2025.04.17
短期借入金と長期借入金の違いは?メリット・注意点、仕訳方法まで解説
事業を運営していると、資金調達のために借入を行うことがよくあります。借入金は、返済期限の長さから短期借入金と長期借入金の2つに分けられ、それぞれの特性を把握していないと、返済計画が立てられず資金繰りに支障をきたす恐れがあります。
この記事では、短期借入金と長期借入金の違いから、それぞれのメリット・デメリット、適切な活用方法、そして会計処理の方法まで詳しく解説します。ぜひ、借入方法を選択する際の参考にしてください。
短期借入と長期借入の違い
借入金を考える際、まず理解すべきは短期借入と長期借入の基本的な違いです。
返済期限の違い
短期借入金と長期借入金の違いは、その名称の通り返済期限です。短期借入金は借入日から1年以内に返済する借入を指します。一方、長期借入金は返済期限が1年を超える借入を指します。
この区分は、単なる会計上の分類にとどまらず、資金調達計画を立てるうえでも重要な意味をもちます。
用途の違い
短期借入と長期借入は、一般的に用途が異なります。短期借入は、主に運転資金として利用されます。具体的には、日常的な経費の支払いや仕入れ資金、一時的な資金不足を補うために活用されます。
対して長期借入は、主に設備投資や事業拡大など、大きな資金が必要で、かつ効果が長期間にわたるプロジェクトに用いられます。これは長期的な視点で投資回収を行うためであり、投資目的と返済期間のバランスを考慮することが重要です。
返済原資の違い
短期借入と長期借入では、返済の原資も異なります。短期借入の場合、多くは売掛金の回収や短期的な事業収入から返済する計画を立てます。そのため、サイクルの早い事業収入がある業種に適しています。
一方、長期借入の返済原資は、主に事業から生み出される利益や減価償却費などです。長期的かつ安定的なキャッシュフローが見込める事業が、長期借入に適しているといえます。
項目 | 短期借入 | 長期借入 |
---|---|---|
返済期限 | 1年以内 | 1年を超える |
主な用途 | 運転資金(日常経費・仕入) | 設備投資・事業拡大 |
返済原資 | 売掛金の回収 | 利益や減価償却費 |
短期借入のメリット
短期借入には、長期借入と比較してさまざまなメリットがあります。
低金利で借入できる傾向がある
短期借入は返済期間が短いため、金融機関にとってのリスクが比較的小さいという特徴があります。このリスクの低さから、短期借入の金利は長期借入と比較して低くなる傾向があります。
例えば、同じ1,000万円を借りる場合でも、1年以内の短期借入と5年の長期借入では、短期借入の方が、金利負担が少なくなることが多いものです。総返済額の削減を実現できる点は大きなメリットといえるでしょう。
審査のハードルが比較的低い
短期借入は、長期借入と比較して審査のハードルが低い傾向にあります。これは返済期間が短く、金融機関のリスク期間が限定的だからです。そのため、創業間もない企業や業績が安定していない企業でも比較的審査に通りやすいというメリットがあります。
また、必要書類も長期借入ほど多くない場合が多く、審査期間も短い傾向にあります。急な資金需要がある場合でも、対応しやすいといえるでしょう。
手続きに要する時間が短い
短期借入は審査期間が短いだけでなく、手続き全体がスピーディーに進むことが多いものです。特に、既存取引のある金融機関からの借入であれば、数日程度で資金調達できるケースもあります。
急な仕入れや予想外の支出が発生した場合にも、素早い対応が可能なのは大きなメリットです。資金繰りに困ったときの、緊急的な資金調達手段としても活用できます。
短期借入の注意点
短期借入にはメリットの一方で、いくつかの注意点も存在します。計画的な借入を行うためにも、以下の点を押さえておきましょう。
一括返済の負担が大きい
短期借入は多くの場合、返済方法が一括返済となります。そのため、返済期限が到来した際の資金負担が非常に大きくなります。例えば1,000万円の短期借入を行った場合、1年後には1,000万円に金利を加えた金額を、一度に用意する必要があります。
返済資金の確保ができなければ、返済期限に追われて別の借入を行うという悪循環に陥るリスクがあります。借入前に、確実な返済計画を立てることが極めて重要です。
借り換えが困難になる可能性がある
短期借入は返済期限が到来した際、返済資金が不足している場合に借り換え(ロールオーバー)を行うケースがあります。しかし、借入時と比較して自社の業績が悪化していたり、金融情勢が変化していたりすると、借り換えが困難になる可能性があります。
特に、経済環境が悪化している時期には、金融機関の貸出姿勢が厳しくなり、それまで順調に借り換えできていた短期借入が、突然難しくなるケースもあります。この点は、短期借入の大きなリスク要因となります。
資金繰り計画の正確性が求められる
短期借入は返済期限が明確で短いため、綿密な資金繰り計画が必要です。収入予測や支出計画の精度が低いと、返済期限までに十分な資金を確保できなくなる恐れがあります。
特に季節変動の大きい業種や、取引先の支払いサイトが長い業種では、キャッシュフロー予測の精度向上が重要です。短期借入に依存し過ぎると、資金繰りが硬直化するリスクがあることを認識しておきましょう。
長期借入のメリット
