2025.06.13
不動産担保ローンにかかる事務手数料の相場はどのくらい?他にかかる費用についても紹介
不動産担保ローンで事業資金を調達する場合、金利だけでなく、事務手数料や登記費用などの初期費用も必要となります。これらの費用を事前に理解していないと、思わぬ出費が発生してしまうという事態になりかねません。
本記事では、不動産担保ローンの事務手数料の相場や計算方法を詳しく解説します。また、登記費用や印紙税などの諸費用についても、具体的な金額の目安を示しながら紹介します。
この記事を読めば、不動産担保ローン利用時にかかる総費用を事前に把握でき、自社の資金計画をより正確に立てられるようになります。
不動産担保ローンの事務手数料とは
不動産担保ローンを契約する際、多くの方が注目するのは金利の高さですが、実は初期費用として、事務手数料も重要な検討ポイントとなります。
事務手数料の基本
事務手数料とは、融資実行にあたって金融機関が行う与信審査や契約手続き、担保評価などの事務作業に対して支払う費用です。これは、融資を受ける際の初期コストとして必ず発生します。
一般的に、不動産担保ローンの事務手数料は、金融機関の内部コストをカバーするためのものであり、審査にかかる人件費や書類作成費用、システム利用料などが含まれています。つまり、融資を受けるための「入場料」のような性質を持っています。
事務手数料は、金融機関によって金額設定や徴収方法が異なるため、複数の金融機関を比較検討する際には事務手数料も含めた総コストで判断することが重要です。金利が低くても事務手数料が高額だと、トータルの負担額が大きくなる可能性があります。
事務手数料の算出方法
不動産担保ローンの事務手数料には、主に2つの算出方法があります。金融機関によって採用している方式が異なるため、どちらの方式を採用しているかを確認することが大切です。
一つが、「定額制」です。これは、融資額にかかわらず、1契約あたり一定額の手数料を支払う方式です。例えば、融資額が500万円でも5,000万円でも同じ金額(10万円や20万円など)を支払います。比較的小口の融資を受ける場合、パーセンテージ方式よりもコスト高になる可能性があります。
もう一つが、「融資額比例制(パーセンテージ方式)」です。この方式では、融資額に対して一定の割合で手数料が計算されます。融資額が大きくなればなるほど、支払う手数料も比例して高くなります。大口融資の場合は、相対的に高額な手数料となるため注意が必要です。
中には、「定額制+融資額比例制」という複合的な方式を採用している金融機関もあります。例えば、「基本料10万円+融資額の1%」といった形式で手数料を設定しているケースもあるので、契約前に詳細を確認しましょう。
事務手数料を支払うタイミング
事務手数料の支払いタイミングも、資金計画を立てる上で重要なポイントです。一般的には、以下のパターンが存在します。
まず最も多いのが、「融資実行時に一括支払い」するパターンです。融資金から事務手数料が差し引かれて入金されるケースが多く、実質的に手元に届く資金は借入額から事務手数料を引いた金額になります。
次に、「申込時または契約時に前払い」するパターンもあります。この場合、融資実行前に手持ち資金から事務手数料を支払う必要があるため、当面の運転資金に余裕がない状況では負担に感じることもあるでしょう。
中には、「融資金の返済に上乗せ」して分割払いできるケースもありますが、この場合は、事務手数料に対しても金利が発生することがあるため、総支払額は増加します。
事務手数料の支払い方法によって実質的な資金調達額が変わってくるため、必要な資金を確実に調達するには、この点も事前に確認しておくことが重要です。
不動産担保ローンの事務手数料の相場
不動産担保ローンを検討する際、事務手数料がどの程度かかるのか把握しておくことで、資金計画をより具体的に立てることができます。
金融機関別の事務手数料の相場
不動産担保ローンの事務手数料は、金融機関の種類によって相場が異なる傾向があります。
