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2025.05.27

不良債権とは?意味・事例・回収方法・会計処理まで徹底解説

企業が事業を営む中で避けられない「不良債権」の問題。取引先からの入金が滞ることで、資金繰りに支障をきたし、経営全体に悪影響を及ぼすこともあります。

本記事では、不良債権の意味や事例、回収方法、会計処理までを網羅的に解説し、企業の債権管理の参考となる情報を提供します。

不良債権の基礎知識

不良債権とは何か?

不良債権とは、企業や金融機関が保有する債権のうち、回収が困難または不能と見込まれる債権のことを指します。

 

一般的には、銀行などが企業や個人に融資を行った際、その返済が滞っている状態が代表例ですが、これは金融機関に限った話ではありません。

 

実際には、一般企業も取引先との信用取引で発生する「売掛金」などの未回収が原因で、不良債権を抱えることがあります。

 

例えば、企業が商品やサービスを提供したにもかかわらず、相手先からの支払いが一定期間経っても行われない場合、その債権は「不良債権」として扱われます。

このような状態が続けば、企業は資金繰りに大きな支障をきたし、健全な経営が難しくなる可能性もあるのです。

 

不良債権の存在が問題視される理由の一つに、企業のキャッシュフローが悪化し、運転資金が不足するリスクが高まる点があります。

とくに中小企業にとっては、一件の未回収債権が命取りになるケースもあるため、注意が必要です。

 

また、会計上の処理としても不良債権は特別な対応が求められます。

貸倒損失として処理する場合、税務上の損金算入の可否や、貸倒引当金の設定などの会計処理にも直結するため、正確な判断と対応が重要です。

 

つまり、不良債権とは単に「お金が回収できない」状態にとどまらず、企業経営や財務体質を左右する深刻なリスク要因といえます。

不良債権の代表的な事例

企業活動において不良債権が発生する場面は多岐にわたります。

以下では、代表的な不良債権の種類とその特徴について解説します。

 

【代表的な不良債権の種類】

種類

内容

売掛金

商品やサービスを提供したにもかかわらず、期日までに支払いがないもの

受取手形

期日を過ぎても現金化されない手形

貸付金

関連会社や取引先、従業員に対して貸し付けたが、返済がされないもの

立替金

荷物の発送費など、取引先に代わって立て替えた支払いが回収されないもの

未収入金

固定資産売却代金など、営業外で発生し未回収となっている金銭

 

とくに注意すべきは「売掛金」です。

これは企業にとって最も一般的な信用取引で発生するものであり、支払遅延が長期化すると「滞留債権」と呼ばれ、さらに進行すると「不良債権」に移行します。

 

売掛金や受取手形が不良債権化する背景には、取引先の経営悪化や資金ショート、倒産などが挙げられます。

また、貸付金も取引先との関係性から発生することが多く、返済の約束があっても実際に回収できないケースは少なくありません。

 

さらに、立替金や未収入金など、営業活動以外の場面でも不良債権は発生します。

例えば、従業員や役員に対する立替金であっても、明確な返済スケジュールがなければ将来的に未回収のリスクが高まります。

 

このように、不良債権は単なる「売掛金」だけでなく、企業の取引全体に潜むあらゆる債権が対象になり得るため、定期的なチェックと与信管理が不可欠です。

不良債権の回収とリスク管理

不良債権の回収方法

不良債権が発生した際にまず重要なのは、迅速な対応を行うことです。

支払期日を過ぎたまま放置すると、債権の回収可能性は時間の経過とともに確実に下がっていきます。

債権回収には法的な時効も関係してくるため、遅れは致命的です。

 

不良債権の回収方法は段階的に進めるのが基本です。以下に、実務で用いられる主なステップをまとめます。

 

【不良債権の主な回収手順】

手順

方法

概要

電話・メールでの督促

まずは穏やかな方法で支払いの意思を確認する。

督促状の送付

文書で支払いを正式に求める。

内容証明郵便の送付

支払い催促の証拠を残す。時効の中断にも有効。

民事調停の申し立て

裁判所を通じた話し合い。比較的低コストで和解を目指す。

支払督促の申立て

裁判所から正式な督促が送られ、異議がなければ仮執行へ移行できる。

裁判の提起

通常訴訟または少額訴訟で判決を得て強制力を持たせる。

強制執行の申し立て

判決に基づいて相手の財産を差し押さえる手続き。

 

