2025.06.19
不動産担保ローンと住宅ローンの違いは?利用する際の注意点、併用についても解説
不動産の購入や事業のための資金調達には、不動産担保ローンや住宅ローンが用いられることがあります。これらのローンは、名称こそ似ていますが、利用できる目的や融資条件などには大きな違いがあります。そのため、特徴や違いを正確に理解した上で、自身の状況に合った選択をすることが大切です。
この記事では、不動産担保ローンと住宅ローンの違いを基本的なポイントから整理し、それぞれを利用する際の注意点についても説明します。さらに、金利や融資限度額、審査条件の違いについても比較しながら、資金調達の際に役立つ情報を詳しく解説していきます。また、この二つのローンを併用できるかどうかについても触れていきます。
不動産担保ローンと住宅ローンの基本的な違い
不動産担保ローンと住宅ローンは、どちらも不動産を担保にして融資を受ける仕組みですが、根本的な目的や対象者が異なります。
仕組みの違い
住宅ローンは、文字通り住宅の取得を目的としたローンです。自己居住用の住宅を、購入・新築・改築する際に利用できる個人向けの融資商品です。住宅政策の一環として国の支援も受けている商品であるため、比較的低金利で融資を受けられる特徴があります。
一方、不動産担保ローンは、すでに所有している不動産を担保として差し出し、事業資金や投資資金など、用途を問わず資金調達できる融資商品です。個人だけでなく法人も利用できるため、事業拡大や運転資金の調達手段として活用されることが多くあります。
最も大きな違いとして、住宅ローンは「住宅取得のため」という目的が限定されているのに対し、不動産担保ローンは融資金の使途が自由である点です。この違いが、その他の条件にも大きく影響を与えています。
融資対象者の違い
住宅ローンは、基本的に個人のみが対象です。自己居住用の住宅を取得するための融資であるため、法人は原則として利用できません。また、個人でも一定の年齢制限や収入条件が設けられていることが一般的です。
これに対して、不動産担保ローンは、個人・法人どちらも利用できる融資商品です。経営者が事業資金を調達したい場合や、法人が事業拡大のための資金を必要とする場合にも活用できます。個人の場合も、投資用不動産の購入資金や事業資金など、幅広い目的で利用できるのが特徴です。
法人が資金調達をする場合には、不動産担保ローンが重要な選択肢となるため、経営者や財務担当者は、両者の違いを理解しておくことが大切です。
住宅ローンの特徴
住宅ローンは、自己居住用の住宅取得に特化した融資商品として、いくつかの優位性があります。
住宅ローンの金利
住宅ローンの最大の魅力は、他の融資商品と比較して圧倒的に低金利である点です。一般的な住宅ローンの金利は、0.3%~3%程度と非常に低く設定されています。これは、国の住宅政策の一環として、住宅取得を支援する仕組みが整えられているためです。
金利タイプも多様で、固定金利型、変動金利型、固定期間選択型など、借り手のニーズや将来の金利変動リスクへの対応方法によって選択できます。特に長期固定金利の商品は、将来の金利上昇リスクから借り手を守る仕組みとなっています。
また、住宅ローン減税などの税制優遇も受けられるため、総合的なコストパフォーマンスが非常に高いのが特徴です。これにより、長期返済計画を立てやすく、家計への負担を軽減することができます。
住宅ローンの返済期間や融資限度額
住宅ローンは、長期返済が前提となっており、一般的には35年程度、場合によっては最長40年の返済期間を設定できます。この長期返済により、月々の返済負担を軽減することが可能です。
融資限度額については、一般的には約1億円程度までとされていますが、金融機関や借り手の年収、物件価値などによって変動します。基本的には、年収の何倍までという形で上限が設定されることが多いものです。
住宅金融支援機構が提供するフラット35や、各銀行の独自商品など、さまざまな住宅ローン商品が提供されており、借り手は自分の状況に合った商品を選択できます。金利の低さと返済期間の長さにより、高額な住宅取得を現実的な返済計画で実現できる点が、住宅ローンの大きな魅力です。
団体信用生命保険の付帯
住宅ローンには、ほとんどの場合「団体信用生命保険(団信)」が付帯しています。これは、ローン返済中に借り手が死亡または高度障害状態になった場合に、保険金でローン残高が完済される仕組みです。