銀行の場合、定額制では1契約あたり10万円〜20万円程度が相場となっています。融資額比例制を採用している銀行では、融資額の1.0%〜2.0%程度を事務手数料として設定しているケースが多いでしょう。地方銀行や信用金庫は、都市銀行に比べてやや低めの手数料設定をしていることがあります。
一方、ノンバンクや貸金業者の場合は、銀行よりも高めの手数料を設定していることが多く、定額制では15万円〜30万円程度、融資額比例制では2.0%〜3.0%程度が一般的です。これは、審査基準が比較的緩やかな分、リスクに見合った手数料を設定しているためです。
同じ融資額でも金融機関によって事務手数料に大きな差が出ることがあるため、複数の金融機関から見積もりを取得して比較検討することをおすすめします。
借入額別の事務手数料シミュレーション
具体的な借入額に応じた、事務手数料のシミュレーションを見てみましょう。金融機関によって異なりますが、一般的な相場を元に計算してみます。
借入額 | 定額制 | 融資額比例制(2%) | 融資額比例制(3%) |
500万円 | 10万円〜20万円 | 10万円 | 15万円 |
1,000万円 | 10万円〜20万円 | 20万円 | 30万円 |
3,000万円 | 10万円〜20万円 | 60万円 | 90万円 |
このシミュレーションからわかるように、少額の借入であれば、融資額比例制の方が有利になる可能性が高く、高額の借入では、定額制の方が有利になることが多くあります。自社の借入予定額に応じて、どちらの方式を選ぶべきか検討するとよいでしょう。
不動産担保ローンで事務手数料以外にかかる費用
不動産担保ローンを利用する際、事務手数料だけでなく、他にもさまざまな費用が発生します。
登記費用
不動産担保ローンでは、借入金の担保として、不動産に抵当権を設定する必要があります。この抵当権設定には、登記費用がかかります。登記費用は、主に「登録免許税」と「司法書士報酬」から構成されています。
登録免許税は、抵当権設定の登記を行う際に国に納める税金です。税額は、抵当権の債権額(借入額)に対して0.4%と定められています。例えば、1,000万円の融資を受ける場合、登録免許税は4万円(1,000万円×0.4%)となります。
司法書士報酬は、抵当権設定登記の手続きを司法書士に依頼する際の費用です。一般的な相場は、基本報酬として3万円〜5万円程度、これに書類作成料や交通費などの実費が追加されます。複数の不動産を担保とする場合や、状況が複雑な場合は、さらに費用が増加することがあります。
司法書士の選定は金融機関に一任するケースが多いですが、自分で司法書士を指定できる場合は複数の事務所から見積もりを取ることでコスト削減できる可能性があります。
印紙税について
不動産担保ローン契約時には、金銭消費貸借契約書に印紙を貼付し、印紙税を納める必要があります。印紙税は、契約書に記載された借入金額によって税額が変わります。
印紙税の税額は、以下のような段階的な設定となっています。
借入金額 | 印紙税額 |
100万円超 ~ 500万円以下 | 2,000円 |
500万円超 ~ 1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超 ~ 5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超 ~ 1億円以下 | 6万円 |
1億円超 ~ 5億円以下 | 10万円 |
また、契約書の作成方法によっても、印紙税額が変わることがあります。例えば、契約書を割賦償還方式(元利均等返済など)で作成した場合、記載金額は、借入元本に利息を加えた総返済額となるため、印紙税額が高くなる可能性があります。
印紙税は比較的少額ではありますが、借入額が大きくなると無視できない金額になるため、資金計画に組み込んでおくことが重要です。
不動産調査・鑑定費用
不動産担保ローンでは、担保となる不動産の価値を正確に評価するために、不動産調査や鑑定が行われることがあります。この費用も借り手が負担するケースが多いものです。
不動産調査費用は、金融機関が独自に行う簡易的な調査の場合は、無料または数万円程度ですが、専門の調査会社や不動産鑑定士による本格的な調査や鑑定を要する場合は、物件の種類や規模によって異なり、一般的には5万円〜20万円程度かかることがあります。
