2025.04.30
決算書とは?初心者でもわかる財務三表の読み方と作成ステップを解説
決算書は企業の経営成績や財務状態を示す「経営の通信簿」ともいえる重要書類です。
しかし、専門用語が多く、苦手意識を持つ人も少なくありません。
本記事では、決算書の基本から重要な財務三表の読み方、作成方法まで、初心者にもわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、決算書を経営判断や資金調達に活かす知識が身につきます。
決算書の基礎知識
決算書とは何か?その役割と目的
決算書とは、企業の経営成績や財政状態を明らかにする書類のことです。
一会計年度(通常は1年)における売上や利益、資産や負債などを数字で表し、会社の「通信簿」のような役割を果たします。
企業は、法人税法第74条により、決算書を毎年作成し、確定申告書とあわせて税務署に提出する義務があります。
この書類がなければ、正確な納税額を算出することはできません。
また、決算書は税務申告だけでなく、会社の内外に対する報告資料としても重要です。
例えば、株主や取引先、金融機関などのステークホルダーに対し、現在の経営状態を明確に伝える必要があります。
金融機関からの融資を受ける際にも、信用力を示す根拠資料として提示が求められるでしょう。
さらに、決算書をしっかりと読み解くことで、将来の経営戦略や事業方針を立てる材料にもなります。
数字に基づいた経営判断を行うためには、信頼性の高い決算書の作成と理解が不可欠です。
このように、決算書は単なる義務的な書類ではなく、企業の持続的な成長に不可欠な「戦略ツール」ともいえるのです。
決算書の主な種類と構成
決算書にはいくつかの種類がありますが、最も基本となるのが「財務三表(ざいむさんぴょう)」です。
これは以下の3つの書類で構成されています。
- 貸借対照表(B/S:Balance Sheet)
- 損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)
- キャッシュフロー計算書(C/F:Cash Flow Statement)
この3つに加えて、「株主資本等変動計算書」や「個別注記表」などの補助書類を含めるのが一般的です。
【財務三表の役割一覧】
書類名 |
役割内容 |
貸借対照表(B/S) |
一定時点における資産・負債・純資産の状況を示す |
損益計算書(P/L) |
一会計年度の収益と費用を示し、利益の計算結果を明らかにする |
キャッシュフロー計算書(C/F) |
現金の流れを「営業・投資・財務」の3つの区分で明示する |
この中でも特に重視されるのが財務三表であり、企業の財務分析において不可欠な資料となります。
それぞれが異なる視点で会社の実態を可視化し、多面的に経営状況を把握できる仕組みになっているのです。
例えば、貸借対照表からは「会社の安全性」、損益計算書からは「収益性」、キャッシュフロー計算書からは「資金繰りの健全性」といった視点で評価することができます。
中小企業では、キャッシュフロー計算書の作成が義務ではないケースもありますが、企業の実態を正確に理解するためには非常に有益です。
決算書は種類ごとに異なる情報を含んでおり、それぞれの構成と目的を理解することが、経営判断の精度を高める第一歩となるでしょう。
財務三表の読み方と分析ポイント
貸借対照表の見方と注目指標
貸借対照表(B/S:Balance Sheet)は、決算日時点における企業の財務状態を表す書類です。
企業が「どのような資産を保有しているか」「どれだけ借金があるか」「自己資本がどの程度あるか」といった情報が、ひと目でわかるように構成されています。
この書類は、左側に「資産」、右側に「負債」と「純資産」というレイアウトで記載され、左右の合計は必ず一致する仕組みになっています。
このバランス構造こそが「バランスシート」と呼ばれるゆえんです。
貸借対照表を見る際には、以下の指標が重要です。
【貸借対照表の主な指標】
指標名 |
計算式 |
意味・目的 |
自己資本比率 |
純資産 ÷ 総資産 × 100 |
借金に頼らず経営しているかを示す。高いほど財務健全性が高い |
流動比率 |
流動資産 ÷ 流動負債 × 100 |
1年以内の支払い能力を示す。100%以上が支払い能力が高い目安 |
