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仮受金とは?仕訳の仕方、前受け金、仮払金など似ている勘定科目との区別も解説

会計処理を行っていると、取引内容が特定できない入金に遭遇することがあります。取引先からの入金なのに内容が不明確、または入金元が判断できないケースなど、適切な処理方法に困ることがあります。そのようなときに使用するのが、「仮受金」という勘定科目です。

この記事では、仮受金の基本から具体的な仕訳例、他の勘定科目との違い、そして決算時の処理方法まで分かりやすく解説します。

仮受金の基本

勘定科目の一つである仮受金には、内容や取引先が即座に特定できない入金が一時的に計上されます。

仮受金とは

仮受金とは、取引内容や金額が不明確な入金があった際に、一時的に処理するための勘定科目です。例えば、銀行口座に何らかの入金があったが、誰からの入金なのか、何の代金なのかが不明確な場合に使用します。

仮受金は、貸借対照表上で「流動負債」に分類されます。これは会社が何らかの理由で受け取ったお金であり、後で精算や返金が必要になる可能性があるためです。

仮受金は一時的な処理のための科目であり、入金内容が判明次第、適切な勘定科目に振り替える必要があります。長期間、仮受金のままにしておくことは、会計処理として適切ではありません。

仮受金を使用するタイミング

仮受金を使用するのは、主に以下のようなケースです。

  • 取引先からの入金があったが、何の入金なのか不明な場合
  • 入金額が請求額と一致しておらず、内容を確認する必要がある場合
  • 複数の取引に関する入金が一括で行われ、内訳の確認が必要な場合
  • 誤入金の可能性がある場合

仮受金は、「一時的な保留」の意味合いをもつ科目です。つまり、正確な会計処理ができるようになるまでの「つなぎ」として使用します。

例えば銀行口座に、ある取引先から50万円の入金があったものの、売掛金の回収なのか、前払いなのか、あるいは全く別の理由なのかが不明な場合、いったん仮受金として処理します。後日、取引先に確認するなどして入金内容が判明したら、適切な科目に振り替えるという形で処理します。

仮受金の仕訳例

仮受金を使った仕訳の基本的な流れをみていきましょう。入金時の処理から、内容判明後の振替処理までを、具体例で解説します。

内容不明の入金があった

まず、内容不明の入金があった場合の基本的な仕訳は、次のようになります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 150,000円 仮受金 150,000円

この仕訳は、取引先から15万円の入金があったけれど、その理由や内容が不明な場合の処理です。摘要欄には「科目不明入金」などと記載しておくと、後から処理内容が分かりやすくなります。

入金内容が判明した場合

入金内容が判明した場合、仮受金から適切な科目に振り替える仕訳を行います。例えば、売掛金の回収だと判明した場合は、次のようになります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
仮受金 150,000円 売掛金 150,000円

この仕訳によって、一時的に仮受金として計上していた金額が、本来の科目である売掛金の回収として処理されます。これにより、会計上の処理が完了します。

入金内容によって、振替先の科目は異なります。商品やサービスの前払いだった場合は「前受金」、返品に伴う返金だった場合は「売上」をマイナスするなど、取引内容に合わせた適切な科目を選択する必要があります。

誤入金だった場合の処理

調査の結果、入金が誤入金だと判明した場合、返金処理を行います。この場合の仕訳は、次のようになります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
仮受金 150,000円 普通預金 150,000円

誤入金であった場合、速やかに返金処理を行うことが重要です。長期間放置すると、相手先の経理処理にも影響を及ぼす可能性があります。

誤入金が判明した際には、入金元に連絡を取り、返金方法や時期について確認することが求められます。特に大きな金額の場合は、相手先にとっても資金繰りに影響する可能性があるため、迅速な対応が求められます。

