2025.05.27
複数行取引の落とし穴。借り換えを提案されても受けてはならない理由とは?
複数の銀行と取引する企業にとって、融資条件や金利の競合はメリットが大きいと考えられがちです。しかし、借り換えの提案に軽々しく応じると、かえって信用を損ねたり取引環境が悪化したりするリスクがあります。本記事では、複数行取引の背景と借り換えの関係、さらに借り換えを行うメリットやデメリットを整理しつつ、なぜ一概に借り換えを受け入れるべきではないのかを解説します。
複数行取引と借り換えの関係
まずは、複数行取引がもたらす利点と、銀行側からの借り換え提案がどのように結び付くのかを整理します。
複数行取引を行う企業は、銀行ごとの融資条件を比べられるうえ、金利の引き下げや融資枠の拡大などで有利な交渉をしやすい特徴があります。一方で、銀行にとっても他行との競合は自行の融資額を増やすチャンスになるため、時に積極的な借り換え提案を行うことがあります。ただし、安易に応じてしまうと、関係の長い銀行に不信感を与え、取引条件が後々悪化するケースもあるため注意が必要です。
借り換えを提案する銀行の意図
銀行は融資実績を拡大するために、他行からの借入金をまとめる提案を積極的に行うことがあります。特に新規顧客を獲得する場合には金利を低めに設定し、企業が借り換えに踏み切るよう誘導しがちです。しかし、業績や財務内容をしっかり理解していない状態での借り換えオファーには、金利面以外の手数料や保証料が伴う場合もあるため、中長期的に考えると必ずしも得策とは限りません。
金利交渉の手段として
企業の中には、銀行間の競争を利用して金利を引き下げようとするケースが見られます。複数行取引では、借り換えをちらつかせることでより有利な条件を引き出すことも可能ですが、度を越した交渉はメインバンクを中心に関係を悪化させる危険があります。融資そのものが止まったり、別の条件変更が余儀なくされたりする事態にもなりかねないため、借り換えの提案を金利交渉の道具として使う際は慎重な姿勢が求められます。
借り換えのメリットとは?
借り換え自体は、場合によっては企業の収益性や財務体質を改善する力がある手段です。ここでは、その利点を整理します。
借り換えには主に金利の引き下げや返済負担の軽減など、企業にとって目に見えたメリットがあります。特に業績が上向きの場合には、より有利な条件が提示されやすく、資金繰りにもプラスに働くでしょう。ただし、借り換えを実行する前には、銀行との長期的な付き合いや、信用保証協会の旧債振替に関する厳格な取り扱いなどに気を配る必要があります。
金利が下がる
借り換えによって最も大きな効果の一つが、金利負担の軽減です。新たに提示される金利プランが従来よりも低ければ、毎月の金利支払いを削減でき、営業利益の向上や投資資金の確保につながります。ただし、目先の金利だけに注目するのではなく、将来的な金利変動リスクや返済計画との整合性も見極めることが重要です。
返済負担が減る
金利が下がるということは、同時に毎月の返済額も減少する可能性が高いことを意味します。これによって資金繰りに余裕が生まれ、短期的な運転資金の圧迫措置を減らすことができます。とはいえ、長期的な返済プランを立てる上では、一時の返済軽減だけでなく今後の事業拡大や資金需要のタイミングも加味し、借り換えの得失を総合的に判断することが重要です。
財務効率が上がる
複数の借入金を一つにまとめることで、返済管理の煩雑さを解消しやすく、財務担当者の負担軽減につながります。さらに、統一された融資条件のもとで資金を運用できるため、突発的な金利変動リスクのコントロールもしやすくなります。ただし、融資元が少数化すると特定の銀行への依存度が高まる面もあるため、バランスを考慮しながら借り換えを検討しなければなりません。
複数行取引で借り換えはNG
しかしながら、複数行取引を行う企業にとって、借り換えの提案を受けることには大きなリスクが潜んでいます。
複数行取引の大きな利点は、必要に応じて複数の融資チャネルから資金を調達できる点にあります。一方で、どこか一行を優遇するかのような借り換えに応じると、他の取引銀行からの信頼を損ねる恐れがあります。このような状況が続けば、将来的な追加融資が難しくなるなど、企業の資金繰りに重大な影響を及ぼす可能性があります。
借り換えされた銀行に屈辱を与える
既存の取引銀行は、自行から他行へ乗り換えられる事例を好ましく思いません。特に、メインバンクとして長期にわたり融資を行ってきた銀行が、借り換えによって取引規模を縮小されると、関係性が大きく損なわれる可能性があります。結果的に十分な資金サポートを受けられなくなり、企業としての財務戦略にも悪影響が生じるリスクがあるのです。
新規取引銀行の借り換え提案は特に危険
まだ取引実績の浅い銀行から提示される好条件には、しばしば見落としがちな追加費用や将来的な金利見直しリスクが潜んでいる場合があります。特に低金利をアピールしていても、保証料や手数料など、総合的な費用を含めると最終的な負担が大きくなるケースも珍しくありません。実際に借り換えを行う際には、今後の融資の柔軟性や金利変動に対する備えも踏まえ、ごく短期の恩恵だけに飛びつかない姿勢が重要です。
特に危険なのが、全く取引のなかった銀行から借り換えの提案を受けた場合です。新規取引銀行で借り換えて一行取引に陥ることは、二つの意味で絶対に避けるべきです。
さらに強い屈辱を与える
既存の銀行から提案されて借り換える場合には、借り換えされる銀行にあまり屈辱を与えずに済むこともあります。例えば、融資シェアが最も高い銀行に借り換えるならば、融資シェアの低い銀行はそれほど気にしないでしょう。
しかし、新規取引銀行に借り換えると、借り換えされた銀行は「新参者に取引を奪われた」と考えるため、強い屈辱を与えることになります。
さらに、取引がなく信頼関係もない銀行に借り換えることは、これまでに既存の銀行と築いてきた信頼関係を無視することにほかなりません。
したがって、関係の修復が一層困難になります。
借り換え先との相性は未知数
既存の銀行には融資と返済を通じて築いてきた信用があり、経営が少々悪化したくらいで見放されることはありません。経営悪化が深刻な場合にも、どこかの銀行が支援してくれる可能性があります。融資を受けられずとも、銀行が歩調を合わせてリスケに応じてくれることも多いです。
しかし、借り換えを提案した銀行とは全くの新規取引であり、信頼関係はありません。今後、取引を継続することでどの程度まで信用を得られるかも未知数です。
既に信用を得ている既存の銀行と、これから信用を得る必要がある(信用を得られるかどうかも不明)新規の銀行を比較すれば、既存の銀行のほうが大切であることは明らかです。
大切な既存の銀行を捨ててまで借り換えるメリットはありません。そのようなことをすれば、いずれ必ず資金調達に苦労します。
まとめ
借り換えは確かにメリットがある一方で、複数行取引の企業にとってはリスクも見過ごせません。最後に重要なポイントを押さえておきましょう。
銀行同行の競争を上手に利用するのは悪いことではありませんが、安易に他行への借り換えを繰り返せば、メインバンクや既存銀行との信頼を損ないかねません。特に、信用保証協会の旧債振替を伴う借り換えは厳格なチェックを受ける場合があるため、専門家の助言を受けながら慎重に判断することが求められます。長期的には、安定した金融パートナーシップを築くことが資金繰りと事業成長を支える最大のポイントと言えるでしょう。
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