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勘定科目内訳明細書とは?作成の流れ・書き方・注意点をやさしく解説

法人税申告の際に必ず提出が求められる「勘定科目内訳明細書」。

「何を書けばいいの?」「どの勘定科目が対象?」「インボイス制度に対応してる?」と疑問を感じる方も多いはずです。

この記事では、初心者でもわかるように勘定科目内訳明細書の目的、作成手順、注意点までを徹底的に解説します。

 

勘定科目内訳明細書とは?まずは基本を押さえよう

決算を迎えるすべての法人が関係する「勘定科目内訳明細書」。

法人税の確定申告において、この書類は非常に重要な位置づけとなります。

はじめてこの言葉を聞いた方や、毎年作成しているけれどよく分からないという方もいるかもしれません。

ここでは、まず「勘定科目内訳明細書」が何のために必要なのか、どのような書類を対象にしているのかを丁寧に解説していきます。

 

正しく理解することで、税務署への対応や税務調査リスクの回避にもつながるため、ぜひ押さえておきましょう。

勘定科目内訳明細書の役割と提出義務

勘定科目内訳明細書とは、法人が決算書に記載した勘定科目ごとの詳細を記載するための補足資料です。

これは、法人税法施行規則第35条に基づき、法人税確定申告書に添付して税務署に提出することが義務付けられています。

この書類を提出する主な目的は、税務署が企業の取引内容を正確に把握し、申告内容が適切かどうかを確認することです。

例えば、貸借対照表に「売掛金」が記載されていた場合、それが「誰に対して、いくらの金額が未回収なのか」を明細として提出します。

提出のタイミングは、法人税の確定申告と同じく決算日から2か月以内(土日祝の場合は翌営業日)です。

申告期限の延長申請を行っている場合は、最大で3か月以内の提出が認められています。

また、税務署はこの内訳明細書を通じて、不自然な取引や損金算入に誤りがないか、帳簿との整合性に問題がないかを確認します。

そのため、適当に書いたり、抜け漏れがあると税務調査の対象になるリスクが高まる点にも注意が必要です。

対象となる勘定科目と16の内訳書一覧

勘定科目内訳明細書は、すべての勘定科目について提出が求められるわけではありません。

あくまで、税務署が特に注目する資産・負債・損益に関連する勘定科目に対して、その内訳を提出する形となっています。

国税庁の定める様式では、以下の16種類の内訳書が用意されています。

 

【16種類の勘定科目内訳書一覧】

カテゴリ

内訳書の名称

主な記載内容

資産の部

預貯金等の内訳書

銀行名、支店名、口座番号、期末残高など

 

受取手形の内訳書

振出人、支払期日、金額、割引先銀行など

 

売掛金(未収入金)の内訳書

相手先名、所在地、期末残高など

 

仮払金(前渡金)の内訳書

相手先名、関係性、残高など

 

貸付金及び受取利息の内訳書

利率、担保内容、受取利息など

 

棚卸資産の内訳書

品目、数量、単価、期末残高など

 

有価証券の内訳書

銘柄、種類、取得・売却状況など

 

固定資産(土地等)の内訳書

所在地、用途、面積、異動明細など

負債の部

支払手形の内訳書

支払先、支払期日、金額など

 

買掛金(未払金・未払費用)の内訳書

相手先名、科目別期末残高など

 

仮受金(前受金・預り金)の内訳書

相手先名、法人関係、期末残高など

 

源泉所得税預り金の内訳書

所得種類、支払年月、期末残高など

 

借入金及び支払利子の内訳書

借入先名、利率、支払利子額など

特殊な取引

土地の売上高等の内訳書

取引先、面積、金額、取得年など

 

売上高等の事業所別内訳書

事業所名、売上、従業員数など

 

役員報酬手当等及び人件費の内訳書

氏名、役職、支払額など

 

地代家賃等の内訳書・工業所有権等の使用料の内訳書

使用料、契約内容、期間など

 

雑益・雑損失等の内訳書

相手先、金額、取引内容など

 

上記の内訳書は、該当する取引がある場合にのみ提出が必要です。

例えば「貸付金」が決算書に計上されていない会社であれば、その内訳書は作成不要ということになります。

ただし、金額や相手先によっては記載の有無が変わるため、詳細な基準も押さえておくと安心です。

勘定科目内訳明細書の書き方と実務の流れ

勘定科目内訳明細書は、法人税の確定申告において非常に重要な書類ですが、記載内容が多岐にわたるため、初めての方にとってはハードルが高く感じられるかもしれません。

しかし、作成のポイントやルールを正しく理解しておくことで、スムーズに対応できるようになります。

 

