2025.07.03
ファクタリングは踏み倒しできる?リスクや罰則は?
企業が資金繰りに困った際に、ファクタリングを利用する場合があります。しかし、ファクタリングの利用後に、支払い(売掛金回収後の返済)が困難な状況になることも考えられます。そのような場合、支払いができなくなった際の法的責任や具体的な影響を、正確に把握していないケースも少なくありません。
実際には、ファクタリングにおいて支払いを行わないことには、重大な法的リスクが伴います。具体的には、横領罪や詐欺罪などの刑事責任を問われる可能性があります。
この記事では、ファクタリングで支払いが困難になった際の法的責任(刑事・民事)や、支払いが難しくなった場合に取るべき適切な対応方法について詳しく解説します。これらを理解することで、資金繰りの課題に直面した場合でも、法的リスクを避け、安全に対処できるようになります。
※ファクタリングについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
『ファクタリングの仕組みとは?メリット・デメリットや利用の流れを解説』
ファクタリングの踏み倒しの基本
まずは、ファクタリングの踏み倒しが、具体的にどのような行為を指すのか理解することが大切です。
ファクタリングの踏み倒しとは
ファクタリングの踏み倒しとは、ファクタリング会社に売却した売掛金を、本来の支払先である取引先から入金されたにもかかわらず、ファクタリング会社に支払わずに流用することを指します。
通常のファクタリングでは、売掛債権をファクタリング会社に売却し、その対価として資金を受け取ります。そして売掛金の支払期日に、取引先からファクタリング会社へ直接支払いが行われる仕組みです。
しかし、2社間ファクタリングの場合、取引先から利用企業に支払いが行われ、その後利用企業からファクタリング会社に支払うという流れになります。そのため、この過程で、入金された資金を別の用途に使い込んでしまう行為が、踏み倒しの典型例となります。
これは、単なる支払い遅延や資金ショートではなく、意図的に支払いを逃れる行為として、法的に重大な問題となります。
踏み倒しと見なされるケース
踏み倒しと見なされるケースは、いくつかのパターンがあります。具体的な事例を見ていきましょう。
まず、最も明らかなケースは、売掛金の流用です。これは、取引先から入金された売掛金を、ファクタリング会社への支払いに充てず、他の用途に使ってしまうことを指します。
また、長期的な支払い遅延も踏み倒しと見なされることがあります。一時的な遅延ではなく、意図的に長期間支払いを行わない場合は、法的に問題となります。
さらに、虚偽の売掛債権を売却することも重大な違反行為です。実際には存在しない売掛金や、すでに回収済みの売掛金を、ファクタリング会社に売却するケースがこれに当たります。
そして、支払いを意図的に回避することも、踏み倒しの一種です。連絡を絶ったり、会社を実質的に放棄したりして、支払い義務から逃れようとする行為は、犯罪行為となり得ます。
踏み倒しをしてしまう理由
経営者がファクタリングの踏み倒しを考えてしまう背景には、さまざまな要因があります。
まず、急激な資金繰りの悪化が最も一般的です。予期せぬ取引先の倒産や売上の急減などで、突然の資金不足に陥ると、目の前にある資金を流用したいという誘惑が生じることがあります。
また、ファクタリングの手数料が高額だという認識も一因です。一部のファクタリング会社では、高額な手数料を設定している場合があり、支払時に負担感を強く感じることがあります。
さらに、ファクタリングの仕組みに対する誤解も要因の一つです。ファクタリングは借入ではなく債権売却であるという基本的な仕組みを理解していないと、返済が不要と誤解してしまうケースもあります。
そして、経営危機による判断力の低下も見過ごせません。経営が苦しい状況では、冷静な判断ができなくなり、目先の資金確保を優先した結果、法的リスクを軽視してしまうことがあります。
ファクタリングの踏み倒しの法的なリスク
ファクタリングの踏み倒しを行った場合、どのような法的リスクや罰則が待ち受けているのかについて、刑事責任と民事責任の両面から見ていきます。
横領罪による刑事責任の可能性
ファクタリングの踏み倒しで最も重大な刑事責任は、横領罪に問われるリスクです。
横領罪は、刑法第252条に規定されており、「自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する」とされています。特に業務上の横領(業務上横領罪)の場合は、刑法第253条により「10年以下の懲役に処する」と、より重い刑罰が定められています。
ファクタリングにおいては、すでに売却した売掛債権の入金を自社の資金として使用することが、この横領罪に該当する可能性があります。取引先から入金された売掛金は、法的にはファクタリング会社の財産であり、それを無断で使用することは犯罪行為となります。
過去の判例でも、2社間ファクタリングで入金された売掛金を他の用途に使用した経営者が、業務上横領罪で起訴され、実刑判決を受けたケースがあります。
詐欺罪による刑事責任の可能性