長期借入には、短期借入とは異なるメリットがあります。
毎月の返済負担が軽減される
長期借入の大きなメリットは、返済期間が長いため、毎月の返済額が少なくなることです。例えば、1,000万円を借り入れた場合、5年の長期借入であれば、月々の返済額は約18万円程度ですが、短期借入で1年返済だと月々約85万円の返済が必要になります。
月々の返済負担の軽減により、日々の資金繰りに余裕がうまれ、その分を運転資金や他の投資に回すことができます。これは特に、成長過程の企業にとって大きなメリットとなります。
大型の資金調達が可能
長期借入は返済期間が長いため、短期借入と比較して大型の資金調達が可能です。例えば、工場建設や大型設備投資、M&Aなど、数千万円から数億円規模の資金需要に対応できます。
これにより、事業拡大や生産性向上のための大型投資を実現できます。また、投資効果が出るまでに時間がかかるプロジェクトでも、投資回収期間と返済期間を合わせた計画が立てやすくなります。
計画的な返済が可能
長期借入は通常、毎月定額返済の形式をとるため、返済計画が立てやすいという特徴があります。この返済の予測可能性は、経営の安定性を高めます。
また、長期的な視点で事業収支を考慮した返済計画を立てられるため、返済負担による急な資金ショートのリスクも低減できます。季節変動の大きいビジネスでも、年間を通した安定的な資金計画を立てられる点は、メリットといえるでしょう。
長期借入の注意点
長期借入にはメリットがある一方で、十分に注意すべき点もあります。
金利負担が大きくなる傾向がある
長期借入は返済期間が長いため、短期借入と比較して金利が高く設定されることが一般的です。これは、長期間にわたるリスクを金融機関が負うためです。金利差は0.5%〜2%程度のケースが多く、借入額が大きい場合は、この差が総返済額に大きく影響します。
例えば、1,000万円を5年間借りる場合、金利が1%違うだけで、総返済額は約50万円も違ってきます。総返済額の事前試算を行い、金利負担を正確に把握することが重要です。
担保や保証人が必要になることが多い
長期借入は金額が大きく、返済期間も長いため、多くの場合担保や個人保証を求められます。特に、不動産担保や代表者の個人保証が一般的です。これにより、会社の経営状況が悪化した場合のリスクが、経営者個人にも及ぶ可能性があります。
近年は、経営者保証ガイドラインの制定により個人保証なしの融資も増えていますが、依然として多くの長期借入では、何らかの担保・保証が求められます。この点は、慎重に検討する必要があります。
金利変動の影響を受ける可能性がある
長期借入の場合、変動金利を選択するケースも多くあります。変動金利は当初の金利負担が固定金利より低いメリットがありますが、将来的に金利が上昇するリスクを伴います。
特に5年以上の長期借入の場合、その間の経済状況や金融政策の変化により、金利が上昇する可能性は十分にあります。金利上昇時の返済シミュレーションを行い、最悪のケースでも返済が可能かどうか、事前に確認しておくことが重要です。
短期借入と長期借入の仕訳方法
借入を行う際には、適切な会計処理も重要です。短期借入と長期借入では、仕訳方法に違いがあります。
短期借入の仕訳例
短期借入を行った場合の基本的な仕訳は、以下の通りです。例えば、銀行から運転資金として200,000円を短期借入した場合を考えてみましょう。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 200,000円 | 短期借入金 | 200,000円 |
短期借入金の返済時には、元金の返済と利息の支払いを分けて記帳します。例えば、上記の借入に対して3,000円の利息を含めて返済する場合は、以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
短期借入金 | 200,000円 | 普通預金 | 203,000円 |
支払利息 | 3,000円 |
元金と利息の区分処理は税務上も重要です。利息は経費として計上できるため、正確に区分して記帳することで、適切な税務処理が可能になります。
長期借入の仕訳例
長期借入を行った場合の基本的な仕訳は、短期借入と同様ですが、「長期借入金」という科目を使用します。例えば、1,000,000円を設備投資目的で借り入れた場合は以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 1,000,000円 | 長期借入金 | 1,000,000円 |
長期借入金の毎月の返済時には、短期借入と同様に、元金と利息を分けて記帳します。例えば、元金100,000円と利息3,000円を返済した場合は、以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
長期借入金 | 100,000円 | 普通預金 | 103,000円 |
支払利息 | 3,000円 |
会計期末の処理と注意点
会計期末には、長期借入金のうち1年以内に返済予定の部分を、「1年内返済予定の長期借入金」として短期負債に振り替える必要があります。これは、貸借対照表上の正確な表示のためです。
