2025.04.25
借入金の勘定科目は?支払利息との違いや仕訳例について解説
企業経営や事業運営において、資金調達の手段として用いられるのが借入金です。しかし、借入金の会計処理については、「勘定科目の選び方」や「仕訳の方法」に悩むことも多いのではないでしょうか。
特に、借入金と支払利息の違いや、短期借入金と長期借入金の使い分けなど、適切な会計処理を行わなければ、決算書に誤りが生じる可能性があります。
本記事では、借入金に関する勘定科目の種類や正しい仕訳方法、決算時の処理について詳しく解説します。
借入金とは
借入金とは、金融機関や取引先などから借り入れた、返済義務のある資金のことです。会計上、借入金は負債として計上され、返済期間によって短期借入金と長期借入金に分類されます。
借入金の大きな特徴として、元本は経費として計上できない点があります。経費として認められるのは、借入金に対する利息(支払利息)のみです。
借入金は、貸借対照表(B/S)の負債の部に計上される一方、支払利息は損益計算書(P/L)の営業外費用として計上されます。この区別を正しく理解することが、借入金の会計処理の基本となります。
会計上、借入金は他人資本に分類されます。株主資本(自己資本)と異なり、返済義務があるため負債として扱われます。
借入金は、以下のような特徴をもっています。
- 返済義務がある(期日までに返済する必要がある)
- 利息の支払義務がある(借入の対価として利息を支払う)
- 貸借対照表の負債の部に計上される
- 返済期間によって短期借入金と長期借入金に分類される
資金調達の手段としては一般的であり、利用する際は返済計画を綿密に立てる必要があります。資金繰りが悪化すると、返済が困難になり経営を圧迫する可能性もあるからです。
借入金の種類と勘定科目の区分
借入金の勘定科目は、主に返済期間によって区分されます。
短期借入金
短期借入金は、決算日から1年以内に返済する予定の借入金を指します。運転資金の調達や、一時的な資金不足を補うために利用されることが多くあります。
短期借入金は流動負債に分類され、企業の短期的な支払能力を測るうえで、重要な指標となります。金融機関からの当座貸越や手形貸付、コマーシャルペーパーなども短期借入金に含まれます。
一般的に短期借入金の金利は、変動金利が適用されることが多く、市場金利の変動に影響を受けやすい特徴があります。資金繰りの改善や、季節的な売上変動に対応するための資金調達手段として活用されています。
長期借入金
長期借入金は、決算日から1年を超えて返済する予定の借入金です。主に、設備投資や事業拡大、M&Aなど長期的な事業戦略に関わる資金需要に対応するために利用されます。
長期借入金は固定負債に分類され、企業の長期的な財務安定性を評価する際に重要な指標となります。金融機関からの証書貸付や、不動産担保融資などが一般的です。
長期借入金の金利は、固定金利が適用されることも多く、返済計画を立てやすいメリットがあります。一方で、担保設定や保証人が必要になるケースが多く、審査も厳格になる傾向があります。
借入金に関する仕訳例
借入金の会計処理は、①借入時、②利息支払時、③元本返済時の3つの段階で行われます。それぞれの段階での正確な仕訳方法を理解しましょう。
借入時の仕訳
借入時の仕訳は、借入金を受け取った際に行う基本的な処理です。借入によって現金や預金が増加するため、借方に「現金」や「普通預金」を計上します。
一方、負債である借入金が増加するため、貸方には「短期借入金」または「長期借入金」を計上します。返済期間に応じた正確な勘定科目選択が重要です。
例えば、銀行から100万円を1年以内に返済する条件で借り入れた場合、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 |
---|---|
普通預金 1,000,000円 | 短期借入金 1,000,000円 |
逆に、返済期間が1年超の場合は「長期借入金」として仕訳します。
借方 | 貸方 |
---|---|
普通預金 1,000,000円 | 長期借入金 1,000,000円 |
利息支払時の仕訳
借入金に対する利息を支払う際の仕訳では、支払った利息は「支払利息」という勘定科目で処理します。支払利息は、損益計算書の営業外費用に分類され、経費として計上できます。
例えば、短期借入金100万円に対する利息1万円を支払った場合、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 |
---|---|
支払利息 10,000円 | 普通預金 10,000円 |
支払利息は、損益計算書に影響する項目であり、利益を減少させる要因となります。そのため、利息負担をできるだけ抑える資金調達方法を検討するといった戦略も考えられます。
借入金返済時の仕訳
借入金の返済時には、返済した元本分を借入金勘定から減少させる仕訳を行います。元本と利息を同時に支払う場合は、それぞれを区分して仕訳する必要があります。
例えば、短期借入金30万円と利息3,000円を一緒に返済した場合、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 |
---|---|
