2025.04.30
【初心者向け】販管費とは?販管費の基本と削減方法を解説
「販管費ってよく聞くけど、具体的に何の費用?」「どこまでが販管費に入るの?」という疑問を持つ経理担当者や経営者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、販管費(販売費及び一般管理費)の定義から内訳、決算書での位置、分析方法や削減のコツまで、初心者にもわかりやすく解説します。
経営分析やコスト管理に役立つ知識としてぜひご活用ください。
販管費とは何かを正しく理解しよう
企業が日々の経営活動を行ううえで、見落とされがちですが非常に重要な指標となるのが「販管費(販売費及び一般管理費)」です。
販管費は企業の収益力やコスト構造を読み解くカギとして、多くの経営者や経理担当者が注目しています。
この章では、まず「販管費とは何か?」を基本から丁寧に解説し、次に「販売費」と「一般管理費」の違いについて具体的に見ていきます。
会計や経理の初心者でも理解できるように、やさしい言葉でわかりやすくご紹介します。
販管費とは?定義と概要
「販管費(販売費及び一般管理費)」とは、企業が本業を行う際に必要となる間接的な費用のことを指します。
製品やサービスの販売活動にかかった費用である「販売費」と、会社全体の運営・管理にかかる費用である「一般管理費」を合わせた呼び方が「販管費」です。
この費用は、企業の利益を算出するための重要な経費区分として、損益計算書(P/L)において「売上総利益」の次に記載される項目です。
例えば、広告宣伝費や営業担当者の交通費、役員報酬やオフィスの家賃など、売上そのものを直接生むわけではないけれども、会社の活動を支えるために不可欠な支出が該当します。
販管費の合計額を管理することは、企業の利益率を改善するうえで非常に大切です。
無駄な販管費を見直すことで、営業利益を増やすことが可能になります。
つまり、販管費は単なる「コスト」ではなく、「経営改善のヒントが詰まった指標」として活用できるのです。
なお、販管費に含まれる費目は業種や会社規模によって多少異なりますが、どの企業にとっても損益構造を理解するための基礎的な要素として位置づけられています。
販売費と一般管理費の違い
「販管費」は2つの異なる費用で構成されていますが、それぞれの性質には明確な違いがあります。
まず、「販売費」とは、商品やサービスを販売するための活動に直接関連する費用です。
具体的には、以下のような費目が該当します。
- 広告宣伝費(チラシやWeb広告など)
- 販売手数料(代理店への支払いなど)
- 営業交通費(営業活動のための移動費)
- 販売員の給与や歩合給
これらは売上の増減に比例して発生することが多く、変動費の性格が強いことが特徴です。
一方、「一般管理費」は、企業全体の運営や管理を行うための費用であり、以下のような支出が含まれます。
- 役員報酬や本社スタッフの人件費
- 事務所の賃料や水道光熱費
- 通信費や消耗品費
- 会議費・リース料・減価償却費
これらは販売活動とは直接関係ないものの、企業の維持・管理に必要な固定的支出です。
つまり、販売費は「外向きの活動にかかる費用」、一般管理費は「内向きの組織運営にかかる費用」と整理するとわかりやすいでしょう。
また、販売費は月ごとの営業活動により変動しやすく、季節要因やキャンペーン実施などでも金額が大きく動く傾向にあります。
一方、一般管理費は変動が少なく、会社の固定費として毎月ほぼ一定額がかかる性質を持っています。
このように、販管費は「販売費」と「一般管理費」の2つに分けて理解することで、経費構造の可視化や改善ポイントの発見につながります。
経営者や経理担当者はこの区別を正確に把握し、戦略的な経営判断に活かすことが求められます。
販管費の内訳と勘定科目を徹底解説
企業の経費を正しく把握し、無駄な支出を抑えるためには、「販管費」の内訳を具体的に理解することが不可欠です。
販管費は大きく「販売費」と「一般管理費」に分かれており、それぞれに該当する勘定科目が細かく存在します。
この章では、販売費と一般管理費の主な項目と、それに紐づく勘定科目を整理して紹介していきます。
経理担当者はもちろん、これから会計を学ぶ方にも役立つ内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。
販売費に含まれる主な項目と勘定科目
「販売費」とは、商品やサービスの販売活動に直接関係する費用のことです。
営業活動を行ううえで欠かせない支出が多く、企業の売上に大きく関わってきます。
以下に、代表的な勘定科目とその内容をまとめた表を掲載します。
【主な販売費と勘定科目】
勘定科目 |
内容例 |
広告宣伝費 |
チラシ・パンフレット制作費、Web広告出稿費、テレビCM費用など |
販売手数料 |
販売代理店や委託業者への手数料、ECサイトの販売手数料 |
荷造運賃 |
商品の梱包資材費、配送料、宅配便費用 |
接待交際費 |
取引先との飲食費、贈答品、慶弔費など |
旅費交通費 |
営業活動での移動費、出張費、交通機関の利用料金 |
給与賃金 |
営業担当者や販売員の基本給・残業代・各種手当など |
福利厚生費 |
営業部門従業員向けの健康診断費やレクリエーション費用 |
通信費 |
営業用スマートフォンやタブレットの通信料 |
これらの項目は、売上を生むために必要不可欠な費用です。