ここでは、勘定科目内訳明細書の基本的な記載内容や構成、そして科目ごとの代表的な記入例を紹介したうえで、よくあるミスとその防止策まで詳しく解説します。

記載内容の基本構成と科目別の記入例

勘定科目内訳明細書は、各勘定科目について、「誰に対する取引なのか」「いくらの金額なのか」「期末残高はいくらなのか」といった詳細な内訳を記載するのが基本です。

 

各内訳書には、「相手先名称」「所在地」「取引内容」「金額」「残高」などの記入欄が設けられており、該当する取引について正確に記載する必要があります。

以下に代表的な内訳書の記入例をまとめます。

 

【主な内訳書の記載例一覧】

内訳書の種類

主な記載項目

特徴と注意点

売掛金の内訳書

科目、相手先名・所在地、期末現在高

期末残高が50万円以上の取引先を個別記載(5件未満の場合は多い順に5口)

仮払金・前渡金の内訳書

相手先名、所在地、法人・代表者との関係、金額

役員・関係会社の場合は金額に関わらず必ず記載

借入金及び支払利子の内訳書

借入先名、所在地、利率、支払利子額、担保の内容等

利子の支払が3万円以上あれば、残高ゼロでも記載が必要

有価証券の内訳書

種類・銘柄、期末数量、期末金額、異動の内容と日付

期中に異動があった場合、期末残高ゼロでも記載義務あり

棚卸資産の内訳書

品目、数量、単価、期末現在高

品目が多い場合はグルーピング可。評価替えがある場合は摘要欄に記載

支払手形の内訳書

支払先、金額、支払期日、銀行名等

100万円以上または5口未満の場合は明細記載が必要

 

科目によっては記載義務の発生条件が異なるため、様式に応じた判断が求められます。

また、記載件数が100件を超える場合は、「金額の多い順に100件のみを記載する」、または「支店・事業所別にまとめて記載する」といった簡素化ルールも活用できます。

ミスを防ぐポイントとチェックリスト

勘定科目内訳明細書の作成においては、記載内容の正確さがもっとも重要です。

とくに、貸借対照表や損益計算書と一致しない数字があると、税務署からの指摘対象となるリスクが高まります。

以下に、作成時に気をつけるべきポイントをチェックリスト形式でまとめました。

 

【ミスを防ぐチェックリスト】

  • 勘定科目ごとに期末残高と決算書の数字が一致しているか

  • 相手先名や所在地に誤字・脱字がないか

  • 記載が必要な取引(50万円以上、100万円以上、関係会社など)を漏らしていないか

  • 名義人が法人代表者などの場合は摘要欄に明記しているか

  • インボイス制度の対象である場合、登録番号を記載しているか

  • 会計ソフトの出力内容をそのまま転記せず、最終チェックを行ったか

こうした点を意識するだけで、記載ミスや記入漏れを大幅に減らすことができます。

なお、会計ソフトを使用している場合は、仕訳情報から内訳明細書を自動生成できるため、転記ミスが起こりにくくなるのも大きなメリットです。

手作業での記入には特に注意が必要なため、複数名での確認体制を取るのも有効です。

制度改正・インボイス制度対応と勘定科目内訳明細書の変更点

2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、企業の会計実務に大きな影響を及ぼしました。

これに伴い、勘定科目内訳明細書の様式や記載ルールにも変更が加えられています。

また、近年は電子申告の普及や業務効率化の流れを受けて、様式の簡素化も進められているため、制度改正への正確な対応がますます重要となっています。

 

ここでは、最新の制度変更内容や勘定科目内訳明細書の簡素化対応について、具体的にわかりやすく解説していきます。

2023年以降のインボイス制度による記載項目の追加

インボイス制度の導入により、2024年3月1日以後に終了する事業年度からは、勘定科目内訳明細書の一部様式に新たな記載項目が追加されました。

特に影響が大きいのが、以下の12種類の内訳書です。

 

【登録番号の記載が求められる内訳書一覧】

対象内訳書

新たに追加された記載項目

受取手形、売掛金、仮払金、貸付金、固定資産など計12項目

インボイス発行事業者の「登録番号」欄

 

これらの内訳書には、「T」から始まる登録番号(インボイス発行事業者番号)を記載する欄が追加されました。

この登録番号を記載することで、名称・所在地の記載を省略することも可能となっています。

ただし、省略する場合は必ず正確な登録番号を記載することが前提となるため、事前に相手先の登録番号を確認しておくことが求められます。

また、制度対応を怠ると、仕入税額控除が否認されるリスクや、税務署からの問い合わせにつながる可能性もあるため注意が必要です。

 