短期借入金 300,000円 支払利息 3,000円 |
普通預金 303,000円 |
分割返済の場合も、毎回の返済時に上記のような仕訳を行います。元本と利息を明確に区分することに注意しましょう。
決算時の借入金に関する仕訳例
決算時には、借入金の適切な区分表示や未払利息の計上など、特有の会計処理が必要となります。
短期・長期借入金の振替の仕訳
決算時には、長期借入金のうち、1年以内に返済予定の部分を短期借入金に振り替える必要があります。これにより、貸借対照表上で流動負債と固定負債を適切に区分表示します。
例えば、長期借入金500万円のうち、翌期に返済予定の100万円を短期借入金に振り替える場合、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 |
---|---|
長期借入金 1,000,000円 | 短期借入金 1,000,000円 |
この振替処理により、返済期限に応じた適切な負債の区分が可能になるため、企業の短期的な支払能力をより正確に示すことができます。特に、金融機関や投資家などの外部利害関係者にとって重要な情報となります。
未払利息の仕訳
決算日時点で発生しているが未払いの利息については、「未払費用」として計上する必要があります。発生主義の原則に基づき、その期に発生した費用は、その期の損益に反映させるためです。
例えば、決算日時点で発生している未払利息が5,000円ある場合、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 |
---|---|
支払利息 5,000円 | 未払費用 5,000円 |
未払利息を適切に計上することで、期間損益を正確に把握することができます。また、翌期の支払時には、既に費用計上済みの部分は未払費用から減額する処理を行います。
借入金に関する附属明細表の作成
法人企業は決算書の附属明細表として、「借入金等明細表」を作成する必要があります。この明細表には、借入先、借入金額、返済条件、利率などの詳細情報を記載します。
附属明細表の作成により、借入金の全体像を明確に把握することができ、返済計画の立案や資金繰り管理に役立ちます。また、金融機関との交渉時や、融資審査の際にも重要な資料となります。
特に借入金が多い企業では、この明細表を活用して借入金の一元管理を行うことで、返済漏れの防止や借換えのタイミング検討など、効率的な負債管理が可能になります。
借入金に関する財務指標
借入金の状況を適切に評価するためには、いくつかの重要な財務指標を計算するなど、定期的に分析を行うことが大切です。これらの指標により、企業の財務健全性や返済能力を測ることができます。
借入金依存度
借入金依存度は、企業の総資本に占める借入金の割合を示す指標です。以下の式で計算されます。
借入金依存度(%)=借入金総額÷総資産×100
この指標は、企業の財務状況の安定度を測る基準となります。一般的に、借入金依存度が低いほど、財務的に安定していると評価されます。業種によって適正値は異なりますが、30%以下が理想的とされることが多くあります。
借入金依存度が高すぎると、金利負担が大きくなり収益性が低下するリスクがあります。また、追加融資を受けにくくなる可能性もあります。定期的に自社の借入金依存度を計算し、業界平均や過去の推移と比較することで、財務戦略の見直しとして役立てることができます。
借入金月商倍率
借入金月商倍率は、企業の借入金総額が月間売上高(月商)の何倍に相当するかを示す指標です。以下の式で計算されます。
借入金月商倍率=借入金総額÷月商
この指標は、借入金の返済能力を測る実践的な指標です。一般的に3倍以内が健全とされ、倍率が高いほど返済に時間がかかることを意味します。
例えば、月商1,000万円の企業が借入金3,000万円を抱えている場合、借入金月商倍率は3倍となります。この場合、理論上は3ヶ月分の売上全てを借入金返済に充てれば完済できることになります(実際には経費等があるため、より長期間必要)。
借入金月商倍率が高すぎる場合は、売上増加策の検討や借入金の圧縮など、バランス改善のための対策が必要です。金融機関も、融資審査の際にこの指標を重視することが多いため、常に把握しておくことが重要です。
財務レバレッジ
財務レバレッジとは、自己資本に対して他人資本(借入金など)を活用することで投資規模を拡大し、収益性を高める効果を指します。以下の式で計算される負債比率と関連しています。
負債比率(%)=負債総額÷自己資本×100
財務レバレッジは、うまく活用すれば、少ない自己資本で大きな事業展開が可能になります。しかし、過度な借入は財務リスクを高めることにもなりますので注意が必要です。
借入金を増やして事業を拡大する場合、その投資から得られる収益率が借入金の金利よりも高ければ、財務レバレッジの効果により、自己資本利益率(ROE)が向上します。逆に、収益率が金利を下回ると、レバレッジは逆効果となり財務状況を悪化させます。
適切な財務レバレッジのレベルは、業種や事業環境によって異なりますが、安定した収益基盤がない段階での過度な借入には注意が必要です。定期的に負債比率や自己資本比率をチェックすることが大切です。
借入金の仕訳における注意点
借入金の経理処理には、いくつかの重要な注意点があります。