特に、以下のようなケースでは、詳細な調査・鑑定が必要になる可能性が高くなります。
- 借入額が高額である場合
- 担保物件が特殊な用途(工場、特殊建築物など)である場合
- 立地条件が特殊(過疎地や開発制限区域内など)である場合
- 建物の老朽化が進んでいる場合
不動産調査・鑑定費用は金融機関によって料金体系や負担割合が異なるため、融資の申込前に確認しておくことをおすすめします。
火災保険料
不動産担保ローンでは、担保となる建物に火災保険の加入が義務付けられることがほとんどです。これは、火災などで担保物件が損壊した場合のリスクに備えるためのものです。
火災保険料は、建物の構造や築年数、保険金額、保険期間によって大きく異なります。木造建築の場合は、鉄筋コンクリート造に比べて保険料が高くなる傾向があります。一般的な事務所ビルなどの場合、1,000万円の保険金額で年間数万円程度が目安となりますが、工場や倉庫などの用途では、火災リスクが高いとみなされ、さらに高額になることがあります。
多くの金融機関では、ローン契約期間と同じ期間の長期火災保険への加入を求めることがあります。例えば、10年のローン契約であれば、10年間の火災保険に一括で加入することになり、その場合の保険料は、まとまった金額(数十万円以上)になることもあります。
また、単純な火災保険だけでなく、地震保険や借家人賠償責任保険などの特約を要求される場合もあるため、実際に必要な保険の内容と保険料を事前に確認して予算に組み込んでおくことが重要です。
事務手数料と諸費用に関する注意点
不動産担保ローンの費用を理解したところで、実際の利用にあたって知っておくべき注意点についても確認しておきましょう。
金融機関ごとの違いがある
不動産担保ローンの費用は金融機関によって大きく異なります。比較検討する際には、以下のポイントに注目することが重要です。
まず、事務手数料の算出方法と金額を確認しましょう。定額制と融資額比例制では、借入額によってどちらが有利になるかが変わります。また、同じ算出方法であっても、金融機関によって料率や金額が異なる場合があります。
次に、金利だけでなく総返済額での比較が必要です。金利が低くても、事務手数料が高額だったり、その他の諸費用が多くかかったりする場合、トータルのコストパフォーマンスが悪くなることがあります。
さらに、どの費用が必須でどの費用が任意なのかを確認しましょう。例えば、不動産調査を金融機関指定の業者に依頼する必要があるのか、自分で手配できるのかによって、コストが変わる場合があります。
複数の金融機関から見積もりを取り、「融資実行額-諸費用=実質手取り額」と「総返済額(元本+利息+諸費用)」の両方を比較することで、より適切な判断ができるでしょう。
費用詳細の契約前での確認
不動産担保ローンの契約前には、必ず以下の費用詳細を確認しておきましょう。思わぬ追加費用が発生するリスクを回避できます。
まず、見積書や契約書に記載されている全ての費用項目を確認し、不明な点があれば質問することが大切です。特に、「諸経費」や「その他費用」といった曖昧な表現がある場合は、具体的な内訳を確認しましょう。
次に、費用の支払いタイミングと方法を明確にしておきましょう。一括前払いなのか、融資実行時に差し引かれるのか、返済に含まれるのかによって、準備すべき資金計画が変わってきます。
また、契約後のキャンセルや、条件変更時の費用も確認しておくべきです。審査通過後に何らかの理由でローンをキャンセルした場合、それまでにかかった調査費用などを請求される可能性があります。
契約書や重要事項説明書に記載されている費用関連の項目は、細部まで目を通して理解しておくことが重要です。不明点があれば、必ず契約前に担当者に確認するようにしましょう。
よくある質問への回答
不動産担保ローンの事務手数料や諸費用について、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。
事務手数料は交渉できるのか
