2025.06.05
保証協会を利用すれば無担保無保証融資を受けられる?利用するときの条件や注意点についても解説
事業を経営していると、設備投資や運転資金の調達のために融資を検討することがあります。しかし、担保となる不動産や保証人を用意できず、資金調達の壁にぶつかってしまうケースも少なくありません。
そんな時に頼りになるのが、信用保証協会の制度です。信用保証協会を利用すれば、一定の条件下で、担保や保証人なしでの融資が可能になります。とはいえ、どのような場合に無担保無保証で融資を受けられるのか、その条件や限度額、審査のポイントなど、知っておくべき情報は多岐にわたります。
この記事では、信用保証協会を通じた無担保無保証融資の仕組みや条件、申込手順、そして利用する際の注意点までを詳しく解説します。これから創業を考えている方や、すでに事業を営んでいる経営者の方が、安全かつ有利な形で必要な事業資金を調達するための道筋を示します。
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信用保証協会による無担保無保証融資とは
信用保証協会は、中小企業や個人事業主の金融円滑化を目的とした公的機関です。全国47都道府県に設置されており、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、その債務を保証する役割を担っています。
信用保証協会が保証人となることで、金融機関は貸し倒れリスクを軽減でき、中小企業は融資を受けやすくなります。この仕組みにより、担保や保証人がなくても融資を受けられる可能性が広がるのです。
信用保証協会自体は融資を行う機関ではなく、あくまでも金融機関の融資に対して保証を行う機関です。したがって、実際の融資は、銀行や信用金庫などの金融機関から受けることになります。
信用保証協会を利用した融資では、原則として、一定額までは担保が不要とされています。多くの制度では、8,000万円が無担保の上限となっていますが、これは保証協会や融資制度によって異なる場合があります。
保証協会が提供する主な無担保無保証融資制度
信用保証協会では、さまざまな無担保無保証の融資制度を提供しています。
創業関連保証制度
創業を検討している方や、創業間もない事業者向けの保証制度です。創業前または創業後5年以内の方が対象となり、最大3,500万円まで無担保で保証を受けることができます。
さらに、一定の要件を満たす場合は、経営者本人の連帯保証も不要となる場合があります。創業時の資金調達における大きな助けとなる制度と言えるでしょう。
具体的な要件としては、創業計画の実現可能性や返済能力の見込みなどが審査されます。また、自己資金要件(創業資金の10%以上の自己資金が必要)などが設けられている場合もあります。
小口零細企業保証制度
小規模事業者を対象とした保証制度で、従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の事業者が利用できます。保証限度額は2,000万円で、無担保での融資が可能です。
この制度の特徴は、比較的審査のハードルが低く、小規模事業者でも利用しやすい点にあります。また、既存の保証付き融資と合わせて2,000万円以内であれば、追加で保証を受けることも可能です。
地域の小規模事業者の資金繰りを支援する重要な制度として、多くの事業者に活用されています。
セーフティネット保証制度
経済環境の変化や自然災害などにより、一時的に業績が悪化している中小企業を支援するための制度です。通常の保証枠とは別枠で、最大2.8億円の保証を受けることができます。
セーフティネット保証には、1号から8号まであり、それぞれ異なる経営危機に対応しています。例えば、取引先の倒産、売上減少、災害などの理由で資金繰りが悪化した場合に利用できます。
この制度も、原則として8,000万円までは無担保で利用可能で、経営危機時の重要な資金調達手段となります。認定を受けるためには、市区町村の窓口で申請手続きが必要です。
経営者保証免除特例制度
2019年に導入された比較的新しい制度で、一定の要件を満たす中小企業は、経営者の個人保証なしで融資を受けることができます。主に事業承継時や、財務基盤が安定している優良企業向けの制度です。
経営者保証免除の要件としては、法人と経営者の資産の明確な分離、財務基盤の強化、適切な情報開示などが挙げられます。これらの条件を満たすことで、経営者本人の連帯保証なしでの融資が可能になります。
事業承継を促進し、後継者の負担を軽減するという観点からも、重要な制度と言えるでしょう。
保証協会による無担保無保証融資の条件
信用保証協会を利用した無担保無保証融資には、いくつかの条件や限度額が設定されています。
