2025.04.18
登記簿謄本とは?種類や記入する内容、取得の仕方まで徹底解説
事業資金の借入れや契約手続きの際に、登記簿謄本の提出を求められることは多いでしょう。法人経営者や個人事業主にとって、登記簿謄本はさまざまな場面で求められる重要書類です。そのため、種類、取得方法について詳しく知らない方も少なくありません。
この記事では、登記簿謄本(正式名称:登記事項証明書)の基本から種類、記載内容、取得方法まで徹底解説します。
登記簿謄本の主な種類
登記簿謄本とは、法人や不動産に関する情報を証明する公的な書類です。正式には「登記事項証明書」と呼ばれ、法務局が発行する公的証明書になります。
企業の基本情報や変更履歴が記載されており、企業の法的ステータスを証明する役割を果たします。銀行融資や各種契約、入札参加など、ビジネスのさまざまな場面で提出を求められる重要書類です。
登記簿謄本には主に4種類あり、用途によって取得すべき種類が異なります。それぞれの特徴を理解して、目的に合った証明書を選択することが大切です。
現在事項証明書
現在事項証明書は、法人の現在有効な情報のみが記載された証明書です。過去の変更履歴は含まれず、最新の登記情報だけを確認したい場合に適しています。
ページ数が少なくコンパクトなため、単純に法人の現状を確認する目的や、過去の変更履歴が不要な手続きの場合に利用されます。例えば、現在の役員構成や本店所在地のみを確認したい場合に便利です。
取引先の現状確認や簡易的な本人確認などの場面で、情報を軽く確認する際に適した証明書といえるでしょう。
履歴事項全部証明書
履歴事項全部証明書は、現在の有効情報に加えて、約3年以内の変更履歴も含まれた証明書です。これが、最も一般的に利用される登記簿謄本の形式です。
銀行融資や重要な契約、公共入札参加などの場面では、ほとんどの場合、この履歴事項全部証明書の提出が求められます。法人の変遷や安定性を確認するうえで重要な情報源となります。
過去の本店移転、役員変更、増資などの履歴から企業の安定性や信頼性を判断できるため、詳細な審査が必要な場面で重視される書類です。
閉鎖事項証明書
閉鎖事項証明書は、すでに閉鎖された(消滅した)登記の内容を証明する書類です。会社の合併、解散、商号変更などで登記が閉鎖された場合に発行されます。
過去に存在した法人の情報を確認する必要がある場合や、法的な紛争解決、歴史的な経緯を証明する必要がある場合などに利用されます。
法人の再編や清算後の手続きなど、特殊なケースで必要とされる証明書です。一般的な事業活動では、頻繁に利用する機会は少ないでしょう。
代表者事項証明書
代表者事項証明書は、法人の代表者に関する情報のみが記載された証明書です。代表取締役や代表社員など、法人を代表する権限をもつ人物の情報が証明されます。
印鑑証明書の取得や、代表者個人の身分証明が必要な場合など、限定的な用途で利用されます。内容がシンプルで、1〜2ページ程度のコンパクトな証明書となっています。
代表者が契約主体となる場合や、代表者の本人確認が中心となる手続きで活用されます。
登記簿謄本の記載内容
登記簿謄本には、法人の基本的な情報から詳細な事項まで、さまざまな情報が記載されています。これらの情報は、法人の実態を正確に表すものとして重要です。
商号と本店所在地
登記簿謄本の最初に記載されるのが、「商号」と「本店所在地」です。商号は会社の正式名称を指し、株式会社や合同会社などの法人形態も含めた正式名称が記載されます。
本店所在地は会社の正式な所在地で、市区町村名から番地まで正確に記載されています。この住所は法人の公式な連絡先となり、法的な通知などはここに送付されます。
取引先との契約書や公的書類には、登記簿謄本に記載された正確な表記を使用することが重要です。表記の違いが法的問題につながることもあります。
事業目的
登記簿謄本には、法人が行う事業の範囲を示す「事業目的」が記載されています。これは、会社が法的に認められた事業の種類を列挙したものです。
事業目的は、比較的広い範囲で記載されることが多く、将来的な事業展開も見据えて設定されています。例えば、「不動産の売買、賃貸及び管理」「飲食店の経営」などと具体的に記載されます。
