2025.03.18
企業の資金調達完全ガイド|最適な方法と活用ポイントを解説
資金調達の主要な方法
資金調達は、企業が成長し、安定的な経営を続けるために不可欠な要素です。コンサルティングの現場でも「資金調達支援」の依頼は非常に多く、企業が抱える課題の中心となることがしばしばあります。
資金調達の方法は大きく分けると4つに分類されます。具体的には、貸借対照表の「資産の部」「負債の部」「資本の部」に対応する3つの方法と、補助金・助成金による調達です。本記事では、その中でも「負債の部」に関わる代表的な資金調達方法について詳しく解説します。
金融機関等からの借入金
最も一般的な資金調達方法のひとつが、銀行や信用金庫、ノンバンクなどの金融機関からの借入です。これは「間接金融」と呼ばれ、企業が金融機関に融資を申し込み、審査を経て承認された後に、契約を締結して資金を調達する手法です。
融資契約では、以下のような条件が取り決められます。
・借入金額
・資金の使途
・借入期間
・返済方法
・担保条件
契約締結後、貸し手である金融機関と借り手である企業との間で、借入金に関する諸条件が確定します。借入金は会計上、貸借対照表の「負債の部」に計上され、長期借入金または短期借入金として処理されます。
この方法は比較的広く利用されており、企業の信用力や事業計画の妥当性が審査のポイントとなります。特に、中小企業の場合、融資の際には金融機関の審査基準や担保提供の必要性を十分に理解した上で申し込むことが重要です。
経営者や親族からの借入金
中小企業においては、金融機関からの借入だけでなく、社長自身や親族からの借入も資金調達手段のひとつとしてよく利用されます。この方法も広義では「間接金融」に分類され、会計上は借入金として処理されます。
しかし、多くの場合、金融機関と締結するような厳格な金銭消費貸借契約書を交わしていないケースが見られます。そのため、形式的には借入金に該当しますが、実態としては企業の経営を支える準資本金的な性質を持つことも少なくありません。
中小企業においては、こうした借入金が「すべての負債に劣後する(他の負債をすべて返済した後でなければ返済できない)」とみなされる場合があります。これは「中小企業特性」と呼ばれ、会計上の債務超過を実質的には回避できる可能性があります。ただし、これは金融機関の審査担当者によって評価が分かれるため、必ずしも有利に働くとは限りません。
そこで推奨されるのが、「デットエクイティスワップ(Debt Equity Swap:DES)」の活用です。これは、借入金を資本金に組み込み、貸借対照表の「資本の部」を強化する方法です。
例えば、年商5億円以上の中小企業であっても、薄利経営の継続により繰越利益の蓄積が十分でないケースがあります。そうした企業が一時的に多額の赤字を計上すると、容易に債務超過に陥ることがあります。その多くは資本金が1万円や10万円といった過小資本の状態です。
このような状況を回避するためにも、社長自身や親族からの資金調達は「新株発行による増資」によって対応し、「資本の部」を強化することが望ましいでしょう。増資を行うことで、企業の財務基盤が安定し、金融機関からの信用も向上します。
直接金融による資金調達
企業が資金調達を行う方法のひとつに、「直接金融」があります。直接金融とは、金融機関を介さずに投資家や市場から直接資金を調達する方法であり、社債の発行や増資が代表的な手法です。
この方法を活用することで、企業は金融機関の審査を受けずに資金を調達できる場合があるため、資金繰りの選択肢が広がります。本章では、直接金融による資金調達の代表例である「社債の発行」と「増資」について詳しく解説します。
社債の発行
社債とは、企業が資金調達のために発行する債券のことで、企業が投資家などから資金を借りる代わりに、一定期間後に元本と利息を返済する仕組みです。企業の信用力や市場環境によって、発行条件が異なりますが、金融機関からの借入とは異なり、「直接金融」に分類されます。
社債には、以下のような分類があります。
【社債の主な種類】
1.性質による分類
・普通社債
・転換社債型新株予約権付社債(転換社債、取得請求権付株式)
・新株予約権付社債(ワラント債)
・劣後債(他の負債が全て返済された後に償還される社債)
2.債権者名義の管理の有無による分類
・記名社債
・無記名社債
3.募集の仕方による分類
・公募社債
・私募社債(少人数私募債(50人未満)、プロ私募債、銀行引受私募債)
4.担保の有無による分類
・担保付社債(担保付社債信託法の適用)
・無担保社債
5.利払い方式による分類
・利付債(固定利付債、変動利付債)
・割引債
6.発行価格による分類
・額面発行(発行額と償還額が同額)
・割引発行(発行額より償還額が高い)
・打歩発行(発行額より償還額が安いが、利息を加味すると発行額を上回る)
企業が社債を発行する際には、「社債発行目論見書」という書類を作成し、投資家や金融機関に向けて募集を行います。社債の発行条件は企業の自由裁量で決めることができますが、一部は法的規制を受けるため、適切な手続きを踏む必要があります。
