2025.05.28
資金調達とは?各資金調達方法のメリット・デメリットを徹底解説
本記事では、企業が事業を継続・拡大していく上で欠かせない資金調達について、方法ごとの特徴や注意点を解説します。経営者にとって最適な手段を見極めるための基礎知識を確認していきましょう。
資金調達は企業経営の生命線ともいえる重要なテーマです。将来の成長に向けた投資や日々の経費の支払い、予期せぬトラブル発生時への備えなど、あらゆる局面で必要性が高まります。
一口に資金調達といっても、借入や出資、資産を活用する方法など多岐にわたります。どの方法が自社に適しているのかを見極めるために、本記事の内容をしっかり押さえておきましょう。
今回の記事では、下記についてご説明します。
- デットファイナンス・エクイティファイナンス・アセットファイナンスの違い、メリットとデメリット
- 具体的な資金調達方法
- 目的別おすすめ資金調達方法
この記事を読んで、資金調達の特徴を知り、会社のニーズや状況に合わせた資金調達方法選びの参考にしてください。
資金調達とは
まずは、資金調達の定義や基本的な機能について見ていきましょう。
資金調達とは、企業が事業運営や成長に必要な資金を外部や内部から確保する活動全般を指します。多くの場合、運転資金や設備投資、研究開発、さらには将来的な拡大戦略のための潤滑油として機能することが多いです。資金不足が続くと、ビジネスの持続可能性や拡大戦略が制約され、事業機会を逃しかねません。
企業の経営者にとって、資金をどのように確保するかは極めて重要な課題です。資金を円滑に回せないと、仕入先への支払いや従業員への給与など基本的な経費負担も難しくなります。逆に十分な資金を得られれば、新たな市場への参入や設備の高度化など積極策にも取り組めるでしょう。
一般的には、自己資金だけでは成長への投資が追いつかない場合が多いため、銀行をはじめとする金融機関や出資者、保有資産の現金化など、複数の方法を組み合わせるケースが見られます。自社の現状や成長ステージに合った最適な手段を選ぶことが、安定した経営と持続的な成長のカギとなります。
資金調達をするメリット・デメリット
資金調達を行う際には、コストや経営権への影響など、プラス面とマイナス面を整理する必要があります。
メリットとしては、事業拡大の加速や景気の変動に耐えうるキャッシュフローの確保などが挙げられます。十分な資金を備えている場合、投資や新規事業へのチャレンジがしやすくなるため、企業価値の向上にもつながりやすいです。さらに、資金調達手段によっては専門家や出資者のネットワークを利用できる機会も広がります。
一方で、資金調達にはデメリットも存在します。借入による調達の場合、利息の支払いや返済期間の縛りが経営を圧迫するリスクがあります。出資による調達を選択すると、議決権が希薄化して経営判断に影響が及ぶ可能性が高まる点が注意点です。
また、資金調達に伴う手続きや審査には時間や労力がかかります。財務資料の準備や交渉プロセスを経る必要があるため、調達スピードが要望に合わない場合もあります。こうした費用対効果や経営方針への影響を総合的に検討し、最適解を導くことが重要です。
資金調達の3分類
次に、資金調達方法を大きく3つに分け、それぞれの概要を押さえましょう。
資金調達には大きく分けてデットファイナンス、エクイティファイナンス、アセットファイナンスの3つがあります。借入形態か、出資形態か、もしくは保有資産を現金化するかによって、それぞれの特徴やリスクが異なります。企業の財務体質や成長ステージを踏まえ、最適な分類を検討することが肝心です。
デットファイナンスは利息や返済が必要になる一方で、議決権の保持には有利な手段となる傾向にあります。これに対してエクイティファイナンスは返済義務がなく、企業の成長余地を大きくとれる反面、経営権が希薄化する可能性があることを認識しておくべきです。アセットファイナンスは、売掛金や不動産などを現金化するため、比較的早期かつ柔軟に資金を確保できますが、資産が存在しない企業には適しません。
それぞれの手段は独立しているわけではなく、企業の成長段階に応じて組み合わせるケースも見られます。例えば、初期段階ではエクイティによる資金調達で経営リスクを分散させ、安定期に入ったらデットファイナンスを利用するという考え方もあります。このように状況に合わせた柔軟な戦略こそが、企業の継続的な成長を支える基盤となります。
デットファイナンス
デットファイナンス(Debt finance)は、デット(借入)とファイナンス(金融)を合わせた言葉で、銀行などの外部からお金を借りる資金調達方法です。