新規事業を始める際に、その事業が登記上の目的に含まれていない場合は、事前に目的追加の変更登記が必要です。これを怠ると、取引の有効性に問題が生じる可能性があります。
資本金と株式に関する情報
会社の財政基盤を示す資本金の額や、株式に関する情報も重要な記載事項です。資本金額、発行可能株式総数、発行済株式の総数とその種類などが記載されています。
株式会社の場合は、株式の譲渡制限の有無も記載されます。多くの中小企業では、「株式の譲渡による取得については、当会社の承認を要する」という譲渡制限が設けられています。
資本金の額は、会社の信用力を示す一つの指標としてみられるため、取引先や融資審査においてチェックされる重要な情報です。
役員情報
登記簿謄本には取締役、監査役、執行役員などの役員情報が記載されています。役員の氏名、住所、生年月日、就任日、任期などの情報が掲載されています。
特に代表取締役や代表社員など、会社を代表する権限をもつ人物の情報は重要です。これにより、契約締結時に相手方が正当な代表権をもつかどうかを確認できます。
役員の変更履歴からは、会社の安定性や内部事情も推し量ることができるため、取引審査において重点的に確認されるポイントとなります。
変更履歴の確認方法
履歴事項全部証明書には、過去約3年間の主要な変更履歴が記載されています。本店移転、商号変更、役員変更、資本金の増減などの履歴を時系列で確認できます。
変更履歴の各項目には、「変更年月日」と「登記年月日」が記載されており、実際の変更日と登記手続きが完了した日を区別して確認できます。
頻繁な住所変更や役員交代は、会社の不安定さを示す可能性があるため、変更履歴から企業の安定性を判断する材料として利用されることもあります。
登記簿謄本の取得方法
登記簿謄本は、複数の方法で取得可能です。状況や緊急性に応じて、最適な取得方法を選択しましょう。
法務局窓口での直接取得
最も一般的な取得方法は、最寄りの法務局・地方法務局の窓口に直接出向いて申請する方法です。全国どこの法務局でも取得可能で、即日発行してもらえます。
窓口での取得に必要なものは、申請書(窓口に用意されています)と手数料のみです。手数料は1通あたり600円で、収入印紙または現金で支払います。
急ぎの場合は、窓口での直接取得が最も確実です。窓口の営業時間は、平日の8:30〜17:15が一般的ですので、営業時間内に訪問する必要があります。
郵送による取得
法務局に足を運ぶ時間がない場合は、郵送で取得することも可能です。管轄の法務局に必要書類を郵送し、返送してもらう方法です。
郵送申請に必要なものは、申請書、手数料(600円分の収入印紙)、返信用封筒(切手貼付済み)です。申請書は、法務局のウェブサイトからダウンロードできます。
郵送での取得は、往復の郵送時間がかかることを考慮して、余裕をもって申請する必要があります。通常、1週間程度の日数を見込んでおくとよいでしょう。
オンラインでの取得
近年は、オンラインでの申請も普及しています。「登記・供託オンライン申請システム」を利用すれば、インターネット経由で申請可能です。
オンライン申請には事前準備として、電子証明書やICカードリーダーの準備、利用者登録などが必要になります。手数料はオンライン申請の場合、窓口よりも安く設定されています。
オンライン申請には、2つの受取方法があります。窓口受取の場合は手数料が480円、郵送受取の場合は500円です。デジタル化に対応した効率的な方法として、利用者が増えています。
法人番号を使った取得
法人番号(13桁)がわかっている場合、窓口やオンラインでの申請がより簡単になります。法人番号があれば、商号や所在地を正確に記入する必要がなくなります。
法人番号は、国税庁の法人番号公表サイトで調べることができ、登記簿謄本申請の際に活用すると手続きがスムーズになります。
特に、他社の登記簿謄本を取得する場合など、正確な表記がわからないケースでは、法人番号を活用するのが効率的です。法人番号は公開情報のため、誰でも利用することができます。
登記簿謄本を取得する際の注意点
登記簿謄本を取得する際には、いくつかの注意点があります。これらを事前に把握しておくことで、トラブルを避け、スムーズに取得することができます。
