2025.05.29
倒産する会社に共通する資金繰りの特徴とは?現金と借り入れの重要性について
企業が経営を続けていく中で、資金繰りは事業継続の要となります。しかし、手元資金不足や借入に対する誤った考え方が原因で、倒産という事態に陥るケースも少なくありません。
本記事では、資金ショートを招く要因や倒産に至る共通項目を整理し、どのように現金と借入をコントロールしていけばよいのかを解説します。
資金調達の選択肢が増える一方で、適切な手段やタイミングを見誤ってしまうと、企業の信用やキャッシュフローが大きく損なわれることもあります。そうしたリスクを回避するため、本質的な資金繰りの考え方を押さえておきましょう。
倒産=資金繰りのショート
多くの企業が倒産する原因として最も大きいのは資金ショートです。ここでは現金不足のリスクと、その対策について確認していきます。「倒産」とは、何を意味するものでしょうか。経営を続けられなくなり会社をたたむこと、といったイメージを持っている人も多いと思います。しかし、経営者であれば倒産の意味をより厳密に知っておくべきでしょう。すなわち倒産とは、
“財産を使い尽くすこと。特に、企業が不渡手形などを出して銀行取引の停止処分を受け、事業を継続できなくなること”
を意味します(広辞苑第5版より)。「資金繰りのショート=倒産」と捉えると、倒産を資金繰りとの関係から考えることができます。
資金ショートとは、支払いに必要な現金や預金が不足し、期日に間に合わない状態を指します。事業が赤字ではなくとも、手元の現金が足りなければ経営を続けられません。入金と出金のタイミングのズレを甘く見積もると、あっという間に倒産のリスクに直面するのです。
銀行融資や売掛金の回収が遅れると、仕入れ先や従業員への支払いに現金を回せなくなります。こうした危機は、業務の混乱だけでなく、取引先や従業員の信頼を大きく損なう原因にもなりかねません。最悪の場合、それまで築いてきた取引関係が崩れ、さらに資金繰りが悪化する悪循環に陥ります。
しかし、事前に対応策を講じれば、資金不足による倒産を回避できる可能性は高まります。たとえば、一定額のキャッシュを常に確保することや、足りない分を資金調達でカバーする仕組みを整えておくことで、突然の支払いリスクも抑制できるでしょう。
現金不足が最大の原因
売掛金の回収遅延や仕入れの支払いタイミングが合わないだけでも、企業のキャッシュフローは大きく揺らぎます。支払いが続く一方で入金が滞る期間が長期化すると、わずかな資金不足が命取りになるのです。
特に小規模事業者や中小企業では、仕入れから販売、売掛金回収のサイクルが長いほど現金の流出超が増え、少しの遅れが大きな影響を及ぼします。そうした背景から、資金の流れを正確につかんでおく作業は経営者の最優先事項といっても過言ではありません。
現金の不足が表面化すると、運営資金が枯渇して銀行への返済予定も狂い始めます。この状態を放置すれば倒産の確率が急激に高まります。まずは現金の出入りを可視化し、ギリギリの状態を回避するための対策が大切です。
どこまで現金を確保すべきか
一般的には、少なくとも数カ月分の固定費や運転資金を手元に確保することが推奨されます。家賃や人件費など毎月固定的に発生する費用の支払いに間違いが起こらないように、余裕を持った資金計画を立てましょう。
ただし、業態や規模によってはさらに長い期間の資金を用意すべきケースもあります。製造業のように仕入れから販売まで時間がかかる事業であれば、資金不足のアラートが早い段階で出せる仕組みを作ることをおすすめします。
十分な現金を確保できない場合は、早めに資金調達の手段を検討することが肝心です。金融機関からの融資や、設備投資に合わせた補助金・助成金など、自社に合った方法を適切に選択することで、倒産リスクを大幅に回避できる可能性が高まります。
倒産する会社の共通点
資金が不足して倒産に至る企業には、借入金や資金調達に対する考え方に共通点があります。適切な借入運用を実践するためのポイントを整理します。