団信は借り手だけでなく、その家族にとっても大きな安心材料となります。万が一の際に住宅を失うリスクを軽減し、残された家族の負担を軽減する重要な保障です。近年では、がん保障や三大疾病保障などが付加された団信も増えており、保障の範囲が広がっています。
この団信の保険料は、多くの場合、ローン金利に含まれていることが一般的です。別途加入手続きや保険料支払いを意識する必要がなく、自動的にリスク対策が整う点も住宅ローンの大きな利点です。
住宅ローンを利用する際の注意点
住宅ローンには多くのメリットがある一方で、いくつかの制約や注意点も存在します。
用途の制限
住宅ローンの最大のデメリットは、その用途が「自己居住用住宅の取得・新築・改築」に厳格に制限されている点です。投資用物件の購入や事業資金、生活資金などには利用できません。
住宅の購入後も、契約で定められた期間内に自己居住を開始する必要があり、購入した住宅を賃貸に出すなどの用途変更を行う場合には、金融機関の承認が必要になることがほとんどです。無断で用途を変更すると、一括返済を求められるケースもあります。
このように、資金使途に厳格な制限があるため、柔軟な資金活用を考える経営者や投資家にとっては、大きな制約となります。例えば、事業用と居住用が混在する物件の購入の場合、住宅ローンだけでは対応できないことがあります。
厳格な審査基準
住宅ローンは低金利で長期の融資となるため、金融機関による審査は非常に厳格です。安定した収入や勤続年数、年齢、健康状態など、さまざまな面から審査が行われます。
特に、年収に対する返済比率(返済負担率)は重視され、一般的には、年収の30%~35%以内に月々の返済額が収まることが求められます。また、勤続年数が短い場合や、非正規雇用の場合は、審査が厳しくなる傾向にあります。
健康状態も重要な審査項目で、団体信用生命保険の加入が必須となるため、持病がある場合には審査に影響することがあります。このように、さまざまな条件をクリアする必要があるため、審査に通過できない可能性も考慮しておく必要があります。
担保順位の制限
住宅ローンでは、融資対象となる不動産に対して、「第一順位」の抵当権設定が求められるのが一般的です。これは、万が一の差し押さえ時に、住宅ローンを提供した金融機関が最優先で弁済を受ける権利を確保するためです。
この制約により、すでに他のローンで第一順位の抵当権が設定されている不動産に対して、住宅ローンを利用することは基本的にできません。また、住宅ローンを利用中の物件に対して、追加で担保融資を受ける場合も制限が生じます。
不動産を有効活用して、複数の資金調達を行いたい経営者にとっては、この担保順位の制限が資金調達の幅を狭める可能性があります。特に事業拡大期には、この制約が大きな障壁となることがあります。
不動産担保ローンの特徴
不動産担保ローンは、住宅ローンとは異なる特性を持ち、特に事業資金の調達においては大きなメリットがあります。
資金使途の自由度が大きい
不動産担保ローンの最大の特徴は、融資金の使途に基本的に制限がない点です。事業資金、運転資金、設備投資、不動産投資、借り換え資金など、さまざまな目的に活用できます。
例えば、事業拡大のための新規出店資金や、一時的な資金不足を補うための運転資金、他の高金利ローンの借り換えなど、経営者にとって必要な場面で柔軟に活用できます。住宅ローンでは対応できない、事業用不動産の購入資金としても利用可能です。
この柔軟性により、経営戦略に合わせた資金調達が可能となり、ビジネスチャンスを逃さず、事業成長を資金面からサポートすることができます。状況変化の激しいビジネス環境において、この自由度は大きな武器となります。
法人でも利用可能
不動産担保ローンは、個人だけでなく法人も利用できる融資商品です。法人が所有する不動産を担保として、事業資金を調達することが可能です。これにより、法人としての信用力だけでなく、保有資産の価値を活かした資金調達が実現します。
法人名義の不動産だけでなく、場合によっては、代表者個人名義の不動産を担保として、法人向け融資を受けることも可能なケースがあります。これにより、法人としての信用力が不足している創業間もない企業や、業績が不安定な企業でも資金調達の可能性が広がります。
法人の成長段階に応じた柔軟な資金調達ができる点は、経営者にとって大きなメリットです。特に、銀行融資やビジネスローンなどの無担保融資が難しい状況において、不動産担保ローンは重要な選択肢となります。
高額融資が可能
