2025.04.16
起業・経営していく中で資金調達する方法は?投資、融資、補助金など網羅的に紹介
事業を始める際や経営を続けていく中で、最も重要な課題が資金調達です。アイデアがあっても、人材がそろっていても、資金がなければほとんどのビジネスは前に進みません。起業にあたって、資金をどのように調達するか頭を悩ませている起業家や経営者は少なくありません。
資金調達には融資や出資、補助金など様々な方法があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。その中から、自社にとって最適な方法を選ぶことが大切になります。
本記事では、起業時や事業拡大期に必要な資金を調達するための方法を、網羅的に解説します。
資金調達の基本
事業を運営する上で、資金調達は避けて通れません。十分な資金がなければ、事業の継続や成長はもちろん、日々の運転資金の確保も難しくなります。
資金調達が必要となる場面
ビジネスにおいて資金が必要となるのは、主に起業時の初期投資、事業拡大期の設備投資、新規事業への参入、運転資金の確保などの場面です。
特に起業直後や急成長期には、売上が経費に追いつかないことが多く、計画的な資金調達が事業継続の生命線となります。また、予期せぬ経済環境の変化や緊急事態に備えた資金確保の際にも資金調達が行われます。
資金調達をするかどうかは、経営者に重要な経営判断としてゆだねられます。資金不足は事業成長の機会を逃すだけでなく、最悪の場合は事業継続の危機にもつながります。
資金調達の三大手段
資金調達の方法は、大きく分けて以下の3つに分類されます。
- 融資(負債による調達):返済義務のある借入金や社債発行による資金調達
- 出資(自己資本の増強):株式や持分の発行による資金調達
- 資産の現金化:保有資産を売却や担保にして資金を得る方法
これらはそれぞれ特性が異なり、返済義務(償還義務)の有無、経営権への影響、調達の難易度などが異なります。事業のステージや目的によって、最適な手段を選択することが重要です。
資金調達前に明確にすべきこと
効果的な資金調達を行うためには、事前準備として、いくつかの点を明確にしておく必要があります。
まず、いくら必要なのか、その資金は何のために使うのかを明確にすることです。次に、返済計画や投資回収の見通しを立てることも重要です。そして、自社の財務の状況と調達能力を客観的に評価することで、現実的な地に足の着いた資金調達計画を立てることができます。
これらの準備を怠ると、必要以上の資金を調達してコストがかさんだり、逆に不足して事業が頓挫したりしてしまうかもしれません。
融資による資金調達方法
融資は、最も一般的な資金調達方法の一つです。返済義務はありますが、経営権に影響を与えずに資金を調達できるメリットがあります。
日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫は、国が運営する金融機関で、民間金融機関では対応が難しい創業期の企業や、小規模事業者向けの融資を行っています。
新創業融資制度や新規開業資金などのプログラムがあり、創業時に必要な設備資金や運転資金を低金利で借り入れることができます。特に創業間もない企業にとっては、実績や担保が少なくても融資を受けられる可能性が高いため、重要な資金源となります。
申請には事業計画書の提出が必要で、返済能力や事業の実現可能性が審査されます。審査期間は通常2〜4週間程度かかるため、余裕をもって申請することが重要です。
自治体の制度融資
各地方自治体では、地域の中小企業や個人事業主を支援するための制度融資を設けています。これらは、地域の信用保証協会と連携して提供される低金利の融資制度です。
制度融資の特徴は、通常の銀行融資よりも金利が低く、信用保証協会の保証付きで融資を受けられることです。また、自治体によっては保証料の一部または全部を補助するケースもあります。
地域や業種によって利用できる制度が異なるため、地元の自治体や商工会議所に相談して自社に適した制度を探すことが大切です。一般的に、経営改善資金、小口事業資金、創業支援資金などの種類があります。
銀行・信用金庫からの事業融資
民間金融機関である銀行や信用金庫からの融資は、事業規模の拡大や長期的な資金需要に対応するために活用されます。
銀行融資を受けるためには、財務状況の健全性や事業の将来性、担保や保証人の有無などが重視されます。特に実績のある企業では、メインバンクとの関係構築が安定的な資金調達の基盤となります。
信用金庫は地域密着型の金融機関で、地元の中小企業に対してよりきめ細かいサービスを提供しています。規模の小さい事業者や創業間もない企業にとっては、銀行よりも融資を受けやすい場合があります。
ビジネスローン・カードローン
小規模な資金調達や短期的な資金需要に対しては、ビジネスローンやビジネス向けカードローンも選択肢となります。
これらは審査が比較的簡易で、少額から借入が可能なケースが多いものです。また、一度契約すれば限度額内であれば何度でも借入・返済を繰り返せるrevolving型の商品もあり、柔軟な資金調達が可能です。
ただし、金利は他の融資方法と比べて高めに設定されていることが多いため、長期間の借入や大型の資金調達には適していません。一時的な資金ショートを防ぐための「つなぎ資金」として活用されるケースが多くあります。
社債発行による資金調達
