2025.04.09
電子記録債権(でんさい)割引・電子手形割引とは?仕組み・仕訳・メリットを解説
現代のビジネスシーンでは、紙の手形や売掛債権といった「現金以外の支払い方法」を活用しながら、資金繰りを行う企業が増えています。そうしたなかで注目されているのが、電子化された債権を活用した資金調達の方法です。
本記事では、電子記録債権(でんさい)割引や電子手形の割引を中心に、その仕組みとメリットを詳しく解説します。資金繰りを検討中の方や、手形管理に手間を感じている方の一助になるよう、具体的な手順や会計処理方法にも触れます。
電子手形や割引の基本知識
電子手形は、従来の紙の約束手形を電子的に管理し、受取企業が手形を早期に資金化しやすいしくみを指します。割引とは、手形の満期日以前に銀行や金融機関が手形を買い取り、手数料を差し引いた金額を企業へ支払う方法です。
ここでは、電子手形の全体像と、割引による資金調達の仕組みを理解するため、基本的な流れを分けて解説します。電子記録債権である「でんさい」も、類似する電子化された債権として比較対象になります。
電子手形・割引とは?
電子手形は、約束手形の発行や譲渡をオンラインで行い、手形の内容を電子データとしてやり取りする方法です。紙の原本管理が不要となり、郵送や紛失、滅失などのリスクを軽減できます。
一方で割引とは、満期前の手形を現金化する代表的な手段です。電子手形でも紙の手形と同様、割引を活用すれば満期日を待たずに資金を確保できます。資金繰りが厳しい局面への即時対応として、多くの企業で利用されています。
でんさいの基本フロー
でんさい(電子記録債権)は、2007年に施行された電子記録債権法に基づき、オンラインで売掛債権などを記録・管理する制度です。紙の手形とは異なり、取引銀行とでんさいネットの間で取引情報を一元的に扱います。
具体的には、支払企業が発生記録を銀行へ登録し、承認が下りると受取企業に通知が届きます。受取企業は登録された期日に入金を受け取るか、さらにでんさいを他社へ譲渡するなどの活用が可能です。取引の透明化が期待でき、資金管理の効率化にもつながります。
電子手形割引の基本フロー
電子手形割引は、でんさいと仕組みが似ている部分もありますが、手形を金融機関に買い取ってもらう点に特徴があります。買い取る際には割引料(手数料)を差し引いたうえで受取企業に支払うため、満期金額よりやや少ない金額を受け取るかたちです。
また、割引を行う金融機関が、手形発行企業の信用力などを審査するため、スムーズに割引が実施されるには信用を確保する必要があります。紙の手形同様に、不渡りリスクを意識しておくことも重要です。
電子記録債権の仕組みと活用
電子記録債権は、インターネットを通じて債権を管理する仕組みであり、発生から譲渡、決済まで一貫してオンライン上で行うことができます。紙の手形と比較して事務コストやリスクが抑えられ、企業間の売掛金や買掛金の管理を合理化しやすい点が特徴です。
ここでは、電子記録債権である「でんさい」を導入するときの利点や会計上の仕訳、そして運用上の注意点を整理します。
電子記録債権を使う利点
電子化された債権を活用すると、紙での保管や郵送の手間が減り、盗難・紛失のリスクがありません。さらに電子的に管理されるため、発生日や支払期限が明確で記録も正確に追跡できます。
また、必要に応じて債権を分割譲渡することができる点も、大きなメリットといえます。複数の取引先への柔軟な対応が可能になるため、キャッシュフローの改善を狙う企業にとって有益です。
仕訳と会計処理
電子記録債権を利用して資金化を行う場合も、紙の手形を割り引いた場合と同様に「手形売却損」などを計上します。割引料の計算式は、一般的に「手形金額×割引年利率×(割引日数÷365日)」です。
取引時には、受取手形や電子記録債権といった勘定科目を、「受取手形」または「電子記録債権」で計上し、割引時に割引料を営業外費用として計上するケースが多くあります。経理担当者の正確な処理が欠かせません。
管理で気を付けること
電子記録債権はオンライン上で管理できる一方、利用する金融機関やシステムによって手数料や日数の計算方法が異なる可能性があります。あらかじめ費用面の見積もりをとり、メリットがコストを上回るかを検討しましょう。
また、相手先の信用状況を確認する必要がある点も、従来の手形取引同様に重要です。信用調査を怠らないことで、債権の焦げ付きリスクを回避し、安定的な資金繰りを実現しやすくなります。
ファクタリングとの違い
資金繰りを支援する方法としては、ファクタリングもよく知られています。ファクタリングは、売掛債権をファクタリング事業者へ売却し、資金を早期化する手段です。
ここでは、電子記録債権や電子手形割引との違いを比較し、どのタイミングでどの方法を選択すべきかを検討するためのポイントを解説します。
資金調達タイミング