短期・長期の判断
借入金を短期と長期に区分する際は、決算日からみて1年以内に返済予定かどうかが基準となります。この区分は貸借対照表の表示に影響するため、返済スケジュールを正確に把握することが重要です。
例えば、3年間の分割返済の借入金がある場合、1年目に返済する分は短期借入金、残りは長期借入金として区分します。翌年の決算時には、また1年分が短期借入金に振り替えられます。
返済条件に変更があった場合(返済期間の延長など)は、その時点で短期・長期の区分も見直す必要があります。また、借入金の管理表を作成し、返済予定を一覧化しておくと、決算時の振替処理がスムーズになります。
元本と利息の区別
借入金の返済において、元本と利息は明確に区別して会計処理を行う必要があります。元本の返済は貸借対照表の負債を減少させるだけですが、利息は損益計算書の費用として計上されます。
返済額の内訳を正確に把握するためには、返済予定表や返済明細書を確認し、元本分と利息分を区別して仕訳を行いましょう。特に分割返済の場合は、毎回の返済額に含まれる元本と利息の内訳が変化するため注意が必要です。
税務上も、元本と利息は取り扱いが異なります。利息は経費として認められますが、元本の返済は経費にはなりません。正確な区分処理は、適切な課税所得の計算にも直結する重要事項です。
特殊な場合の借入金の仕訳
実務では、さまざまな借入金の処理ケースに遭遇します。ここでは、頻繁に発生する特殊なケースとその会計処理方法についてとりあげます。
借入条件変更時の仕訳
経営状況の変化などにより、借入条件(返済期間や金利など)が変更されることがあります。この場合、変更内容に応じた会計処理が必要です。
例えば、短期借入金から長期借入金への条件変更(リスケジュール)が行われた場合は、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 |
---|---|
短期借入金 5,000,000円 | 長期借入金 5,000,000円 |
条件変更は、返済計画の見直しを行う機会でもあります。変更後の返済スケジュールを反映した管理台帳の更新や、今後の資金繰り計画の再確認も併せて行うことが望ましいでしょう。
金利条件のみが変更された場合は、特別な仕訳は必要ありませんが、変更後の金利に基づいて今後の支払利息を計算・計上していくことになります。また、条件変更に伴い手数料が発生した場合は、「支払手数料」として費用計上します。
保証人・担保設定のある借入金
借入金に保証人や担保設定がある場合、通常の仕訳処理に加えて注記情報としての管理が重要です。担保提供資産や保証人情報は、貸借対照表の注記事項となります。
例えば、不動産を担保に設定して借入を行った場合、通常の借入金の仕訳に加えて、担保資産の明細を別途管理します。これは財務諸表の注記として、「担保に供している資産」の項目で開示されます。
担保や保証の状況を明確に把握することは、将来の資金調達の可能性や財務リスクを評価するうえで非常に重要です。借入金管理台帳に担保・保証情報も記録し、一元管理することをおすすめします。
担保を解除する際には、金融機関から担保解除証明書を受け取り、保管しておくことも重要です。これにより、資産の処分や追加担保設定が必要になった際にスムーズに対応できます。
借換え時の仕訳
借入金の借換え(既存の借入金を新たな借入金で返済すること)を行う場合、以下のような仕訳処理が必要です。
例えば、A銀行からの借入金5,000,000円をB銀行からの新規借入金で返済する場合は、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 |
---|---|
普通預金(B銀行) 5,000,000円 | 短期借入金(B銀行) 5,000,000円 |
そして、A銀行への返済は以下のように仕訳されます。
借方 | 貸方 |
---|---|
短期借入金(A銀行) 5,000,000円 | 普通預金 5,000,000円 |
借換えは、資金繰り戦略の重要な選択肢です。金利条件の改善や返済期間の調整など、さまざまな目的で活用されます。借換え時には、新旧の借入条件を比較し、総返済額や金利負担が本当に改善するかを確認することが重要です。
また、借換えに伴う手数料や保証料が発生する場合は、それらも考慮した総コスト比較を行うべきです。借換えのメリットが明確な場合のみ実行することをおすすめします。
まとめ
本記事では、借入金の勘定科目や仕訳方法、決算時の処理について詳しく解説しました。借入金は、返済期間によって短期借入金と長期借入金に区分され、それぞれ流動負債と固定負債に計上されます。また、借入金に対する利息は支払利息として経費計上できますが、元本は経費にはなりません。
借入金の適切な処理と管理は、企業の財務健全性を維持するうえで非常に重要です。返済計画の綿密な策定、短期・長期のバランス考慮、財務指標による定期的な分析を通じて、効果的な借入金管理を実践しましょう。資金調達の際には、自社の返済能力を冷静に評価し、無理のない範囲での借入を心がけることが経営の安定につながります。
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