具体的な仮受金の仕訳例

ここでは、より具体的な状況における仮受金の仕訳例と処理方法をみていきましょう。実務で遭遇しやすいケースを中心に解説します。

取引先からの入金が売掛金の回収だった場合

A社から50万円の入金があったが、入金理由が不明だったため、いったん仮受金として処理しました。その後、調査の結果、先月納品した商品の代金であることが判明した場合の仕訳は、次のようになります。

①内容不明の入金があった時点での仕訳

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 500,000円 仮受金 500,000円

②売掛金の回収だと判明した時点での仕訳

借方科目 金額 貸方科目 金額
仮受金 500,000円 売掛金 500,000円

この処理により、一時的に仮受金として計上していた金額が、正しく売掛金の回収として処理されます。入金内容の確認は迅速に行うことが重要です。特に月末や決算期が近い場合は、正確な財務状況を把握するために早急な確認が必要になります。

入金が前受金だった場合の処理

B社から30万円の入金があり、調査の結果、来月納品予定の商品の前払い代金であることが判明した場合の仕訳は、次のようになります。

①内容不明の入金があった時点での仕訳

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 300,000円 仮受金 300,000円

②前受金だと判明した時点での仕訳

借方科目 金額 貸方科目 金額
仮受金 300,000円 前受金 300,000円

③商品納品時(売上計上時)の仕訳

借方科目 金額 貸方科目 金額
前受金 300,000円 売上 300,000円

このように、仮受金から前受金への振替を行った後、商品納品時に前受金から売上への振替が必要になります。前受金は一定期間残る可能性がありますが、仮受金はできるだけ早く適切な科目に振り替えることが望ましいものです。

複数の取引が混在している場合の処理

C社から100万円の入金があり、調査の結果、売掛金回収が60万円、新規受注の前受金が40万円だと判明した場合の仕訳は、次のようになります。

①内容不明の入金があった時点での仕訳

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 1,000,000円 仮受金 1,000,000円

②内容が判明した時点での仕訳

借方科目 金額 貸方科目 金額
仮受金 600,000円 売掛金 600,000円
借方科目 金額 貸方科目 金額
仮受金 400,000円 前受金 400,000円

複数の取引が混在している場合は、それぞれの内容に応じて個別に振替処理を行います。この例では、売掛金回収分と前受金分をわけて振り替えています。

このような複雑なケースでは、入金元に入金内訳の確認を取るようにしましょう。場合によっては、請求書や注文書などの書類と照合することで、正確な内訳を把握することができます。

仮受金と似ている勘定科目

仮受金と名前や性質が似ている勘定科目がいくつかあります。これらを混同すると会計処理を誤ってしまうため、それぞれの違いを理解しておきましょう。

仮受金と前受金の違い

仮受金と前受金は、どちらも入金に関する科目ですが、その性質は大きく異なります。

項目 仮受金 前受金
使用するタイミング 内容不明の入金があった場合 商品・サービス提供前に代金を受け取った場合
入金内容 不明確(調査が必要) 明確(前払いであることが判明している)
処理の性質 一時的な処理(後で振り替えが必要) 確定的な処理(商品・サービス提供時に売上計上)
貸借対照表上の分類 流動負債 流動負債

前受金は入金内容が明確な場合に使用する点が、仮受金との最大の違いです。例えば、商品の納品前に代金を受け取った場合や、サービス提供前に料金を受け取った場合などに前受金を使用します。

前受金は、商品やサービスを提供した時点で売上に振り替えます。一方、仮受金は内容が判明次第、適切な科目(売掛金や前受金など)に振り替えます。

仮受金と仮払金の違い

仮受金と仮払金は名前が似ていますが、全く逆の性質をもっています。

項目 仮受金 仮払金
お金の流れ 入金(お金を受け取る) 出金(お金を支払う)
使用するタイミング 内容不明の入金があった場合 内容不明の出金や経費の前払いなどがあった場合
貸借対照表上の分類 流動負債 流動資産
基本的な仕訳 (借)普通預金 / (貸)仮受金 (借)仮払金 / (貸)普通預金