不動産担保ローンは、担保となる不動産の評価額に基づいて融資額が決定されるため、条件が整えば高額の融資を受けることが可能です。一般的には、担保不動産の評価額の50%~80%程度が融資限度額となりますが、状況によっては最大10億円程度の融資も可能です。
この高額融資が可能な点は、大規模な設備投資や事業買収、複数店舗の一斉出店など、まとまった資金が必要なプロジェクトを実行する際に非常に有効です。無担保ローンでは調達が難しい金額でも、不動産の価値を活用することで実現できます。
また、複数の不動産を担保として提供することで、さらに融資限度額を引き上げることも可能です。これにより、事業規模に合わせた大型の資金調達が実現し、成長機会を逃さない経営が可能になります。
不動産担保ローンを利用する際の注意点
不動産担保ローンには多くのメリットがある一方で、いくつかの重要なデメリットや注意点も存在します。
金利の高さ
不動産担保ローンは、住宅ローンと比較して金利が高めに設定されています。一般的には、1%~15%程度と幅がありますが、平均的には住宅ローンの2~3倍程度の金利水準となることが多いでしょう。これは、使途が自由であることや、リスク管理の観点から、金融機関が高めの金利を設定しているためです。
金利は借り手の信用力、担保となる不動産の評価額や種類、融資期間などによって大きく変動します。特に、法人の業績が不安定な場合や、担保不動産の流動性が低い場合には、さらに高金利になる傾向があります。
長期間にわたる返済では金利負担が大きくなるため、事業計画や返済計画を慎重に立てる必要があります。特に、収益性の低いプロジェクトへの資金調達には、金利負担が事業収支を圧迫するリスクがあることを認識しておくべきです。
担保評価の厳しさ
不動産担保ローンでは、担保となる不動産の評価額が融資限度額を大きく左右します。この評価は、金融機関の基準に基づいて行われ、一般的な市場価格よりも保守的(低め)に評価されることが多いものです。
特に、地方の物件や特殊な用途の不動産、築年数の古い物件などは、大幅に評価が下がることがあります。また、不動産市況の変動によっても評価額は影響を受けるため、市場が低迷している時期には、思ったような融資額を得られない可能性があります。
担保評価は、金融機関ごとに基準が異なるため、複数の金融機関に相談して最適な条件を探すことが重要です。また、担保評価の際には、不動産鑑定士による鑑定評価が必要となるケースもあり、その費用は借り手負担となることが一般的です。
団体信用生命保険が付帯しない
住宅ローンとは異なり、不動産担保ローンには、通常、団体信用生命保険(団信)が付帯していません。これは、融資の目的や対象者(法人含む)が異なるためです。そのため、借り手が死亡または高度障害状態になった場合でも、ローン債務は免除されず、相続人や連帯保証人が返済を続ける必要があります。
経営者が不動産担保ローンを利用する場合、万が一の際のリスク対策を別途考慮する必要があります。生命保険や障害保険などで個別に備えることが一般的ですが、これらは追加のコストとなります。
特に、個人事業主や中小企業の経営者にとっては、リスク管理の観点から対策を講じておくことが重要です。事業継続や家族の生活保障を考慮した、総合的な資金計画を立てる必要があります。
不動産担保ローンと住宅ローンの併用
自己居住用住宅の購入と、事業資金の調達を同時に考える経営者にとって、両ローンの併用は重要な検討事項です。
併用の具体例
不動産担保ローンと住宅ローンの併用は、一定の条件下で可能です。具体的には、次のようなケースが考えられます。
まず考えられるのは、同一物件に対して住宅ローンで第一順位の抵当権を設定し、不動産担保ローンで第二順位の抵当権を設定するケースです。例えば、住宅購入時に頭金を減らし、その分の資金を事業に活用するような場合がこれに該当します。ただし、住宅ローンを提供する金融機関が、第二順位の抵当権設定を許可するかどうかがポイントとなります。
次に、複数の不動産を所有している場合に、居住用物件には住宅ローン、別の物件には不動産担保ローンを利用するケースがあります。これは、比較的スムーズに実現できる併用方法で、それぞれの不動産の特性に合わせた最適な融資を受けられるメリットがあります。
さらに、住居と事業所が一体となった物件を購入する際に、住居部分は住宅ローン、事業所部分は不動産担保ローンで資金調達するケースもあります。この場合、物件の用途別の価値評価が重要になります。
併用する際の注意点