社債は、会計上「負債の部」に計上されます。銀行融資のような「間接金融」とは異なり、社債は資金の提供者と企業が直接契約するため、新株発行による増資と同様、「直接金融」に分類されます。
増資
増資とは、企業の資本金を増加させることを指します。これは、企業が財務基盤を強化するための重要な手法のひとつであり、主に以下の方法で実施されます。
【増資の主な方法】
・新株発行による増資
新たに株式を発行し、投資家や取引先などの引受先から資本金または資本準備金として払込みを受ける方法。最も一般的な増資手段である。
・転換社債型新株予約権付社債(CB)やワラント債の転換
発行済みの転換社債やワラント債を株式に転換することで資本金を増加させる方法。
・デットエクイティスワップ(DES)
すでに借入金として計上されている負債を資本金へ振り替える方法。企業の自己資本比率を向上させ、財務基盤の安定化に寄与する。
増資を行うことで、企業の「資本の部」を強化できるため、財務基盤の安定や銀行融資の審査における信用向上につながります。しかし、増資(場合によっては減資も含む)には厳密な法的手続きが求められるため、適切な準備が必要です。
また、増資の際には決算書や増資引受契約書などの書類を整え、投資家や金融機関と適切な合意を形成することが求められます。資金調達の手法としては、「資本の部」に関連する資金調達であり、企業の長期的な成長戦略にも影響を与えるため、慎重な判断が必要です。
その他の資金調達方法
企業が資金調達を行う方法は多岐にわたりますが、金融機関からの借入や増資以外にも有効な手段が存在します。特に、中小企業においては「資産売却」や「補助金・助成金」を活用することで、資金繰りの改善や経営の安定化を図ることが可能です。本章では、それぞれの方法について詳しく解説します。
資産売却
企業が資金繰りに困窮した際、「資産の部」に計上されている資産を売却することで、迅速に資金を確保することができます。特に中小企業においては、遊休資産や不要な資産を売却し、資金調達を行うケースが少なくありません。
【売却可能な主な資産】
・不動産の売却(遊休地・工場・オフィスビルなど)
・会社所有の動産の売却(車両・設備機器・備品など)
・知的財産権の売却(営業権・特許権・商標権など)
・売上債権の売却(ファクタリング)
特に、売上債権の売却は「ファクタリング」として利用されることが多く、売上債権買取会社との間で「債権譲渡契約」を締結することで、早期に資金化することが可能です。資産売却は比較的短期間で資金調達の可否が決まるため、近年では多くの中小企業が活用する手法のひとつとなっています。
ただし、資産を売却する際には、企業の財務状況や経営戦略を十分に考慮し、必要な資産を手放さないよう慎重に判断することが重要です。
補助金・助成金
政府は、経済振興や雇用維持、倒産防止などを目的に、さまざまな補助金・助成金制度を設けています。これらの制度を活用することで、企業は返済不要の資金を調達することが可能です。
【主な補助金・助成金の種類】
・補助金(経済産業省が主管)
・ものづくり補助金
・事業再構築補助金
・IT導入補助金 など
・助成金(厚生労働省が主管)
・雇用安定助成金
・キャリアアップ助成金
・産業雇用安定助成金 など
助成金は、主に労働者の雇用維持・拡大や待遇改善を目的としており、基本的に国の予算に上限がないため、資格要件を満たせば比較的容易に受給することができます。一方、補助金は経済振興や地域活性化、倒産防止を目的とした制度が多く、申請後に審査を通過する必要があります。補助金は申請期間が限定的であり、採択後に見積書や支払計画を提出し、実施後に後払いで支給される仕組みです。
また、補助金・助成金は貸借対照表の「負債の部」や「資本の部」には計上されません。多くの中小企業の経営者が「補助金や助成金は売上に含まれるのでは?」と誤解することがありますが、実際には「雑収入」として会計処理され、損益計算書に影響を与えるのみです。申請から受給までの流れや詳細な条件については、専門家のアドバイスを受けることを推奨します。
まとめ
本記事では、企業が活用できる資金調達の手法について解説しました。金融機関からの借入や社債の発行といった「負債の部」に関わる方法、新株発行による増資といった「資本の部」に関わる方法、さらには資産売却や補助金・助成金といった選択肢もあります。
しかし、どの手法を選ぶべきかは、企業の財務状況や経営方針によって異なります。資金調達にはそれぞれメリット・デメリットがあり、自社に最適な方法を見極めることは簡単ではありません。
そんな企業様のために、HTファイナンスは資金調達の専門家としてサポートいたします。長年の経験をもとに、貴社の状況に合わせた最適な資金調達プランをご提案し、安定した経営環境の実現をお手伝いいたします。
ぜひ、お気軽にお問い合わせください。