2025.05.07
不動産会社からローン事務手数料を請求された…支払うべき?契約時の注意点を解説
マイホーム購入を検討し、不動産会社と契約を進めていくと、「ローン事務手数料」という名目で10万円程度の費用を請求されるケースがあります。
実は、不動産会社からのローン事務手数料の請求は、宅建業法により原則として違法とされています。しかし、金融機関が請求する手数料は適法であり、最近ではローン代行会社を介した新たな手法も登場しています。
本記事では、不動産会社のローン事務手数料の違法性と適法な範囲、契約時の注意点について解説します。不動産購入の際に知っておくべき知識を身につけて、不当な請求から身を守りましょう。
ローン事務手数料とは
不動産取引を進める過程で、突然「ローン事務手数料」という名目で費用を請求されることがあります。これは、一体どのような費用なのでしょうか。
ローン事務手数料の基本
ローン事務手数料とは、不動産会社が住宅ローンの申込手続きや、審査のサポートなどを行うための費用として請求するものです。不動産購入者が住宅ローンを組む際、不動産会社が金融機関との間で書類のやり取りや手続きの代行を行うことがあります。
この手続きに対する対価として、不動産会社が購入者に請求するのが、ローン事務手数料です。一般的な相場は約10万円程度とされていますが、会社によって金額は異なります。
購入者としては、「専門知識がないから不動産会社にサポートしてもらえるのはありがたい」と考えるかもしれません。しかし、このサービスに対して別途費用を支払う必要があるのかという点が大きな問題となっています。
請求されるタイミング
ローン事務手数料が請求されるタイミングは、主に以下の3つのケースがあります。
まず1つ目は、不動産の購入申込時です。物件を気に入り、購入申込書を提出する際に、申込金や手付金と合わせて請求されることがあります。
2つ目は、売買契約締結時です。本契約を結ぶ際に、印紙税や登記費用などとともに請求されるケースです。
3つ目は、住宅ローンの申込時や承認後です。金融機関への申込手続きを行う際や、ローンが承認された後に請求されることもあります。
多くの購入者は不動産取引の経験が少なく、これらの費用が適法なものかどうか判断できないまま支払ってしまうことが問題となっています。
不動産会社のローン事務手数料は違法なのか
ローン事務手数料の請求について、法的な観点から見ていきましょう。実は、この手数料の請求は、違法とされるケースが多いのです。
国土交通省の明確な見解
国土交通省は、不動産会社による「ローン事務手数料」の請求について、明確な見解を示しています。2022年度版の『宅地建物取引業法の解釈・運用』において、不動産会社が仲介手数料以外にローン事務手数料を請求することは宅建業法第65条に違反するとされています。
宅建業法第65条では、宅地建物取引業者が受け取ることができる報酬の上限を定めており、それを超える金額を請求することを禁止しています。つまり、法定の仲介手数料以外の費用を請求すること自体が違法なのです。
国土交通省の見解によれば、住宅ローンの手続き支援は、不動産仲介業務の一環として行われるべきものであり、そのサービスに対する対価は、すでに仲介手数料に含まれていると考えられています。
違法とされるケースの具体例
不動産会社によるローン事務手数料の請求が違法とされる、具体的なケースを見ていきましょう。
まず、仲介手数料とは別に、「ローン事務手数料」という名目で追加請求するケースが典型的な違法例です。例えば、仲介手数料として売買価格の3%+6万円(+消費税)を支払ったうえで、さらに「ローン手続きのサポート費用」として10万円を請求されるようなケースです。
また、名称を変えて請求するケースも違法とされます。「ローン手続き料」「融資事務代行料」「金融機関対応費用」など、さまざまな名称で請求されることがありますが、実質的にローン手続きに関する費用であれば、それは違法な請求となります。
さらに、契約書とは別の覚書や同意書などで追加費用を記載し、署名させるケースも違法です。このような方法で費用を請求することで、法律の抜け道を探ろうとする業者もいますが、本質的には違法行為となります。
金融機関によるローン手数料は適法
不動産会社のローン事務手数料が違法とされる一方で、金融機関が請求するローン関連手数料は適法です。この違いについて理解しましょう。
金融機関の手数料の種類と相場
金融機関が住宅ローン契約時に請求する手数料には、主に以下のようなものがあります。
まず「事務手数料」です。これは、住宅ローン契約の事務処理に対する手数料で、金融機関によって「融資事務手数料」「借入手数料」などと呼ばれることもあります。この手数料の相場は、定率型の場合は借入金額の1~2%程度、定額型の場合は3~5万円程度となっています。
