2025.05.30
証書貸付とは?その他の貸付方法との違いを解説!
この記事では、証書貸付の基本的な仕組みや特徴、他の貸付方法との違いをわかりやすく解説します。さらに、メリット・デメリットや審査に通るためのポイントなど、資金調達を検討している方に役立つ情報をお届けします。
資金調達をする上で、銀行融資や手形割引など多様な手段が存在する中、証書貸付は特に長期的な資金需要に対応しやすいという強みがあります。とはいえ、証書貸付の利用には審査基準や借入条件など押さえておきたいポイントがいくつもあります。
ここでは、その仕組みを正しく理解し、自社の資金状況や経営戦略に合った調達方法を検討しやすいように、基本的な知識から実際の審査に通るためのアドバイスまでをまとめました。
- 証書貸付の解説
- 証書貸付以外の貸付
- 証書貸付のメリットとデメリット
- 証書貸付の審査に通るためのポイント
を解説していきます。ぜひ最後までお読みください。
証書貸付とは
証書貸付とは、借入時に契約書を取り交わして資金を借り受ける方式で、長期資金の調達にもよく利用されます。
証書貸付は、金融機関と正式な貸借契約を結ぶため、書面での手続きが中心となる融資形態です。契約書には借入額や返済方法、金利などの詳細が明記され、その内容に基づいて資金を受け取ります。取り交わす契約書は法的拘束力があるため、借り手と貸し手の双方が安心して利用できる仕組みとして利用されています。
長期の資金ニーズがある企業にとって、証書貸付は特に有効な選択肢となり得ます。例えば、新商品開発や設備投資などの大型プロジェクトの実施には、一定の時間をかけた資金調達と安定した返済計画が必要です。その点、証書貸付は返済期間を比較的長く設定しやすい点が特徴です。
また、証書貸付はデットファイナンスの一種でもあり、企業の自己資本を活用したエクイティファイナンスよりも経営権の分散を防ぎやすいという利点があります。しかし、審査基準が厳格になる傾向があるため、事前に返済能力や事業計画をしっかりアピールすることが求められます。
ここでいう証書とは、「金銭消費貸借契約書」のことです。
金融消費貸借契約書には、
- 契約日
- 借入金額、借入利率
- 遅延損害金
- 返済方法と返済期間
などの融資内容が記載されており、借入申込者の署名や実印を押印することで契約が成立します。
証書貸付の特徴
証書貸付には、他の貸付方法と異なるいくつかの特徴があります。
証書貸付は、中長期的に安定した資金調達を行いたい場合に適した融資形式です。返済期間中に利息と元本を分割して返済する形となるため、急な資金負担を抑えながら投資回収を計画できます。審査が通れば比較的低金利で利用できる可能性があり、公的金融機関などからも優遇制度を受けられることもメリットの一つです。
ただし、借入期間が長期にわたる分、金融機関側のリスクが大きくなるため、審査段階では企業の信用力や将来のキャッシュフロー見通しが厳しくチェックされます。業績が不安定な場合や、計画の裏付けが甘い場合は融資を断られるリスクもある点に注意が必要です。
次に、具体的な特徴に関してさらに詳しく見ていきましょう。
証書貸付には以下の3点の特徴があります。
- 元金均等返済が多い
- 長期運転資金や設備資金などの資金調達に使われることが多い
- 比較的審査が厳しい
1,元金均等返済が多い
証書貸付の返済方法として多いのが「元金均等返済」という方法です。
元金均等返済とは「元金の返済額は一定かつ、利息金額が返済を重ねるごとに減っていく」という返済方法のことで具体的には以下のような返済方法になります。
6,000万円の借入を5年(60ヶ月)で返済する契約の場合、
1ヶ月の元金返済額=6,000万円/60ヶ月=100万円
1ヶ月の返済額=100万円+利息
という形になります。
利息は借入残高の減少とともに小さくなるので、徐々に毎月の返済額も減っていきます。
一般的に銀行などの金融機関の多くは元金均等返済を採用しています。
ですが「証書貸付」は契約書による融資なので、銀行や利用者の意向により返済方法を変更することも可能です。
2,長期運転資金や設備資金などの資金調達に使われることが多い
証書貸付は、返済期間の設定が長期にわたるケースも多いため、運転資金や設備投資などの大型資金需要に適しています。企業の成長期における人件費や生産設備の拡充など、初期コストが重くのしかかる場面で安定的な資金を確保できる点が大きな魅力です。
例えば、工場の拡張や大規模な機械設備の導入には、まとまった費用が必要になります。こうした場面で証書貸付を利用すれば、事業計画に合わせた返済期間を設定しながら、必要な資金を確保できます。
