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DXとテレワークで変わる働き方|業務効率化と企業価値向上のポイント

テレワークの課題と導入時の注意点 

セキュリティリスクと情報管理の重要性 

「テレワーク」は、IT技術の進化に支えられた「働き方改革」の中心的な要素として、多くの企業に導入されています。労働者にとっては効率的な働き方を実現できる手段であり、企業にとっても生産性向上やコスト削減につながるメリットがあります。しかし、企業活動は「ヒト」によって支えられているため、テレワークの導入にはいくつかの重要な課題が生じます。その中でも特に重要なのがセキュリティリスクと情報管理の問題です。

例えば、経理業務はパソコンを使用するため、テレワークとの相性が良いように思えます。しかし、実際には、派遣会社の求人やクラウドワークスなどのクラウドソーシングでも、在宅で完結する仕事としては扱われにくい業務です。その理由は、経理業務が会社の経営数値を扱う機密性の高い業務だからです。

企業が経理業務をテレワークで実施する場合、以下のような情報が社外に流出する可能性があります。

  • 取引金額や販売製品の種類、サービス内容
  • 取引先の詳細情報や契約条件
  • 売上データや経費管理情報
  • 納税申告内容や財務データ

このような情報は企業の競争力を左右する極めて重要なデータであり、社外からのアクセスが容易になることでハッキングや情報漏洩のリスクが高まります。そのため、企業の経理部門においては、たとえ正社員の「雇用型テレワーク」であっても、情報セキュリティの観点から慎重な運用が求められます。

また、経理業務だけでなく、新製品の開発や特許技術の研究、M&A、業態転換に関わるプロジェクトなど、機密情報を扱う業務は、テレワークに適していないケースが多いです。これらの業務は、社外での作業による情報漏洩リスクが高く、適切な対策を講じなければ、企業の競争優位性を損なう可能性があります。

テレワークにおける業務評価と労務管理 

テレワークを導入する際のもう一つの大きな課題は、就業実績の把握と業務評価の難しさです。特に、正社員の「在宅勤務」を制度化する場合、オフィス勤務と同等以上の生産性を確保するために、明確なルール設定が必要です。

従来のオフィス勤務では、出勤時間や勤務態度、上司との対話を通じて社員の働きぶりを把握することができました。しかし、テレワークでは、目に見える形での管理が難しくなります。このため、多くの企業では以下のような方法を導入し、在宅勤務でも適切な業務評価ができる仕組みを整えています。

  • 勤務時間の記録
    会社支給のパソコンにログ管理機能を搭載し、一定時間システムが稼働していることを確認する。
  • オンライン監視システムの活用
    研修や会議の際にカメラ機能を利用し、従業員の出席や作業状況をAIで監視する。
  • 業務成果の可視化
    具体的な成果物(レポート、進捗報告、KPI評価など)をベースに評価を行う。

そもそも、テレワークは従業員一人ひとりの高い業務意識とモチベーションを前提としています。例えば、「WEB会議ではシャツを着ているが、下はパジャマのまま」といったように、服装は自由であっても、業務のパフォーマンスには影響しないことが理想です。しかし、テレワーク環境では「業務に支障がない」と評価する基準が不明確になりがちです。

このため、テレワークに適した業務は、成果が数値として明確に表れ、レポートやKPIで評価しやすい業務が望ましいとされています。一定期間ごとに業務成果や報告を求め、それを基に生産性を最大化する仕組みを整えることが、テレワーク導入の成功につながるでしょう。

テレワーク成功のための企業戦略 

IT企業のテレワーク導入事例と成果 

テレワークの導入において、多くの企業が直面する課題の一つは就業実績の把握と業務評価の仕組みづくりです。正社員による「在宅勤務」を制度化するには、従来のオフィス勤務と同等、もしくはそれ以上の生産性を確保できるような仕組みを整える必要があります。

例えば、ある企業では、会社支給のパソコンにタイマー機能を搭載し、業務時間中の稼働状況を把握する仕組みを導入しました。また、オンライン研修の受講時には、パソコンのカメラ機能を活用し、受講者の在席状況をAIで確認するシステムを導入することで、勤務実態の可視化を図っています。

ただし、こうした監視型の管理手法は、従業員のモチベーションを低下させる可能性もあります。テレワークを成功させるためには、社員一人ひとりの業務意識の向上成果ベースの評価制度の確立が不可欠です。例えば、一定の期間ごとに業務報告や成果物の提出を求めることで、個々の生産性を数値化し、適切な評価につなげることが重要となります。

テレワークの普及が進む中、私のコンサルティング先のあるIT企業では、営業組織の効率化をテーマに業務改善を実施しました。この会社は業務ソフトウェアの開発会社であり、技術者の多くはクライアント企業に常駐してシステム開発を行う形態をとっていました。しかし、社内のオフィスには広いスペースに30席以上のデスクがあるにもかかわらず、日常的に使用している社員はわずか5名程度という状態が続いていました。

この企業が抱えていた主な課題は以下の3点です。

  1. 優良顧客を持ちながら、競争激化により利益率が低下
  2. 高度な技術を持つ人材の退職が相次ぎ、人材流出が課題
  3. 社員間の一体感が欠如し、事業方針が不透明化