倒産予兆の一つとして、借入金の返済に追われて経営の自由度が下がっている、または必要な借り入れができずに運転資金が枯渇しているというケースが多く見られます。借入をうまく活用できない企業は資金流入が止まり、結果的にキャッシュフローの悪化につながるのです。
また、借入金の金利負担や返済条件を十分に把握せずに契約を結んでしまうと、思わぬタイミングで返済に資金を取られ、実務に支障をきたすこともあります。そうした状況を避けるには、自社のキャッシュフロー計画と照らし合わせた上で、余裕を持った借入戦略を考える必要があります。
ただし、必要な時に必要な資金を確保しないと、事業の成長機会を逃すリスクもあるため、借り過ぎだけでなく借りなさ過ぎにも注意が必要です。次項で、倒産企業によく見られる借入に関する特徴をさらに詳細に見ていきましょう。
借金は悪ではない
実際に、倒産する会社の中には、必要以上に借り入れを避けている会社も多いものです。借り入れを避ける主な理由には、
・返済負担を避けるため、できるだけ融資は受けたくない
・先代から無借金経営にこだわってきた
・売掛金や手形の支払いでなんとか資金繰りが回っているから融資の必要を感じない
などがあります。
しかし、このような考え方によって借り入れを避けるのは、少なくとも企業経営においては誤りです。
個人レベルであれば、借金はできるだけ避けるべきという考え方も成り立つのですが、企業経営では通用しない考え方です。これは、
・企業とは利益を追求するものである(必要に応じて借り入れを行って業容の拡大を図り、利益を伸ばしていくべきである)
・現金が不足しなければ倒産しない(倒産を避けるために、融資を受けて現金を確保しておくことが重要である)
など、会社や資金繰りの本質から考えれば明らかです。
したがって、借り入れを嫌って現金が慢性的に不足しており、資金繰りがうまく回っていない会社では、まず借り入れに対する考え方を改めるべきです。
つまり、企業にとって借金はすべて悪と捉えられがちですが、必ずしもそうではありません。投資や運営資金に正しく活用すれば、事業拡大や設備投資による売上アップに直接繋げることが可能です。
特に創業期や事業拡大期には、外部から調達した資金を投入しないと大きな勝負に出られないケースがあります。自己資金だけで成長段階を乗り切るには限界があり、適度なレバレッジをかけることで収益機会を最大化できるのです。
ただし、金利負担や返済義務が伴う点を念頭に置かなければいけません。借金は短期的な資金需要を補う一方で、長期的なキャッシュフローを圧迫する要因にもなり得るため、活用する際は綿密なシミュレーションが必要です。
実質借入金をベースに考える
表面的に借入総額だけを見てしまうと、実際の返済計画がおろそかになりがちです。金利や保証料など諸経費を含めた実質的な借入コストを把握しないと、思わぬ資金流出が発生するリスクがあります。
特に金利負担は、期間が長くなるほど合計額で大きな差が出てきます。返済方法や期間を複数パターンで試算し、最も安定して返済できる道筋を見極めておくことが肝心です。
また、借入の条件が厳しくなるほど保証人や担保が必要になり、経営者個人のリスクも増大します。実質的な返済リスクを総合的に評価して、借入の絶対額だけでなく条件面まで気を配りましょう。
このことは、具体的な数字で考えると良く分かります。
例えば、無借金経営にこだわって現金が慢性的に不足しているA社と、積極的に借り入れて現金が充実しているB社があったとします。両社とも会社の規模は変わらず、月商は1,500万円であるとします。
現金 | 借入金 | |
A社 | 100万円 | 1,500万円 |
B社 | 2,100万円 | 3,500万円 |
A社は現金が100万円しかなく、資金繰りはいつもギリギリの状態です。B社に比べて借入金は2,000万円少なく、確かに返済負担も軽いでしょうが、常に倒産と隣り合わせです。取引先が債務不履行を起こしたり、予定していなかった出費を迫られたりすれば、資金繰りはたちまちショートしてしまいます。
一方、B社はA社より2,000万円借り入れが多く、返済負担も重くなると考えられます。しかし、現金は月商の1.4倍です。手形や買掛金の決済に困ることはなく、不測の事態が起こっても資金繰りが行き詰ることはありません。
