2025.05.27
ABL(動産・債権担保融資)とは?新たな資金調達方法を理解する
ABL(Asset Based Lending)は、企業が保有する動産や売掛債権などを担保に資金を調達する新しい手法です。日本ではまだそれほど浸透していませんが、海外では一般的な金融アプローチとして広く利用されています。
多くの企業にとって、ABLは在庫や売掛金などを有効活用しながら事業を継続できるメリットがあります。そのため、不動産を担保にできない企業や資金調達に苦労している中小企業にとっては特に注目の方法です。
近年は経営環境の急激な変化に伴い、柔軟な資金調達の選択肢が求められています。本記事ではABLの基本的な仕組みや特徴、業種別の活用事例などを分かりやすく解説し、導入検討のポイントを整理していきます。
ABL(動産・債権担保融資)とは?
まずはABLの基本的な意味と、なぜ今注目されているのかを理解することが大切です。
ABLとは、企業が持つ動産(在庫、製品、機械など)や債権(売掛金など)を担保に融資を受ける仕組みです。不動産が不要な点が特徴で、担保にできる資産の種類が多いほど利用しやすくなります。海外では伝統的に普及していますが、日本ではまだ認知度が低いのが現状です。とはいえ、資金調達の柔軟性を高める選択肢として、徐々に注目が高まっています。
日本ではまだまだ新しいABL
日本では銀行融資といえば不動産担保が一般的でしたが、海外では不動産に限らず企業が保有する在庫や売掛金などの流動資産を担保にするABLが広く利用されています。国内でも少しずつ事例が増えはじめ、担保設定や債権譲渡登記などの手続きが整備されつつあるのが現状です。ただし、情報が公示されるリスクや手続きの煩雑さなど、課題もまだ残っています。
今こそABLを理解すべき理由
経営環境がめまぐるしく変化する中で、企業は迅速かつ柔軟に資金を調達できる手段を求められています。ABLを活用すれば、不動産を所有していない企業や、従来の融資審査では不利とされる業種でも資金を確保しやすくなります。また、悪化した信用状況をカバーできる可能性があるため、リスク管理や事業継続の観点からも注目度が高まっています。
ABLの特徴とメリット
ABLを導入することで得られる具体的なメリットを中心に、特徴を把握しましょう。
ABLの最も大きな特徴は、不動産以外の資産を担保とすることで融資を受けられる点にあります。担保となる資産の価値を金融機関が評価するため、売掛先の信用調査や在庫の市場価値の査定が重要になります。正確で透明性のある資産管理を行うことで、金融機関側の信頼を得やすく、より有利な条件で資金を確保できる可能性があります。
ABLで担保にできる資産
ABLで担保にできる代表的なものとしては、在庫(商品や製品)、売掛債権、棚卸資産などが挙げられます。企業が日常的に使うこれらの資産は変動しやすい一方で、市場価値や売掛先の信用力が認められれば、柔軟な資金調達に結びつきます。ただし、担保価値が変動しやすい点には注意が必要で、定期的な在庫確認や売掛先の調査が求められるケースもあります。
一般的な不動産担保融資とABLの大きな違いは、
・不動産担保融資→不動産の売却価値=担保価値とみなし、その価値の範囲内で融資する
・ABL→担保資産によって生み出されるキャッシュフローを裏付けとして融資する
ということです。
例えば、10万円で売っている商品の在庫が100個あるならば、それを全て売却した場合に1,000万円の現金が入ってきます。しかし、100個の在庫に1,000万円の担保価値があり、ABLによって1,000万円の融資が受けられるわけではありません。100個の在庫を全て希望価格で売ることができ、無事に1,000万円のキャッシュフローが生まれるとは限らないからです。
また、何らかの事情(在庫の劣化や流行の移り変わりなど)によって価値が目減りすることも考えられます。したがって、ABLでは担保価値を低く見積もって融資する必要があります。ABLの担保資産の価値を考える際には、この点をしっかり理解しておくことがポイントです。
ABLが非常に普及しているアメリカの情報を参考にすると、ABLに利用する資産別の担保掛目の中間値は以下のようになっています。
資産 | 担保掛目中間値(%) | |
実行ベース | 上限 | |
有価証券 | 90% | 90% |
売掛債権 | 85% | 85% |
在庫 | 25~50% | 30~60% |
機械 | 70% | 80% |
不動産 | 55% | 70% |
資産によって担保価値の優劣がありますが、多くの資産が不動産に劣らない担保価値を持っていることが分かります。
在庫の査定は厳しい傾向がありますが、売れるまではただ保有しているだけの在庫を50%程度の掛目で担保に活用できるならば大きなメリットがあるといえるでしょう。
もっとも、日本ではABLの普及が進んでおらず、主に不動産を担保とみなしてきた歴史があるため、不動産以外の担保掛目を低く見積もる傾向があります。
今後の普及状況次第では、ABL先進国の水準に近づくことも十分に考えられます。
ABLで資金調達の幅が広がる
不動産を持たない企業やスタートアップ企業でも、動産や売掛債権を担保に活用することで融資を受けやすくなります。これにより、外部投資を検討する前に短期運転資金を調達したり、新事業の立ち上げ時に迅速に資金を確保することが可能となります。同時に、金融リスクを分散できるため、不透明な経営環境下での資金戦略としても有効です。
