2025.05.27
銀行は決算書をどう見ている?貸借対照表と損益計算書の基本を解説
銀行から融資を受ける際や財務状況をアピールする際には、決算書がとても重要です。貸借対照表や損益計算書などの基本的な数値は、企業の返済能力や成長力を判断する材料として活用されるため、正確に作成・提出する必要があります。本記事では、銀行がどのような観点で決算書をチェックしているのか、貸借対照表と損益計算書それぞれの見られ方について解説します。
決算書はどれくらい影響するか
銀行が企業の返済能力や信用度を判断する上で、決算書はどの程度重要なのでしょうか。
銀行は限られた時間と情報の中で、多くの企業の申込を審査しています。そのため、企業の状態を数字で表した決算書は極めて重要な資料といえます。信用格付けの判断はもちろん、資金繰りや返済可能性の把握においても、決算書の数値が審査結果を左右するのです。
重要度を数値にしてみると・・・
銀行はまず、決算書に記載された数値を通じて企業の安定性を見極めます。例えば、純資産や自己資本比率の数値は、企業の体力を端的に表す指標として重視されるケースが多いです。融資限度額だけでなく、融資金利や追加融資の可否といった面でも、これらの数値が判断材料となります。
銀行が決算書を見る流れ
銀行はまず貸借対照表や損益計算書で企業の全体像を把握し、次に資金繰り表や経営計画などの補足情報を確認します。特に、決算書に表れにくい実態財務まで把握するために、関連書類もあわせてチェックするのが一般的です。こうした流れを経ることで、最終的に今後の返済リスクや与信枠などを判断しているのです。
貸借対照表の見られ方
まずは資産や負債、純資産がどのように評価されるのかを見てみましょう。
貸借対照表は企業の財務状態を一目で把握できる書類で、銀行はここから自己資本や実質債務の有無を探ります。実際に融資を検討する場合、企業が持ちこたえられるだけの資産があるかどうかや、本当に返済できる見込みがあるかを確認します。貸借対照表を見れば、会社がどの程度リスクを抱えているかを定量的に把握できるため、融資判断に大きく影響を与えます。
最重要項目は「純資産」
銀行が最初に気にするのは、貸借対照表の純資産部分です。純資産が十分にあれば、仮に一時的に業績が落ちても返済に回せる蓄えがあるという判断につながるからです。企業の資金調達力を示す大切な要素であり、ここが薄いと企業体力に不安を感じられてしまいます。
自己資本比率も見られる
貸借対照表上で自己資本と総資本の比率を示すのが、自己資本比率です。自己資本比率が高い企業は、他からの借入れに頼らずに運営できる力があると評価されます。金融機関からすると、貸し倒れリスクを回避できるかどうかを見極める重要な指標となるため、融資交渉でも重視される部分となります。
実質債務超過の有無
帳簿上は資産超過に見えても、実質債務超過である可能性があります。例えば、不良在庫や回収可能性の低い売掛金が多い場合、実際には資産の評価額が減少し、見た目よりも自己資本が薄い状態になっていることもあるのです。銀行はこうしたリスクを見逃さないように、細部までチェックを行い、真の財務体質を探ります。
借入金月商倍率は何ヶ月分か
借入金が月商の何ヶ月分にあたるかは、資金繰りのリスクを測る上で銀行が注目する指標です。例えば、借入金が月商の数ヶ月分を超えていると、売上が一定水準を保てない時期に返済が滞るおそれが大きいと判断されます。経営者はこの数値を把握し、必要に応じて借入れや運転資金の見直しを行うことが得策です。
借入金月商倍率の審査への影響は、以下のように考えます。
借入金月商倍率 | 審査への影響 |
2倍以下 | 適正水準 |
2~4倍 | やや借りすぎ |
4倍以上 | 借りすぎ |
なお、この見方はあくまでも一般的なものです。不動産業など、多額の借入れが前提となる業種などは当てはまりません。しかし、多くの業種ではこの表のように見られます。
損益計算書の見られ方
利益状況や事業の収益性を示す損益計算書も、銀行にとっては重要な判断材料です。
損益計算書では、どの程度の売上があり、最終的にどれだけの利益を残せているのかを確認できます。銀行がとくに注目するポイントは、利益の安定性と継続性です。一過性の売上増加よりも、日常的に steady な収益を維持できているかどうかが、返済を続けられるかの判断につながるのです。
銀行が知りたいのは「稼ぐ力」
融資を実施するうえで、銀行は企業の稼ぐ力を最優先で見ます。つまり、今後も一定の売上を確保し、十分な利益を得る見込みがあるかが焦点となるのです。どんなに過去の帳簿がきれいでも、将来のキャッシュフローが不安定であれば融資を渋られる可能性があります。
利益率にも注意する
売上が大きくても、利益率が低ければ実際に手元に残るお金はわずかになります。銀行は、単に数値の大きさだけでなく、売上に対する利益の割合を見ることで、事業の効率性や経営管理能力を測ろうとします。安定した利益率を保っている企業は、多少の景気変動があっても返済負担に耐えやすいため、高い評価を受けやすいです。
まとめ
貸借対照表と損益計算書の基本を押さえ、銀行への提出資料をしっかり準備することが大切です。
決算書は単なる過去の記録ではなく、企業の将来性や信用度を示す重要な証拠資料です。銀行は貸借対照表で企業体力を把握し、損益計算書で稼ぐ力を見極め、最終的に融資判断を行います。適切なタイミングで正確な決算書を提出するとともに、経営実態を金融機関に正しく伝えることが、将来的な資金繰りを安定させる第一歩となるでしょう。
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