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2025.02.03

個人事業主で赤字になってしまった!そんなときの確定申告方法を解説

赤字になってしまった年に、確定申告をするか迷う個人事業主の方は多いはずです。法律的には確定申告が必須ではない場合もありますが、赤字の際も確定申告をしておくことには大きなメリットがあります。

この記事では、個人事業主が赤字になった場合の確定申告について解説します。株式取引損失の繰越控除や源泉徴収税の還付など、赤字申告のメリットを活用することで、税負担を軽減し、将来の事業運営に役立てることができるでしょう。

個人事業主の確定申告の基本事項

個人事業主の方が確定申告する場合、以下の2つのことは知っておきましょう。

青色申告と白色申告の違い

個人事業主の確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告には、損失の繰越や経費控除、特別税額控除などの追加メリットがあるため、一般的に青色申告が推奨されています。

一方で、申告作業が簡単に済む白色申告と比べて青色申告には申告作業に時間がかかるというデメリットもあります。

確定申告の期間と対象

個人事業主の確定申告の基本情報として、申告期間と申告対象となる所得について理解しておくことは大切です。

通常、申告期間は毎年2月中旬から3月中旬までに設定されており、その期間内に前年の所得を申告する必要があります。個人事業主の場合、申告の対象は、個人事業主として得た全ての所得です。

正確な申告期間や対象年度については、毎年税務署からの最新情報が提供されているため、公式ウェブサイトや税務署に直接問い合わせて確認することが重要です。

赤字でも確定申告すべき主な理由

個人事業主として事業を営んでいる場合、赤字の年の確定申告は法的に義務付けられてはいませんが、することによってさまざまなメリットがあります。

株式取引損失の繰越控除

株式取引で損失が発生した場合、その損失を将来の株式関連所得と相殺することができます。これを株式取引損失の繰越控除といいます。

この制度を利用するためには、損失が発生した年に正式な確定申告を行う必要があります。損失は最大3年間繰り越すことが可能です。将来の株式関連所得から損失を差し引くことで、税負担を軽減できるでしょう。

源泉徴収税の還付

原稿料、講演料、特定の専門サービスに対する報酬などの収入には、源泉徴収税が適用されます。しかし、事業全体で赤字となった場合、過剰に徴収された税金を還付してもらうことができます。

還付を受けるためには、確定申告を行う必要があります。源泉徴収税の還付は、赤字の年の資金繰りを改善するうえで重要な役割を果たします。

所得証明として活用できる

確定申告書は、公的な所得証明としても機能します。事業融資や住宅ローンの申請、信用審査などの場面で、所得証明が求められることがあります。

赤字の年でも確定申告を行っておくことで、必要な時に速やかに所得証明を提出できます。これにより、円滑な手続きが可能になるでしょう。

国民健康保険料の減額

国民健康保険料の計算は、所得に基づいて行われます。赤字の年に確定申告を行わないと、正確な所得が反映されず、本来よりも高い保険料を支払わなければならない可能性があります。

確定申告を行うことで、所得に応じた適正な保険料の算定が可能になります。場合によっては、保険料の減額につながることもあるでしょう。

非課税証明書が発行できる

保育園の入園申請、奨学金の申請、公営住宅への入居申請など、各種の手続きで非課税証明書の提出が求められることがあります。非課税証明書は、所得が一定以下であることを証明する書類です。

赤字の年に確定申告を行わないと、非課税証明書の発行ができません。将来的に必要になる可能性を考慮して、毎年確定申告を行うことをおすすめします。

赤字申告を行う際の注意点

個人事業主の方、事業が赤字になっても確定申告を行うメリットがある一方で、申告手続きに手間や時間がかかるため、対応が負担に感じられることもあります。

手間がかかる

確定申告を行うと決めると、申告作業に時間がかかります。赤字の場合だとしても、収支内訳書や財務諸表の作成が必要となるため、手間がかかるのです。

確定申告を行う際には、正確な財務記録を維持することが非常に重要であり、適切な経費計上や帳簿付けを行わないと、税務調査で問題が発覚する恐れがあります。そのため、必要書類を整え、正確なデータを準備する必要があり、その作業の負担が大きくなることもあります。

信用力の低下

赤字申告は、将来の資金調達に影響を与える可能性があります。例えば、事業融資や信用審査の際には、赤字の財務状況が審査において不利に働く場合があります。

また、金融機関や取引先からの信用力が問われる場面では、赤字がネガティブな印象を与えることもあるでしょう。そのため、赤字申告を行う際には、こうした点を十分に考慮する必要があります。

