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担保評価の基本とは?価値算定のポイントを紹介

事業資金の融資を受ける際、金融機関が担保不動産の価値をどのように評価するかは抑えておくべき点です。適正な担保評価を得られるかどうかが、融資の可否や融資条件に大きく影響するためです。

この記事では、担保評価の基本的な仕組みや考え方について解説します。担保評価額の算定方法や、金融機関の評価基準の違い、担保として適切な不動産の選び方など、事業者が理解しておくべき重要なポイントを詳しく紹介していきます。

担保評価とは

担保評価とは、融資の際に借り手が提供する担保物件の価値を金融機関が算定することを指します。その目的は、借り手が融資を返済できなくなった場合に、担保物件を売却して融資金を回収できるかどうかを判断することにあります。

つまり、担保評価は金融機関にとってリスク管理の手段であり、担保物件の価値が融資額を上回っていることを確認するために行われます。また、適切な担保評価は借り手にとっても、過剰な担保を提供することなく必要な資金を調達できるメリットがあります。

担保評価額の重要性

担保評価の結果算出される金額を担保評価額といいます。担保評価額は、融資の可否判断や融資限度額の設定に直結する重要な指標となります。

一般的に、金融機関は担保評価額の60%から80%程度を融資限度額の目安とします。これは担保掛目と呼ばれ、担保物件の価値変動リスクに備えるための措置です。例えば、担保評価額が1億円の物件に対し、担保掛目が70%の場合、融資限度額は7,000万円となります。

担保評価の対象となる不動産

担保評価の対象となる不動産は、主に以下のような物件です。

  • 自己所有の土地、建物
  • 自己所有の区分所有マンション
  • 自己所有の投資用不動産(アパート、ビル等)

ただし、借地権付き建物や共有名義の不動産、権利関係が複雑な物件などは、担保評価の対象から外されたり、評価額が低くなったりする場合があります。また、物件の立地や築年数、管理状態なども評価に影響を与える要因となります。

担保評価の方法

ここでは、担保評価の代表的な方法について詳しく解説していきます。不動産鑑定評価、机上査定、デューデリジェンス、土地と建物の評価方法など、担保評価の基本をしっかりと理解しておきましょう。

不動産鑑定評価

不動産鑑定評価とは、専門家である不動産鑑定士が対象不動産の価値を評価する方法です。不動産鑑定士は現地調査や関連資料の分析を行い、客観的な視点から不動産の価値を算出します。

この評価方法は、最も信頼性が高いとされています。ただし、不動産鑑定評価を依頼するには一定の費用がかかるため、融資金額が大きい案件で主に活用されています。

机上査定

机上査定は、不動産の登記簿謄本や図面などの書類をもとに、担当者が机上で不動産の価値を評価する方法です。現地調査を行わないため、不動産鑑定評価と比べると精度は劣ります。

しかし、机上査定は費用が抑えられるため、比較的小規模な融資案件で用いられることが多いでしょう。また、迅速に評価結果を得られるというメリットもあります。

デューデリジェンス

デューデリジェンスは、不動産の物理的・法的・経済的な側面を詳細に調査・分析する手法です。対象不動産に関する潜在的なリスクを洗い出し、適正な価値評価を行うことを目的としています。

デューデリジェンスでは、建物の構造や設備の状況、土壌汚染の有無、関連法規への適法性などを幅広くチェックします。大規模な不動産取引や不動産担保を条件に含むような複雑な案件で実施されるケースが多く見られます。

土地の評価方法

土地の評価には、主に路線価方式と基準地価方式の2つの方法が用いられます。路線価方式は、国税庁が毎年発表する路線価をもとに評価を行います。

一方、基準地価方式は都道府県が公表する基準地価を参考にします。土地の形状や接道条件、周辺環境などを考慮して、適切な評価額を算出していきます。

建物の評価方法

建物の評価では、原価法と収益還元法が代表的な手法として知られています。原価法は、建物の再調達原価から減価償却費を差し引いて価値を求める方法です。

これに対し、収益還元法は建物から得られる将来の収益を現在価値に割り引いて(ディスカウントして)評価額を算出します。建物の用途や老朽度合いに応じて、適切な評価方法が選択されます。

担保評価額の算定

担保評価額は、金融機関が融資の際に担保として設定した不動産の価値を算定したものです。この評価額が融資可能額の上限を決定する重要な要素となります。

ここでは、担保評価額の算定方法や知っておくべきポイントについて詳しく解説していきましょう。

担保掛目

担保評価額を算出する際に重要となるのが、担保掛目です。これは、不動産評価額に対して実際に担保として認められる割合を指します。

一般的な担保掛目の範囲は60%~80%ですが、金融機関や資金使途によって変動します。ただし、担保掛目を開示している金融機関は少数であるため、事前に確認が必要でしょう。