横領罪に加えて、詐欺罪に問われるリスクも存在します。
詐欺罪は、刑法第246条に規定されており、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」とされています。
ファクタリングの文脈では、最初から支払う意思がないにもかかわらず、ファクタリング契約を結んで資金を得た場合や、実際には存在しない売掛債権を売却した場合などが、詐欺罪に該当する可能性があります。
特に悪質な場合、組織的な犯罪として「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」が適用されることもあり、より重い刑罰が科される可能性もあります。
詐欺罪が認定された場合、単なる踏み倒しよりもさらに深刻な結果をもたらすため、たとえ一時的な資金繰りの解決策として考えたとしても、絶対に避けるべき行為です。詐欺罪には執行猶予判決はなく、有罪が確定すると実刑が言い渡され収監されます。
損害賠償と法的措置といった民事責任のリスク
刑事責任とは別に、ファクタリングの踏み倒しには、民事上の責任も発生します。
まず、損害賠償請求の対象となります。ファクタリング会社は、支払われなかった売掛金の全額に加え、遅延損害金や弁護士費用などを含めた損害賠償を請求してくることが一般的です。契約内容によっては、違約金や遅延損害金が高額に設定されていることもあります。
また、強制執行のリスクがあります。裁判所の判決や支払督促によって、会社や個人の資産(銀行口座、不動産、動産など)に対して差押えが行われる可能性があります。
さらに、連帯保証人への請求も行われます。多くのファクタリング契約では、経営者個人が連帯保証人となっているため、会社が支払えない場合は、個人資産も差押えの対象となります。
そして信用情報機関への登録により、企業および個人の信用情報に傷がつき、今後の融資やクレジットカードの利用に大きな支障が出る可能性もあります。
ファクタリングの踏み倒しは現実的には不可能
ファクタリングの踏み倒しは、実際には、さまざまな理由から現実的に不可能といえます。その主な理由を詳しく見ていきましょう。
ファクタリング会社の対応が厳格
ファクタリング会社は、踏み倒しに対して素早く厳格な法的対応を取ります。
例えば、支払いが滞った場合、ファクタリング会社は通常、数日から数週間という短期間で法的手続きを開始します。支払督促や訴訟提起が迅速に行われるため、時間の経過とともに状況が改善することはほとんどありません。
また、多くのファクタリング会社は、弁護士や債権回収の専門家で構成されたチームを持っており、債権回収のノウハウと豊富な経験で、確実に債権を回収する体制を整えています。
さらに、契約内容によっては、支払いが滞った場合に、ファクタリング会社が取引先(債務者)に直接請求できる権利を留保していることがあります。
そして、悪質な踏み倒しに対しては、躊躇なく刑事告訴を行う傾向があります。業界全体の健全性を保つためにも、こうした対応は一般的です。
業界内の情報共有システムが存在する
ファクタリング業界では、悪質な利用者に関する情報が広く共有される仕組みが存在します。
具体的には、業界内で共有される非公式なブラックリストに登録されると、ファクタリング会社間の情報共有があることから、他のファクタリング会社からのサービス提供が受けられなくなります。
また、多くのファクタリング会社は、銀行やノンバンクと情報連携しており、踏み倒しなどの不正行為の情報は、金融機関にも共有される可能性があります。
さらに、ファクタリング会社は、取引前に信用調査会社の情報を活用しており、過去に踏み倒しや支払い遅延などのトラブルがあった企業や経営者は、新規契約が難しくなります。
加えて、日本ファクタリング協会などの業界団体を通じて、問題のある企業情報が迅速に共有される仕組みも構築されています。
契約時の保全措置がなされる
ファクタリング会社は、契約時にさまざまな保全措置を講じて、踏み倒しのリスクを最小化しています。
例えば、ほとんどのファクタリング契約では、経営者個人の連帯保証が必須となっており、会社が支払えない場合には、個人資産からの回収が行われます。
また、リスクの高い取引では、不動産などの担保設定や、一定額の預り金(デポジット)を求められることがあります。
さらに、多くのファクタリング取引では、法的効力を強化するために債権譲渡登記を行います。これにより、売掛債権がファクタリング会社に確実に移転したことが公示されます。
加えて、リスクの高い企業には、2社間ではなく3社間ファクタリングが推奨され、取引先が直接ファクタリング会社に支払う仕組みにすることで、踏み倒しのリスクを排除しています。
ファクタリングで支払いが困難な場合の正しい対応
資金繰りが悪化してファクタリングの支払いが困難になった場合、踏み倒しという選択肢ではなく、適切な対応策を取ることが重要です。具体的な対応策を見ていきましょう。
早期の相談
支払い困難が予想される場合は、早期にファクタリング会社に相談することが非常に重要です。
