2025.06.03
手形取立とは?手形の現金化による資金調達のメリット・デメリットも!
企業経営において、資金繰りが健全であるかどうかは非常に重要なポイントです。特に、売掛金の回収というのは資金繰りに直結します。取引先から売掛金を回収できず、資金繰りが悪くなった場合には、手形の現金化が検討される場合もあるでしょう。手形の現金化はまず、手形取立という手続きから始まります。
本記事では、手形取立の基本的な仕組みから具体的な手続き方法、メリット・デメリットまで、役に立つ情報を詳しく解説します。
手形取立とは
手形取立について理解するためには、まず手形の基本的な概念を把握することが重要です。手形は、企業間の商取引において、代金の支払いや受け取りに利用される支払手段の一つです。
手形の基本
手形には、大きく分けて約束手形と為替手形の2種類があります。約束手形は、振出人が受取人または所持人に対し、一定の金額を支払うことを約束する証書です。企業間取引では、最も一般的に使用される手形形態です。
為替手形は、振出人が第三者(支払人)に対して、受取人または所持人に一定の金額を支払うよう指図する証書です。国際取引などで利用されることが多い形態です。
企業の会計上、自社が支払う側の手形は支払手形、受け取る側の手形は受取手形として計上されます。手形は受け取っただけでは現金化されないため、銀行を通じて取立てを行う必要があります。
手形取立とは
手形取立とは、取引先から受け取った手形(受取手形)を銀行に持ち込み、銀行を通じて、手形の支払人(振出人)から代金を回収する手続きのことを指します。つまり、紙の証書である手形を現金に換える作業です。
手形には支払期日が記載されており、その期日に銀行を通じて現金化されます。手形取立は自社の取引銀行に依頼し、銀行が代行して支払銀行から代金を回収してくれる仕組みになっています。
手形取立の最大の特徴は、遠隔地での取引でも資金回収がスムーズに行える点です。手形振出人と受取人が異なる銀行や地域にいる場合でも、銀行間のネットワークを通じて代金回収が可能となります。
手形取立における関係者
手形取立には、主に以下の関係者が関わります。まず、振出人(支払人)は手形を発行する企業で、手形金額を支払う義務があります。受取人は、取引の対価として手形を受け取る企業で、手形を銀行に持ち込んで取立を依頼します。
取立銀行は、受取人から手形取立の依頼を受け、支払銀行に取立の手続きを行う銀行です。支払銀行は、振出人の口座がある銀行で、手形の決済を行います。
これらの関係者が連携することで、企業間の代金決済が円滑に行われる仕組みとなっています。企業は取引先と手形の支払サイト(期間)を事前に確認しておくことが重要です。
手形取立の手続きの流れ
手形取立の具体的な手続き方法を理解することで、スムーズな資金回収が可能になります。
手形取立の流れ
手形取立の基本的な流れは、次のようになります。まず、取引先から受け取った手形の内容を確認します。手形には金額、支払期日、振出人、振出日などの重要な情報が記載されているため、記載内容に不備がないか必ず確認しましょう。
次に、自社の取引銀行に手形を持ち込みます。このとき、手形の裏面に取立委任裏書をします。取立委任裏書とは、銀行に手形取立を依頼するための裏書で、通常は「取立委任」または「取立のため」という文言と共に会社名と代表者印を押印します。
銀行に手形を持ち込む際には、取立依頼書も併せて提出します。銀行によって書類の様式が異なるため、事前に確認しておくことが望ましいでしょう。
銀行は、受け付けた手形を支払銀行に回付し、支払期日に振出人の口座から資金を引き落とします。その後、取立銀行を通じて、受取人の口座に入金される流れとなります。
取立銀行と支払銀行が同じ場合と異なる場合
取立銀行と支払銀行が同じ場合は、銀行内部で処理が完結するため、比較的スムーズに手続きが進みます。振出人と受取人が同じ銀行を使用している場合は、銀行内の口座間振替で決済されるため、入金までの時間も短くなります。
一方、取立銀行と支払銀行が異なる場合は、手形交換所という機関を介して手形の取立が行われます。手形交換所は、銀行間で手形の授受と決済を行うための機関で、全国の主要都市に設置されています。
異なる銀行間での取立ては、手形交換所のスケジュールに従って処理されるため、同一銀行内での取立てよりも時間がかかることを考慮に入れておく必要があります。通常、支払期日から入金までに2〜3営業日程度を要します。
手形取立に必要な準備
手形取立に必要な書類としては、まず手形本体があります。手形には金額、支払期日、振出人の名称・住所・押印、受取人名など、必要事項が全て記載されていることを確認しましょう。
次に取立依頼書です。これは銀行所定の様式で、手形の明細や入金口座情報などを記入します。通常は銀行のカウンターで入手できますが、オンラインバンキングを利用している場合は、ウェブサイトからダウンロードできることもあります。