デットファイナンスは、金融機関などからの借入や社債の発行によって資金を調達する方法です。利息や返済期限が定められるため、安定的なキャッシュフロー管理が求められますが、議決権は基本的に希薄化しないので経営者の意向を保ちやすい点がメリットです。とはいえ、借入金が増加することで財務リスクが高まる側面もあるため、返済計画をしっかり立てる必要があります。
エクイティファイナンス
エクイティファイナンス(Equity finance)とは、エクイティ(株式資本や自己資本)を増やして資金調達する方法です。返済義務がないため、企業の成長に合わせて資金を有効活用できる一方、出資者の増加によって経営が制約される可能性があります。スタートアップなど高成長が期待できる企業には大きなメリットがありますが、経営コントロール権とのバランスを見極めることが肝心です。
アセットファイナンス
アセットファイナンス(Asset finance)とは、アセット(資産)とファイナンス(金融)を掛け合わせた言葉からわかるように、企業が保有する売掛金や不動産などの資産を早期に現金化して資金調達を図る方法です。売却や担保設定などを通じて迅速なキャッシュフローを得ることが可能で、特に売掛金ファクタリングなどを利用すれば審査のハードルが比較的低めになります。ただし、手数料や資産売却に伴うリスクが発生するため、利用時には十分な比較検討が欠かせません。
しかし、担保や売却ができる資産を保有していない会社はこの方法が使えないため、デメリット面もあります。
デットファイナンスによる具体的な資金調達方法
借入形式のデットファイナンスでは、さまざまな種類の方法があります。代表的な手段を確認していきましょう。
銀行やノンバンク、さらには公的金融機関からの融資など、デットファイナンスには幅広い選択肢があります。企業規模や信用度によって利用しやすい方法は異なりますので、まずは自社の信用力や資金需要の緊急度を明確にしましょう。返済計画をきちんと立てることが大切で、実現可能なプランを示すことで資金供給先からの信頼も得られます。
デットファイナンスを利用する場合、金利や保証人の有無、返済期間といった条件面を比較しながら、自社のキャッシュフローを鑑みた選択が重要となります。短期的なつなぎ資金であればビジネスローンを活用する方法もありますし、設備投資など長期的に回収が期待される場合は銀行融資でしっかりと案件を組むケースが多いです。
返済リスクを低減するためには、資金を得た後の利用目的や事業計画を継続的に見直すことが欠かせません。調達コストが高い場合、事業収益とのバランスが崩れやすい点を意識し、常にキャッシュフローと事業の進捗をモニタリングする姿勢が求められます。
銀行融資
デットファイナンスで一番想像しやすいのは、銀行からの融資です。銀行融資は最も一般的な調達手段であり、一定の信用と実績を持つ企業にとっては比較的安定した方法になります。申込み時に必要となる書類は多いものの、提示する事業計画が明確であれば長期的な資金調達が可能となります。融資が成立すれば、金利負担を抑えながら経営を安定させる大きなメリットがあります。信用力によっては、不動産や定期預金などの担保が必要です。また、債務不履行となった場合に代位弁済してもらえるよう、信用保証協会の保証をつけるケースが多いです。
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日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫は公的な金融機関であり、中小企業やスタートアップ企業を対象に低金利・長期返済などの優遇条件を提供しています。特に新事業へのチャレンジを支援する制度が充実しており、資金調達に悩む企業にとって心強い選択肢となるでしょう。審査に時間がかかる場合もありますが、実現すれば返済の負担を軽減しつつ資金を確保できます。
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手形割引
手形割引とは、取引先から受け取った手形を期日前に金融機関へ持ち込み、割引料を差し引いた金額を受け取る形で資金化する方法です。支払期日を待たずに現金を手にできるため、資金繰りをスムーズにする効果があります。ただし、割引料負担が発生するため、手形の期限や資金ニーズと照らし合わせたうえで検討することが望ましいです。
また、手形の流通が少なくなっており、でんさい(電子記録債権)が利用されているケースもあります。でんさいも手形同様に割引が可能です。手形割引は額面通りの金額を割り引いてもらう必要がありますが、でんさいは分割して割引ができます。