無担保融資を受ける条件
信用保証協会を通じた融資では、原則として8,000万円までは無担保で融資を受けることが可能です。ただし、これは絶対的な基準ではなく、事業の状況や信用力によって変動する場合があります。
無担保融資の条件としては、以下のような点が重視されます。
- 事業の継続性と安定性
- 返済能力の見込み
- 資金使途の明確さと妥当性
- 事業計画の実現可能性
特に、創業間もない企業や業績が不安定な企業の場合は、事業計画の説得力が審査の重要なポイントとなります。具体的な数字に基づいた、現実的な計画であることが求められます。
無保証融資を受ける条件
経営者保証を免除できる主な条件としては、以下のようなものがあります。
- 法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されていること
- 財務基盤が強固で、十分な返済能力があること
- 経営の透明性が確保され、適切な情報開示がなされていること
- 後継者不在などの事業承継に関する課題を抱えていること
これらの条件をすべて満たす必要はなく、総合的に判断されますが、特に法人と個人の資産分離は重要な要素です。個人事業主の場合は、原則として経営者本人の連帯保証が必要となりますが、創業関連保証などの特定の制度では、例外的に免除される場合もあります。
保証限度額と区分
信用保証協会の保証限度額は、一般的に以下のように区分されています。
- 普通保証:最大2.8億円
- 無担保保証:最大8,000万円(普通保証の内枠)
- 特別小口保証:最大2,000万円(普通保証とは別枠)
- セーフティネット保証:最大2.8億円(普通保証とは別枠)
これらの限度額は、すでに利用している保証付き融資の残高も含めた金額となります。たとえば、すでに信用保証協会付きの融資で5,000万円を借り入れている場合、無担保保証の残りの限度額は3,000万円となります。
限度額を超える融資を希望する場合は、担保の提供が必要になることが一般的です。そのため、事前に現在の保証残高を確認しておくことが重要です。
保証協会の無担保無保証融資の審査で押さえておくべきポイント
信用保証協会を通じた融資を受けるためには、審査に通過する必要があります。ここでは、主な審査ポイントについて解説します。
金融機関の事前審査で見られるポイント
信用保証協会付きの融資を申し込む場合、まず金融機関による事前審査があります。この段階で重視されるポイントには、以下のようなものがあります。
- 資金使途の明確さと事業との関連性
- 事業の収益性と将来性
- 返済計画の妥当性
- 経営者の資質や経験
金融機関は独自の審査基準を持っており、取引実績のある金融機関を選ぶことで審査がスムーズになる場合があります。日頃から、取引のある金融機関の担当者とコミュニケーションを取っておくことも重要です。
また、金融機関によって、信用保証協会付き融資への取り組み姿勢が異なる場合があります。積極的に取り組んでいる金融機関を選ぶことも検討すべきポイントです。
保証協会の本審査で見られるポイント
金融機関の事前審査を通過した後、信用保証協会による本審査が行われます。ここでは、以下のような点が重視されます。
- 財務状況(自己資本比率、借入金の返済状況など)
- 事業の継続性と安定性
- 経営者の信用情報や資質
- 提出された事業計画の実現可能性
特に、創業間もない企業や業績不振の企業の場合は、事業計画の内容が重要視されます。市場分析や競合状況、差別化戦略などを含む、具体的で説得力のある事業計画を準備することが審査通過のカギとなります。
また、資金使途と返済計画の整合性も重要なポイントです。借入金で何を行い、どのようにして返済原資を生み出すのかを、明確に説明できることが求められます。
審査で不利になる場合
以下のようなケースでは、無担保無保証での融資審査が厳しくなる可能性があります。
- 税金や社会保険料の滞納がある
- 過去に金融事故(返済遅延や代位弁済)の経験がある
- 赤字決算が続いている
- 借入金が過大で返済負担が重い
- 事業計画が具体性に欠ける
特に税金や社会保険料の滞納は、経営姿勢に問題があると見なされる可能性が高いため、滞納がある場合は事前に解消しておくことが望ましいでしょう。
また、事業内容によっては、保証協会が慎重な姿勢を取るケースもあります。例えば、不動産投資や飲食店など、一部の業種では審査が厳しくなる傾向があります。
保証協会を活用した無担保無保証融資の申込手順
実際に信用保証協会を利用した融資を申し込む際の手順について解説します。
事前の準備
融資申込の前に、以下のような準備をしておくと手続きがスムーズに進みます。