次に「保証料」があります。保証会社に支払う保証料は、借入金額や返済期間によって変わります。一括払いの場合、借入金額の2~3%程度が相場です。また、金利に上乗せして支払う方式もあります。
さらに「繰上返済手数料」も一般的です。繰上返済を行う際に発生する手数料で、インターネットバンキングでの手続きなら無料、窓口での手続きなら数千円から数万円程度の費用がかかることが多いものです。
これらの手数料は、金融機関が提供する金融サービスの対価として適法なものとされています。
金融機関の手数料が適法とされる理由
金融機関による手数料請求が適法とされる理由は、そのサービスの性質にあります。金融機関は融資という金融サービスを提供しており、その審査や契約手続き、リスク管理などには相応のコストがかかります。
また、金融機関による手数料の請求は、銀行法や利息制限法などの金融関連法規に基づいて行われています。これらの法律では、金融機関が提供するサービスに対して適正な範囲内で手数料を請求することを認めています。
さらに、金融機関の手数料は事前に明示されることが一般的で、借入契約時に金利や返済条件と併せて説明されるため、消費者が納得したうえで契約を結ぶことができます。
一方で不動産会社の場合は、宅建業法によって報酬額の上限が定められており、その範囲内でサービスを提供することが求められています。つまり、ローン手続きのサポートは仲介業務の一環として、既に定められた仲介手数料の中で提供すべきサービスと位置づけられているのです。
ローン代行会社を使った新手の手数料請求に注意
最近では、不動産会社がローン事務手数料の違法性を回避するために、新たな方法を採用するケースが増えています。特に注意が必要なのが、ローン代行会社を介した手数料請求です。
ローン代行会社を経由する手法
ローン代行会社を経由した手数料請求の仕組みは、以下のようになっています。
まず、不動産会社は、自社とは別の金融関連の免許を持つローン代行会社と提携します。購入者が住宅ローンを申し込む際、不動産会社は「当社ではなく、専門のローン代行会社がサポートします」と説明します。
そして、このローン代行会社から購入者に対してローン手続きのサポート費用を請求するという流れです。ローン代行会社は、金融サービス提供者として手数料を請求するため、表面上は適法な形を取っているのです。
しかし実態としては、ローン代行会社と不動産会社が密接な関係にあり、手数料の一部が不動産会社に還元されるケースも少なくありません。このような手法は、法の抜け道を利用した手数料請求といえるでしょう。
法的グレーゾーンの問題点
ローン代行会社を経由した手数料請求は、法的にはグレーゾーンにあります。金融サービスの提供者が手数料を請求すること自体は違法ではありませんが、実質的には不動産会社が追加報酬を得るための手段となっている場合もあります。
この手法の問題点は、購入者に対して費用の透明性が低いことです。どのサービスに対してどの程度の費用が発生しているのか、また不動産会社とローン代行会社の関係性などが明確に説明されないケースが多いものです。
また、ローン代行会社の実態が伴わない「ペーパーカンパニー」的な存在である場合もあり、実質的なサービス提供者が不動産会社であるにもかかわらず、形式上別会社からの請求という形を取ることで、法規制を回避しようとする意図が見られます。
このような状況に対して、国土交通省や消費者庁などの監督官庁も問題視しており、将来的には規制が強化される可能性もあります。購入者としては、このような複雑な仕組みによる請求に対して、慎重に対応することが重要です。
不動産購入時の手数料請求に関する注意点
不動産購入を検討する際は、さまざまな手数料や費用について事前に理解し、不当な請求から身を守ることが重要です。ここでは、具体的な注意点を解説します。
請求元を必ず確認する
手数料を請求されたら、まず請求元が誰なのかを確認しましょう。不動産会社からの直接請求なのか、金融機関からの請求なのか、あるいはローン代行会社からの請求なのかによって、その適法性が異なります。
請求書や見積書には、必ず発行元の社名や連絡先が記載されているはずです。もし不明確な場合は、必ず確認を求めましょう。また、請求内容についても具体的に説明を求めることが大切です。
特に注意すべきは、不動産会社の担当者が「金融機関の手数料です」と説明しながら、実際には不動産会社が発行する請求書で支払いを求めるケースです。このような場合は請求の正当性を慎重に確認する必要があります。
請求理由の説明を求める
手数料の請求を受けたら、その内容と理由について詳細な説明を求めましょう。特に、「ローン代行手数料」「融資サポート費用」などの名目で請求される場合は、どのようなサービスに対する対価なのか、そのサービスは誰が提供するのかを明確に説明してもらう必要があります。
説明を受ける際のポイントは、以下の点です。
まず、サービス内容の具体性です。単に「ローンのサポート」という抽象的な説明ではなく、具体的にどのような作業やサポートを行うのかを確認しましょう。