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ビジネスローン
ビジネスローンとは、銀行や消費者金融などがサービス提供する事業資金専用のローンです。無担保・無保証で、融資実行までの時間が短いのがメリットです。利用限度額の中でいつでも利用できるので利便性が高いです。銀行融資ほど厳格な審査が行われないため、開業間もない企業でも利用できる場合があるでしょう。ただし、借りられる金額は数百万円以内になっていることが多く、その反面、銀行融資に比べると金利が高めに設定される傾向があるので、計画的な返済に留意が必要です
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私募債
私募債は、広く公募するのではなく限られた投資家を対象に発行する社債です。信用力の高い企業であれば、有利な条件で資金を得ることが可能な場合があります。比較的大規模な資金調達が必要な企業が活用することが多く、発行手続きや投資家との交渉がスムーズに進めば、銀行融資とは異なる形での財務戦略が可能になるでしょう。
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役員からの借入
役員自身が企業に資金を貸し付ける形態は、信用調査や審査をほぼ経ずに資金を確保できる点が魅力です。ただし、役員個人のリスク負担が大きくなるため、会社と個人の資金関係が不透明になりやすい懸念があります。役員や経営陣との合意形成と返済計画が明確であれば、スピーディーな資金調達方法として活用できます。
エクイティファイナンスによる具体的な資金調達方法
出資者を募るエクイティファイナンスの具体的な手段を見ていきましょう。
エクイティファイナンスは、特に急成長を目指す企業や新規事業を展開しているベンチャー企業にとって効果的な選択肢です。返済義務がないため、借入金を抱えるリスクを軽減しつつ、大きな資金を得られる可能性があります。既存株主や投資家との調整が必要ですが、企業価値を高めながら成長戦略を推し進めるうえでは魅力的な方法となります。
ただし出資者との関係性を慎重に構築する必要があり、経営方針やマネジメント体制に対して一定の説明責任が伴います。出資者が経営に対する発言力を強める場合もあり、企業の独自性や意志決定スピードを維持したい場合はデメリットにもなり得ます。
出資形態は多岐にわたり、直近で外部への株式発行を検討するのか、将来的なIPOを視野に入れるのかなど、中長期的な戦略と資本構成の設計が重要です。事業内容やリスク許容度に合わせて、ベンチャーキャピタルや個人投資家など、最適なパートナーを探しましょう。
ベンチャーキャピタルからの出資
ベンチャーキャピタルは、将来の上場や企業価値向上を見込み、成長性の高い企業に投資を行う組織です。出資を受けることで、大きな資金と同時に経営アドバイスやネットワークを得られるメリットがあります。その代わり、経営方針や上場時期などについてある程度の干渉を受けることが多く、出資契約を結ぶ際には慎重な条件交渉が必要です。
個人投資家(エンジェル投資家)からの出資
個人投資家、いわゆるエンジェル投資家は事業家や資産家が個人で投資を行う形態を指します。比較的審査プロセスが柔軟である一方、投資家の経験則や会社との相性によって投資判断がなされる場合があるため、良好なコミュニケーションが重要です。ベンチャーキャピタルほどの大きな資金は得られにくい場合もありますが、投資家との密な信頼関係によって長期的なサポートが期待できる点が特徴です。
ただし、個人投資家の自己資産の範囲で出資になるので、ベンチャーキャピタルのように大きな金額を求めることはできません。また、個人投資家の持株割合が増えすぎると、経営決定権に差し支えが出るのもデメリットです。
アセットファイナンスによる具体的な資金調達方法
保有資産や売掛金を活用して資金化するアセットファイナンスの代表的な手段を紹介します。
アセットファイナンスは、企業が持つ売掛金や不動産、在庫などを現金化し、短期的・中長期的な資金需要を満たす方法の総称です。運転資金を確保する上では迅速にキャッシュフローを生み出せる一方、資産を手放すリスクや手数料の負担が伴う場合があります。資産の換金性や必要資金の規模を見極めながら、取り入れるかどうかを判断することが重要です。
返済義務がなく柔軟に資金を動かすことができるのは魅力ですが、資産価値の適正評価や契約時のリスク確認を怠ると意図しないコストが発生しやすくなります。信頼できる専門家や業者のサポートを得られるかどうかも、企業の安全な資金調達に大きく影響します。