自己資本比率が高い企業は、外部からの借入に依存せず、安定した経営基盤を持っていると評価されます。
一方、流動比率が低い場合、短期的な資金繰りにリスクがある可能性があるため注意が必要です。
また、固定資産の構成比率や、負債の返済年数にも着目することで、企業の将来性や事業の安定性も読み取ることができます。
貸借対照表は、一時点のスナップショットとしての役割を持つため、単年度だけでなく複数年の比較をすることが大切です。
損益計算書でわかる会社の収益力
損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)は、企業の一定期間(通常は1年)における「儲け」を明らかにする書類です。
売上や費用、利益の推移がわかるため、企業が収益を上げる力(収益力)を評価するのに欠かせません。
この書類では、主に以下のような利益が順を追って計算されます。
【損益計算書の利益構造】
項目 |
内容説明 |
売上総利益 |
売上高 - 売上原価。本業の収益性(粗利)を示す基本的な指標。 |
営業利益 |
売上総利益 - 販売費・一般管理費。企業の本業の実力を示す利益。 |
経常利益 |
営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用。企業の通常活動から得られる利益。 |
税引前当期純利益 |
経常利益 + 特別利益 - 特別損失。法人税などを差し引く前の最終利益。 |
当期純利益 |
税引前当期純利益 - 法人税等。最終的に企業に残る純粋な利益。 |
特に注目したいのは、「営業利益が黒字かどうか」という点です。
これは企業の本業でしっかりと利益が出ているかを示すため、経営の健全性を示す重要な指標となります。
また、「粗利率(売上総利益 ÷ 売上高 × 100)」も、売上に対する利益の割合を表し、収益性の高さを数値化する手段です。
業界平均と比較することで、自社の強みや弱点が浮き彫りになります。
損益計算書は、数字の積み上げで会社の経営結果を明確に可視化するツールです。
数字の背景や構成要素に目を向けることで、単なる「利益額」だけでは見えない経営の実情を深く理解することができます。
キャッシュフロー計算書が示す現金の流れ
キャッシュフロー計算書(C/F:Cash Flow Statement)は、企業の現金の流れを明らかにする財務書類です。
利益が出ているのに手元に現金がない、という事態を防ぐために、実際の資金の増減を把握することが目的となります。
この書類は、以下の3つのキャッシュフローに分類されます。
【キャッシュフローの3つの区分】
区分 |
内容 |
営業キャッシュフロー |
本業の活動によって得た・失った現金。企業の稼ぐ力を示す |
投資キャッシュフロー |
設備投資や資産売却による現金の動き。将来の成長に向けた投資の状況 |
財務キャッシュフロー |
借入や返済、株式の発行など資金調達の動き。資金の出入りを管理する指標 |
例えば、営業キャッシュフローがプラスであれば、本業で十分な現金を生み出しているという証拠になります。
一方、マイナスが続く場合は、本業がうまくいっていない可能性があるため注意が必要です。
また、投資キャッシュフローがマイナスであることは、将来の成長に向けて設備投資や研究開発などに資金を投入している証です。
一概にマイナスが悪いとは限らず、中長期的な視点での評価が求められます。
キャッシュフロー計算書は、損益計算書や貸借対照表では見えにくい「現金のリアルな動き」を補完する役割を果たします。
企業の経営状態をより深く、正確に把握するためには、この書類の理解と活用が非常に重要です。
決算書の作成ステップ
決算書作成の流れと準備事項
決算書を正確に作成するためには、明確な手順に沿って計画的に準備を進めることが重要です。
特に、会計処理に不慣れな中小企業や個人事業主にとっては、何から手をつければよいか迷いやすい工程でもあります。
まず、決算書作成の大まかな流れは以下のようになります。
【決算書作成の基本ステップ】
- 帳簿の整理と記帳の完了
- 試算表の作成と残高の確認
- 決算整理仕訳の実施
- 税額の計算(法人税・消費税など)
- 決算書の作成と確定申告の準備
それぞれの工程において、細かな注意点や事前準備が必要になります。