特に効果的なのが、「内容証明郵便」と「公正証書」の活用です。

内容証明郵便は時効の中断効力を持ち、将来の訴訟で重要な証拠にもなります。

支払いに合意した場合は、債務弁済契約を「公正証書」にしておくことで、万一支払いが再度滞った際にも訴訟を経ずに強制執行が可能になります。

 

回収の可能性が見込まれるのであれば、分割払いや一部支払いの提案など柔軟な対応も必要です。

相手方との関係性を保ちつつ、できる限りの資金回収を図る姿勢が重要です。

 

なお、回収に時間と労力がかかることを見越して、専門の債権回収会社(サービサー)に依頼するという選択肢もあります。

サービサーは法務省の許認可を受けた機関であり、交渉力と法的知識に基づいた対応が期待できます。

回収可能性の判断ポイント

不良債権が発生した場合、「回収できるか否か」の判断が次の行動を大きく左右します。

不用意に訴訟や強制執行に踏み切ってしまうと、時間・費用・労力がかかるだけで成果が得られないリスクがあるため、慎重な見極めが不可欠です。

 

回収可能性を判断するうえで、以下の要素を総合的に確認することが推奨されます。

 

【回収判断のチェックポイント】

  • 債務者に支払い意思があるか(音信不通や拒否が続いていないか)

  • 相手の経済状況に支払い能力があるか(資産・売上・借入状況など)

  • 債権の消滅時効が到来していないか(通常5年、旧法は2年)

  • 債権に担保や連帯保証人が付いているか

  • 倒産や法的整理手続きを進めていないか

例えば、債権に担保が設定されている場合は、担保物件の売却により債務の弁済が可能となる可能性があります。

また、連帯保証人がいれば主債務者が支払えなくても請求が可能です。

 

一方で、すでに相手企業が破産手続や民事再生手続に入っている場合、配当率が著しく低いか、そもそも配当がされないケースもあり得ます。

 

また、消滅時効の問題も重大です。2020年4月の民法改正により、売掛金などの時効期間は「権利行使可能時から5年または債権成立から10年のいずれか早い時点」となっています。

 

時効が成立してしまえば、請求は一切できなくなるため、適切な管理と対応が必要です。

 

企業が不良債権に直面したとき、最終的に「諦めて貸倒処理する」か「回収に動くか」の判断が問われます。

そのためにも、回収可能性の冷静な分析と、社内外の専門家との連携が鍵となります。

不良債権の会計処理と予防策

不良債権の会計処理方法

不良債権が発生した場合、正確な会計処理を行うことは財務の透明性と信頼性を保つうえで極めて重要です。

特に、債権の回収が困難または不能と判断された時点で、適切な勘定科目を使って仕訳処理を行う必要があります。

 

不良債権の会計処理では、主に以下の2つのケースに分類されます。

 

【不良債権の会計処理パターン】

状況

使用する主な勘定科目

備考

回収不能が確定した場合

貸倒損失

税務上も損金算入可能な処理。

回収が困難だが一部見込みあり

貸倒引当金、破産更生債権等

返済が一部でも見込まれる場合。法的整理中の債権などに使用される。

 

例えば、売掛金500万円のうち全額が回収不能と判断された場合は、以下のように仕訳されます。

 

借方:貸倒損失 5,000,000/貸方:売掛金 5,000,000

 

ただし、保証人が一部保証している場合や、法的手続に入って一部回収の見込みがある場合は、債権を「破産更生債権等」に振り替えたうえで、残額を「貸倒引当金繰入」などで処理するケースもあります。

 

また、貸倒損失として処理するには一定の条件を満たす必要があります。

税務上は「債務者が法人で倒産状態にある」「弁済が不能と確認されている」などの要件が必要で、形式的な書類の保存や根拠の明示も求められます。

 

さらに、貸倒リスクに備えて計上する「貸倒引当金」は、将来的な損失をあらかじめ見積もって計上する制度で、事前の備えとして有効です。

 