長期借入を行うことで、短期借入のように返済期限に追われるリスクを下げることができます。ただし、金利コストが長期間に及ぶ点を考慮し、返済に無理のない計画を立てることが重要です。
3,比較的審査が厳しい
借入期間が長くなれば、金融機関にとってはリスク期間が延びるということになります。そのため、証書貸付の審査では、企業の財務状況や経営歴、今後の売上見通しなどが非常に厳格に評価される傾向があります。
長期的な返済能力が求められるため、連続した赤字決算や資金繰りの不透明さがある企業にとってはハードルが高くなるでしょう。逆に、安定した売上や利益があり、経営が安定している企業ほど審査を通過しやすいといえます。
さらに、金融機関は担保や保証の有無も重視します。十分な担保が用意できる場合や信用保証協会などの保証を受けられる場合は、審査の通過率が高まる場合があります。
銀行の審査は「長期間安定して返済できる会社なのかどうか」を厳しくチェックせざるを得ないのです。
長期間的な企業の安定性の判断を要するため、
- 事業年数
- 自己資本(どのくらいの資金があるのか、どういうお金の流れがあるのか)
- 過去の実績
などを厳重にチェックします。
実際の審査事例(NG例、通過例)
審査で通過しやすいケースとしては、安定した売上源や黒字経営が数年続いており、担保や保証人も整っている状況が挙げられます。そういった企業は金融機関から見てもリスクが低く、長期返済に耐えうると判断されるでしょう。
一方で、連続赤字や返済資金の裏付けが不十分な場合、審査通過は難しくなります。事業計画に具体性が欠けていたり、実績の乏しいスタートアップ企業の場合は特に注意が必要です。
ただし、スタートアップ企業でも将来性を評価してもらえれば融資を受けられる場合もあります。財務計画や事業コンセプトをしっかりとロジック化し、説得力のあるプレゼンを行うことが重要です。
貸付の種類
証書貸付の他にも、手形貸付などさまざまな貸付形態があります。それぞれ特徴が異なるため、資金ニーズに合わせた選択が必要です。
企業には短期的な運転資金が必要な場合もあれば、長期的な投資資金が必要な場合もあり、その目的によって最適な融資手段は変わります。証書貸付は主に長期資金に向いていますが、手形貸付や当座貸越、さらには手形割引などを組み合わせることで、キャッシュフローをより柔軟に管理することが可能です。
デットファイナンス以外にも、株式発行によるエクイティファイナンスや不動産・売掛債権を使ったアセットファイナンスなどの方法も存在します。しかし、返済責任や事業コントロールの度合いなど、それぞれの融資形態にはメリットとリスクがあります。ここでは代表的な貸付方法について、基本的な特徴をご紹介します。
貸付には以下の4つの種類があります。
- 証書貸付
- 手形貸付
- 手形割引
- 当座貸越
1,証書貸付
証書貸付とは、借主から金銭消費貸借契約書を差し入れさせて行う貸付のことです。
銀行融資や住宅ローン、ビジネスローンがこれにあたり、最もポピュラーな貸付方法といえるでしょう。
貸付期間が長期間となる場合は、一般的に不動産などなんらかの担保や保証人を設定することが多く、審査も厳しいという特徴があります。
一言で「審査が厳しい」と言っても、
プロパー融資 > 信用保証協会の保証付き融資 > ノンバンクのビジネスローンの順で審査の厳しさも異なります。
プロパー融資
銀行が利用会社へ直接融資を行う方法。
銀行が直接融資するため、返済困難となった場合には銀行が貸し倒れリスクを負います。
金利は低いですが、その分審査は融資の中でも最も厳しいといえるでしょう。
信用保証協会の保証付き融資
信用保証協会へ保証料を支払うことで、銀行から融資を受ける方法。
プロパー融資では、利用者が万が一返済不能になってしまった場合、銀行が貸し倒れリスクを負わなければなりません。
しかし、保証付き融資では、利用者が返済不能になってしまった場合でも、残債の80%~100%を信用保証協会が銀行へ代わりに支払ってくれるのです。
その後、利用者は長期間かけて残債分を信用保証協会へ返済していく形になります。
プロパー融資よりも貸し倒れリスクが低いため、審査もプロパー融資より通りやすいのが特徴です。
ノンバンクのビジネスローン
銀行以外の金融機関のことをノンバンクと言い、消費者金融やカードローンがこれにあたります。ノンバンクのビジネスローンは、中小企業向けに作られた融資システムです。