帳簿の整理と記帳の完了
決算書作成の最初の一歩は、1年間の取引を記録した帳簿の記帳作業を完了させることです。
売上や経費、資産の購入や借入金の返済など、すべての取引を正確に記帳しておくことが前提条件となります。
この段階で漏れやミスがあると、その後の決算書全体に誤りが波及するため、細かい点まで丁寧にチェックしましょう。
特に、領収書や請求書の保管状況、未処理の仕訳がないかを確認することが大切です。
試算表の作成と残高の確認
記帳が完了したら、総勘定元帳の情報をもとに試算表を作成します。
試算表とは、勘定科目ごとの残高を一覧でまとめた帳票であり、決算整理の前に現状の財務状況を確認するための資料です。
この時点で、帳簿残高と実際の現金・預金残高が一致しているかをチェックし、一致しない場合は原因を特定して修正します。
また、未回収の売掛金や未払いの請求なども整理しておく必要があります。
決算整理仕訳の実施
次に、減価償却や棚卸、引当金の計上など、決算特有の仕訳処理を行う「決算整理仕訳」に移ります。
この工程では、収益・費用を適切な会計期間に割り振るための調整が行われます。
【主な決算整理仕訳の内容】
- 減価償却費の計上
- 未払費用・未収収益の調整
- 貸倒引当金の設定
- 棚卸資産の評価
これらの処理が完了したら、再度試算表を作成し、修正後の残高で最終確認を行います。
税額の計算
決算整理後の数値をもとに、法人税・消費税などの税額を計算します。
法人税は「法人所得税」「法人住民税」「法人事業税」などに分かれており、計算が非常に複雑になる傾向があります。
税務知識に自信がない場合は、税理士のサポートを受けるか、専用の会計ソフトを活用することでミスを防げます。
また、税額の計算は決算書の作成にも影響するため、慎重な作業が求められます。
決算書の作成と申告準備
最後に、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書などの決算書を正式に作成します。
作成が完了したら、経営者の確認を受け、必要に応じて監査役や取締役会、株主総会で承認を得ます。
承認された決算書は、法人税の確定申告書とともに税務署へ提出します。
このとき、電子申告(e-Tax)を利用すると、提出の手間を省略しつつスムーズな対応が可能です。
会計ソフトや専門家の活用で効率化
決算書作成には多くの工程があり、作業負担が大きく、ミスのリスクも高いです。
こうした課題を解消するために、会計ソフトや専門家のサポートを上手に取り入れることがポイントになります。
最近では、以下のようなクラウド会計ソフトが多くの企業に導入されています。
【代表的な会計ソフトのメリット】
会計ソフト |
主な特徴 |
勘定奉行クラウド |
自動仕訳・税理士とのデータ共有が可能。日々の入力から決算書作成まで一貫対応 |
freee会計 |
銀行口座やクレジットカードと連携可能。スタートアップに最適なUI |
マネーフォワード会計 |
AIによる仕訳補助機能あり。決算書の自動生成や月次管理にも強み |
これらのツールを使えば、帳簿作成から決算書の出力までを自動化でき、作業時間を大幅に短縮することが可能です。
また、税理士とリアルタイムでデータを共有できる機能もあり、確認や修正のやりとりがスムーズに進みます。
さらに、会計や税務に不安がある場合は、経験豊富な専門家に外注することでミスを防ぎ、法令違反のリスクも軽減できます。
経営資源が限られている中小企業こそ、コストとリスクを最小限に抑えるために、こうした仕組みの活用が不可欠です。
まとめ
本記事では、決算書の基本的な役割から始まり、財務三表の読み解き方、さらには実際の作成ステップに至るまで、幅広く解説してきました。
決算書は単なる帳簿ではなく、企業の経営状態を正確に把握し、次の一手を見極めるための「経営の羅針盤」です。
しかしながら、読み方や作成方法を誤れば、経営判断を誤るリスクも生じてしまいます。
特に中小企業やスタートアップにとっては、限られたリソースの中で正確な決算対応を行うのは容易ではありません。
だからこそ、信頼できる専門家の力を借りることが、安定経営の鍵となるのです。
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