【貸倒引当金の法定繰入率(業種別)】

業種

法定繰入率(%)

割賦販売小売業等

1.3%

卸売業・小売業・飲食業

1.0%

製造業・電気業等

0.8%

金融・保険業

0.3%

その他の事業

0.6%

 

業種に応じて定められた法定繰入率を参考に、適切な貸倒引当金を設定しておくことが、税務リスク回避と財務健全性の維持に直結します。

 

したがって、不良債権の会計処理では、「どの段階で」「どの勘定科目を用いて」「どのように根拠を示すか」が明確であることが求められます。

不良債権化を防ぐための対策

不良債権が発生してからの対応も重要ですが、それ以上に「未然に防ぐ」ことが企業経営の安定には不可欠です。

特に中小企業にとっては、1件の貸倒れが資金繰りを圧迫し、経営存続を脅かすこともあります。

そのためには、リスクを早期に察知し、実行可能な予防策を講じる必要があります。

 

以下に、実務で有効とされる不良債権予防策を紹介します。

 

【不良債権予防の主な手法】

  • 取引先の信用調査を実施する(商業登記簿、決算書、信用情報など)

  • 与信限度額を設定し、過度な取引を回避する

  • 支払条件や回収条件を契約書に明記する

  • 支払遅延が発生した時点で迅速に督促対応を行う

  • 担保や連帯保証人の設定を検討する

  • ファクタリングを活用して早期に資金化する

例えば、ファクタリングを利用すれば、売掛債権を第三者に売却することで、不良債権化する前に資金を確保することが可能です。

これは一時的な資金繰り対策にも有効で、ベンチャー企業や新興事業でも導入が進んでいます。

 

また、定期的に取引先の業績や財務内容をモニタリングし、経営悪化の兆候を見逃さないことも重要です。

早期に異変に気づけば、一部前倒しでの回収や、契約条件の見直しといった対応が可能になります。

 

「売上=利益」ではなく、「入金=資金」です。

 

どれだけ受注しても、入金がなければ企業は存続できません。不良債権化を防ぐためには、「売ること」と同じくらい「確実に回収すること」に注力すべきです。

 

そのため、社内での与信管理体制を構築し、営業部門・経理部門・法務部門が連携して情報を共有する仕組みも欠かせません。

まとめ

本記事では、不良債権の基本的な意味から、代表的な事例、回収方法、会計処理、そして予防策に至るまでを詳しく解説してきました。

不良債権は企業の資金繰りに直接影響する重大なリスク要因であり、適切な管理と迅速な対応が求められます。

 

また、未然に防ぐための与信管理やファクタリングの活用など、日頃からのリスク対策が欠かせません。

とはいえ、実務ではさまざまな要因が絡み合い、どの対応策が最適かを判断するのは簡単ではありません。

 

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監修者 三坂大作
筆者・監修者 ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役三坂 大作(ミサカ ダイサク)

略歴
・1985年:東京大学法学部卒業
・1985年:三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行 表参道支店:法人融資担当
・1989年:同行 ニューヨーク支店勤務 非日系企業向けコーポレートファイナンスを担当
・1992年:三菱銀行を退社、資金調達の専門家として独立
資格・登録情報
・経営革新等支援機関(認定支援機関ID:1078130011)
・貸金業務取扱主任者(資格者:三坂大作)
・貸金業登録:東京都知事(1)第31997号
・日本貸金業協会 会員番号:第006355号
専門分野と活動実績
企業の成長を資金面から支えるファイナンスの専門家として、30年以上にわたり中小企業の財務戦略・資金調達を支援。
国内外の法人融資・国際金融業務の経験を基に、経営者に寄り添った戦略的支援を展開。

現在の取り組み
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役として、以下の事業を統括:
・法人向けビジネスローン事業「HTファイナンス」
・個人事業主向けファクタリングサービス
・資金調達および財務戦略に関する経営コンサルティング

経営革新等支援機関として、企業の持続的成長を実現するための財務戦略策定や金融支援を行い、 貸金業登録事業者として、適正かつ信頼性の高い金融サービスを提供しています。

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