今後、インボイス制度に対応した書式管理が標準化されていくと考えられるため、最新の様式を常に確認する姿勢が大切です。

様式変更・簡素化の流れと今後の対応

勘定科目内訳明細書の記載内容は、2019年の税制改正をきっかけに一部簡素化が図られました。

この簡素化は、記載負担の軽減と電子申告の円滑化を目的とした改正であり、特に記載件数が多くなる中小企業や個人事業主にとって有益な内容です。

以下に、簡素化された主な内容をまとめます。

 

【勘定科目内訳明細書の簡素化ポイント】

  • 記載件数が100件を超える場合の柔軟な対応

    • 金額の多い順に上位100件のみ記載してもOK

    • あるいは、支店や事業所別にまとめて記載する形式でも対応可

  • 一部記載項目の削除・統合

    • 仮払金や仮受金内訳書の「取引内容欄」が「摘要欄」に変更され、自由記述が可能に

    • 貸付金や借入金内訳書の「貸付理由・借入理由」欄は削除

    • 棚卸資産では、「期末棚卸の方法」欄が削除

    • 売上高等の事業所別内訳書では、「使用建物の延面積」欄が削除

これにより、実務において必要な情報に集中しやすくなった一方で、記載ルールの理解と分類能力がより重要になっています。

【今後の実務対応のポイント】

  • 常に最新の様式を確認する

    • 国税庁の公式ウェブサイトを定期的にチェックし、更新されたテンプレートをダウンロードして使用する

  • 会計ソフトのアップデートを活用する

    • 弥生会計やfreeeなどのクラウド会計ソフトは、制度改正に自動で対応する仕組みが整っているため、記載ミスや記入漏れの防止に役立ちます

  • 社内ルールの見直し

    • 登録番号の取得・管理方法や、インボイス発行事業者かどうかの判定基準を明確にし、関係者で情報を共有しておくことが重要です

簡素化によって書類作成の効率は上がる一方で、「知らなかった」では済まされないミスが生まれやすくなる点にも注意が必要です。

今後も法令改正の動向に注目し、経理業務の質を維持しながら、柔軟かつ確実な対応を心がけることが求められます。

まとめ

本記事では、勘定科目内訳明細書の基礎知識から作成方法、記入例、制度改正への対応ポイントまでを詳しく解説しました。

勘定科目内訳明細書は、法人税申告において欠かせない重要書類であり、税務署との信頼関係を築くうえでも正確な作成が求められます。

インボイス制度の導入や様式の簡素化など、会計・税務を取り巻く環境は日々変化しています。

そのため、自社に必要な対応を見極めるためには、最新情報の収集と専門的な視点が不可欠です。

こうしたお悩みや業務の複雑化に対し、HTファイナンスは確かな専門知識と経験をもってサポートします。

HTファイナンスは、法人企業向けに最適な資金調達支援を行い、経営の安定と成長をサポートしてまいりました。

30年以上の実績に裏付けられた信頼と提案力で、御社の課題に的確に対応いたします。

勘定科目内訳明細書に関することはもちろん、資金繰りや融資に関するお悩みも、ぜひお気軽にHTファイナンスへご相談ください。

まずは借入枠診断からお申込み

 

監修者 三坂大作
筆者紹介 ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役三坂 大作(ミサカ ダイサク)

経歴
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1989年 同行ニューヨーク支店勤務
1992年 三菱銀行退社、資金調達の専門家として独立
資格・認定
経営革新等支援機関:認定支援機関ID:1078130011
ヒューマントラスト株式会社:資格者 三坂大作
貸金業登録番号:東京都知事(1)第31997号
ヒューマントラスト株式会社:事業名 HTファイナンス
貸金業務取扱主任者:資格者 三坂大作
資金調達の専門家として企業の成長を支援
資金調達の専門家として長年にわたり企業の成長をサポートしてきました。東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し、国内業務を経験した後、1989年にニューヨーク支店へ赴任し、国際金融業務に従事。これまで培ってきた金融知識とグローバルな視点を活かし、経営者の力になることを使命として1992年に独立。以来、資金調達や財務戦略のプロフェッショナルとして、多くの企業の財務基盤強化を支援しています。 現在は、ヒューマントラスト株式会社の統括責任者・取締役として、企業の資金調達、ファイナンス事業、個人事業主向けファクタリング、経営コンサルティングなど、多岐にわたる事業を展開。特に、経営革新等支援機関(認定支援機関ID:1078130011)として、企業の持続的成長を実現するための財務戦略策定や資金調達のアドバイスを提供しています。また、東京都知事からの貸金業登録(登録番号:東京都知事(1)第31997号)を受け、適正な金融サービスの提供にも力を注いでいます。
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