しかし、放置しておくと不要な広告費や過剰な接待費などが積み重なり、利益を圧迫することもあります。
そのため、定期的に内訳を確認し、費用対効果をしっかり分析することが大切です。
販売費は変動費の性格が強いため、季節や営業戦略によって増減する傾向があります。
その動きを理解することで、より柔軟なコストコントロールが可能となるでしょう。
一般管理費に含まれる主な項目と勘定科目
「一般管理費」とは、会社の経営・運営を支えるための費用です。
直接的に売上を生み出す活動とは異なるものの、企業活動においてなくてはならない重要な支出です。
以下に、主な勘定科目とその具体例を整理してご紹介します。
【主な一般管理費と勘定科目】
勘定科目 |
内容例 |
役員報酬 |
社長や役員に対する給与・報酬 |
給与賃金 |
管理部門や事務職の社員への給料・賞与・各種手当 |
法定福利費 |
社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)会社負担分 |
福利厚生費 |
健康診断費、慶弔金、社員旅行、保養所利用費用など |
地代家賃 |
本社や事務所、倉庫などの賃料 |
水道光熱費 |
電気代、水道代、ガス代など |
通信費 |
電話料金、インターネット接続料 |
消耗品費 |
文房具やコピー用紙などの事務用品 |
減価償却費 |
パソコン、複合機、什器などの固定資産の費用按分 |
リース料 |
複合機や車両など、賃借している設備の使用料 |
諸会費 |
商工会議所や業界団体への会費 |
支払手数料 |
顧問税理士や社労士への報酬、振込手数料 |
一般管理費は、月々固定で発生する費用が多いのが特徴です。
そのため、支出の総額が膨らむと企業の財務体質を圧迫するリスクがあります。
特に、役員報酬や家賃、法定福利費などは簡単に削減できない固定費に該当します。
これらの費用は定期的に見直し、会社の規模や事業の成長度合いに応じた適正化が求められます。
一般管理費は「経営の裏側を支えるコスト」として、見落としがちですが、戦略的な経営判断の材料として非常に重要な指標です。
販管費はどうやって使う?分析と経営活用法
販管費は「経費」として分類されるだけではありません。
経営判断の精度を高めるための重要な分析指標としても機能します。
特に、売上に対する販管費の割合を示す「販売管理費比率」は、企業の効率性や健全性を測るバロメーターとなります。
この章では、販売管理費比率の具体的な使い方や、販管費の分析におけるポイントをわかりやすく解説します。
適切な分析を行うことで、コスト管理だけでなく収益構造の見直しや経営改善にもつながるため、ぜひチェックしてみてください。
販売管理費比率とは?計算式と使い方
「販売管理費比率(販管費率)」とは、売上高に対する販管費の割合を表す経営指標です。
企業がどれだけの費用を使って、売上をあげているのかを数値で確認することができます。
この比率は以下のように計算されます。
【販売管理費比率の計算式】
販売管理費比率(%)= 販売費及び一般管理費 ÷ 売上高 × 100
例えば、販管費が300万円、売上高が1,000万円の場合、販売管理費比率は「30%」となります。
この数値が高いということは、売上に対して販管費が多くかかっているということであり、経営効率が悪い可能性があります。
逆に、比率が低い場合は、効率的な費用運用によって利益率が高い経営ができていると評価されます。
ただし、業種によって平均的な比率は異なります。
例えば、製造業は約18%前後、小売業は約29%、情報通信業やサービス業は40%以上が目安です。
【業種別の平均的な販売管理費比率】
業種 |
平均販売管理費比率 |
製造業 |
約17.6% |
卸売業 |
約13.9% |
小売業 |
約28.9% |
情報通信業 |
約40.9% |
宿泊業・飲食サービス業 |
約76.2% |
このように、自社の販売管理費比率を業種平均や過去の実績と比較することで、経営の効率性を客観的に評価することができます。
経営判断や戦略立案の材料として、販管費比率の定期的な確認は欠かせません。
販管費の分析ポイント
販管費の分析を通して、どの部分に無駄があるのか、またどこに適正な投資をしているのかを把握することが可能になります。
販管費分析における主な視点は、以下の3つです。
① 時系列比較でトレンドを把握する
月次や年次での販管費の推移を確認することで、コストの増減や傾向を視覚的に把握できます。
例えば、「今期の販管費が急に増えた場合、その要因は広告費の増加か?人件費の上昇か?」といった問いに対して、明確な答えが見えてくるのです。
過去データとの比較は、費用構造の変化を捉える重要な手段です。
② 業界平均との比較で立ち位置を確認
自社の販管費比率が、同業他社と比べて高いのか低いのかを比較することで、業界内での競争力や効率性の立ち位置が明確になります。
もし他社と比べて比率が高ければ、無駄な支出がある可能性があるため、内訳を深堀りして見直す必要があります。
反対に、低すぎる場合には、必要な投資(広告宣伝や人材育成)を怠っている恐れもあるため注意が必要です。
③ 内訳別に分析して改善のヒントを得る
販管費は「販売費」と「一般管理費」に分けられるため、それぞれの内訳を詳しく見ていくことが重要です。
以下のような視点で分析することで、具体的な改善施策につながります。
- 広告宣伝費が過大になっていないか?