例えば、決算日時点で長期借入金の残高が800万円あり、このうち翌期に120万円の返済予定がある場合、以下のような仕訳を行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
長期借入金 | 1,200,000円 | 1年内返済予定の長期借入金 | 1,200,000円 |
この処理により、貸借対照表の流動負債と固定負債が適切に表示され、企業の短期的な支払能力が正確に把握できるようになります。決算時の区分表示は、財務諸表の透明性を高める重要な処理です。
短期借入と長期借入の使い分け方
事業資金の調達において、短期借入と長期借入はどちらがよいというものではなく、資金需要の性質に合わせて選択することが重要です。
短期的な資金需要への対応
季節的な売上変動や一時的な仕入れ増加など、短期的な資金需要がある場合は、短期借入が適しています。例えば、繁忙期に向けた在庫確保や、大型案件の着手金が入るまでのつなぎ資金などが該当します。
短期的なキャッシュフローギャップの解消には、短期借入の機動性と低金利の特性が活かせます。ただし、返済原資が確実に見込まれる場合に限定して利用することが重要です。
設備投資や事業拡大による資金需要への対応
工場建設や大型設備導入、新規事業立ち上げなど、大きな投資を行う場合は、長期借入が適しています。これらの投資は回収に時間がかかるため、返済期間が長い借入で資金調達することで、投資回収期間と返済期間のバランスを取ることができます。
例えば、稼働後5年で投資回収を見込む設備投資の場合、同じく5年程度の長期借入で資金調達することで、設備からうまれる収益で返済を進めることができます。投資計画と返済計画の整合性を確保することが重要です。
返済能力を考慮した借入額と期間の設定
どのような借入を選択する場合でも、自社の返済能力を超えない借入額と期間の設定が最も重要です。過大な借入は返済負担が重くなり、資金繰りを圧迫する原因となります。
一般的な目安として、月々の返済額は月商の15%以内に抑えることが推奨されています。例えば月商500万円の企業であれば、月々の返済額は75万円以内に設定するのが望ましいでしょう。
また、複数の借入を組み合わせることも効果的です。例えば、設備投資の大部分は長期借入で賄い、付随する運転資金増加分は短期借入で対応するなど、資金需要の性質に応じた最適な組み合わせを検討しましょう。短期借入金には短期的な資金、長期借入金には長期的な期間利益や減価償却を返済原資に勘案するのが、財務戦略の基本です。
金融機関との交渉ポイント
短期借入や長期借入を実行する際には、金融機関との交渉でいかに有利な条件で借入するかが重要になります。より有利な条件で借入するためのポイントを解説します。
明確な事業計画の提示
借入申込時には、資金使途と返済計画を含む、具体的な事業計画の提示が重要です。特に長期借入の場合、投資効果や回収見込みを数値で示すことで、金融機関の理解と信頼を得やすくなります。
例えば、新規設備導入による生産性向上を目的とした借入であれば、導入後の生産量増加や原価低減効果を具体的に示すことが有効です。数値に基づく説得力のある提案が、融資の可否や条件に大きく影響します。
金利交渉のポイント
借入条件の中でも、金利は特に重要です。金利交渉では、自社の財務状況が健全であることをアピールするとともに、複数の金融機関から見積もりを取ることが有効です。
また、担保提供や保証人の追加など、金融機関のリスクをおさえる条件を提示することで、金利を引き下げられることもあります。
例えば、信用保証協会の保証付き融資を活用すれば、金融機関のリスクが軽減されるため、より有利な金利条件での借入が可能になるケースが多くあります。
返済方法の交渉
返済方法には、元金均等返済と元利均等返済の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。元金均等返済は、当初の返済負担が大きいものの、総返済額は少なくなります。一方、元利均等返済は、毎月の返済額が一定で計画が立てやすいというメリットがあります。
業種や事業の特性に合わせて最適な返済方法を選択し、交渉することが重要です。季節変動の大きい業種であれば、繁忙期に多く返済し、閑散期の返済を少なくする変則的な返済方法を提案することも可能です。
また、返済条件の見直しの可能性についても、事前に確認しておくことが重要です。事業環境の変化に応じて、柔軟な返済条件の調整ができるかどうかは、長期借入の場合は特に重要なポイントとなります。
まとめ
本記事では、短期借入と長期借入の違いについて、返済期限や用途、メリットや注意点、仕訳方法などからみていきました。短期借入は、機動的な資金調達が可能で金利も比較的低いものの、一括返済の負担が大きく、借り換えができない点も考慮する必要があります。一方、長期借入は、毎月の返済負担が軽く大型の資金調達が可能ですが、金利負担が大きく担保や保証が必要になることが多いという特徴があります。
自社の資金需要や返済能力を正確に把握した上で、合っている借入方法を選択することが大切です。また、借入を行う際には正確な会計処理を行い、正確な財務状況を提示することも忘れてはなりません。金融機関との良好な関係構築のためにも、計画的な借入と着実な返済を心がけましょう。
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