また、取立委任裏書も重要です。手形の裏面に「取立委任」または「取立のため」と記載し、会社名と代表者印を押印します。この裏書がないと、銀行は取立手続きを行えないため、裏書の方法を事前に確認しておくことをおすすめします。
さらに、銀行によっては、本人確認書類(銀行印や代表者印など)が必要な場合もあります。取引銀行のルールに従って適切に準備しましょう。
手形取立のタイミングに関する注意点
手形取立を行う際には、適切なタイミングで手続きを行うことが重要です。また、いくつかの注意点を把握しておくことで、スムーズな資金回収が可能になります。
適切な手形取立のタイミング
手形取立の基本的なタイミングは、手形に記載された支払期日(満期日)当日、またはその前後の期間です。銀行によって取立依頼の受付期間が異なりますが、一般的には、支払期日の3営業日前から受け付けているケースが多いでしょう。
支払期日前に取立を依頼することを、「期日前取立」といいます。これにより、支払期日当日に、確実に取立手続きが行われるよう準備することができます。支払期日が休日の場合は翌営業日が実際の支払日となるため、カレンダーを確認しておくことが大切です。
また、支払期日を過ぎてからの取立依頼は、「期日後取立」と呼ばれます。一般的に、支払期日から3営業日以内であれば受け付けてもらえますが、銀行によってルールが異なるため、事前に確認が必要です。
手形取立の手数料
手形取立には、銀行所定の手数料がかかります。手数料は銀行によって異なりますが、一般的には、以下のような区分で設定されています。
同一店内取立(同じ銀行の同じ支店内での取立)では、比較的安価な手数料が設定されています。次に、同一行内取立(同じ銀行の異なる支店間での取立)、他行宛取立(異なる銀行間での取立)の順に、手数料が高くなる傾向があります。
また、手形金額によって手数料が変動する場合もあります。事前に取引銀行の手数料体系を確認し、コスト計算に含めておくことが重要です。一般的な手数料の相場は、同一店内で100円〜300円程度、他行宛で500円〜1,000円程度となっていますが、銀行によって異なります。
不渡りリスクへの対処
手形取引において最も注意すべきリスクは、不渡りです。不渡りとは、支払期日に振出人の口座に十分な資金がなく、手形の支払いができない状態を指します。不渡りが発生すると、受取人は予定していた資金を回収できないため、資金繰りに影響が出る可能性があります。
不渡りが発生した場合、銀行から不渡り通知が届きます。この通知を受けたら、まずは振出人に連絡を取り、支払いの意思と能力を確認することが大切です。場合によっては、分割払いや支払期日の延長などの交渉を行います。
同一の振出人が、6か月以内に2回の不渡りを出すと、銀行取引停止処分となります。これは、信用情報として広く共有されるため、企業の信用に大きな影響を与えます。新規取引先との取引では、取引先の信用情報を事前に調査することでリスクを軽減できます。
手形の現金化のメリット
手形の現金化には、企業の資金管理においてさまざまなメリットがあります。ここでは、手形を現金化する主なメリットについて解説します。
資金が確実に回収できる
手形を現金化する最大のメリットは、銀行という信頼できる第三者を介して資金回収が行われることです。銀行が仲介することで、支払期日に確実に資金が回収される仕組みが整っています。
特に、遠隔地の取引先との決済において、直接現金を受け取りに行く必要がなく、銀行のネットワークを通じて全国どこでも資金回収が可能です。これにより、地理的な制約を受けることなく取引を拡大できます。
銀行の手形交換制度を利用することで、支払い状況が明確に記録される点も大きなメリットです。万が一不渡りが発生した場合でも、証拠として記録が残るため、法的な対応がしやすくなります。
計画的な資金繰りが可能
手形には、具体的な支払期日が明記されているため、いつ資金が入金されるかが明確です。これにより、企業は将来の入金予定を正確に把握し、計画的な資金繰りが可能になります。
例えば、3か月後に大きな支出が予定されている場合、その時期に合わせて手形の支払期日を設定することで、必要なタイミングで資金を確保できます。このように、手形を現金化することで、資金繰り計画の精度が高まります。
また、手形の受け取りと取立のスケジュールを管理することで、入金のタイミングを細かく制御できるため、資金効率の向上にもつながります。特に、季節的な変動が大きいビジネスでは、このような柔軟な資金管理が重要です。
手形の現金化のデメリット
手形を現金化することには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。これらを理解することで、より効果的な資金管理が可能になります。
資金化まで時間がかかる
最も大きなデメリットは、手形を受け取ってから実際に現金化されるまでに時間がかかることです。通常、手形の支払期日は、取引日から1〜6か月後に設定されるため、即座に資金化することができません。
特に、資金繰りが厳しい企業にとっては、この資金化までの待機期間が経営上の大きな課題となることがあります。急な資金需要が発生した場合に対応しづらい点は、手形取引の大きなデメリットといえるでしょう。