- 必要資金額と資金使途の明確化
- 返済計画の策定
- 事業計画書の作成
- 最新の財務諸表の準備
特に、事業計画書は重要です。資金使途や返済計画、市場分析、売上・利益予測などを具体的に記載しましょう。説得力のある事業計画は、審査通過率を高める重要な要素となります。
準備ができたら、まずは取引のある金融機関や、地域の信用保証協会に相談することをおすすめします。どの融資制度が最適か、必要書類は何かなど、具体的なアドバイスを受けることができます。
必要書類の作成
信用保証協会付き融資を申し込む際には、以下のような書類が必要になります。
- 融資申込書(金融機関所定のもの)
- 事業計画書
- 決算書(過去3期分)
- 試算表(直近のもの)
- 確定申告書(個人事業主の場合)
- 商業登記簿謄本(法人の場合)
- 許認可証(必要な業種の場合)
- 納税証明書
- 身分証明書
その後の申し込みの流れ
申込プロセスは、一般的に以下の流れで進みます。
- 金融機関に融資を申し込む
- 金融機関による事前審査
- 金融機関や保証協会の担当者との面談
- 信用保証協会への保証依頼
- 信用保証協会による本審査
- 保証承諾
- 金融機関との融資契約締結
- 融資実行
申込から融資実行までの期間は、案件の複雑さや繁忙期かどうかによって異なりますが、一般的には2週間〜1ヶ月程度かかることが多いでしょう。創業融資や特別な制度の場合は、さらに時間がかかる場合もあります。
保証協会の無担保無保証融資を利用するメリット
信用保証協会を利用した無担保無保証融資には、多くのメリットがあります。ここでは、その主なメリットについて解説します。
資金調達の選択肢が広がる
担保や保証人がなくても融資を受けられることで、資金調達の可能性が大きく広がります。特に創業間もない企業や、担保となる不動産を持たない企業にとっては、貴重な資金調達手段となるでしょう。
また、セーフティネット保証のように、経済環境の悪化時に通常の保証枠とは別枠で融資を受けられる制度もあります。これにより、景気変動に左右されずに必要な資金を確保できる可能性が高まります。
さらに、創業時や事業承継時など、特定のライフステージに応じた融資制度も充実しています。事業のステージに合わせて、最適な資金調達方法を選択できることも大きなメリットです。
金利や返済条件の優位性がある
信用保証協会付きの融資は、一般的なプロパー融資(金融機関が独自に行う保証なしの融資)と比較して、金利が低く設定されていることが多いものです。これは、金融機関にとって貸し倒れリスクが軽減されるためです。
また、返済期間も比較的長く設定されていることが多く、月々の返済負担を抑えることができます。運転資金であれば5〜7年、設備資金であれば10年以上の返済期間が設定されるケースも珍しくありません。
さらに、一部の制度では、元金返済の据置期間(最初の数ヶ月間は利息のみの返済)を設けることも可能です。創業時など、すぐには収益が見込めない場合でも、資金調達がしやすくなっています。
事業計画の見直しや経営改善のきっかけに
信用保証協会付き融資の申込時には、事業計画書の提出が求められます。これを作成する過程で、自社の事業を客観的に見直し、経営課題や今後の方向性を再確認するきっかけとなります。
また、金融機関や保証協会の担当者との面談を通じて、専門的な視点からのアドバイスを受けることもできます。外部の目を通して自社の経営を見直す貴重な機会となるでしょう。
さらに、融資後もモニタリングが行われることで、計画的な事業運営を継続するきっかけとなります。これは、長期的な経営改善にもつながる重要なポイントです。
保証協会による無担保無保証融資を受ける際の注意点
信用保証協会付き融資には多くのメリットがありますが、いくつかの注意点も理解しておく必要があります。
保証料の負担が大きい
信用保証協会付き融資を利用する際には、融資額に対して一定の保証料を支払う必要があります。保証料率は企業の信用リスクによって異なり、一般的に年0.45%〜2.2%程度の範囲で設定されています。
例えば、1,000万円を借り入れる場合、年間4.5万円〜22万円の保証料負担が発生します。この保証料は通常、融資実行時に一括で支払いますが、融資額から差し引かれることが多いため、実際に手元に入る資金は借入額より少なくなる点に注意が必要です。
ただし、一部の自治体では、保証料の補助制度を設けている場合もあります。地域の産業振興策として、保証料の一部または全額を補助してくれるケースもありますので、事前に確認してみるとよいでしょう。
代位弁済時のリスクが大きい
信用保証協会付き融資で返済が滞った場合、信用保証協会が金融機関に代わって返済(代位弁済)を行います。しかし、これで債務が消滅するわけではありません。債務者は、信用保証協会に対して返済義務を負うことになります。