両社の資金繰りを比較して、どちらが理想的でしょうか。いうまでもなくB社です。
気になるのは借入金の違いですが、ここで両社の実質借入金を比較してみると、以下のようになります。
現金 | 借入金 | 実質借入金 | |
A社 | 100万円 | 1,500万円 | 1,400万円 |
B社 | 2,100万円 | 3,500万円 | 1,400万円 |
この表の通り、両社の借入金には2,000万円の差がありますが、実質借入金には全く差がないのです。実質借入金に差がなければ、借入金が財務に与える影響もほとんど取るに足りません。
融資する銀行も、資金繰りの安定度を厳しく見るため、実質借入金は同じでもA社を危険とみなし、B社を安全とみなす可能性高いです。
したがって、借り入れによって現金を充実させておくことは、必要な時に銀行からさらなる融資を受ける際にもプラスになるといえます。
借りられるときに借りておく
経営が比較的安定している時期こそ、融資を検討する好機です。銀行や投資家からの信用が高いうちに資金調達を済ませておくと、景気の波が下振れしたときにも対応しやすくなります。
企業規模を拡大するために新たな設備投資や人材採用を行う際は、早期に外部資金を活用することで、スピード感を持って成長戦略を実行できます。黒字経営でも現金が徐々に減り続けた結果、気づいたときには追加融資を受けられない状況に陥るケースも少なくありません。
必要最低限だけを借りようと慎重に構え過ぎると、急な売上減少や新規事業の投資機会に動けなくなるリスクもあります。適切な時期に余裕を持って資金を確保することが、倒産リスクの回避につながります。
調達しすぎによる負担増
一方で、必要以上の借入による返済負担の増加も見逃せません。過剰な設備投資や無計画な資金繰りが重なると、利息や元本返済がキャッシュフローを圧迫し、倒産リスクを高めてしまいます。
借入後は返済期間が長期にわたることもあり、金利水準が高いまま据え置かれると利息負担が大きくなります。予想以上に売上が伸びず、返済計画が崩れるケースも少なくありません。
余剰資金が一時的に生まれたとしても、今後の支出予測や収益見込みを慎重に見定める必要があります。借入金は負債として常に経営を圧迫し続ける点を踏まえ、資金調達しすぎないよう注意しなければなりません。
どんな時に融資が受けられなくなるか
業績が悪化している企業は、そもそも新たな融資を受けられない可能性が高いです。銀行などの金融機関は貸し倒れリスクを厳しく査定するため、赤字体質が続いたり財務諸表が悪化していると信用力が一気に落ちます。
また、長期にわたり返済が滞っていたり、税金の支払いを怠っている場合も金融機関からはマイナス評価を受けます。債務超過に陥ると、追加融資どころか既存借入の返済条件がさらに厳しくなる可能性も否定できません。
こうした状況に陥らないためには、経営状態に合った資金調達計画と、継続的な財務リスクの監視が不可欠です。常に銀行とのコミュニケーションを密に取り、必要に応じて早めの資金調達を検討しておくことが、融資困難のリスクを下げる有効な手段です。
まとめ
本稿では、資金繰りにおける現金の重要性と、倒産する会社に共通する資金繰りの特徴を解説しました。
資金不足による倒産を防ぐためには、十分な現金確保とリスクに合わせた借入戦略が必須となります。
倒産リスクをにらんだ資金計画では、まず手元資金を確実に確保したうえで、適切なタイミングで資金調達を検討する姿勢が重要です。闇雲に借金を避けるのではなく、必要な分だけを早めに確保して将来の投資や運転資金に回すことで、経営の安定感を高めることができます。
同時に、借入の返済条件や金利負担を綿密に計算し、長期的なキャッシュフローを見据えた上で調達方法を最適化しましょう。運転資金確保のためにデットファイナンス、事業拡大のためにエクイティファイナンスや補助金制度の活用など、目的に合った手段を選ぶことが倒産のリスクを大きく軽減します。
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