有効期限の確認
登記簿謄本自体に法的な有効期限はありませんが、多くの手続きでは「取得後3ヶ月以内」のものを求められることが一般的です。これは、情報の鮮度を確保するためです。
特に銀行融資や公的機関への提出、重要な契約などでは、発行日が新しいものを求められるケースが多くあります。提出先の要件を事前に確認しておくことが重要です。
複数の手続きを予定している場合は、各手続きの時期に合わせて計画的に取得すると無駄がありません。同じ内容の謄本でも、取得日が古いというだけで再取得を求められることがあります。
登記変更中の取得不可期間
登記変更の手続き中は、その法人の登記簿謄本を取得することができません。これは登記内容が更新中のためです。登記申請から完了までは、通常1〜2週間程度かかります。
例えば、本店移転や役員変更などの登記申請中は、登記が完了するまで新しい登記簿謄本を取得することができません。重要な手続きが迫っている場合は、特に注意が必要です。
大切な契約や融資申込みの前に登記変更を予定している場合は、時期を調整するか事前に登記簿謄本を取得しておくなどの対策が必要です。
法務局の選択
登記簿謄本は全国どこの法務局でも取得できますが、混雑状況は法務局によって大きく異なります。大都市の中心部にある法務局は、非常に混雑していることが多いものです。
特に月末や年度末、連休前などは多くの人が訪れるため、待ち時間が長くなることがあります。時間に余裕がない場合は、郊外や比較的小規模な法務局を選ぶと、待ち時間を短縮できます。
混雑を避けるには、開庁直後の午前中早い時間帯を狙うことが効果的です。また、オンライン申請と窓口受取を組み合わせる方法も、待ち時間短縮に有効です。
第三者による取得時の制限
登記簿謄本は誰でも取得できる公開情報ですが、第三者が代理で取得する場合には注意点があります。基本的に委任状は不要ですが、大量取得の場合などは事情を確認されることがあります。
司法書士や行政書士などの専門家に依頼する場合は、通常代理人としての取得に問題はありません。ただし、代行手数料が別途発生することに注意が必要です。
急ぎの場合や手続きに不安がある場合は、専門家への依頼を検討すると安心です。特に、重要な取引や期限のある手続きでは、確実性を優先することも選択肢の一つです。
ビジネスでの登記簿謄本活用シーン
登記簿謄本は、さまざまなビジネスシーンで活用されています。主な活用シーンを理解することで、事前準備や計画的な対応が可能になります。
融資申込み時の必要書類として
銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受ける際には、ほぼ必ず登記簿謄本の提出が求められます。これは、融資先の法的実態や経営状況を確認するための基本書類となるためです。
通常は履歴事項全部証明書が求められ、本店所在地や代表者、役員構成、資本金額などの基本情報を確認されます。また、過去の変更履歴から会社の安定性も判断材料となります。
融資申込みの際は、申込み直前に取得した新しい謄本を用意することが重要です。古い謄本では受け付けてもらえないことが多いため注意しましょう。
取引先との契約締結時
新規取引先と重要な契約を結ぶ際にも、登記簿謄本が必要になることがあります。特に大口取引や継続的な取引では、相手企業の信頼性を確認するために謄本の提出を求められることが一般的です。
契約書に記載する会社名や所在地、代表者名などの情報は、登記簿謄本の記載と完全に一致している必要があります。契約締結権限をもつ人物かどうかの確認にも利用されます。
大口取引や長期契約の場合は、双方が登記簿謄本を交換する慣行もあります。これにより互いの法的地位を確認し、契約の安全性を高めることができます。
公共入札への参加資格
官公庁や地方自治体の入札に参加する際には、登記簿謄本が必須の提出書類となります。入札参加資格申請の際に、履歴事項全部証明書の提出が求められます。
入札参加には、会社の事業目的に入札対象の事業が含まれていることが前提となります。事業目的に記載がない場合は、事前に変更登記を行っておく必要があります。
