ファクタリングのスキーム解説:2社間と3社間の違いや利便性とリスクについて
3社間ファクタリングと2社間ファクタリングの区分
ファクタリング取引には、前回のコラムで話した通り、「3社間ファクタリング」と「2社間ファクタリング」という区分があります。
中小企業の売上債権をファクタリング取引で現金化する場合に、中小企業の立場としては、どうしても取引先にファクタリング取引による債権の現金化を知られたくないという意識が働きます。
従来の手形割引と異なり、売上債権の譲渡というファクタリング取引は、手形割引のイメージとは異なり、会社の資金繰りが苦しいという印象がどうしても強くなりがちです。
従って、取引先に売上債権譲渡の通知と承認を必要とする「3社間ファクタリング」は回避される傾向にあるのです。実際に、取引基本契約などの中には、売上債権の譲渡を禁止する契約書もありますし、その意味では、日本の商慣行の中でファクタリング取引は、あまり良いイメージではないのが実態ではないでしょうか?
中小企業にとっての2社間ファクタリングの魅力
しかしながら、中小企業、ベンチャー企業、創業間もない企業にとっては、金融機関からの借入金よりも即時性のあるファクタリング取引は、資金調達の面で最大の支援になるのではないでしょうか?
3社間であれ、2社間であれ、売上債権として事業資金の一部が固定化することで、事業推進に足かせがつくような状況は解消できることが一番だと思います。
そういう意味では、3社間ではなく、2社間ファクタリングでも、機動的な活用が進んでいくことは中小企業金融の大きな流れだと思われます。
実際に行政的にも、法制的にも、ファクタリング取引が円滑に活性化するための施策は整備されてきています。
欧米諸国と日本のファクタリングビジネスの違い
そもそも、欧米諸国では、銀行をはじめとする金融機関が安全第一主義をとっているのに対して、ファクタリング会社は、「リスクテーキングビジネス」を行っています。
ファクタリング会社は、顧客である中小企業とその取引先に関して、その信用リスクを積極的に負担することで、利益を上げるビジネスだと考えられるのです。
その意味では、「2社間ファクタリング」はある意味で、ファクタリング会社にとっては究極の与信行為であると思われます。
3社間ファクタリングと2社間ファクタリングの実務的な違い
「3社間ファクタリング」においては、売上債権の譲渡に関して通知・承認の手続きがあり、資金の回収も顧客企業の売掛先(取引先)からファクタリング会社が直接受領する形になります。
従って、売上債権の譲渡買い取り後においては、顧客企業の信用力は、ほぼ問題になりません。
一方で、「2社間ファクタリング」においては、顧客企業の売掛先(取引先)への通知・承認といった手続きはありません。
要するに顧客企業が売掛先(取引先)に知られずに、売上債権をファクタリング会社に譲渡するのです。
従って、ファクタリング会社は、資金の回収業務を顧客企業に業務委託することになります。
つまり、売上債権の期日に、資金は、顧客企業がファクタリング会社に代行する形で受領し、その受領資金を顧客企業がファクタリング会社に支払う形になるのです。
2社間ファクタリングにおけるリスクと信頼関係
ファクタリング会社としてはm顧客企業の回収業務がキチンと実施されることが大前提
その意味では顧客企業が回収した売上債権をちゃんと振り込んでくれるのかという大きなリスクを負担することになるのです。
3社間ファクタリングと根本的に異なり、売上債権を顧客企業から譲渡を受けた後であっても、実際の資金の回収は、顧客企業に委託するという構造は、「2社間ファクタリング」では顧客企業とファクタリング会社の信頼関係が大変重要な取引だと言えるでしょう。
リスクテイクの点から、「2社間ファクタリング」はファクタリング会社にとって、リスク管理が極めて重要な業務になるのです。
2社間ファクタリングが抱える限界
必然的に、「2社間ファクタリング」には、限界があります。
まず、顧客である中小規模の社長や経営陣との直接面談が極めて重要になります。
さらに事業実態を確認する作業も必要です。
これには、会計経理作業のやり方や実際の帳簿管理も確認事項に含まれます。
会社の事業内容について社長や経営陣から、実績や今後の事業計画についてヒアリングしている場合でも
実際の決算書や帳票の確認をする際に、事務所に書類の保管が不備であったり
担当者が不在だったりする場合には、ファクタリング会社としての買い取り案件の取り扱いは
より慎重になります。
売上債権確定性の重要性と審査プロセス
さらに、売上債権の買い取りが可能であるかどうかも問題となります。
売上債権が確定しているかどうかの判断になります。
取引先に商品やサービスをすでに納品していて、しかも請求書の発行も終了しているかどうかが、売上債権が確定しているかどうかのポイントです。
発注書や契約書だけで、売上債権が確定しているかを証明することはできません。