次に、サービス提供者の実態です。ローン代行会社が請求する場合、その会社が実際にどのような業務を行い、どのような専門性を持っているのかを確認することが重要です。
さらに、手数料の金額の妥当性についても確認しましょう。一般的な相場と比較して高額な場合は、その理由を説明してもらう必要があります。
説明が不十分だったり、納得がいかなかったりする場合は、支払いを保留して検討する時間を持つことも大切です。
不審な請求への対応方法
不審な手数料請求に直面した場合の対応方法について解説します。
まず、不動産会社に対して質問や説明を求める際は、口頭だけでなく、メールや書面でのやり取りも行うようにしましょう。後々のトラブル防止のために、記録を残しておくことが重要です。
それでも納得がいかない場合は、以下の相談窓口を活用することができます。
・各都道府県の宅地建物取引業協会:不動産取引に関する相談窓口を設けています
・国民生活センターや各地の消費生活センター:消費者トラブル全般について相談できます
・各都道府県の建設・住宅部局:宅建業法に関する監督官庁として相談に応じています
相談する際は、請求書や見積書、契約書のコピー、やり取りの記録などを用意しておくと、より具体的なアドバイスを受けることができます。
違法な請求に対しては毅然とした態度で拒否することも大切です。ただし、一方的に支払いを拒否するのではなく、法的根拠に基づいて交渉することが重要です。
不動産会社が適法に請求できる費用の範囲
不動産会社からの請求が、全て違法というわけではありません。適法に請求できる費用について理解しておくことで、不当な請求を見分けることができます。
法定の仲介手数料
不動産会社が適法に請求できる最も基本的な費用は、法定の仲介手数料です。これは宅建業法第46条によって上限額が定められており、以下の計算式で求められます。
・売買価格が400万円以下の場合:売買価格×5%+消費税
・売買価格が400万円超の場合:売買価格×3%+6万円+消費税
例えば、3,000万円の物件を購入する場合、仲介手数料の上限は「3,000万円×3%+6万円=96万円」となり、これに消費税が加わります。
この仲介手数料には、物件の紹介から契約締結までの業務だけでなく、住宅ローン手続きのサポートも含まれているというのが国土交通省の見解です。そのため、仲介手数料とは別にローン事務手数料を請求することは違法とされています。
実費として請求可能な費用
不動産会社は、仲介手数料以外にも、取引に必要な実費については購入者に請求することができます。主な実費としては、以下のようなものがあります。
まず、登記関連費用があります。所有権移転登記や抵当権設定登記にかかる費用で、司法書士への報酬や登録免許税などが含まれます。ただし、これらは不動産会社が自ら請求するのではなく、司法書士を通じて請求される場合が多くあります。
次に、印紙税があります。売買契約書に貼付する収入印紙の費用で、契約金額に応じて税額が決まります。
また、重要事項説明書や契約書などの書類作成費用についても、実費として請求されることがあります。ただし、これらの書類作成は仲介業務の一環であるため、高額な費用を請求することは適切ではありません。
その他、物件調査に必要な費用(登記事項証明書の取得費用など)も実費として請求可能です。
これらの実費については、不動産会社は単に立て替えて支払っているだけであり、上乗せして請求することは認められていません。請求される際には、領収書や明細書などの証拠書類の提示を求めることをおすすめします。
契約前に確認すべきポイント
不動産購入において、トラブルを未然に防ぐためには契約前の確認が重要です。特に、費用面での確認ポイントを見ていきましょう。
総費用の内訳を明確にする
不動産購入を検討する際は、物件価格だけでなく、諸費用を含めた総費用を把握することが重要です。不動産会社から見積書を取り寄せる際には、以下の点を確認しましょう。
まず、すべての費用項目が明記されているかを確認します。「諸費用一式」というような曖昧な表現ではなく、仲介手数料、印紙税、登記費用など、個別の費用が具体的な金額で記載されているべきです。
次に、各費用項目の計算根拠を確認します。特に仲介手数料については、法定の計算式に基づいているかを確認しましょう。
また、請求元が誰なのかも重要です。不動産会社が請求する費用、金融機関が請求する費用、司法書士などの専門家に支払う費用を区別して理解することが大切です。
複数の不動産会社から見積もりを取って比較することも有効な方法です。各社の見積もりを比較することで、不当に高い費用や不明瞭な項目を発見しやすくなります。
契約書の費用条項を精査する
売買契約書を締結する前に、費用に関する条項を慎重に確認することが重要です。契約書は、以下のような点に注目しましょう。
