2025.05.27
税理士と公認会計士の違いとは?中小企業の資金調達は税理士がおすすめ
税理士と公認会計士はどちらも財務や税務の専門家ですが、それぞれの業務内容や対象とする企業規模には大きな違いがあります。本記事では、その違いを明らかにするとともに、中小企業の資金調達においてどちらの資格の専門家が適しているのかをご紹介します。
特に年商規模ごとに必要なサポートの内容も異なるため、将来の事業計画を考えるうえでも重要なポイントです。ぜひ参考にしてみてください。
両者の試験制度や学習時間の違いなども存在し、取得後のキャリアや担当する業務内容に大きく影響します。中小企業を中心に考える際には、日常的なサポートが期待できる税理士に注目するのが現実的です。
基本的な違い
まずは税理士と公認会計士の基本的な違いを確認してみましょう。
税理士は主に税務代理や税務書類の作成、税務相談といった税務中心の業務を行い、個人事業主や中小企業の財務をきめ細かくサポートする役割が強いです。一方、公認会計士は企業の財務諸表を監査・保証するための専門資格であり、上場企業や大規模企業の会計監査を担うことが多いです。こうした背景から、公認会計士の仕事は財務諸表の正確性を厳密にチェックする点に重きがあり、業務の性質上、大企業向けのサポートが中心になります。
また、日本の法律にはそれぞれ独占業務が定められており、税理士でなければできない業務、公認会計士でなければできない業務が明確化されています。しかし、近年では税理士が行う税務相談以外に、公認会計士も財務コンサルティングなどを行うケースが増えています。とはいえ、中小企業が日常的に必要とする支援は税理士がカバーする範囲が広く、資金繰りから節税まで多面的なサポートが期待できます。
業務範囲や得意分野の違いを理解することで、自社の事業規模や必要なサービスにあわせた専門家を選ぶことが可能になるでしょう。
業務内容の違い
税理士は税務関連業務を、公認会計士は監査業務を中心に手掛けます。以下でそれぞれの業務内容と、対象となる企業規模の違いを紹介します。
税理士と公認会計士はどちらも会計分野のスペシャリストですが、扱う領域が異なります。税理士は税の専門家として、申告書の作成や税務当局とのやり取りなどを中心に行います。それに対して公認会計士は、財務情報が正しいかどうかを第三者としてチェックする監査業務に力を入れています。
税理士の業務内容
税理士の業務内容は、主に税務に関することです。税理士法第2条では、税理士の業務を以下のように定めています。
1.税務代理・・・納税者の税務申告を代行する
2.税務書類の作成・・・納税者の税務書類の作成・提出を代行する
3.税務相談・・・納税者から税務に関する相談を受ける
4.その他・・・1~3のほか、税理士業務に付随する財務書類の作成や会計帳簿の記帳などを行う
平たく言えば、会社の確定申告の相談を受けたり、確定申告書類の作成・提出を行ったり、節税のアドバイスをしたりするのが主な業務です。
1~3の業務は税理士の独占業務です。税理士の資格を持っていない人が1~3の業務に携わった場合、無料であっても法律違反となります。
具体的には、法人税や所得税の確定申告のための書類作成、税務署への代理申請、経営者からの日常的な税務相談などを行います。
中小企業を中心に受け持つため、経営者の身近なパートナーとして、実際には、税理士法に書かれていない業務も行っており、資金繰りや資金調達のアドバイスなど、税務とは直接関係ない資金繰りや融資相談にも柔軟に対応するケースが多いです。
公認会計士の業務内容
公認会計士は、財務諸表監査と呼ばれる業務を独占的に行うことができる資格です。上場企業や一定規模以上の会社では、外部の公認会計士や監査法人による監査が法律で義務付けられています。また、監査以外にも企業の財務戦略や内部統制に関するアドバイザリー業務を手掛ける場合もあります。税理士資格を併せ持つ公認会計士も多く、監査と税務の双方を提供できる点が強みです。
対象となる企業規模も違う
税理士は個人事業主や小・中規模企業を支援する場面が多く、一方の公認会計士は上場企業や大手企業を担当することが一般的です。大企業は金融機関や投資家に対し信頼性の高い財務報告を行う必要があり、厳格な監査が求められるため、公認会計士が活躍しやすい環境となっています。逆に中小規模の会社は日々の経理や税務がより身近な課題となるため、税理士とのやりとりが多くなる傾向にあります。
業務に対するスタンスの違い
税理士と公認会計士では、日々のやりとりの仕方や経営サポートに対するスタンスにも違いがあります。
業務内容にとどまらず、経営者と専門家の関わり方にも両者で大きな差があります。税理士は日々の帳簿チェックや家族経営に近い企業の細かな相談ごとにも積極的に対応することが多く、経営者のリスクや不安をこまめに解決してくれる存在です。
公認会計士の主目的は、財務諸表の信頼性を社会に向けて保証することです。そのため、企業内部と深く連絡を取りながらも、監査の客観性を保つ必要があります。中小企業の場合は監査が必須ではないケースが多いため、経営者との接点は必要に応じたコンサルティングに留まる場合も少なくありません。
税理士のスタンス
税理士の基本的なスタンスは、顧客に寄り添いながら業務をこなすことです。これは、税理士に求められる社会的使命によるものです。
税理士法第1条では、税理士の使命を以下のように述べています。
”税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。”
簡単に言えば、税理士の社会的使命は「納税のサポート」です。この使命の遂行により、会社は業績に応じて適正な額の納税が可能となります。納税額が不当に多いまたは少ないことによって、問題が生じることを防げるのです。