担保評価額の計算式

担保評価額は、以下の計算式で算出されます。

担保評価額 = 不動産評価額 × 担保掛目

不動産評価額は、土地と建物それぞれについて評価方法が異なります。土地は路線価方式や基準地価方式、建物は原価法や収益還元法などが用いられます。

具体的な担保評価額の算定事例は以下の通りです。不動産評価額が5,000万円の物件の場合、以下のように計算されます。

  • 担保掛目80%の場合:5,000万円 × 80% = 4,000万円
  • 担保掛目60%の場合:5,000万円 × 60% = 3,000万円

このように、同じ物件でも担保掛目の設定によって、担保評価額に大きな差が生じることがわかります。

担保評価額に影響する事柄

担保評価額は、不動産評価額と担保掛目によって算出されますが、実際の融資可能額の決定には他の要因も考慮されます。

主な要因としては、既存の借入金や申込者(法人を含む)の返済能力が挙げられます。個人であれば、年収や職業、勤続年数、延滞履歴など法人であれば、過去の業績、事業計画、経営者の資産背景が審査対象となるでしょう。

また、担保として活用できる不動産にも制限があります。自己名義の不動産や一定の条件を満たす返済中の既存借入金の担保になっている不動産などが対象となる一方で、農地や未登記の不動産は原則として対象外です。

金融機関によって評価基準が異なるため、同一物件でも担保評価額に差が生じる可能性があることにも注意が必要ですね。

担保評価の活用

担保評価は、事業資金の調達や運用において重要な役割を果たします。ここでは、担保評価の活用方法について詳しく見ていきましょう。

金融機関の融資判断への影響

金融機関が融資の判断を行う際、担保評価は大きな影響を与えます。担保価値が高いと判断された場合、融資可能額が増加する傾向にあります。

一方、担保価値が低いと判断された場合、融資可能額が減少したり、融資自体が難しくなる可能性があります。したがって、担保評価は融資の可否や融資条件を左右するのだといえます。

事業者にとっての担保評価の重要性

事業者にとって、担保評価は資金調達の鍵を握る重要な存在です。高い担保評価を得られれば、より有利な条件で融資を受けられる可能性が高まります。

反対に、担保評価が低い場合、資金調達が困難になったり、金利が高くなったりするリスクがあります。そのため、事業者は自社の資産価値を正確に把握し、適切な担保評価を得られるよう努める必要があります。

担保評価額と融資可能額の関係

担保評価額は、融資可能額の上限を決定します。一般的に、担保評価額に担保掛目を乗じた金額が、融資可能額の上限となります。

例えば、担保評価額が1億円で、担保掛目が70%の場合、融資可能額の上限は7,000万円となります。ただし、融資可能額は担保評価額だけでなく、借主の返済能力などにも左右されます。

担保評価を有利にするポイント

担保評価を有利にするためには、以下のようなポイントに注目しましょう。

  • 資産の適切な維持管理・修繕
  • 資産価値の向上につながる投資・改修
  • 資産の有効活用(賃貸収入の確保など)
  • 評価機関との良好な関係構築

これらの取り組みを通じて、資産の価値を高め、担保評価を有利にすることが可能です。事業者は長期的な視点に立って、資産価値の向上に努めることが重要でしょう。

担保評価の注意点

ここでは、担保評価を行う際に気を付けておくべき点について説明します。

担保評価額と市場価値の違い

担保評価を行う際、注意しなければいけない点がいくつかあります。まず、担保評価額と市場価値の違いについて理解しておく必要があります。

担保評価額とは、金融機関が融資不履行時に処分可能と見込む金額のことで、不動産評価額に担保掛目を乗じて算出されます。一方、市場価値とは、その不動産が市場で取引される際の価格を指します。

つまり、担保評価額は金融機関の視点から見た不動産の価値であり、必ずしも市場価値と一致するとは限りません。市場価値よりも低く設定されることが多いでしょう。

担保不動産の選定における注意点

担保として提供する不動産の選定にも注意が必要です。

以下のような不動産は、担保として活用可能です。

  • 自己名義の不動産
  • ローン返済中の不動産(条件付き)
  • 共有名義の不動産(共有者の同意必要)
  • 相続予定の不動産(条件付き)

一方で、農地や未登記の不動産は原則として担保の対象外となります。担保に適した不動産かどうか、事前にしっかりと確認しておきましょう。

担保評価額の定期的な見直しの必要性

最後に、担保評価額は定期的に見直す必要があります。

不動産の価値は時間の経過とともに変動するものです。当初の評価額から大きく乖離してしまうこともあるでしょう。融資期間が長期に及ぶ場合は特に、定期的に評価額の見直しを行うことが求められます。

担保不動産の価値が大幅に下落した場合、金融機関から追加担保の提供や一部返済を求められる可能性もあります。借り手側も担保価値の変動にアンテナを張っておく必要がありますね。

まとめ

本記事では、担保評価の基本的な仕組みや評価方法、評価額の算定方法などについて解説してきました。担保評価は、事業資金の融資審査において非常に重要な役割を果たしています。

事業者にとって、担保評価を有利にすることは資金調達の鍵を握ります。日頃から資産の適切な管理や価値向上に努め、金融機関との良好な関係を構築しておくことが大切でしょう。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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