まず、「買主が負担する費用」の条項を詳細に確認します。この中に、「ローン事務手数料」などの項目がないかをチェックしましょう。
次に、契約書とは別に「覚書」や「同意書」などの文書がないかを確認します。時折、本契約には記載せず、別紙でローン事務手数料などを請求するケースがあります。
また、契約書に「その他、売主または仲介業者が指定する費用」というような包括的な条項がある場合は要注意です。このような条項は、後から追加費用を請求される可能性があります。
契約書の内容に不明な点や疑問点がある場合は、署名・捺印する前に必ず質問し、納得のいく説明を受けることが大切です。必要に応じて、法律の専門家(弁護士など)に相談することも検討しましょう。
契約書は、一度署名すると法的拘束力を持つため、内容を十分に理解してから署名することが重要です。「後で読みます」というような姿勢は避け、その場でしっかりと確認することをおすすめします。
手数料トラブルの実例と対処法
実際に起きた手数料トラブルの事例を見ながら、効果的な対処法を学びましょう。これらの実例は、あなた自身がトラブルを回避するための参考になります。
トラブル事例から学ぶ
これまでに報告されている、手数料トラブルの代表的な事例を紹介します。
【事例1】契約直前にローン事務手数料の請求
Aさんは物件購入を決め、契約当日に不動産会社から「ローン事務手数料として10万円必要です」と突然告げられました。契約を進めたいAさんは不審に思いながらも支払いましたが、後に違法な請求だったことが判明しました。
【事例2】金融機関の手数料と偽った請求
Bさんは不動産会社から「これは当社の手数料ではなく、金融機関への手数料です」と説明を受け、5万円を支払いました。しかし実際には金融機関の請求ではなく、不動産会社が独自に請求していたことが後になって分かりました。
【事例3】ローン代行会社経由の高額手数料
Cさんは不動産会社から「専門のローン代行会社がサポートします」と説明され、15万円の手数料を請求されました。後になって、そのローン代行会社は不動産会社の関連会社で、実質的なサービス内容は通常の仲介業務と変わらないことが判明しました。
これらの事例から分かるのは、契約の重要な局面で突然費用を請求されることが多いという点です。契約を進めたい購入者の心理に付け込み、「今払わないと契約できない」という状況をつくり出すのが特徴です。
効果的な交渉と対応策
不当な手数料請求に対しては、以下のような対応策が効果的です。
まず、突然の請求に対しては即答を避けましょう。「検討させてください」といって時間を確保し、その間に請求の妥当性を調査することが重要です。契約当日であっても、不明確な費用については「後日支払います」と伝え、一旦持ち帰って検討することをおすすめします。
次に、請求の根拠を書面で提示するよう求めましょう。「どのような法律や規定に基づいた費用なのか、書面で示してください」と依頼することで、不当な請求を躊躇させることができます。
また、国土交通省の見解を引用することも効果的です。「国土交通省の見解では、不動産会社がローン事務手数料を別途請求することは宅建業法違反とされていますが、この点についてどうお考えですか?」と質問することで、不動産会社側も安易な請求を取り下げる可能性があります。
それでも解決しない場合は、各都道府県の宅地建物取引業協会や消費生活センターに相談しましょう。専門家のアドバイスを受けることで、より適切な対応が可能になります。
最終的には、不当な請求に応じずに毅然とした態度で交渉することが重要です。多くの場合、購入者が法律や規制について知識を持っていることを示すだけで、不当な請求は取り下げられることがあります。
まとめ
不動産会社からのローン事務手数料の請求は、宅建業法により原則として違法とされています。これは、住宅ローン手続きのサポートが仲介業務の一環であり、その対価はすでに法定の仲介手数料に含まれているためです。
一方、金融機関が請求するローン関連手数料は適法であり、また最近ではローン代行会社を介した手数料請求という新たな手法も登場しています。不動産購入時には、請求元と請求理由を明確に確認し、不審な点があれば支払いを保留して専門家に相談することが大切です。契約前には、総費用の内訳や契約書の費用条項を精査し、不当な請求から身を守りましょう。
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不動産取引における資金繰りは、購入者にとって大きな課題となることがあります。予想外の手数料や諸費用で、資金計画がうまくいかなくなることもあるでしょう。このような状況では、迅速かつ柔軟な資金調達の選択肢を持っておくことが重要です。無担保無保証で手続きがシンプルなビジネスローンは、そんなときの強い味方となります。
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