担保資産を活用しつつ事業を継続できる
ABLでは在庫や債権を担保にするため、通常の事業活動を制限せずに資金を得られるメリットがあります。例えば製造業の場合、在庫を手元に残しながら融資を受けられるため、ビジネスの流れを止めることなく投資やオペレーションに資金を回すことができます。担保資産を活用しながら回転率を維持することが、ABL導入時には重要なポイントとなります。
債務者区分が悪化したときの手段に
企業の財務状況が悪化すると、従来の融資審査に通りにくい場合があります。しかし、ABLであれば債務者側の信用力だけでなく、担保資産の価値も評価対象となるため、一定の資産を保持していれば融資を受けられる可能性があります。急激な経営環境の変化や一時的なキャッシュフロー不足に直面したときのバックアップとしても魅力的な方法です。
ABLがおすすめの業種・おすすめではない業種
業種によってABLの活用度合いは異なります。ここではおすすめできる業種とそうでない業種を解説します。
実際にABLを導入する際には、企業の事業形態や保有している動産・債権の内容に左右されます。特に在庫や売掛債権が豊富な業種であればあるほど、ABLのメリットを享受しやすいのが特徴です。一方で、担保にできる資産が限られている業種では導入のハードルが高くなる可能性があります。
ABLがおすすめの業種
製造業や小売業といった動産や売掛債権を多く抱える業種の企業が代表的な例です。
例えば、
・製造業(製造のための機械や製造品を多く保有している)
・卸売業や小売業(商品在庫などの棚卸資産を多く保有している)
などです。
実際に、ABLの融資実績を業種別に見ても、製造業、小売業、卸売業の3業種で過半数を占めています。
実際に商品の販売周期が短い業態ほど在庫回転率が高くなるため、ABLによる融資の土台が作りやすくなります。新製品の投入や季節商材の仕入れなど、資金ニーズが周期的に発生しやすい事業にとっては特に有用です。
もちろん、ABLで担保にできる資産は多岐にわたるため、その他の業種でも利用可能です。事業に使う設備を担保に融資を受けることも考えられます。例えば、
・運輸業(運送用のトラックを担保にする)
・建設業(建設機械や重機を担保にする)
などです。
ABLをおすすめできない業種
逆に、ABLをおすすめできないのは、管理が難しい動産の保有が多い業種です。
無形資産が中心で、具体的な動産や売掛債権をあまり保有していない業種の場合、ABLに適さないケースがあります。また、売掛先が限定的であったり、在庫がほとんどないサービス業などは担保にできる資産が不足しやすく、融資を受けづらいことが多いです。こうした業種では、オフィス機器やライセンスなどの価値が定めにくいため、ABL以外の調達手段を検討するほうが現実的です。
分かりやすい例は畜産業です。
畜産業では、牛や豚などが棚卸資産となります。確かに資産価値はあるのですが、銀行が牛や豚を担保にとることは現実的に困難です。牛や豚の資産価値を査定することは難しく、担保管理も難しいためです。
狂牛病や豚インフルエンザなど、担保価値がほとんどなくなってしまう病害に見舞われるリスクもあります。
また、いざ貸し倒れに至った場合、担保の処分にも苦労するはずです。不動産ならば競売にかけて売ればよく、担保の処分は比較的容易です。しかし、牛や豚を処分・換金して債権回収に充てることは容易ではありません。
つまり、このような資産は担保として非常に扱いにくいのです。担保評価と担保管理が難しく、そのうえ回収も手間がかかるとなれば、銀行もそのような資産を担保にはしたくありません。無担保で融資したほうがよほど簡単です。
したがって銀行は、資産によっては「ABLで貸すくらいならば無担保で貸したほうが良い、無担保で貸せないならABLでも貸さない」と考えます。そのような資産を多く抱える業種は、ABLには不向きです。
ABLで失敗しやすいパターン
担保として提供する資産の価値が正確に把握できていない場合、想定よりも低い評価がされてしまい、結果的に必要額を満たせないリスクがあります。また、売掛先が倒産して債権回収が滞る、在庫が急に陳腐化するなどのリスクに備えて、日頃から資産管理を徹底することが重要です。これらを怠ると、ABLでの調達がかえって経営を圧迫する恐れがあります。
「業界現場でのABL事例
例えば、家具製造業が季節ごとの新商品投入に合わせて在庫を担保にABLを利用したケースや、システム開発企業が売掛債権を担保にプロジェクト資金を確保した事例などがあります。どちらも不動産担保を必要とせず、流動資産を活かしてスムーズな資金調達を実現しています。こうした事例は、スタートアップや比較的資本が薄い事業者でもABLを有効に活用できる可能性を示しています。
まとめ
最後にABLの要点を振り返り、導入を検討する際のポイントをまとめます。
ABLは在庫や売掛債権を担保に資金を調達できる手法で、事業の柔軟性やリスク管理の面で大きな利点があります。ただし、担保価値の管理や債権回収のリスクには十分な注意が必要です。導入を検討する際には、動産や債権といった流動資産をどのように評価し、維持していくのかがポイントになります。
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