代位弁済が行われると、信用情報機関にその情報が登録され、今後の融資に大きな影響を及ぼします。一般的に、代位弁済を受けると、5〜10年程度は新たな融資を受けることが難しくなると言われています。
また、代位弁済後は、信用保証協会から厳しい回収手続きが行われることもあります。資産の差し押さえなどのリスクもあるため、返済計画は慎重に立てて確実に実行することが重要です。
保証枠の制限と将来の資金調達への影響
信用保証協会の保証枠には、上限があります。一般的な普通保証の限度額は2.8億円、無担保保証は8,000万円です。一度この枠を使ってしまうと、返済が進むまで新たな保証付き融資を受けることができなくなります。
特に、創業期には資金需要が大きいため、最初から限度額いっぱいまで借りてしまうと、その後の急な資金需要に対応できなくなるリスクがあります。必要最小限の借入にとどめ、保証枠に余裕をもたせておくことも検討すべきでしょう。
また、信用保証協会付き融資に頼りすぎると、プロパー融資への移行が難しくなる場合もあります。長期的な資金調達戦略としては、事業が軌道に乗った段階でプロパー融資への切り替えも視野に入れることが重要です。
保証協会以外で無担保無保証融資を受ける方法
信用保証協会以外にも、無担保無保証で融資を受けられる選択肢があります。ここでは、その他の選択肢について解説します。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫は、中小企業や創業者向けの政策金融機関です。以下のような無担保無保証の融資制度を提供しています。
- 新創業融資制度:創業時や創業後間もない事業者向けの融資で、一定の要件を満たせば無担保無保証人で最大3,000万円まで借りられます。
- 小規模事業者経営改善資金(マル経融資):商工会議所や商工会の推薦を受けた小規模事業者向けの融資で、無担保無保証で最大2,000万円まで借りられます。金利も低く設定されています。
- 新型コロナ対策資金:コロナ禍での資金繰り支援として、特別利子補給制度付きの融資が提供されています。実質的に一定期間無利子となる場合もあります。
日本政策金融公庫の融資は、民間金融機関と比較して審査基準がやや柔軟と言われており、創業間もない企業や小規模事業者にとって、重要な資金調達手段となっています。
地方自治体の制度融資
各地方自治体では、地域経済の活性化を目的とした独自の制度融資を提供しています。これらの中には、無担保無保証で利用できるものも多くあります。
地方自治体の制度融資の特徴は、以下の通りです。
- 信用保証料の補助:自治体が保証料の一部または全額を補助するケースが多い
- 低金利:自治体が利子補給を行い、実質的な金利負担を軽減
- 地域特性に合わせた制度設計:地域の主要産業や課題に応じた特別枠が設けられている
制度融資は自治体によって内容が大きく異なるため、地元の商工会議所や自治体の産業振興課に問い合わせて最新情報を確認することが重要です。
民間金融機関のビジネスローン
最近では、民間金融機関も中小企業向けに無担保のビジネスローン商品を提供しています。これらには、以下のような特徴があります。
- スピード審査:最短で数日での融資実行が可能
- 申込手続きの簡素化:必要書類が少なく、オンライン申込にも対応
- 小口融資に対応:数百万円程度の小口資金ニーズに対応
ただし、信用保証協会付き融資に比べると金利が高めに設定されていることが多く、返済期間も比較的短いのが一般的です。急な資金需要への対応や、つなぎ資金としての活用が向いています。
ノンバンクも含めた選択肢を検討する場合は、金利や手数料、返済条件を十分に比較検討することが重要です。表面的な金利だけでなく、手数料なども含めた実質的なコストを確認しましょう。
まとめ
信用保証協会を活用することで、一定の条件を満たせば、担保や保証人なしでの融資を受けることが可能です。特に創業時や経営改善時、また経済環境の急変時には、貴重な資金調達手段となります。
ただし、無担保無保証で融資を受けるには、説得力のある事業計画や返済計画の策定が重要です。また、保証料の負担や保証枠の制限など、いくつかの注意点も理解しておく必要があります。自社の状況に合わせて最適な融資制度を選び、計画的に資金調達を行うことが事業成功の鍵となるでしょう。
まずは、地域の信用保証協会や取引のある金融機関に相談してみることをおすすめします。専門家のアドバイスを受けながら、自社に最適な資金調達方法を見つけていきましょう。
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