結果として、3期連続で増収減益という歪な決算が続き、企業の中期事業戦略を見直す必要に迫られていました。

業務効率化のためのデジタルツール活用 

この企業では、テレワークの効果を最大限に引き出すために、以下のデジタルツールを活用した業務改善を行いました。

  • クラウド型業務管理ツールの導入
    社員の業務進捗やタスクの可視化を行うため、TrelloやAsanaなどのプロジェクト管理ツールを導入。これにより、各クライアント先に常駐する技術者の業務状況がリアルタイムで本部と共有されるようになりました。
  • WEB会議システムの活用
    月に1回の全体会議を対面形式で行っていたものを、ZoomやMicrosoft Teamsを活用したオンライン会議に切り替え。会議への参加率が向上し、全社員が事業戦略や各プロジェクトの進捗を把握できるようになりました。
  • ナレッジ共有システムの構築
    社員間の情報共有を促進するため、SlackやNotionなどの情報共有ツールを導入。これにより、現場の技術者同士がノウハウを共有し、社内のナレッジベースが蓄積されるようになりました。
  • オフィスの縮小とリモートワーク環境の整備
    実際にオフィスを使用する社員が少ないことを受け、本部のオフィススペースを大幅に縮小。家賃負担を従来の5分の1に削減し、その分を社員のテレワーク環境の整備に充てました。

このような取り組みの結果、業務の可視化が進み、各プロジェクトの開発完了までの作業時間が約5%短縮。さらに、技術者の配置が最適化されることで、勤務時間の削減と待遇改善につながりました。その結果、社員のモチベーションが向上し、以前ほど人材流出に悩まされることがなくなりました。

この企業は、優良なクライアントを抱えていたこともあり、テレワークを活用した組織改革が成功し、最終的には大手システム会社にM&A(企業買収)されるという形で高い評価を受けました。デューデリジェンスの際にも、「本部の小規模化とデジタルツールを活用した業務管理手法」が大きな強みとして評価されたと聞いています。

テレワークの導入は、単なる働き方の変革にとどまらず、企業の競争力を高め、企業価値を向上させる要素にもなり得ます。特に、デジタルツールを適切に活用することで、業務の効率化だけでなく、社員のエンゲージメント向上、コスト削減、企業全体の生産性向上につながるという好循環を生み出すことが可能です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とテレワークの関係 

DXがもたらす業務効率化とコスト削減 

企業の競争力を高めるために、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入は不可欠となっています。その一環として、テレワークの推進は、業務効率化やコスト削減に大きく貢献します。

実際に、あるIT企業では、事業コンセプトを再構築し、コスト削減や高度な人材確保、収益案件の選択と集中といった施策を実施しました。その中で、「テレワーク」「WEB会議」「本部縮小」「情報DXの導入」を進めた結果、業務の効率化が飛躍的に向上しました。

もともと、同社の技術者は本部オフィスで業務を行うスタイルではなく、クライアント企業に常駐するケースが多かったため、従来のオフィス形態の維持は非効率的でした。そこで、テレワーク環境を整備し、業務の一元管理を実施しました。具体的には、業務報告を週1回提出させ、それを現場のチーフが確認したうえで本部へ送信。また、全体会議やミーティングは基本的にWEB会議を活用し、オフィスの縮小を進めました。その結果、家賃負担は約5分の1に削減され、業務報告の徹底により、生産性も向上しました。

このように、DXの活用によってテレワーク環境を整備することで、業務の効率化とコスト削減の両立が可能となります。

テレワークによる企業価値向上の可能性 

テレワークは、企業の収益構造の改善だけでなく、企業価値の向上にもつながります。

前述のIT企業では、テレワークを積極的に導入したことで、企業全体の業務フローが最適化されました。さらに、DXを駆使して社内業務を効率化することで、クライアント企業へのソフトウェア開発の納期短縮や品質向上にも寄与しました。結果として、技術者の離職率が低下し、優秀な人材の確保も容易になりました。

また、テレワークの導入による柔軟な働き方が評価され、求職者からの応募も増加。結果的に、人材採用の面でもプラスに働きました。この企業は、その後2年間でさらに成長し、大手システム会社にM&Aされるに至りました。その際、同社の効率的な業務管理手法が高く評価され、企業価値の向上につながったのです。

このように、テレワークを取り入れることで、業務の効率化だけでなく、人材の確保や企業のブランド力向上にも貢献する可能性があります。

今後、テレワークの概念は、IT企業のみならず、飲食業や建設業、運送業、農業など、さまざまな業界へ広がっていくことが予測されます。また、AI技術の発展によって、今後どのように「人の仕事」が変化し、企業がどのような施策を講じるべきかといった課題も浮上してくるでしょう。

DXとテレワークを組み合わせた新たな働き方の確立は、今後の企業経営にとって極めて重要なテーマとなるはずです。

まとめ 

本記事では、DX(デジタルトランスフォーメーション)とテレワークの関係について解説し、その導入が業務効率化やコスト削減、さらには企業価値向上にどのように貢献するかを説明しました。テレワークは単なる働き方の変化ではなく、DXと組み合わせることで、企業の競争力を高める重要な要素となります。

しかし、テレワーク導入には、業務管理やセキュリティ対策、社員のモチベーション維持など、慎重に考慮すべき課題もあります。自社に適した導入方法を検討し、最適な体制を整えることが成功の鍵となるでしょう。

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筆者 三坂大作
筆者 三坂大作
略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社
資格
貸金業務取扱主任者(第F231000801号)
経営革新等支援機関認定者
東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入社。
法人融資の専門家として、国内での金融業務に従事し、特にコーポレートファイナンス分野において豊富な経験を誇る。
同行に関して、表参道支店では法人融資を担当し、その後ニューヨーク支店にて非日系企業向けのコーポレートファイナンス業務に従事。
法人向け融資の分野における確かな卓越した知見を踏まえ、企業の成長戦略策定、戦略、資金調達支援において成果を上げてきました。
金融・経営戦略の専門家として、企業の持続的な成長を支える実務的なアドバイスを提供し続けています。
 
 
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