中小企業が社債(企業債券)を発行することで、投資家や金融機関から資金を調達する方法です。社債を発行すると、企業は債券購入者(投資家)から資金を受け取り、一定期間後に元本を償還し、利息(クーポン)を支払います。
中小企業にとって社債発行は、銀行融資に頼らず長期資金を調達できる有効な手段ですが、信用力や発行コストの問題があるため、適切なスキームを選ぶことが重要です。特に、私募債や保証付き社債の活用が、中小企業にとって現実的な選択肢となります。
出資による資金調達方法
出資による資金調達は、返済義務がない代わりに会社の株式や持分を提供する方法です。成長志向の強い企業にとって有効な選択肢となります。
ベンチャーキャピタルからの投資
ベンチャーキャピタル(VC)は、成長性の高いスタートアップ企業に投資することを専門とする投資会社です。主に、技術革新性の高い事業や、市場拡大が見込まれる事業に投資を行います。
VCからの投資を受けるメリットは、単なる資金調達だけでなく、経営ノウハウの提供や事業提携先の紹介など、様々な支援を受けられる点です。特に、成長フェーズに合わせた段階的な資金調達が可能なため、急成長を目指す企業に適しています。
ただし、投資の見返りとして高いリターンを求められるため、明確な成長戦略と出口戦略(IPOやM&A)が必要です。また、経営への関与度が高まる点も考慮すべきです。
エンジェル投資家からの出資
エンジェル投資家は、個人の資産を活用して、創業初期のスタートアップに投資する個人投資家です。VCよりも少額から投資する傾向があり、特にシード期・アーリーステージの企業にとって重要な資金源となります。
エンジェル投資家の魅力は、投資判断が比較的早く、個人の裁量で行われる点です。また、多くの場合、自身の経験やネットワークを活かしたメンタリングも提供してくれます。
エンジェル投資家へのアプローチ方法としては、起業家向けのピッチイベントへの参加、エンジェル投資家ネットワークへの登録、知人からの紹介などがあります。個人との信頼関係構築が重要なため、投資家とのコミュニケーションを大切にする姿勢が重要になります。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める方法です。出資型、寄付型、購入型など複数の形態があります。
出資型クラウドファンディングでは、投資家に株式や利益の一部を提供する代わりに資金を調達します。多くの投資家から、比較的少額から資金を集められるため、従来の投資家にアピールしにくい事業でも資金調達の可能性があります。
購入型クラウドファンディングでは、将来提供する商品やサービスの先行予約という形で資金を集めます。この方法は、製品開発資金の調達だけでなく、市場ニーズの検証やプロモーションとしても機能します。
成功するためには、魅力的なプロジェクトページの作成、効果的なリターン設計、SNSなどを活用した情報発信が重要です。
第三者割当増資
第三者割当増資は、特定の投資家(第三者)に対して、新株を発行して資金を調達する方法です。主に中小企業やベンチャー企業が用いる手法で、既存株主以外から広く資金を調達できます。
この方法の特徴は、特定の戦略的パートナーや投資家から、大規模な資金調達が可能な点です。また、事業提携や技術協力なども期待できます。
ただし、既存株主の持分が希薄化するため、既存株主との調整や合意形成が重要です。また、新たな株主が経営に影響力をもつことになるため、株主構成の変化による経営方針への影響も考慮する必要があります。
補助金・助成金による資金調達
補助金や助成金は返済不要の資金として、多くの事業者に活用されています。政府や自治体が特定の政策目的のために提供する制度で、適切に活用することで事業の成長を加速させることができます。
創業補助金
創業補助金は、新たに創業する個人や中小企業を対象とした補助金制度です。一般的に、事業に必要な設備投資や広告費などの一部が補助されます。
申請には詳細な事業計画書の提出が必要で、事業の斬新さや実現可能性、地域経済への貢献度などが審査されます。具体的な数値目標と実現のための施策を明確に示すことが、採択率を高めるポイントです。
募集は年に数回行われることが多く、申請から採択、資金交付までには数ヶ月かかるため、計画的に準備を進める必要があります。また、多くの場合は先に自己資金で支出し、後から経費の一部が補助される「後払い方式」となるため、当面の資金計画も求められます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模な事業者が行う販路開拓や業務効率化などの取り組みを支援する制度です。チラシ作成、ホームページ構築、店舗改装などの経費の一部が補助されます。
この補助金の特徴は、比較的申請しやすく、採択率も高めな点です。地域の商工会議所や商工会のサポートを受けながら申請できるため、補助金申請の経験が少ない事業者でも挑戦しやすい制度となっています。
申請には経営計画と販路開拓等の取組計画の提出が必要です。そのため、具体的な販売促進策とその効果、売上向上の見込みなどを明確に記載しましょう。また、過去の採択事例を研究することも有効になります。
IT導入補助金などの専門分野別補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者のIT化を促進するための補助金制度です。業務効率化や、売上向上につながるITツールの導入費用の一部が補助されます。