でんさいや電子手形の場合、支払期日まで待つか、割引によって早期資金化を目指すかたちになります。一方でファクタリングは、請求書が発行されたタイミングで売掛債権を売却できるため、より早い段階で現金を得られる点が特徴です。
そのため、早期のキャッシュ確保を最優先したいときは、ファクタリングが有効です。逆に、でんさいを用いられる取引先が多いのであれば、オンラインでの手続きによる利便性も考慮するとよいでしょう。
取引の方法
でんさいや電子手形は、金融機関やでんさいネットを通じて債権情報を登録し、期日までに支払いを受ける仕組みです。一方、ファクタリングでは、売掛債権そのものをファクタリング会社に売却します。
債務者(支払企業)側の承諾を得る種類のファクタリングや、通知しない償還型など種類が複数存在します。利便性とスピードを優先したい場合はファクタリングを検討し、手形を利用中であれば、電子化による負担軽減が期待できるでんさいを利用するなど、状況に応じた選択が必要です。
手数料やコスト
ファクタリングは、契約時に設定される買取手数料が発生します。この手数料率は、売掛先の信用力や利用企業の財務状況などによって変動し、複数社の見積もりを比較しやすい点も特徴です。
一方、でんさいの場合は、電子記録債権の管理手数料や、割引を行う際の割引金利がかかります。トータルコストの比較を行い、最適な方法を選択することが大切です。
電子手形のメリット
電子手形には、従来の紙手形に比べてさまざまなメリットがあります。特に、オンライン管理や割引による資金調達のしやすさは大きな特徴です。
以下では、管理面や資金繰りの安定化に関する利点を中心に紹介します。
事務管理の簡素化
紙の手形を発行・受け取りする場合、裏書譲渡や郵送、保管場所の確保など、さまざまな事務作業が必要でした。電子手形の場合は、発行も譲渡もオンラインで完結するため、管理負担が大きく減少します。
また、紛失・盗難のリスク回避ができる点も大きいため、経理担当者の心理的負担も軽減されます。
割引による資金繰りの改善
電子手形を早期に現金化したい場合、割引に出す方法があります。これは、手形の満期日より前に金融機関へ手形を売却し、手数料を差し引いた額を受け取る仕組みです。
資金ショートのリスクを回避したい企業にとって、手形の柔軟な現金化は有効な手段です。手数料はかかりますが、安定したキャッシュフローを得る目的が達成しやすくなります。
分割や譲渡の柔軟性
電子手形には一部譲渡が可能なケースもあり、必要な額だけを別の支払いに充てるなど、融通がきく点が特徴です。紙手形では、裏書譲渡のたびに手形の管理が複雑になる反面、電子なら記録データの修正だけで済みます。
その結果、時期に応じた運転資金調達を行いやすくなり、経理処理のミスも減らすことができます。
でんさい割引のメリット
でんさい割引とは、電子記録債権の割引を通じて資金調達を行う仕組みです。電子手形と似た特徴をもちながらも、オンライン完結や記録機関による債権管理など、異なる点も多く存在します。
ここでは、紙の手形管理と比べた利点や、オンラインでの決済によるメリットを紹介します。
紙の手形との違い
紙の手形の場合、物理的な書類をやり取りするため、印紙税や郵送費、紛失リスクがつきまといます。一方、でんさい割引では、電子上で債権を管理するため、これらのコストやリスクが大幅に軽減されます。
また、手形の割引を金融機関に依頼するとしても、専用ネットワークを通じたやり取りにより、手続きがスピーディーに完結できる点はメリットです。
オンラインでの決済とリスク
でんさい割引は、電子記録債権のデータをオンラインでやり取りするため、発生記録や譲渡記録がデータベースに集約されます。管理や決済の履歴が明確なので、債権の二重譲渡などのリスクを防ぎやすくなります。
ただし、運営する金融機関のシステム障害などにより決済が遅れたり、債権発行企業の信用リスクが顕在化したりする可能性もあります。システム障害時の対処規定を把握しておきましょう。
手形売却損の計算
でんさい割引を利用すると、手形割引同様に割引料(手形売却損)が発生します。計算式は「手形金額×割引年利率×(割引日数÷365日)」が一般的で、これは銀行や金融機関によって異なる場合もあります。
割引料は、支払利息と同じように営業外費用に計上され、資金確保のタイミングで同時に処理される点が特徴です。費用対効果を検討しながら、資金繰りに有利なタイミングで割引を行うとよいでしょう。
電子手形割引の注意点
電子化によって多くの手間が省かれる一方、電子手形割引にも注意すべきポイントがあります。特に、信用力の審査や不渡りリスクに関しては、紙の手形と同様に管理が必要です。
ここでは、電子手形割引における代表的な注意点を解説します。
信用力の影響
手形が電子化されても、手形発行企業の信用力や利用企業の財務状況が、円滑な手形の資金化に大きく影響します。割引を行う金融機関は、手形の発行元が期限通りに支払いを行えるかを厳しくチェックします。