仮払金は、支出があったものの、その内容や金額が確定していない場合に使用します。例えば、従業員に経費の仮払いをした場合や、内容不明の出金があった場合などです。

仮受金が負債(返済義務がある)であるのに対し、仮払金は資産(回収できる権利がある)です。仮払金も、内容が判明次第、適切な科目(旅費交通費や消耗品費など)に振り替えます。

仮受金と預り金の違い

仮受金と預り金は似た性質をもっていますが、使用するシーンが異なります。

項目 仮受金 預り金
使用するタイミング 内容不明の入金があった場合 一時的に他者のお金を預かった場合
代表的な例 取引先からの不明入金 源泉所得税、社会保険料、住民税の従業員負担分など
お金の所有権 不明(調査が必要) 他者(第三者や従業員など)
貸借対照表上の分類 流動負債 流動負債

預り金は、会社が一時的に他者のお金を預かっている状態を表します。例えば、従業員の給与から天引きした所得税や社会保険料、住民税などが該当します。これらは会社の収入ではなく、後日、税務署や年金事務所などに納付するものです。

預り金は最初から内容が明確である点が、仮受金との大きな違いです。預り金は、一定期間内に第三者に支払う義務があり、その金額や支払先が明確に決まっています。

決算時に残っている仮受金の会計処理

決算時点で仮受金残高がある場合、どのように処理すべきでしょうか。基本的な考え方と具体的な処理方法について解説します。

決算時に残ってしまった仮受金への対応

仮受金は一時的な処理のための科目であるので、本来は決算時までに適切な科目に振り替えることが望ましいものです。しかし、決算時に仮受金残高が残ってしまうことがあります。

決算時に仮受金が残っている場合、次のような対応を検討します。

  • 引き続き調査を継続し、翌期に振り替える
  • 一定期間経過後は雑収入として処理する
  • 長期間未確定の場合は、法的な取り扱いを検討する

どの対応を選択するかは、金額の大きさ、入金からの経過期間、調査の状況などを総合的に判断します。決算書の正確性を確保するためにも、仮受金の内容把握に努めることが重要です。

特に金額が大きい場合は、決算前に入金元への確認や社内での調査を徹底し、できる限り適切な科目への振替を済ませておくことをおすすめします。

長期間不明な仮受金の処理

長期間にわたって内容が不明なままの仮受金がある場合、次のような処理方法が考えられます。

①一定期間(一般的には数年)経過後、雑収入として処理する場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
仮受金 30,000円 雑収入 30,000円

これは、内容不明のまま長期間経過した少額の仮受金を、会社の収益として認識する処理です。ただし、この処理を行う前に、入金元の調査や社内での確認を十分に行うことが前提となります。

雑収入として処理した後でも内容が判明したら修正が必要になる場合があります。例えば、実際には返金すべきものだった場合などは、適切な対応が求められます。

税務上の取り扱いと注意点

仮受金の税務上の取り扱いについても理解しておく必要があります。

仮受金自体は一時的な負債であり、そのままでは課税対象となりません。しかし、雑収入として処理した場合は、その金額が課税対象となります。

税務調査の際、仮受金の処理が不適切だと指摘されるケースがあります。特に注意すべき点は、以下の通りです。

  • 長期間仮受金のままになっている金額がある場合、その理由を説明できるようにしておく
  • 仮受金から雑収入に振り替えた処理について、その判断基準や調査内容を記録しておく
  • 決算書において仮受金の金額が異常に大きい場合、税務調査の対象になりやすい

税務上のリスクを回避するためにも、仮受金は適切なタイミングで正しい科目に振り替えることが重要です。不明な入金については、入金元への確認を積極的に行い、できるだけ早く内容を特定するようにしましょう。

仮受金を早期処理するためのポイント

仮受金は長期間放置せず、できる限り早期に処理するようにしましょう。そのためには、仮受金を適切に管理する必要があります。

仮受金を早期に処理するべき理由

仮受金を長期間放置することには、いくつかのリスクがあります。

まず、会計上の正確性が損なわれる可能性があります。仮受金は一時的な処理のための科目であり、本来の科目での処理が遅れることで、財務諸表が実態を正しく表さなくなるリスクがあります。

