資金繰りとは?中小企業の経営安定に欠かせない資金調達の実態と対策
中小企業における資金繰りの重要性
中小企業に限らず、どんな事業形態でも事業に関わる「資金繰り」は日常的な経営課題です。
特に中小企業のクライアントに関しては、「資金繰り」がテーマにならないことはないと考えます。
売上拡大を計画するにしても、製造資金、設備資金、人件費、開発費など「資金ありき」の話が付きまといます。
業況不振でさまざまな対策を実行するにしても、結局は経費支払いの問題になりますし
赤字が拡大すれば、借入金の返済どころか、毎月の給与や社会保険料の支払いにも窮してしまいます。
中小企業の社長や経営陣の多くは、「資金繰り」で追い込まれると冷静な判断ができなくなることがあります。
ある金融機関の審査担当者の言葉を借りれば「債務者の顔」になってしまい、三日後の予定も見えなくなり、目の前の資金に執着してしまうのです。
当然、その後の対応は後手に回ることが多く、事業自体の特徴や将来性を見失い、事業の存続が厳しい状況に追い込まれます。
結果的に、会社という大切な「資金調達・収益確保の器」を失ってしまうことになります。
こうした中小企業の具体的な事例を紹介し、どのように「資金繰り」を安定させるかのヒントを考えたいと思います。
「2社間ファクタリング」の頻発
ここ数年、「2社間ファクタリング」を活用する中小企業が増えています。
売上債権の資金化・流動化という点では、大変意義のあるファクタリング取引です。
特に「2社間ファクタリング」は、売掛先(取引先)への通知や承認を不要とし、ファクタリング会社とだけ売上債権を譲渡する契約です。
そのため、売掛先に知られることなく、比較的簡便に資金調達ができる即時性が大きなメリットです。
その分、ファクタリング会社は売掛金の回収を顧客である中小企業に委託するリスクを負担するので、手数料を高く設定しています。
一件のファクタリングで最低でも8%〜10%の手数料がかかることが普通ですし、それ以上の料率が設定される場合もあります。
この高い手数料は、せっかくの売上利益を吐き出すだけでなく、赤字になる危険性があります。
さらに「2社間ファクタリング」を続けることで、倒産リスクが高まる可能性があります。
もちろん、低廉な手数料で利益が確保できるレベルのファクタリング取引もありますし
「2社間ファクタリング」を完全に否定するものではありませんが、その危険性については十分に認識しておくべきです。
ファクタリング会社の中には、こうした危険性を顧客である中小企業にコンサルティングし、金融機関からの借入への転換方法や資本増強の支援をしてくれる会社もあります。
要するに、出口戦略を冷静に考えたうえで「2社間ファクタリング」を活用し、窮地を脱するという方法が適切です。
「親類縁者からの借入」という融資条件
金融機関の中には、中小企業の資金借入申込に対して、「全額の貸付ができないので、親類縁者からでも借り入れしてくれれば融資します」という話をしてくることがあります。
過去の決算書で親類縁者からの借入金がある場合、こうした話が出ることがあります。
この場合、社長は本当はどうすればよいのでしょうか?
要するに、金融機関は最初から貸付をするつもりがないのです。
もちろん、親類縁者から個人的に借入できたとして、いくらかの貸付金を実行する可能性はありますが、それもあくまで短期資金であることがほとんどです。結局、期日にはしっかりと貸付金を回収するのが金融機関の考え方です。
こうした状況の社長の多くは、本当に親類縁者に頭を下げて資金を集めようとしますが
実際、ここまで来てしまった会社は、ほぼ再建不可能です。
赤字が深刻な状況では、新しく会社を設立してやり直す方向で考えるほうが生産的です。
一般に、「Good Asset(良い事業資産)」と「Bad Asset(悪い事業資産)」に切り分け、負債の処理を行う事業再生計画を策定するべき段階だと考えられます。
「その場しのぎ短期融資」は大丈夫か
金融機関の常套手段として、業績不振で返済力に懸念のある中小企業には、短期融資を提案してきます。
特に売上が減少し赤字基調が続いている中小企業の場合、既に調達している長期借入金の毎月の返済負担が重くのしかかっています。
この状況で金融機関が提案する短期資金(例えば6ヶ月)を調達すると、赤字補填資金や長期借入金の月次返済に消えてしまい、6ヶ月後には返済が不可能になってしまうことがほとんどです。
こうした場合、短期借入金で瞬間的な資金手当てをするのではなく、そもそもの長期借入金の返済猶予(リスケ)を交渉し、資金繰りを確保する必要があります。
安易に短期借入金に依存することは、負債を増加させるだけでなく、支払利息もかさみ
会社の赤字をさらに大きくしてしまいます。
また、こうした短期融資を金融機関から引き出すためには、資金繰り表などに売上水増しなどの操作が必要になるケースが多いため、会社としての信用度にも大きな傷をつけることになります。
資金繰り表の活用と安定化
中小企業の破綻を回避するためには、「資金繰り表」の活用が日常的に実施されることが重要です。
資金繰りは大別すると「経常収支」と「財務収支」の2つから構成され、これらを均衡させる作業を毎月行うことで、資金繰りの安定が実現します。
経常収支
経常収支とは「キャッシュベースで計算した会社の毎月の儲け(損)」のことです。
計算式としては、「経常収入-経常支出」となります。
これをさらに分解すると
経常収入=売上高+営業外収益-売上債権増加額+前受金増加額
経常支出=売上原価+販売費及び一般管理費+営業外費用-減価償却費+棚卸資産増加額-支払債務増加額+前払金増加額
となります。
この「経常収支」が2期以上赤字の場合、金融機関の審査担当者は注意が必要だと警戒します。これらの数値は毎月の試算表で確認するべきです。
財務収支
財務収支とは、一般的に「資金調達(借入金や増資など)」とそれに関わる「資金流出(借入返済や配当金支払)」の差額です。
財務収支は、企業の事業推進による経常収支の多寡によって変動します。
経常収支が経常支出を十分にカバーし、借入金の返済が円滑に進んでいる場合、資金繰りは安定しているといえます。
この「経常収支」と「財務収支」のバランスを保ちながら、会社の現預金残高をコントロールするのが資金繰り表の最大の目的です。常に「経常収支」>「財務収支」を維持できるような事業推移を確保し、事業の生産性向上や業態転換、人員採用や育成を計画することが求められます。
まとめ
本記事では、中小企業における資金繰りの重要性とその課題について解説しました。
資金繰りは企業経営において最も基本的かつ重要な要素であり、経営者は常にその安定を図る必要があります。
特に「2社間ファクタリング」や「短期融資」などの資金調達手段を活用する場合
その即効性が魅力ですが、同時に高い手数料や倒産リスクを伴うため、慎重な対応が求められます。
また、金融機関からの融資条件や短期融資の利用についても注意が必要です。
特に「親類縁者からの借入」や「その場しのぎの短期融資」は、事業の立て直しを遅らせる原因となりかねません。
したがって、長期的な視点での経営改善と再生計画が不可欠です。
最終的には、日々の「資金繰り表」の活用が、安定した経営基盤を作るために最も効果的であることが分かります。
経常収支と財務収支のバランスを取ることで、企業の財務状況を健全に保つことが可能です。
経営者は常に事業の方向性と資金繰りを見直し、将来的な安定を確保するための計画を立てることが重要です。
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