- 福利厚生費の内容は妥当か?
- オフィスの賃料は適正か?
- 出張費や交通費は無駄がないか?
こうした内訳分析を行うことで、削減可能なコストの発見や、将来的な投資配分の見直しが可能となります。
また、販管費に占める「人件費」や「固定費」の割合を把握することで、構造的なコスト改善にもつながる視点を得ることができます。
販管費を削減するための実践的な方法
販管費は企業経営において欠かせない費用でありながら、利益率を大きく左右する要素でもあります。
業績が伸び悩む時期やコスト体質を見直したい局面では、販管費の適正化が経営改善の重要な第一歩になります。
とはいえ、やみくもな経費削減は、かえって業務効率の低下や社員のモチベーション喪失を招きかねません。
そこでこの章では、「人件費」「オフィス費」「広告費」「旅費交通費」など、見直しやすく効果の出やすい項目に絞って、実践的な削減方法をご紹介します。
ポイントは、削るべきところと、投資すべきところをしっかり見極めることです。
人件費やオフィスコストの適正化
販管費の中でも、人件費とオフィス関連費は特に大きな割合を占める固定費です。
そのため、ここを見直すことは、企業全体の費用構造に大きなインパクトを与えます。
【人件費の適正化】
人件費は企業にとって最も重要な支出のひとつであり、単純にカットするのではなく、「効率的に使う」ことが鍵となります。
以下のような対策が有効です。
- 業務フローの見直しによって、不要な作業や重複業務を削減する
- RPA(業務自動化)や会計システム導入で、人的コストを下げる
- 残業時間の管理と見直しによる労働時間の最適化
特に、会計や経費精算などルーティン作業が多い部門では、クラウド会計ソフトや経費精算
システムの導入で大幅な時間短縮と人件費の圧縮が期待できます。
ただし、過剰な削減は社員の不満を招く可能性があるため、業務改善と生産性向上をセットで進めることが重要です。
【オフィスコストの見直し】
テレワークの普及により、オフィススペースの見直しは多くの企業で関心を集めています。
以下のようなアプローチが代表的です。
- 社員の勤務実態に応じてフリーアドレス制やシェアオフィスの導入
- 賃料の安いエリアへの移転またはオフィスの縮小
- 電気・水道・ネット回線などインフラ契約の最適化
特に、立地にこだわる必要のないバックオフィス部門を郊外に移すことで、大幅な固定費削減につながる事例もあります。
無理のない範囲での見直しを継続的に行うことが、健全なコスト管理の第一歩です。
広告費・旅費の見直しで無駄をカット
販売促進や営業活動に必要な販管費も、費用対効果を正しく評価し、無駄を省くことで健全な経営に貢献できます。
広告宣伝費や旅費交通費は、工夫次第でスリム化できる項目です。
【広告費の最適化】
広告は「打てば売れる」ものではありません。
そのため、以下の点に注意しながら広告活動のPDCAを徹底することが求められます。
- ターゲット設定が適切かを再確認
- Web広告の費用対効果を定量的に分析
- 効果の薄い媒体はすぐに出稿を見直す
- 外注している場合は契約内容や運用コストの精査
例えば、紙媒体からデジタル広告に切り替えたことで、リード獲得単価が1/3になった事例も少なくありません。
広告費はただの出費ではなく「投資」でもあるため、常に「費用対効果の見える化」が大切です。
【旅費交通費の削減】
営業や出張の際にかかる交通費や宿泊費も、企業によっては大きな負担になっています。
以下のような工夫で、コストを削減しつつ業務の質を落とさずに対応できます。
- オンライン会議の導入で出張を減らす
- 交通手段の最適化(早割チケット、定期券の活用など)
- 法人向けの回数券・出張パックを導入
- 出張旅費規程を整備し、ルール化された運用を行う
特にWeb会議の活用は、移動時間の削減による業務効率の向上にも直結します。
また、全社員が同じルールのもとで申請・精算する仕組みを整えることで、透明性の高い経費管理が実現できます。
まとめ
本記事では、販管費の基本的な定義から、販売費・一般管理費の内訳や勘定科目、販管費比率を活用した分析方法、そして実践的なコスト削減方法までを網羅的に解説しました。
販管費は企業の経営状態を映し出す鏡とも言える重要な項目であり、適正な管理と活用が利益の最大化に直結します。
しかし、具体的にどこから見直すべきか、どの費用が過剰なのかといった判断は、企業ごとに異なるため、単独での判断は難しいという課題もあります。
そんな企業様に向けて、HTファイナンスは心強いパートナーになります。
HTファイナンスは、財務・会計に関する豊富な知識と30年以上の実績をもとに、企業の成長に応じた資金計画や経営改善のアドバイスを行っています。
販管費の見直しから、資金調達、経営基盤の強化まで、幅広いニーズに対応しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。