対象となるITツールは、会計ソフト、顧客管理システム、ECサイト構築ツール、在庫管理システムなど多岐にわたります。自社の課題解決に直結するITツールを選定することが重要です。
このほかにも、ものづくり補助金(製造業向け)、事業再構築補助金(業態転換向け)、省エネ設備導入補助金など、業種や目的に応じた様々な補助金制度があります。自社の事業内容や今後の計画に合わせて、適切な制度を選択することが大切です。
補助金・助成金申請のよくある失敗と対策
補助金・助成金の申請では、いくつかの典型的な失敗パターンがあります。まず最も多いのが、締切直前の慌てた申請です。多くの補助金は準備に時間がかかるため、公募開始から余裕をもって準備を始めることが重要です。
また、補助金の趣旨と自社事業の目的が合致していないケースも多くみられます。各補助金の政策目的を理解し、それに沿った申請内容にすることが採択率を高めます。
さらに、具体性に欠ける事業計画や、数値根拠が薄い収支計画も不採択の原因となります。明確な目標数値とその達成方法、具体的な資金使途を示すことが重要です。
これらの失敗を防ぐには、専門家のアドバイスを受けることも有効です。商工会議所や中小企業支援センター、民間のコンサルタントなどに相談することで、申請の質を高めることができます。
その他の資金調達方法
融資、出資、補助金以外にも、様々な資金調達方法があります。状況や目的によって最適な方法を選びましょう。
ファクタリングによる売掛金の現金化
ファクタリングは、企業が保有する売掛債権を専門業者(ファクター)に売却して、即座に資金化する方法です。通常の融資とは異なり、借入ではなく資産の売却になるため、負債として計上されません。
最大のメリットは、審査が売掛先の信用力に基づいて行われるため、自社の財務状況が芳しくなくても資金調達できる点です。また、資金化までのスピードが速いため、急な資金需要に対応できます。
ただし、売掛金額の一部が手数料として差し引かれるため、コストは通常の融資より高くなる傾向があります。資金繰りに困った際の一時的な手段として考えるとよいでしょう。
ビジネスコンテストでの資金獲得
ビジネスコンテストは、事業アイデアやビジネスプランを競い合う場であり、優勝すれば賞金や事業支援を獲得できる可能性があります。起業家や新規事業の立ち上げを考えている方にとって、魅力的な選択肢です。特に最近は、多くの企業から事業アイデアやビジネスモデルを評価し、大手企業を含む、事業アライアンスを構成するオープンイノベーションの活用が、資金調達を含む中小企業の事業戦略に有益な方法として着目されています。
コンテスト参加の最大のメリットは、賞金だけでなく、審査員からのフィードバックを得られる点です。業界の専門家や投資家からのアドバイスは、事業計画の改善に大いに役立ちます。また、参加者同士のネットワーキングや、メディア露出によるPR効果も期待できます。
効果的な参加のためには、ターゲット市場の明確化、競合との差別化ポイントの強調、収益モデルの具体性、チームの強みなどを簡潔かつ魅力的に伝えるプレゼンテーション能力が求められます。
リースバックなどのアセットファイナンス
アセットファイナンスとは、企業が保有する資産を活用して資金を調達する方法です。その代表的な手法の一つが、リースバックです。
リースバックは、自社が所有する不動産や設備を専門会社に売却し、同時にリース契約を結んで継続使用する方法です。資産を手放すことなく大きな資金を調達できる点が最大のメリットです。Balance Sheet(貸借対照表)上でも資産と負債が同時に減少するため、財務体質の改善にも寄与します。
他にも、在庫を担保とした資金調達や、知的財産権を活用したファイナンスなど、自社のもつ資産を最大限に活用する様々な手法があります。これらは、従来の融資が難しい企業にとって、有効な選択肢となる場合があります。
M&Aによる事業売却や資本提携
M&A(合併・買収)は、事業の一部または全部を売却して大規模な資金を得る方法です。単なる資金調達を超えて、事業の成長戦略や経営者の出口戦略としても重要な選択肢となります。
完全な事業売却以外にも、資本提携という形で一部の株式を戦略的パートナーに売却し、資金調達と事業シナジーを同時に実現する方法もあります。業界再編の流れを見据えたタイミングでの実行が、高い評価獲得につながります。
M&Aを検討する際は、専門家のサポートを受けながら、適切な企業価値の評価、相乗効果の検証、デューデリジェンス(詳細調査)への対応など、慎重なプロセスを踏むことが重要です。短期的な資金調達だけでなく、長期的な事業価値向上の視点から判断することが大切になります。
まとめ
本記事では、融資、出資、補助金など様々な資金調達方法について解説してきました。それぞれの方法には特徴やメリットとデメリットがあり、事業の段階や目的に応じてどれが最適であるかは異なります。
効果的な資金調達を実現するためには、自社の現状と将来の成長計画を客観的に分析し、それに基づいた戦略を立てることが重要です。そのためには、資金使途の明確化、返済計画の策定、複数の資金調達手段の組み合わせなど、計画的なアプローチが求められるでしょう。
紹介した様々な方法を参考に、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、計画的に準備を進めましょう。
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