不動産担保ローンの事務手数料は、場合によっては交渉の余地があります。特に以下のようなケースでは、交渉が成功する可能性が高まります。
まず、金融機関との取引実績がある場合です。長期的な取引関係がある場合や、預金や他の融資など複数の取引がある場合は、交渉の材料になります。
次に、借入額が大きい場合も交渉しやすいでしょう。金融機関にとって大口顧客となる借入額であれば、事務手数料の減額や分割払いなどの柔軟な対応をしてもらえる可能性があります。
さらに、複数の金融機関から見積もりを取得しておくことも有効です。他行から、より好条件の提案を受けていることを伝えれば、条件改善の交渉材料になります。
交渉にあたっては、一方的な値下げ要求ではなく、金融機関にとってもメリットのある提案をすることがポイントです。例えば、「長期的な取引関係を築きたい」「今後も継続的に融資を利用したい」といった将来的な取引拡大の可能性を示唆するなど、Win-Winの関係構築を意識しましょう。
事務手数料の分割払いは可能か
事務手数料の分割払いが可能かどうかは、金融機関によって対応が異なります。一般的な状況を解説します。
多くの金融機関では、事務手数料は融資実行時の一括払いが原則となっています。これは、事務手数料が融資実行までの審査や手続きに対する対価という性質を持つためです。
ただし、一部の金融機関では、顧客の資金状況や借入条件によっては、事務手数料の分割払いに応じてくれるケースもあります。この場合、返済額に上乗せして毎月分割で支払う形となりますが、分割払いにすると事務手数料に対しても金利が発生する可能性があるため、総支払額は増加します。
また、事務手数料の支払いを、融資実行時に融資金額から差し引く形で処理するケースも多くあります。例えば、1,000万円の融資で事務手数料が20万円の場合、実際に手元に入るのは980万円となります。
分割払いの可否や条件は金融機関の融資方針によって大きく異なるため、気になる場合は事前に交渉してみる価値があります。特に長期的な取引があったり、借入額が大きかったりする場合は、交渉の余地が生まれやすいでしょう。
キャンセル時の費用は返還されるか
融資契約のキャンセルや取り下げ時に、すでに支払った費用が返還されるかどうかは、キャンセルのタイミングや費用の種類によって異なります。
事務手数料については、一般的に審査申込段階では発生せず、融資契約締結時や融資実行時に支払うことが多いため、審査中のキャンセルであれば支払う必要はありません。ただし、契約締結後のキャンセルの場合は、すでに金融機関側で事務処理が進んでいるため、事務手数料の一部または全額を請求されるケースがあります。
不動産調査費用や鑑定費用については、一度調査や鑑定が行われた後のキャンセルでは、実費として請求されることが多いものです。これは、すでに外部の調査会社や鑑定士に支払いが発生しているためです。
登記費用や印紙税については、実際に登記手続きや契約書作成が行われる前のキャンセルであれば発生しませんが、すでに手続きが完了している場合は返還されないことが一般的です。
キャンセル時の費用負担について、契約前に詳細な条件を確認しておくことが重要です。特に、大きな金額となる可能性のある不動産調査費用などは、キャンセル時の取り扱いについて事前に確認しておきましょう。
まとめ
不動産担保ローンを利用する際には、金利だけでなく事務手数料やその他の諸費用も重要な検討ポイントとなります。事務手数料は、定額制または融資額比例制で計算され、一般的には10万円~20万円、または融資額の2~3%程度が相場です。さらに、登記費用、印紙税、不動産調査費用、火災保険料などの追加費用も発生します。
これらの費用を事前に把握し、複数の金融機関から見積もりを取得して比較検討することで、最適な資金調達先を選定できます。また、交渉によって事務手数料を軽減できる可能性もあるため、積極的に交渉してみることも大切です。不動産担保ローンの利用を検討する際は、資金計画に諸費用も含めて検討し、実質的な調達額と総コストを正確に把握しましょう。
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