銀行融資よりも金利は高い設定で、借入上限も1,000円前後と制限はありますが、融資の中では比較的審査に通りやすいというメリットがあります。
2,手形貸付
手形貸付とは、利用者が融資してもらう会社に対して約束手形を発行し、手形金額に相当する額を貸付けることを指します。
約束手形とは、商取引における代金決算方法のひとつで「将来の一定期日に代金を支払うことを約束した有価証券」となります。
受取人(融資する側)は、指定された期日になったら金融機関に手形を取り立てに出し、現金化・回収できるという仕組みです。手形貸付は、担保を設定せず、1年以内の短期貸付になることがほとんどです。
主に経常運転資金やつなぎ資金など、多くは企業の資金調達として使われます。
返済が滞ると「不渡り」とみなされ、企業の信用が著しく低下してしまうため、利用は支払期日まで確実に返済できる場合にとどめておくと良いでしょう。
3,手形割引
手形割引とは、約束手形を支払期日前に銀行や手形割引事業者で換金することを指します。
銀行や手形割引事業者に手数料を支払う必要はありますが、早期に換金できるという特徴があります。
約束手形は基本的に大企業しか発行できないため、手形自体の信用度が高く、審査も通りやすくなっています。
4,当座貸越
当座貸越は、普通預金口座の残高が不足した際に同一口座の定期預金を担保として不足額を自動的に借入できるサービスです。
当座貸越は借入可能な口座があり、なおかつ限度額まで借りていないのであれば、何度でも繰り返し利用することができるという特徴があります。
証書貸付のメリット
証書貸付を利用することで得られる大きな利点を確認しておきましょう。
証書貸付は、安定した資金調達と長期的な返済プランを組み立てられる点が最大の魅力といえます。多額の借入れが可能で、返済期間を長めに設定できるため、事業拡大や設備投資など、将来のリターンを見据えた投資を行いやすくなるでしょう。
さらに、金融機関からの評価として、きちんと証書貸付を返済していく実績は、企業の信用力を高めることにつながります。将来的に追加融資が必要となった際にも有利に働く可能性が高い点が注目されます。
証書貸付のメリットは以下の4点です。
- 多額の資金調達ができる
- 返済期間を長く設定できる
- 比較的低金利で利用できる
- 会社の実績を作れる
1,多額の資金調達ができる
会社の規模や財務状況によっては、数千万円以上の大きな資金を一度に調達できることがあります。これは、長期的なプロジェクトや大規模設備投資を検討している企業にとって非常に心強い方法です。
金融機関の融資審査では担保や保証人の有無も評価されるため、自己資本と併せてしっかりと準備することで、より有利な条件で貸付を受けられる可能性が高まります。
2,返済期間を長く設定できる
証書貸付では、10年やそれ以上の長い返済期間を設定することも可能です。これにより、投資を回収しつつ、毎月や毎期の返済を滞りなく実行しやすい体制を整えられます。
例えば設備投資の場合、導入した設備からの利益回収にはある程度の時間がかかることが一般的です。長期返済のメリットを活かせば、短期的な返済ストレスを軽減し、事業を安定成長させることができるでしょう。
3,比較的低金利で利用ができる
証書貸付は、金融機関にとっても比較的計画的な融資形態であるため、通常の短期ローンや無担保ローンより金利が低い場合があります。特に、公的金融機関や政策金融機関を利用する場合、金利優遇を受けられることも少なくありません。
長期的に支払う利息は、事業の収益性に大きく影響を与えます。少しでも低金利で融資を受けられれば、総返済額を抑え、キャッシュフローを良好に保ちやすくなる点が大きなメリットです。
4,会社の実績を作れる
証書貸付を適切に返済していくことで、金融機関との信頼関係を築くことができます。これは将来的に追加融資を受けたいときや、新規の融資先を探すときにもプラスに働くでしょう。
また、長期返済を完了させた実績は企業の信用度そのものを高める効果があり、取引先や他の投資家にも好印象を与えます。資金調達の幅を広げる上でも重要なポイントと言えます。
証書貸付のデメリット
便利な証書貸付ですが、あらかじめ理解しておくべき注意点も存在します。
証書貸付は長期的な資金ニーズに応えてくれる一方で、審査に時間がかかったり返済義務が長期にわたったりするなど、マイナス面も無視できません。特に、経営状態が不安定なときには返済が重く圧し掛かり、キャッシュフローを大きく圧迫する可能性があります。
このようなリスクを回避するためには、常に自社の経営状態や資金繰りを可視化し、複数の資金調達方法をバランス良く検討することが鍵となります。