つまり、税理士の業務の対象は会社であり、業務によって利益をもたらす対象も会社であるといえます。
また、税理士法では「独立した公正な立場において」とある一方で、「納税義務者の信頼に応える」ことを使命としています。「納税義務者の信頼の応えること」とは「会社の信頼に応えること」にほかならず、
・節税できる部分は節税を図り、納税額を減らすこと
・資金調達が円滑になるように、資金繰りの調整や財務内容の改善をサポートする
なども税理士の使命に含まれます。
このことから、税理士が会社に寄り添ってサポートする存在であることが分かるでしょう。
公認会計士のスタンス
一方、公認会計士のスタンスは税理士と真逆です。税理士は会社に寄り添うのに対し、公認会計士は会社に寄り添うことなく、あくまで中立の立場を貫きます。
これは、公認会計士の社会的使命からも明らかです。公認会計士法第1条には、以下のように定められています。
”公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。”
ここに書かれている通り、公認会計士の役割は「財務書類や財務情報の信頼性の確保」によって、会社の事業活動を公正なものとし、投資家や債権者を保護することです。
つまり、公認会計士は財務諸表の監査を通じて、企業の内部統制や会計処理が適切に行われているかを注視する立場です。監査にあたっては厳格なプロセスに基づくため、経営者や経理担当者とのやりとりが形式的かつ公正性を重視したものになりがちです。大企業における内部統制や会計制度の整備を支援する一方、手厚い経営支援というよりは客観的なチェック機能が主となるケースが多いです。
中小企業の資金調達には税理士がおすすめ
中小企業が資金調達で重要視すべきポイントは、年商規模や業況に合わせた柔軟なサポートです。税理士に依頼する際の目安として、年商規模別に解説します。
中小企業が直面する資金調達の課題は、業種や企業の成長段階によって大きく異なります。日常的な資金繰りのチェックや融資手続きのサポートなど、身近な相談が多い場合は税理士が力を発揮しやすいです。特に税金関連だけでなく、公的助成金や補助金の情報も得やすくなるため、経営者にとって時間的コストの削減につながるメリットがあります。
年商の小さい会社の場合
年商が小さい会社、例えば年商1,000~2,000万円程度の小規模な会社では、経費が限られているだけに節税メリットはほとんどありません。一般的に税理士に求められる節税対策が期待できないのです。
それよりも、資金繰りのサポートがメインになります。
年商1億円を2億円に倍増させるよりも、年商1,000万円を2,000万円に倍増させるほうが容易であるように、小規模であれば業績を急速に拡大することも可能です。
業容が小さければ手元資金の絶対量も少ないため、短期間で売上を急速に伸ばしていく時には、資金繰りが悪化しやすいものです。急速な成長の結果、資金不足に陥って事業の縮小を迫られて元の木阿弥になる可能性があるのです。最悪の場合には倒産の危険性も考えられます。
したがって、年商が小さい会社には、手元に資金が残るようにアドバイスしてくれる税理士が欠かせません。これによって資金繰りが安定すれば、業績が伸びていることを銀行から評価され、資金調達も容易になります。
年商の大きくなってきたら・・・
年商が大きくなるにつれて、税理士に求める役割も変わってきます。目安となる年商は5,000万円です。
年商5,000万円を超えたあたりから、税務調査の対象となります。節税効果も無視できなくなってくるでしょう。このため、効果的な節税対策と確実な税務処理のために税理士が欠かせません。
また、さらなる成長を目指すにあたって、資金繰りと資金調達のサポートも引き続き重要です。成長の方向性によって、資金繰りのあり方や節税の重要性なども変わるため、能力の高い税理士への依頼も検討すべきです。
年商が1億円を超えたら
年商が1億円を超えたら、税理士の役割は一層大きなものとなります。
まず、これくらいの規模になると経理が混乱しやすくなります。経理担当者を雇い、管理会計を導入することが重要ですが、経理業務フローの整備には時間が必要です。
事業規模が拡大した後、慌てて取り組んでも手遅れになる可能性があります。会計データが間違いだらけになり、どこが間違っているかも分からない状態です。これでは、適切な資金繰りは不可能です。
また、資金繰りの難易度も高まります。
年商数千万円の規模であれば、数百万円の資金不足が生じた場合、経営者のポケットマネー、売掛金のファクタリング、手形割引などででやりくりすることもできます。
しかし、年商1億円を超える資金需要も大きくなり、少額の資金調達ではカバーできなくなります。急場しのぎの方法が使えず、資金不足が倒産に直結する可能性が高まるのです。
実際に、年商1億円を超えたものの、経理業務の整備と資金繰りの管理が不十分であり、計画的に資金調達をできない会社では、黒字倒産に至るケースが少なくありません。
しっかりとアドバイスしてくれる税理士に依頼しておけば、経理状況の混乱を防ぎ、資金繰りをしっかり管理していくことができます。先々の資金繰りを考え、資金調達を計画的に進めることも可能です。
まとめ
税理士と公認会計士の違いを理解し、企業規模や年商に合わせて上手に選択することが望ましいでしょう。
税理士は税務や融資相談など、経営に密接に関わる日常的なサポートが得意であり、中小企業にとって頼れるパートナーとなりやすいです。一方、公認会計士は監査や財務諸表の正確性の担保が主軸で、上場企業や大規模法人において大きな役割を果たします。中小企業が資金調達をスムーズに行うには、まずは税理士のサポートを活用し、必要に応じて公認会計士との連携を検討するのがおすすめです。
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