そして、税務上のリスクが発生します。税務調査の際、長期間放置された仮受金が指摘される可能性があります。場合によっては、収益隠しと判断されるリスクもあります。

また、相手先とのトラブルにつながる可能性もあります。例えば、誤入金を長期間返金せずに放置した場合、後日トラブルになるケースがあります。

定期的な仮受金の残高確認と内容調査を行うことで、これらのリスクを回避することができます。月次の経理処理の中で、仮受金の残高を確認し、未解決の項目について調査を進めることをおすすめします。

仮受金の管理方法

仮受金を効率的に管理するためのポイントをいくつか紹介します。

まず、入金時に詳細な記録を残すことが重要です。入金日、入金元の名義、金額、銀行口座など、できるだけ多くの情報を記録しておくと、後の調査が容易になります。

次に、仮受金台帳を作成すると便利です。Excelなどを活用して、仮受金の発生日、金額、調査状況、解決日などを記録しておくことで、管理が容易になります。

発生日 入金元 金額 調査状況 解決日 処理内容
2023/4/10 A社 50,000円 確認中(4/15メール送付)
2023/4/15 B社 120,000円 解決済 2023/4/20 売掛金へ振替

また、会計ソフトの機能を活用することも効果的です。多くの会計ソフトでは、仮受金の管理や振替処理を効率的に行うための機能が用意されています。

担当者を決めて定期的にフォローアップする体制を整えることも重要です。特に規模の大きい企業では、仮受金の管理担当者を明確にし、月次で残高確認と対応状況のレビューを行うとよいでしょう。

まとめ

仮受金は、入金があったものの、その内容や取引先が不明な場合に一時的に使用する勘定科目です。貸借対照表の流動負債に分類され、内容が判明次第、適切な科目に振り替えなければなりません。

適切な仮受金処理のためには、入金時の詳細な記録、定期的な残高確認と調査、仮受金台帳の作成などを行うようにしましょう。また、入金消込作業を効率化させることや、取引先とのコミュニケーションを頻繁にとることで、仮受金の発生自体を減らすことも重要です。

税務上のリスクを回避するためにも、仮受金の管理体制をしっかり整えましょう。不明な点があれば、税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。

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監修者 三坂大作
監修者紹介
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役
三坂 大作(ミサカ ダイサク)

経歴
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1989年 同行ニューヨーク支店勤務
1992年 三菱銀行退社、資金調達の専門家として独立
資格・認定
経営革新等支援機関:認定支援機関ID:1078130011
ヒューマントラスト株式会社:資格者 三坂大作
貸金業登録番号:東京都知事(1)第31997号
ヒューマントラスト株式会社:事業名 HTファイナンス
貸金業務取扱主任者:資格者 三坂大作
資金調達の専門家として企業の成長を支援
資金調達の専門家として長年にわたり企業の成長をサポートしてきました。東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し、国内業務を経験した後、1989年にニューヨーク支店へ赴任し、国際金融業務に従事。これまで培ってきた金融知識とグローバルな視点を活かし、経営者の力になることを使命として1992年に独立。以来、資金調達や財務戦略のプロフェッショナルとして、多くの企業の財務基盤強化を支援しています。 現在は、ヒューマントラスト株式会社の統括責任者・取締役として、企業の資金調達、ファイナンス事業、個人事業主向けファクタリング、経営コンサルティングなど、多岐にわたる事業を展開。特に、経営革新等支援機関(認定支援機関ID:1078130011)として、企業の持続的成長を実現するための財務戦略策定や資金調達のアドバイスを提供しています。また、東京都知事からの貸金業登録(登録番号:東京都知事(1)第31997号)を受け、適正な金融サービスの提供にも力を注いでいます。
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