資産を売却して資金を確保する方法は企業の財務体質を改善する手段になることもありますが、同時に将来の成長機会を失う可能性をはらんでいます。どのタイミングで、どの資産を対象にアセットファイナンスを行うのかを十分に検討し、自社の戦略と一致させることが大切です。
ファクタリング
ファクタリングは、企業が保有する売掛金を専門業者に売却することで早期現金化を図る手法です。入金サイクルを短くする効果があるため、即時の資金繰りを改善しやすい点がメリットとして挙げられます。とはいえ、手数料が発生するほか、取引先との信用関係を考慮する必要もあるため、導入前の慎重な検討が必要です。ファクタリングは融資ではないので利息法を守る必要がなく、手数料は割高な傾向です。ファクタリング会社を営むのに免許や資格がないので、信頼できるファクタリング 会社選びが必要になります。
ファクタリング悪徳業者への注意
ファクタリングは利用しやすい反面、高額手数料や不透明な契約を強要する悪徳業者も存在します。特に資金繰りに切迫している企業は急いで契約を結んでしまうケースが多く、後から過度な負担を強いられるリスクが高まります。契約内容や手数料率、業者の実績や評判を十分に調べ、信頼できるサービスかどうかを見極めることが不可欠です。
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SPCに売却
特定目的会社(SPC)に保有している不動産や債権などの資産を譲渡し、投資家を募って資金を調達する方法です。企業は資産売却でまとまった資金を得つつ、SPCを通じた管理や運営によってリスクを分散できるメリットがあります。ただし、組成コストや契約プロセスが複雑化することもあり、大企業や一定の資産規模を持つ企業での活用が主流となっています。
【目的別】おすすめの資金調達方法
事業拡大や設備投資、急な資金繰り改善など、目的別に検討すべき資金調達方法を見ていきましょう。
企業の資金ニーズは、事業内容や今後の展開方針、そして経営者のリスク許容度によって大きく異なります。例えば急速に市場シェアを伸ばしたい場合は出資によって潤沢な資金を得る方法が有効ですし、高収益が見込める設備投資への資金調達なら銀行融資を選択するケースが多いです。
短期的なキャッシュ不足は、ファクタリングやビジネスローンで迅速に対処できる場合があります。逆に、将来的に大きく成長するビジョンが明確なら、ベンチャーキャピタルからの出資を検討するのも戦略の一つです。
自社の課題と目的を明確化し、それぞれの資金調達方法がもつメリット・デメリットを冷静に比較することが大切です。専門家からのアドバイスを受けることで、経験やノウハウを活かしたより最適な選択につながるでしょう。
よくある相談事例
よくある相談としては「急に売上が伸びたものの、運転資金が不足してしまった」「投資家を探しているが、事業計画をどう説明すれば良いかわからない」といったケースが挙げられます。こうした場合、まずは現状の財務分析を行い、短期的に対処が必要か、長期的な成長を目指したいのかを明確にすることが必要です。複数の選択肢を並行して検討し、最適解を模索する姿勢が求められます。
資金調達でよくある質問
資金調達を検討する際に寄せられる質問としては「融資審査の基準は何が重視されるのか」「株式発行による経営権の変化はどの程度か」「売掛金のファクタリングを行うと取引先に影響はあるのか」といったものがあります。いずれの質問に対しても、調達方法ごとのメリットとリスクを把握し、経営上のインパクトを評価することが大切です。自社のビジョンを明確に示しながら、適切な手段を選ぶための情報収集が欠かせません。
まとめ
ここまで紹介した資金調達のポイントを総括し、最終的な検討のステップを示します。
資金調達は、経営の安定と成長のために極めて重要なテーマです。デットファイナンス、エクイティファイナンス、アセットファイナンスのいずれもメリットとデメリットがあり、それぞれに特有のリスクが伴います。自社のビジネスモデルや成長ステージを鑑みながら、複数の手段を検討するアプローチが有効といえます。
金融機関との交渉や投資家へのプレゼンテーション、資産の現金化など、手続きは多岐にわたりますが、綿密な準備と長期的な視点を持つことで、より理想的な調達を実現できるでしょう。特に短期的な資金と長期的な資金のバランスを見極め、経営リスクを最小限に抑える視点が不可欠です。
実際に資金調達を進める際は、専門家への相談や、複数の金融機関・投資家にアプローチするなど、柔軟なスタンスを心がけましょう。自社の状況に合った最適解を模索し続けることこそが、着実な事業発展の土台になります。
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