例えば、支払期日に間に合わないことが予想される場合は、期日の前にファクタリング会社に連絡を入れましょう。突然の連絡途絶や無断の支払い遅延は、信頼関係を大きく損ないます。
そして、資金繰りが悪化している正確な理由を説明し、改善策や今後の見通しを包み隠さず伝えることで、相手の理解を得やすくなります。
また、一括での支払いが難しい場合は、現実的な分割払いの計画を自ら提案することで、誠意を示すことができます。
さらに、電話やメールだけでなく、可能であれば直接会って状況を説明することで、より深い理解を得られる可能性があります。
条件変更の交渉
ファクタリング会社との交渉により、支払い条件の変更が可能な場合があります。
分割払いを提案することで、月々の負担を軽減できる可能性があります。
一時的な資金不足の場合、支払い期日の延長によって資金を調達する時間的猶予を得られることがあります。
また、誠意ある対応と現実的な返済計画の提示により、遅延損害金の減額に応じてもらえる場合もあります。
さらに、正式に返済計画を見直す契約を交わすことで、法的な紛争を避けつつ、現実的な返済を進めることができます。
キャッシュフローの改善
支払いを確実に行うためには、根本的なキャッシュフローの改善が不可欠です。
自社の売掛サイトの短縮や、早期入金の依頼などにより、資金回収のスピードを上げることができます。
また、仕入先や外注先との交渉により、支払いサイトを延長してもらうことで、一時的な資金繰りの改善が可能です。
さらに、遊休資産や不要な設備、在庫などの売却により、短期間で資金を確保することができます。
加えて、人件費や家賃、サブスクリプションサービスなどの固定費を見直し、支出を削減することで、資金繰りの改善につながります。
代替の資金調達手段の検討
ファクタリングの支払いのために、別の資金調達手段を検討することも一つの解決策です。
例えば、銀行融資の活用があります。メインバンクや信用金庫など、取引のある金融機関に相談し、運転資金の融資を受けることを検討しましょう。
また、公的融資制度の利用も選択肢の一つです。日本政策金融公庫や信用保証協会の制度融資など、低金利で借りられる公的融資制度を活用することができます。
さらに、事業再生支援の活用も考えられます。中小企業再生支援協議会など、経営改善や事業再生を支援する公的機関に相談することで、資金繰りの改善策を見出せる可能性があります。
加えて、資本政策の見直しも方法の一つです。出資や増資など、返済義務のない資金調達方法を検討し、財務体質の根本的な改善を目指すことも重要です。
ファクタリング業者によるサポート体制
多くのファクタリング会社は、利用企業が資金繰りに困った際に、さまざまなサポートを提供しています。そのため、信頼できるファクタリング会社を選ぶことが重要です。
優良業者への対応
優良なファクタリング会社は、利用企業の支払い困難時に適切なサポートを提供します。
例えば、経営相談の提供があります。単なる債権回収だけでなく、資金繰りの改善や経営課題の解決に向けたアドバイスを提供する会社も少なくありません。
また、柔軟な返済条件の設定も特徴です。一時的な資金繰り悪化と判断された場合、分割払いや支払い期日の延長などに柔軟に対応してくれることがあります。
さらに、他の金融サービスの提案も行われます。ファクタリング以外の金融サービスや、提携している金融機関の紹介など、総合的な資金調達のアドバイスを提供することもあります。
加えて、継続的な取引関係の維持も重視されます。一時的な困難を理由に取引を打ち切るのではなく、長期的な関係構築の視点から支援を行う業者もあります。
相談窓口や専門家の紹介
多くのファクタリング会社は、支払い困難時に相談できる窓口や専門家を紹介しています。
まず、専門の相談窓口が設置されています。支払いトラブルや、返済相談に特化した専門窓口を設けている会社もあります。
また、弁護士や税理士の紹介も行われます。法的整理や税務上の対策が必要な場合、提携している専門家を紹介してくれるサービスもあります。
さらに、経営コンサルタントの紹介も重要です。根本的な経営改善が必要な場合、経営コンサルタントや中小企業診断士などの専門家を紹介するケースもあります。
加えて、公的支援制度の案内も行われています。中小企業再生支援協議会や経営改善計画策定支援事業など、公的な支援制度の案内や活用方法のアドバイスを提供することもあります。
まとめ
ファクタリングの踏み倒しは、一時的な資金繰りの改善策として考えられがちですが、横領罪や詐欺罪に問われる重大な刑事責任を伴うリスクがあります。最大10年以下の懲役という厳しい罰則に加え、損害賠償や強制執行などの民事責任、そして企業信用の失墜という深刻な結果をもたらします。
支払いが困難になった場合は、ファクタリング会社への早期相談、分割払いなどの条件変更交渉、キャッシュフロー改善策の実施など、適切な対応策を取ることが重要です。長期的には、財務体質の強化や売上・利益の安定化、資金調達手段の多様化など、根本的な資金繰り改善に取り組むことが、持続可能な経営への道となります。
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