2025.04.09
M&Aの流れは?手順と成功のポイントを紹介
企業の成長や事業承継を目的として、M&Aに注目する経営者は増えています。企業買収による経営基盤の強化や、新たなマーケットへの参入など、うまく活用すれば大きなメリットをもたらす手段といえるでしょう。
しかし、しっかり流れを把握し、リスクの管理や信頼構築を慎重に行わなければ、期待する成果につながらないリスクも伴います。ここでは、M&Aの流れや成功のポイントを分かりやすく解説します。
M&Aの流れを理解するメリット
M&Aの全体的な流れを掴むメリットを、最初に確認しましょう。
経営判断の質が向上する
企業の買収や統合を行うには、将来の展望など、さまざまな視点から検討する必要があります。流れを理解し、一つひとつのステップで情報収集や分析を行えば、より正確な判断が可能になります。
また、最適なタイミングを見極めるためにも、デューデリジェンスや基本合意(MoU)の締結を行う順序を把握しておくことがカギとなります。
リスクを早期に察知できる
M&Aを進めるうえでは、財務リスクや経営方針の不一致など、予想外のトラブルが生じる場合があります。流れを事前に把握し、交渉段階やデューデリジェンス段階で問題点を洗い出すと、リスクを最小限に抑えられます。
特に、財務のデューデリジェンスをはじめとした買収対象企業の調査では、後になって不利な条件が発覚しないように徹底的にチェックしておく姿勢が重要です。
各ステークホルダーとの信頼構築
M&Aのプロセスは、その規模や内容に応じて、複雑で時間のかかるものになることが多いものです。そのため、関係者に対して全体の流れを事前に明確に伝えることが、誤解や混乱を防ぎ、信頼関係を維持構築する助けになります。
また、M&Aに関わる外部ステークホルダー、例えば取引先や金融機関は、企業の事業運営に深く関わっているため、その影響を受ける可能性が高くなります。これらの関係者に対しても、しっかりと説明し協力を得ることで、取引をスムーズに進めることができます。逆に情報の不足や誤解が生じると、取引先の不安が高まり、最終的にはM&Aの成立に支障をきたすこともあります。
したがって、M&Aを進める際には、関係者への適切な説明と情報提供を行い、事前に不安や疑問を解消しておくことが非常に重要です。これによって、買い手企業と売り手企業の間での信頼関係が強化され、外部のステークホルダーとの円滑な調整が可能となります。
M&Aの事前準備
M&Aの流れをスムーズに進行させるには、準備段階での対応がとても大切です。目的や戦略の明確化、仲介会社の選定など、事前の設計がその後を左右します。
目的と戦略の明確化
最初に取り組むべきは、M&Aを行う目的や戦略の明確化です。事業拡大が目的なのか、後継者不在を解消したいのか、経営の安定が狙いなのかによって、必要とする企業の規模や業種、地域などが変わってきます。
この段階で、経営目標と購入対象の相性を慎重に見極めることが重要です。
仲介会社の選定
M&Aは、専門的な知識や交渉能力を要する場面が多く、それらの対応を手助けしてくれる仲介会社(コーディネーター)の存在が大きな支えとなります。実績や手数料体系、得意とする業界などを比較検討しながら、信頼できるパートナーを選ぶことが大切です。
必要に応じて複数社から提案を取り寄せ、そのうえで得られるサポートの質や、取引の進め方を見極めるようにしましょう。
社内体制と情報管理
経営情報や機密資料を扱うことが多いM&Aでは、社内体制の整備が不可欠です。内部で取り扱うデータの整理や各部門との連携ルール、情報セキュリティの確保など、事前に対策を練っておきましょう。
また、秘密保持の徹底によって、競合他社などに不必要な情報や間違った憶測が漏れないよう努めることも大切です。万一、外部に機密が流出すれば、取引自体に影響が及ぶ可能性があります。
交渉から基本合意に至る流れ
準備が整ったら、売り手企業との交渉を経て基本合意に進みます。ここでは互いの意見をすり合わせ、取引条件を概要レベルで整理するプロセスが始まります。
ターゲット企業との初期交渉
仲介会社のサポートのもと、ターゲット企業との初期交渉を実施します。条件面の概略や売買金額のイメージ、買収後のビジョンなどを提示し、相手の意向や要望を確認していきます。
この段階で、相手企業の経営者と信頼関係を築くことが重要です。経営トップ同士の理解が深まらなければ、次のステップへスムーズに進みにくくなります。
基本合意書の締結
初期交渉を経て条件がまとまりはじめると、基本合意書を締結するケースが一般的です。売却価格帯や大枠のスケジュール、買収後の主要な経営方針などについて、合意レベルで整理し文書化します。