証書貸付のデメリットは以下の2点です。
- 定期的な返済義務が生じる
- 審査が厳しく、融資までに時間がかかる
1,定期的な返済義務が生じる
借入後は定められたスケジュールに従って元本と利息を支払う必要があり、経営状況が悪化した際には返済が重荷になるリスクがあります。収益が予想どおりに上がらなかった場合、返済負担で新しい投資に踏み切れなくなる可能性もあるでしょう。
特に、証書貸付の返済期間が長いほど、外部環境の変化や業績の落ち込みなどの影響を受けやすくなります。こうしたリスクを回避するために、借入時には十分なリスクシミュレーションを行うことが大切です。
2,審査が厳しく、融資までに時間がかかる
証書貸付を受けるには、企業の財務状況や経営実態、将来の展望など多岐にわたる書類や情報が求められます。審査プロセスが比較的時間を要するため、急に資金が必要になった場合には対応が難しいことがあります。
また、審査の過程で追加書類の提出を求められることも多く、そのたびにスケジュールが延びる可能性があります。どうしても短期的に現金が必要な場合には、他の資金調達手段と併用することも視野に入れておいた方が良いでしょう。
証書貸付の審査に通るためのポイント
証書貸付の審査をスムーズに通過し、必要な資金を確保するために押さえておきたいポイントを紹介します。
金融機関の立場から見れば、長期間お金を貸し出す以上、借り手の返済能力や経営安定性を細かくチェックするのは当然のことです。審査を通過するためには、自己資本の充実や安定した業績だけでなく、融資用途の明確化や担保の用意など、複数の要件を満たす必要があります。
ここでは、特に審査で重視されるポイントを具体的に挙げていきます。自社の状態を客観的に分析し、さらに改善の余地があれば早めに取り組むことが大事です。
証書貸付の審査に通るためのポイントは以下の5点です。
- 一定の自己資本がある
- 一定の事業歴がある
- 会社の利益を証明できる
- 融資の使用用途がはっきりしている
- 担保・保証人がいる
1,一定の自己資本がある
自己資本比率が高い企業ほど、資金繰り悪化時でも倒産リスクが低いと判断されやすくなります。金融機関から見れば、自己資金をしっかり投入している企業は経営者自身がリスクをとっていると捉え、好印象を持つ傾向があります。
2,一定の業歴がある
業歴が長く実績のある企業は、経営ノウハウが蓄積されており、将来の業績も安定しやすいと評価されます。逆に、創業間もない企業はリスクが高いと見なされるため、より厳しい審査を受けることになるでしょう。
3,会社の利益を証明できる
黒字経営かつ利益率が安定しているかは、金融機関が特に注目するポイントです。決算書や試算表で、売上や利益の推移をわかりやすく説明できるようにしておくと、審査が通りやすくなります。
4,融資の使用用途がはっきりしている
借入金をどのような目的に使用するかが明確であるほど、金融機関は融資のリスクを計算しやすくなります。例えば、設備投資によってどのくらいの生産性向上や売上アップが見込めるのかを具体的な数字で示すと高評価を得やすいでしょう。
5,担保・保証人がいる
担保や保証人を提供できれば、金融機関のリスクは格段に下がります。特に、大きな金額を借りる場合には、担保価値の高い不動産や強固な保証人の存在が審査を後押ししてくれるでしょう。
まとめ
証書貸付は、長期的な資金調達や設備投資に適した方法である一方、審査が厳しいなどの面もあります。自社の状況や資金ニーズを十分に検討したうえで、最適な資金調達方法を選ぶことが重要です。
証書貸付は、企業が長期間にわたって安定的に資金を確保できる優れた手段です。その反面、審査手続きや長期にわたる返済計画の管理など、経営者に求められる責任も大きくなります。資金調達を成功させるためには、常に事業の現状を把握し、将来的な収益予測を立てながら攻めと守りのバランスを取ることが大切です。
一つの手法に固執せず、銀行融資や手形割引、エクイティファイナンスなど他の資金調達方法と比較検討することで、より最適な解決策に近づくでしょう。特に、証書貸付で信用力を高めることができれば、将来的な資金調達の選択肢も広がります。
証書貸付は、
- 金利を低く抑えたい
- 返済計画を長期的に考えたい
- 一度に高額な貸付をしたい
のような希望のある中堅~大手企業の資金調達に向いているといえるでしょう。
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