赤字の個人事業主の確定申告方法

事業で赤字が出てしまっても、確定申告を行うメリットは多くあります。赤字が出てしまった際に行う確定申告を損失申告と呼びます。

損失申告とは

損失申告とは、その年の赤字であることの申告です。損失申告によって、所得が赤字となった年に損失申告を行い、その赤字を他の所得から差し引く「損益通算」や、翌年以降に繰り越して将来の所得と相殺する「繰越控除」を適用することができます。これにより、所得税の負担を軽減し、節税効果を得ることが可能になります。

損失申告の対象

損失申告の対象となるのは、主に以下の4つの所得です。

  • 事業所得:個人事業主としての事業活動から生じる所得。
  • 不動産所得:不動産の賃貸や売却から得られる所得。
  • 譲渡所得:資産の売却によって得られる所得。
  • 山林所得:山林の伐採や売却によって得られる所得。

事業で赤字を出してしまった場合の確定申告は、事業所得の損失申告にあてはまります。

損失申告の手順

赤字の個人事業主が損失申告を行うためには、以下の手順を踏む必要があります。

損失額の計算

まず、事業年度ごとの損失額を正確に計算します。損失額は、収益から経費を差し引いた金額です。例えば、事業所得で収入が300万円、経費が500万円の場合、赤字は200万円となります。この損失額を基に、他の所得からの損益通算や、翌年以降への繰越控除を検討します。

必要書類の提出

損失申告を行う際には、通常の確定申告書に加えて「第四表(損失申告用)」を作成し、提出する必要があります。第四表は、損益通算や繰越控除に関する詳細を記載するためのもので、以下の二つに分かれています

  1. 第四表(一):損益通算に関する情報を記入します。ここでは、事業所得の損失額や他の所得との相殺状況を明示します。
  2. 第四表(二):繰越控除に関する情報を記入します。前年以前からの繰越損失や、今年度の新たな損失を記載します。

確定申告書と第四表、必要な添付書類を揃えたら、所定の期限内に税務署に提出しましょう。

個人事業主の赤字時の資金調達戦略

個人事業主として事業を営む中で、思わぬ赤字に直面することがあります。そのような状況下でも、事業を継続し発展させるためには適切な資金調達戦略を練る必要があります。

ファクタリングや不動産担保ローンの活用、事業譲渡による資金獲得など、資金調達には様々な選択肢が存在します。

ファクタリングの活用

ファクタリングとは、未回収の売掛金を担保に、金融機関や専門業者から資金を調達する方法です。個人事業主にとって、手元資金が不足している場合に有効な選択肢となります。

ファクタリングを利用することで、売掛金の回収を待たずに資金を得ることができます。これにより、事業運営に必要な資金を速やかに確保し、赤字からの脱却を図ることが可能です。ただし、手数料などのコストがかかることに留意が必要でしょう。

不動産担保ローンの検討

個人事業主が所有する不動産を担保に、金融機関からローンを借り入れる方法も検討に値します。自宅や事業用不動産などを担保にすることで、比較的低金利で資金を調達できる可能性があります。

ただし、不動産担保ローンを利用する際は、返済計画を慎重に立てる必要があります。赤字の状況下で過度な借り入れを行うと、返済に窮する恐れがあるためです。事業の収支見通しを精査し、返済可能な範囲内でローンを活用するようにしましょう。

事業譲渡による資金獲得

赤字に苦しむ個人事業主にとって、事業の一部または全部を譲渡することも資金調達の選択肢の一つです。事業譲渡によって得られる資金を、赤字の穴埋めや新たな事業展開に充てることができます。

ただし、事業譲渡を検討する際は、譲渡先の選定や条件交渉に十分な注意を払う必要があります。適切な譲渡先を見つけ、事業の価値を適正に評価してもらうことが重要です。また、譲渡後の自身のキャリアプランについても併せて考えておくことが推奨されます。

専門家への相談の必要性

個人事業主が赤字に直面した際、資金調達戦略を一人で考えるのは容易ではありません。税務や財務、法律など、様々な側面からアプローチする必要があるためです。

そこで、税理士や中小企業診断士といった専門家に相談することが考えられます。彼らは、個人事業主の状況に応じた最適な資金調達手段を提案してくれるでしょう。また、事業計画の見直しや経費削減のアドバイスなども期待できます。

まとめ

本記事では、個人事業主が赤字になった場合の確定申告について解説してきました。赤字の年でも確定申告を行うことで、株式取引損失の繰越控除や源泉徴収税の還付など、多くのメリットがあります。

赤字の状況下でも、正確な財務記録を維持し、確定申告を行うことが戦略的に推奨されます。赤字に悩む個人事業主の方々は、ぜひ本記事を参考にして、適切な確定申告と資金調達の戦略を立て、経営の改善に役立ててください。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 
同年 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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