そのため、自社だけでなく取引先の与信状況も常にモニタリングしておくことが欠かせません。信用力不足で割引が通りにくくなるケースもあるため、事前に対策を講じる必要があります。
不渡りや貸付扱いのリスク
手形は、期日に決済されなければ不渡りとなり、信用状態の悪化以上に多大な損失につながる可能性があります。電子手形でもこの仕組みは同様であり、満期日に決済されない場合は、再度自社が弁済責任を負うケースがあります。
また、金融機関によっては、電子手形割引が事実上の貸付として扱われることもあります。帳簿上の扱いを確認しながら、リスクとのバランスを取ることが重要です。
手数料負担への注意
電子手形割引を利用するにあたっては、割引料のほか手数料が発生する場合があります。紙手形より割引料が低いとされるケースもありますが、電子化運用コストが別途かかることもあり、単純に比較が難しいことがあります。
資金繰り上のメリットが手数料負担を上回るかどうか、シミュレーションによる検証を実施することが大切です。
でんさい割引の注意点
でんさい割引にも、同様に注意点があります。電子記録債権としてオンライン管理されるためメリットは多いですが、導入初期費用やシステム登録料などが必要になることがあります。
以下では、コストや法的側面を中心に確認します。
コスト比較
すでに紙の手形を運用している企業にとっては、でんさいの導入によるコストメリットと比較しつつ、割引にかかる手数料を検討する必要があります。実際に導入してみると、想定以上に処理がスムーズでコスト削減につながるケースもあれば、思いのほか登録手数料がかかると感じる場合もあります。
ただし、導入コストと効率化効果をトータルで考慮することで、長期的にはでんさいに優位性を見いだせる可能性があります。
登録料や管理手数料
でんさいシステムに参加する際や、でんさいネットを利用し続けるには、管理手数料などが発生します。紙手形にはなかった固定費用となるため、自社の取引規模や手形利用頻度に合致しているかを検証することが重要です。
また、システム利用時の通信費用など、細かな費用が積み重なるケースもあります。定期的な見直しによって、最適な料金プランや運用体制を探るとよいでしょう。
法的取扱いと審査
電子記録債権は、紙の手形に比べて債権の譲渡や分割が容易な一方、法的には「債権譲渡」の性格をもつため、債権者や債務者の地位確認などに注意する必要があります。手形法や電子記録債権法といった、法令への理解が求められます。
また、金融機関が発行企業や譲渡企業の信用情報を審査する際、必要書類の不備があると、スムーズに進まない場合があります。担当部門と連携しながら進めることが大切です。
自社に合った選択
電子手形やでんさい割引、さらにファクタリングなど、資金繰りを安定させる方法にはいくつかの選択肢があります。自社がどのような現金需要を抱えているか、取引先の信用力は十分かなど、さまざまな要素を考慮に入れることが求められます。
ここでは、それぞれの手法を選ぶ際の判断材料となるポイントを紹介します。
キャッシュフロー改善の要点
まず、支払いと入金のタイミングをいかに短縮し、キャッシュフローをスムーズにするかを考えることが重要です。電子手形の割引やでんさいなら、オンラインで素早く手続きできるうえ、満期日まで待たずに資金化することも可能です。
また、回収遅延リスクへ備えるため、複数の資金調達手段を検討するのも一つです。ファクタリングや融資など、組み合わせた利用が最適となるケースも珍しくありません。
ファクタリングを使う場合
ファクタリングは、請求書(売掛金)をファクタリング会社に売る形で、決済期日より前に資金を受け取る方法です。与信リスクが事業者側に移るノンリコース型と、自社がリスクを負うリコース型があります。
売掛先が複数あって回収に手間がかかる場合など、ファクタリングで管理担当者の業務を軽減しつつ、迅速に資金調達できる利点があります。早期資金化を最優先したい場合には、有力な選択肢です。
でんさいを使う場合
でんさいは、電子記録債権を基盤とするため、紙手形の課題であった事務負担や紛失リスクを大幅に減らすことができます。さらに、支払企業がでんさいに対応していれば導入もスムーズです。
ただし、割引による手数料やシステム利用料のバランスを見極める必要があります。導入前の十分な検証を行い、キャッシュフロー改善とコスト削減を両立させるように計画しましょう。
まとめ
電子記録債権(でんさい)割引と電子手形の割引は、いずれもオンラインを活用した資金調達方法です。紙の手形に比べて、事務負担の軽減やリスク管理の向上が期待できます。
本記事で紹介した内容を踏まえて、自社の導入環境や信用力を検証し、最適な手段を選択してください。適切な方法を活用すれば、資金繰りが安定し、ビジネスの成長につなげやすくなります。ぜひ専門家と相談しながら、導入を具体的に検討してみてください。
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