公共入札の申請は、年に数回など期間限定の場合が多いため、申請時期に合わせた準備が必要です。締切直前に登記変更が必要となると、間に合わないことがあるので注意しましょう。
不動産取引での活用
法人名義で不動産を購入・売却する際にも、登記簿謄本は重要な役割を果たします。取引の際には、契約当事者の法的地位を確認するために、双方の登記簿謄本が必要となります。
特に、法人の代表者が不動産売買契約書に署名・捺印する際には、その人物が正当な代表権をもつことを証明するために登記簿謄本が確認されます。
不動産取引は高額な取引になるため、取引直前の最新の謄本が求められることが一般的です。取引のタイミングに合わせて、新しい謄本を用意する必要があります。
登記簿謄本に関してよくある質問
登記簿謄本について、経営者や担当者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
取得にかかる時間
登記簿謄本の取得にかかる時間は、取得方法によって大きく異なります。法務局窓口での申請の場合、混雑状況にもよりますが、通常15分〜1時間程度で発行されます。
郵送での申請は、往復の郵送期間を含めて1週間程度みておくと安心です。オンライン申請で郵送受け取りの場合も、同様の日数がかかります。
急ぎの場合は、窓口での直接申請が最も確実です。ただし、法務局の混雑状況によっては待ち時間が長くなることもあるため、可能であれば午前中など比較的空いている時間帯を選ぶとよいでしょう。
複数の会社の謄本を一度に取得できるか
複数の会社の登記簿謄本を、一度に取得することは可能です。法務局窓口やオンライン申請で、複数の会社の謄本をまとめて申請できます。
ただし、会社ごとに別々の申請書を作成する必要があり、手数料も会社ごとに必要です。大量に取得する場合は、事前に申請書を準備しておくと、窓口での手続きがスムーズになります。
多数の会社の謄本を定期的に取得する必要がある場合は、オンライン申請の利用を検討すると効率的です。手数料が、窓口申請より安くなるメリットもあります。
英語版の登記簿謄本は取得可能か
法務局では、英語版の登記簿謄本は発行していません。海外企業との取引や海外進出の際に英語の会社証明書が必要な場合は、取得した日本語の登記簿謄本を翻訳する必要があります。
翻訳は、一般的に翻訳会社や英語に堪能な行政書士などに依頼します。特に、重要な契約や海外当局への提出用には、「翻訳証明」を付けることが望ましいものです。
国際的な取引では、公的な翻訳証明の添付が求められることが多いため、単なる翻訳だけでなく、行政書士などによる正確性の証明も必要になることがあります。
偽造や改ざんをどう見分けるか方
登記簿謄本は公的文書であり、偽造や改ざんは犯罪行為(私文書偽造罪や公文書偽造罪)に該当します。近年はコピー技術の向上により、精巧な偽造文書が作成されるリスクも高まっています。
取引先から提出された登記簿謄本に関して疑いがある場合は、法人番号を使って法務局のデータと照合したり、オンラインの商業登記情報提供サービスで確認したりすることができます。
特に重要な取引や高額な契約の際には、提出された謄本が正しいものであるかを確認することをおすすめします。発行日が古すぎる場合や、紙質・印刷状態に不自然な点がある場合は、特に注意が必要です。
まとめ
登記簿謄本は、法人の基本情報を証明する重要な公的書類です。融資申込みや契約締結、公共入札参加など、さまざまなビジネスシーンで必要とされるだけでなく、取引先の信頼性を確認するためにも用いられる重要なツールです。
自社の登記情報は、常に最新かつ正確な状態に保つことが重要で、変更があった場合は速やかに登記手続きを行うことが基本です。また、取引先の登記簿謄本からは、その企業の安定性や信頼性を読み取ることができるため、取引をするかの判断材料となります。
登記簿謄本に関して、取得方法や活用法、読み解き方を正しく理解し、上手く活用していきましょう。不明点がある場合は、司法書士などの専門家に相談することもおすすめします。
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