求権は、手形法とも密接に関係しています。手形法第49条では、「手形債務者の資力がない場合、手形所持人は、直接の前者に対して償還請求をすることができる」と規定されています。

手形取引において、手形の支払いが滞った場合、手形所持人は、手形を譲渡した人に対して償還請求をすることができるのです。これは、手形取引の安全性を確保するための重要な規定といえるでしょう。

償還請求権に関わる判例

償還請求権に関しては、様々な判例が存在します。例えば、最高裁判所は、「売買契約において、目的物に隠れた瑕疵があった場合、買主は売主に対して瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求できる」と判示しています(最判平成8年11月12日)。

また、「手形金請求訴訟において、手形債務者に資力がない場合、手形所持人は前者に対する償還請求権を行使できる」とした判例もあります(最判昭和45年7月16日)。これらの判例は、償還請求権の具体的な適用場面を示しているといえるでしょう。

償還請求権に関する論点

償還請求権をめぐっては、様々な法的論点が存在します。例えば、償還請求権の行使期間や、償還請求の範囲をどのように考えるかなどが問題となります。

また、債権譲渡が行われた場合の償還請求権の帰属先や、償還請求権の放棄の可否なども重要な論点といえます。これらの点については、個別の事案に応じて慎重に検討していく必要があるでしょう。

ファクタリングにおける償還請求権

ここでは、ファクタリングにおいて償還請求権の扱いはどのようになっているのか解説します。

ファクタリングの仕組みと償還請求権の位置づけ

ファクタリングは、売掛金や手形といった金銭債権を買い取ることで、企業に対して事業資金を供給するサービスです。その際、ファクタリング業者が債権を買い取る条件として、償還請求権の有無が重要な役割を果たします。

償還請求権とは、債務者から支払いがない場合に、元の債権者に債権の買取代金の返還を求める権利のことを指します。そのため、ファクタリングにおいての償還請求権は、ファクタリング業者が債務者から支払いを受けられなかった場合に、債権を売却した企業に対して代金の返還を求めることができる権利といえます。

ファクタリング業者が償還請求権を持つ場合と持たない場合

ファクタリング取引において、償還請求権の有無によって2つのケースに分類されます。まず、償還請求権がある場合は、債務者からの支払いがない際に、ファクタリング業者は元の債権者に代金の返還を求めることができます。一方、償還請求権がない場合は、ファクタリング業者は債務者に直接支払いを求めるしかありません。

具体例を挙げると、A社(元の債権者)がB社(債務者)に対する売掛金債権をC社(ファクタリング業者)に譲渡したとします。この場合、償還請求権があれば、B社からの支払いがない際にC社はA社に代金の返還を求められます。一方、償還請求権がなければ、C社はB社に直接支払いを求める必要があります。

償還請求権の有無とファクタリングのリスク

償還請求権の有無は、ファクタリング取引におけるリスク分担に大きな影響を与えます。償還請求権がある場合、ファクタリング業者は債務者の支払い不履行のリスクを負いません。その代わりに、元の債権者である企業が代金返還のリスクを負うことになります。

一方、償還請求権がない場合は、ファクタリング業者が債務者の支払い不履行のリスクを負うことになります。そのため、償還請求権の有無によって、ファクタリング業者が提示する買取条件(手数料や買取率など)が変わってくるのです。

ファクタリングと償還請求権に関する注意点

ファクタリングを利用する際は、償還請求権の有無によって法的な扱いが変わることに注意が必要です。償還請求権がある場合、ファクタリング取引が融資とみなされ、利息制限法の適用を受ける可能性があります。また、ファクタリング業者には貸金業登録が必要となる場合もあります。

さらに、債権譲渡の対抗要件として、債権譲渡登記が必要となるケースもあります。ファクタリングを検討する際は、償還請求権の有無による法的な影響を十分に理解するために、専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

本記事では、償還請求権の基本的な意味から、債権者と債務者それぞれの立場における重要性、ファクタリングをはじめとする金融取引の場面での役割などについて詳しく解説してきました。

ファクタリングや手形割引などの取引では、償還請求権の有無がリスクとリターンに影響します。償還請求権に関する知識を深め、自社に最適な資金調達方法を選択するとよいでしょう。事専門家への相談も検討しつつ、正しい判断を行いましょう。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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