ここで明確にされる項目が多いほど、後々のトラブルを回避しやすいものです。逆にあいまいな部分を残すと、デューデリジェンスでの調査過程や、最終契約交渉で深刻な食い違いが生じるかもしれません。
デューデリジェンスの流れ
基本合意に達した後は、買収対象企業の詳細な調査を行うデューデリジェンスに移行します。
財務・税務の確認
貸借対照表や損益計算書などの主要な財務諸表だけでなく、キャッシュフローや負債状況、過去の会計処理の明細、数値の根拠となる契約書等の文書を精査することで、潜在的なリスクや将来の収益性を見極めることができます。
この段階で、不正会計の疑いがないか、資産や負債の内容を正しく把握するなどの、精緻な確認を行うことが欠かせません。税務面でも、未納税金や特定の優遇処置がないかを確認していきます。
法務面のチェック
契約書や許認可の状況、特許・商標などの知的財産権の保有状況も詳しく調査します。ここで問題が生じると、後々の経営に支障をきたすリスクが高くなるため、法務担当者や弁護士の専門知識を活用することが不可欠です。
特に、競業忌避に関する条項や取引先との独占契約などがある場合、経営の自由度が下がる可能性もあるため事前に確認しておきましょう。
人事・労務の実態把握
従業員の雇用契約や労働条件は、企業文化を含む統合プロセスに大きく影響する部分です。組織体制や人件費の構造、福利厚生制度などが買収企業の文化と大きく異なる場合、PMIで混乱を招くかもしれません。
したがって、人材マネジメントの相性を見極めるためにも、人事制度や社内の風土を十分に調査し、課題を早期に洗い出すことが大切です。
最終契約交渉とクロージングの流れ
デューデリジェンスで得た情報を踏まえ、最終契約交渉へと進んでいきます。価格や譲渡方法の最終調整を行い、合意に達すればクロージングで手続きが完結します。
価格と譲渡スキームの確定
デューデリジェンスを通じて見えてきたリスクや価値を考慮しながら、売買価格の最終決定と譲渡方法(株式譲渡や事業譲渡など)を固めます。必要に応じて、支払い条件の分割やアーンアウト条項など、特別な取り決めを行う場合もあります。
なお、互いに納得できる合意点を模索するプロセスがポイントです。すべてを一方的に押し通そうとすると、取引自体が破談になる可能性があります。
契約書の締結
最終契約書には、売買価格や譲渡条件、保証や制限条項、違約金などの重要事項が盛り込まれます。法的リスクを回避するために、専門家と連携してしっかりと内容を詰めましょう。
また必要に応じて、関係当局への届出や、取引先への告知などが義務付けられるケースも考えられます。着実に手続きを進めるスケジュール管理が重要です。
クロージングから引き渡し
条件がすべて整えばクロージング(契約締結)を実施し、株式や事業資産などが正式に譲渡されます。買収の代金決済や名義変更などの手続きが完了すれば、形式的にはM&Aが成立となる段階です。
しかし、ここで終わりではなくPMI(Post Merger Integration)が重要です。シナジーを発揮するためには、クロージング後の統合プロセスに注力しなければなりません。
PMIで組織を統合する流れ
M&A成立後は、買収側と被買収側が円滑に経営統合を行い、現場レベルで機能するよう調整が求められます。これをPMI(Post Merger Integration)と呼びます。
文化の統合
企業文化や価値観が異なる組織同士が協力するには、お互いの習慣や考え方を理解し、長所を活かす仕組みづくりが必要です。社内イベントや部門間交流を通じて、共通の目標に向けた意識を高めていきましょう。
また、現場の不安を軽減するコミュニケーションが極めて大切です。PMI初期に不明確な点が多いと、従業員の士気が低下する要因となります。
システムや手続きの統合
給与システムやグループウェア、顧客管理ソフトなど、両社で異なるITシステムをどのように共通化するかは大きな課題です。段取りよく統合を進めるために、現状の問題点と導入コストを比較しながら、最適な方法を選びましょう。
また、人事評価制度や福利厚生も統合する際は、理解を得るプロセスを丁寧に設計しておくとスムーズです。
人材を定着させる
M&A後に優秀な人材が流出してしまうことは、大きな損失となります。PMIでは従業員のモチベーションに配慮し、キャリアパスや処遇の見直しなどで、人材を効果的に定着させる方法を検討しましょう。
中には、新しいチャンスを得て、活躍の幅を広げる従業員も出てきます。新体制への理解を深める機会を設けることで、組織全体を活性化するきっかけに変えられます。
M&Aを成功させるポイント
ここまでの流れを踏まえ、M&Aを成功させるために留意したい要素を具体的にまとめます。いずれも、一貫した配慮が必要となる重要事項といえます。