発注書や契約書は、将来的な売上債権の発生の可能性の証明になりますが、ファクタリング取引に必要となる売上債権(売掛金)は現実第一主義で、ファクタリング取引の時点で債権が確定していることが大前提なのです。
ファクタリングの実務と注意点
ファクタリング取引の基本契約と審査プロセス
「2社間ファクタリング」においては、顧客である中小企業からすると、売上債権(売掛金)が確定してさえいれば、ファクタリング会社に債権買い取りを申し込むことができます。
ファクタリング会社は、申し出の売上債権が確定されたものであることを確認し、売掛先の信用状態を査定します。
その上で、顧客である中小企業の現地調査や社長ヒアリングを実施し、売上債権の買い取りを行います。この際に、基本的に3種類の契約書を取り交わすことになります。
まずは、売上債権を譲渡するための債権譲渡契約書、次に、売上債権の期日に資金回収を顧客に代行してもらうための回収業務委託契約書、それと、ファクタリング会社が第三者への対抗要件を確保するための債権譲渡登記申請書です。
2社間ファクタリングの利便性と拡大傾向
利便性の高い「2社間ファクタリング」は現在、拡大傾向にあります。取り扱うファクタリング会社も増加しています。
しかしながら、このスキームは中小企業の資金調達手段としては、効果的で即時性がありますが、いくつかの限界があります。
ファクタリング取引の課題と注意点
2社間ファクタリングの取扱件数の限界
現場主義を基本とするファクタリング会社では取扱いの件数に限界があります。
2社間ファクタリングは、ファクタリング会社にとってはリスクの高い取引です。
実際の案件審査にあたっては、実務担当者のスキルや経験がものを言いますので、その意味では、現場主義を中心とする限りは人員に限りがあり、それに伴って取扱い件数に限界が生じます。
大規模案件における課題
大きな金額のファクタリング取引は、ファクタリング会社1社では取扱いできません。
大手金融機関などからの資金調達が可能なファクタリング会社は、実はあまり多くありません。
小規模資金のファクタリング会社も多く、一案件当たりの買い取り金額は数百万円が上限の場合が一般的です。
手数料率が収益に与える影響
ファクタリング会社の事業は、緻密な確認事項を重ねた上で「リスクテーキング」を行うビジネスですので、必然的に手数料率が高くなります。
一案件当たりの買い取り手数料は8%〜20%超となっており、利用する顧客である中小企業の収益を確実に減少させます。
ファクタリング利用時の計画と影響
緊急対応としてのファクタリングの役割
ファクタリング取引は、売上債権の早期現金化による事業推進を可能にする有効な資金調達手段です。
特に収益力の高い事業展開を図る中小企業にとっては、短期的なキャッシュフローの安定を提供します。
しかし、収益力が弱まっている企業にとっては、緊急措置として利用するべきであるという認識が重要です。継続的なファクタリング取引は、会社の利益を削る可能性があるため、計画的な利用が求められます。
ファクタリング利用後の経営計画の重要性
ファクタリング取引を解消できる方向性を明確にし、経営戦略と財務計画を見直すことが重要です。
利用するファクタリング会社は、単に資金提供を行うだけではなく、今後の事業計画や資金繰り改善のためのアドバイスを提供できる会社を選ぶことが理想です。
ファクタリング利用後に企業が財務基盤を強化し、安定した成長を遂げるためには、戦略的な計画立案が不可欠です。
金融機関審査への影響と注意点
ファクタリング取引が決算書に記載されると、金融機関の審査担当者はその点を重視します。
「資金繰りが厳しい企業」と見なされる可能性があり、これが新たな融資交渉において障害になる場合があります。
この点は、商慣行的に中小企業が受けるサポートの制限とも関連していますが、事実として受け止め、対策を講じることが必要です。
まとめ
本記事では、ファクタリング取引の基本的な仕組みから、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違い、取引における利便性やリスク、そしてその限界について解説しました。
ファクタリングは中小企業にとって即時性のある資金調達手段として非常に有効ですが、適切な計画と管理が必要です。
特に、2社間ファクタリングは取引先に知られることなく資金を調達できる利点がある一方で、ファクタリング会社が大きなリスクを負うため、利用者には慎重な計画が求められます。
また、手数料率が高いため、継続的な利用が企業の収益に与える影響についても注意が必要です。
ファクタリング利用後は、財務計画や経営戦略を見直し、収益性の向上を目指すことが重要です。また、金融機関の審査への影響を理解し、適切な対応を行うことで、今後の資金調達の選択肢を広げることができます。
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