また、現金化の手続き自体にも数日を要するため、支払期日が来ても即日入金されるわけではありません。通常、支払期日から実際に口座に入金されるまでに、2〜3営業日程度かかることを考慮に入れた資金計画が必要です。
不渡りリスクがある
手形取引における最大のリスクは、不渡りです。手形の振出人が支払期日に支払いができない状態になると、予定していた資金回収ができなくなります。これは、企業の資金繰りに大きな影響を与える可能性があります。
不渡りが発生した場合、債権回収のための追加的な労力やコストが発生します。場合によっては、法的手続きが必要になることもあり、時間と費用の両面で大きな負担となります。
また、取引先の経営状況が急激に悪化した場合、手形発行後から支払期日までの間に、不渡りリスクが高まることもあります。このため、継続的に取引先の経営状況をモニタリングする必要があり、これも間接的なコストとなります。
手数料や管理コストがかかる
手形取立には、銀行手数料がかかります。手形1枚あたり数百円から千円程度の手数料が発生するため、取引量が多い企業にとっては、年間の手数料総額が無視できない金額になることがあります。
さらに、手形の保管や管理には細心の注意が必要です。手形は有価証券であり、紛失や盗難のリスクがあります。適切な管理体制の構築や保管場所の確保など、間接的なコストも考慮する必要があります。
また、手形管理のための人的リソースも必要です。支払期日の管理、取立手続きの実施、不渡り発生時の対応など、担当者の業務負担は小さくありません。特に中小企業では、限られた人的リソースの中でこれらの業務を行う必要があり、効率面での課題となることがあります。
手形取立に関連する会計処理
手形取立に関連する適切な会計処理を行うことは、企業の財務状況を正確に把握する上で非常に重要です。ここでは、手形取引における基本的な仕訳方法を解説します。
手形受取時の仕訳
取引先から手形を受け取った時点では、受取手形として資産計上します。例えば、100万円の売掛金に対して手形を受け取った場合、以下のような仕訳となります。
借方 | 受取手形 1,000,000円 |
貸方 | 売掛金 1,000,000円 |
この仕訳により、売掛金が受取手形に変わったことを表します。ただし、この時点では実際の現金化はされていないため、受取手形と売掛金は区別して管理することが重要です。売掛金と異なり、受取手形は有価証券として特別な管理が必要となります。
なお、手形には利息がつかないため、長期の手形の場合は金利分を考慮して割引計算を行うケースもありますが、通常の商取引では額面通りの計上が一般的です。
手形取立時の仕訳
手形の支払期日に取立が行われ、入金された時点では、受取手形が現金化されたことを表す仕訳を行います。例えば、100万円の受取手形が取立てられた場合、以下のような仕訳となります。
借方 | 当座預金 999,500円 |
手形取立手数料 500円 | |
貸方 | 受取手形 1,000,000円 |
この例では、手形取立手数料として500円が差し引かれているケースを想定しています。実際の手数料は、銀行や取立条件によって異なります。手数料は適切な勘定科目で費用計上することが会計処理上のポイントです。
また、取立依頼を行った時点と実際に入金される時点にタイムラグがある場合は、一時的に「手形取立中」などの勘定科目を使用することもあります。これにより、取立中の手形の状況を明確に把握できます。
不渡り発生時の仕訳
不渡りが発生した場合は、受取手形から不渡手形へと科目を変更します。例えば、100万円の受取手形が不渡りになった場合、以下のような仕訳となります。
借方 | 不渡手形 1,000,000円 |
貸方 | 受取手形 1,000,000円 |
不渡手形は回収が不確実な債権となるため、回収可能性を検討する必要があります。回収の見込みがない場合は貸倒引当金を計上し、最終的に回収不能と判断された場合は、貸倒損失として処理します。
不渡り発生時には速やかに会計処理を行い、財務状況への影響を正確に把握することが重要です。また、税務上の処理についても、税理士等の専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
手形取立は、企業間取引における重要な資金回収手段です。本記事では、手形取立の基本的な仕組みから具体的な手続き方法、会計処理、そして最新の電子化動向まで幅広く解説しました。
手形取引には、計画的な資金繰りが可能になるメリットがある一方で、資金化までに時間がかかる点や、不渡りリスクといったデメリットも存在します。また、近年は紙の手形から電子記録債権への移行が進んでおり、今後はより効率的で安全な決済手段への対応が求められています。企業の財務担当者は、これらの動向を踏まえつつ、自社に最適な資金回収方法を選択していくことが重要です。
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