経営者同士の信頼構築
買い手と売り手の経営者が真摯にコミュニケーションを取り合うことで、互いの意図や状況を正確に共有できます。事業の売買条件だけでなく、従業員をどのように扱うか、事業の今後の方向性なども率直に話し合うべきです。
また、疑問点を先送りにしないことが肝心です。わずかな認識の相違が、後から大きな食い違いにつながるおそれがあります。
情報開示と資料の正確性
売り手企業はできるだけ正確な資料を提示し、買い手企業に対しても必要な情報をタイムリーに提供することが理想です。デューデリジェンスで不足が判明すると、買い手側の不信感につながる場合もあります。
秘密保持に配慮しながら、適切に情報を開示するバランス感覚が欠かせません。必要に応じて専門家の助言を得ることも有効です。
デューデリジェンスの徹底
合意を急ぐあまり、デューデリジェンスを簡略化する企業もあります。しかし、その後に深刻なリスクが発覚すれば、トラブルを抱え込む結果になりかねません。
専門家を交えながら、幅広い領域での調査を行う方が、長期的なコスト削減にもつながります。十分な調査によって買収企業の実態を理解し、最終契約条件に反映させることを忘れないようにしましょう。
リスク管理の具体例
M&Aの流れに沿って手続きを進める中で、想定外の課題が発生することは少なくありません。リスク管理を強化するための具体例を示します。
初期段階の情報管理
具体的な企業名を伏せて概要資料を提示するノンネームシートは、交渉が本格化する前によく用いられる手法です。守秘義務を守りながら、売り手企業の事業内容や財務の状況概況をある程度把握したうえで、本格的な交渉に進むことができます。
もし情報を慎重に扱わないと、外部に漏れた際の信用失墜や従業員の動揺を招く可能性があります。機密情報のやり取りには、常に注意を払うべきです。
デューデリジェンスでの深堀り
短期間で全てを精査することが難しい場合、優先順位を決めて重要事項から深堀りするアプローチもあります。財務、法務、人事の順で確認するなど、事前に計画を立ててから調査を行うと効率的です。
懸念点が見つかれば追加資料の請求や専門家の見解を仰ぐなど、早期に対処する手順を決めておくことで、後の交渉がスムーズになります。
PMIでの組織トラブル回避
クロージング後は、新体制における責任分担や業務フローの変更など、多くの課題が浮上する可能性があります。あらかじめ、組織再編のプロセスや必要な人的リソースを把握しておくことが重要です。
外部コンサルタントを活用し、現場の声を経営者が直接拾う機会をつくることで、早期に問題を発見し解決に導きやすくなります。
チェックリストでみるM&Aの流れ
スムーズにM&Aを進めるには、各段階でチェックすべきポイントをリスト化しておくと便利です。以下に例として簡単なテーブルを用意しました。
段階 | 主なチェック項目 |
---|---|
準備 |
|
交渉 |
|
デューデリジェンス |
|
最終交渉 |
|
PMI |
|
M&Aの流れを把握して着実に進める
M&Aには多くのプロセスがあり、それぞれに応じた専門知識やリソースが必要です。流れを理解し、適切な段取りを踏むことで、リスクを抑えながらシナジーを最大化しやすくなります。
専門家のサポートを得る
M&A仲介会社や弁護士、税理士、会計士など、各分野のプロフェッショナルと連携すれば、複雑な交渉や調査も円滑に進められます。特に初めてM&Aを行う場合や、海外事業を含む場合などは、専門家の知見が不可欠です。
また、客観的な視点からのアドバイスを得られる点も大きな利点です。感情的な対立を避け、より事業価値の高い選択を目指すことができます。
計画的な情報発信
交渉からPMIまで時間がかかるため、ステークホルダーへの情報発信が遅れると社内外で不信感が高まることもあります。ある程度の見通しと進捗状況をタイムリーに共有することで、余計な推測や噂を未然に防ぐことができます。
特にクロージング前後は、丁寧なコミュニケーションで不安を取り除く姿勢が支持を得るポイントです。
まとめ
M&Aの流れには、目的と戦略を固める準備段階から始まり、交渉・基本合意・デューデリジェンス・最終契約交渉・クロージング、そしてPMIに至るまで、多様なステップがあります。これらを着実にこなし、経営者同士の信頼関係や情報開示を適切に行うことで、リスクを減らしながらより良い成果を期待することができるでしょう。
流れを把握し、着実に準備を進めながら専門家の力を最大限に活用することで、M&Aの成果を高めていきましょう。
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