併用を検討する際には、いくつかの重要な注意点があります。まず、第一順位と第二順位の抵当権を同一物件に設定する場合、第二順位の不動産担保ローンは、金利が高くなる傾向があります。これは、担保としての優先順位が低いことによるリスク増加を反映しています。
次に、総返済負担が過大にならないよう注意が必要です。2つのローンを組むことで月々の返済額が増加するため、収入や事業収益に対する返済負担率が、適切な範囲に収まるかを事前に確認すべきです。一般的には、総返済負担が収入の40%を超えると、返済リスクが高まるといわれています。
また、各金融機関の融資方針も重要なポイントです。住宅ローンを提供する金融機関が、第二順位の抵当権設定を認めない場合もあります。事前に金融機関の方針を確認することで、実現可能な併用プランを検討できます。
不動産担保ローンと住宅ローンの選び方
目的や状況に応じて、どちらのローンが適しているかを判断するためのポイントを解説します。
目的に合わせて選ぶ
自己居住用の住宅を購入する場合は、住宅ローンが最適な選択肢です。低金利で長期返済が可能なため、月々の返済負担を抑えながら住宅を取得できます。また、住宅ローン控除などの税制優遇も大きなメリットです。特に、長期間(35年前後)にわたって同じ住宅に住む予定であれば、住宅ローンの恩恵を最大限に受けられます。
一方、事業資金の調達や投資用不動産の購入、リフォーム資金など、住宅取得以外の目的には不動産担保ローンが適しています。特に法人による資金調達や、短期間で資金回収が見込める事業投資には、柔軟性の高い不動産担保ローンが有効です。
両者の中間的なケースとしては、自宅兼事務所の購入があります。この場合、用途の割合や将来計画に応じて最適なローンを選択する必要があります。居住部分が大きく長期利用が前提なら住宅ローン、事業用途が主で将来的な用途変更も考えるなら不動産担保ローンというように、主目的に合わせた選択が重要です。
自身の状況を踏まえて選ぶ
ローン選択の際には、自身の経済状況や将来計画を冷静に分析することが大切です。安定した収入があり、長期的に同じ場所に住む予定なら、住宅ローンが向いています。住宅ローンは審査が厳格ですが、一度審査に通れば低金利の恩恵を長期間受けられます。
一方、事業収入が変動的であることや、将来的に住居や事業所の移転を考えている場合は、柔軟性の高い不動産担保ローンの方が適しているケースがあります。また、すでに不動産を所有している場合、その資産価値を活用するためには、不動産担保ローンが効果的です。
年齢も重要な判断基準です。若い世代であれば長期の住宅ローンも問題ありませんが、高齢になるほど融資期間が制限されるため、年齢に合わせた返済計画を立てる必要があります。住宅ローンは、一般的に、完済時の年齢が80歳以下という条件があることが多くみられます。
専門家からのコンサルティングを受ける
不動産担保ローンと住宅ローンは仕組みが複雑で、さらに金融機関によって条件が大きく異なります。そのため、最適な選択をするためには、専門家のアドバイスを受けることが非常に有効です。
ファイナンシャルプランナーや不動産投資コンサルタント、税理士などは、総合的な視点からアドバイスを提供してくれます。特に、事業と個人の資産が密接に関連している経営者の場合、税金面も含めた総合的なプランニングが重要です。
複数の金融機関から見積もりを取ることも大切です。同じ条件でも、金融機関によって金利や融資条件は異なるため、複数の選択肢を比較検討することで、より有利な条件でローンを組むことができます。特に不動産担保ローンは、金融機関による条件の差が大きいため、比較検討の価値は高いでしょう。
まとめ
不動産担保ローンと住宅ローンは、それぞれに異なる特徴と役割を持つ融資商品です。住宅ローンは自己居住用住宅の取得に特化し、低金利・長期返済・税制優遇というメリットがある一方で、使途制限や厳格な審査基準というデメリットがあります。不動産担保ローンは、使途自由・法人利用可能・高額融資が可能というメリットがありますが、高金利や団信不在というデメリットも存在します。
自身の目的や状況に最適なローンを選択するためには、両者の違いを十分に理解し、専門家のアドバイスも取り入れながら慎重に判断することが重要です。場合によっては、両者の併用も検討価値があります。事前に十分な情報収集と計画を行い、長期的な視点で資金計画を立てることで、効率的な資金調達と安定した返済を実現しましょう。
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